ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

最前線

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シタタタタタタッ!ズザザザザザッ!

「ラインハード嬢、ヴァンディット嬢殿ご無事で御座いますかな!?
それとノア殿は何処に!(クリストフ)」

「は、はい大丈夫です。(ヴァンディット)」

「ノア様ならグリードさんと一緒に前線よ!(ラインハード)」


エスメラルダ、バドに続いてこの場に到着したのは、つかえるキノコのクリストフであった。


「やはりそうですな!
つまりここが最終防衛ラインという事!
ならばここに″陣″を張るとしましょう!
『バックラッシュルーム』!(クリストフ)」

ズボッ!


2人の安否とノアの居所を聞いたクリストフは、徐に真っ白い両腕を地面に突き刺した。 


ボコッ!『『モコモコモコッ!』』ボゴッ!

「な、何じゃい!?(バド)」
「新手…?いや…キノコ?(エスメラルダ)」


すると直後に地面が次々に隆起し始め、地面から幾本ものキノコがにょきにょきと生えてきたのである。

それは3~5メル程に成長し、横に長く壁の様に展開していった。


「『バックラッシュルーム』は反発性のあるマッシュルームで、生半可な攻撃ではビクともしませぬ!
耐久性もあるので壁としては勿論、避難所としても使える代物に御座いますぞ!(クリストフ)」

「本にお主は何でもありじゃな。(ルド)」
「生産者に似たんじゃな。(ロイ)」

「んな事言ってられないわ!来るわよ!(エスメラルダ)」

「御二方!此方へ!(クリストフ)」『『グィッ!』』


サラッとやってのけたクリストフに嘆息混じりのドワーフ達。
だが悠長にしてられる余裕は無かった。
エグリゴリラの集団5頭が突っ込んできたのである。

クリストフは咄嗟にラインハードとヴァンディットの手を引いて『バックラッシュルーム』の群生地の中へと引っ張り、ドワーフ達やエスメラルダもその中へと避難する。


ゴァアアッ!ガァアアッ!ゥガァアアアッ!バァアアアッ!!ボェアアアッ!

ゴゴンッ!『バィンッ!』ガゴッ!『ゴヮンッ!』グニグニ…『バィンッ!』


クリストフが言っていた事は確かな様で、5頭共突っ込んできたものの『バックラッシュルーム』に弾かれ、中へは侵入して来れなかった。


ジャキッ!

『ゴゴンッ!ガンッ!』『ガンッ!』『ガンッ!』

「ブラッツ!頸動脈を狙いなさい!(ヴァンディット)」

ウォンッ!ダカッ!

「網に掛かった獲物じゃ!お前ら行くどぉっ!(バド)」

「「おぅさ!」」ザガッ!


そんなエグリゴリラに、ラインハードは貫通魔力弾で、ヴァンディットは小型のブラッツに指示を出し、ドワーフ達は戦斧を振るって攻撃を開始した。


グニグニ!

「そっちの1頭が体を滑り込ませて中に入ってきたどぅ!(ロイ)」

ダダダダダッ!

「任せぃ!(我矛修羅)」

ドゴォンッ!ゲァアアアッ!


更に後続からやって来た鬼人族の貴族我矛修羅(ガムシュラ)が躍り出てきてエグリゴリラを思いっ切り蹴飛ばした。


ドガガガッ!ゲェッ『ゾリンッ!』プ…

スタッ!

「うむうむ、私の″尻尾の斬れ味″はまだ衰えていないな。(ワン)」


『バックラッシュルーム』から追い出されたエグリゴリラの首に高速で銀白色の光が走る。
すると首は綺麗に落ち、エグリゴリラは絶命。

直後その場に竜人族の貴族ワン・リバーンが降り立った。

 
『ガガンッ!』『ガンッ!』

ボァアアアアアッ!

「くっ!キノコを盾にしてて顔に当てれない…
誰かこのゴリラにトドメを…(ラインハード)」

ザッ…

「任された。
″右鎖骨″…ここを断てばコイツは終わりだ。『キンッ!』(ルルイエ)」


『バックラッシュルーム』の耐久性を利用したエグリゴリラに苦慮していたラインハードの所に、同じく貴族のヴァリエンテ・ルルイエが助太刀に入る。

腰に差していた剣を恐ろしい速さで抜き、宣言通りの″右鎖骨″を一刀両断したルルイエ。


『『ブジュゥウッ!』』アガァアアアアッ!


すると恐ろしいまでの出血が発生し、みるみる内にエグリゴリラは脱力して動かなくなった。


「安心してくれお嬢さん。我々は援軍だ。
もう少ししたら騎士団もやって来るだろう。(ルルイエ)」


そうルルイエが言った直後


ザザッ!

「盾持ちはキノコの隙間を埋める様に展開!
1匹たりとも通さないつもりで掛かれ!
他の者は4人1組で1体を処せ!確実に仕留めろ!(ハナ)」

「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」


獣人国騎士団『犬姫』30人、通常騎士団30人到着。


「ワン・リバーン様!『武装嬢隊・竜妃(リュウキ)』
総勢20名到着致しました。」

「うむ。敵戦力を測り、その後排除行動に移れ。(ワン)」

「「「「「「「「「了解しました!」」」」」」」」」


貴族ワン・リバーン専属部隊『武装嬢隊・竜妃』20名到着。


「我矛修羅殿、『王鬼(オーガ)』の手練れ10人程ですが参りました。」

「今この場に多くの戦力が欲しい所だが致し方無し。だが精鋭揃いだ。
ノア殿の邪魔をせぬ様に溢した物を各個撃破して行け!(ガムシュラ)」

「「「「「おぅ!」」」」」


貴族我矛修羅(ガムシュラ)側近『王鬼(オーガ)』精鋭10人到着。


「何つう数だ…こりゃマジで大事だな…
各メンバーに告ぐ!予定変更だ!前線に出ずに後方支援、並びに疲労等で空いた穴を埋める様に個人個人で立ち回ってくれ!(ギュラドスカル)」

「後方支援?前に出なくて良いのか!?」

ポンッ。

「彼の言う通りにしておいた方が良い。
前に出ると言う事は″彼″と同じ場に立つと言う事だぞ。(エルグランド)」

「え?」


クラン『灰塵』リーダー、ギュラドスカルの指示を受けたクランメンバーだが、てっきり前線に出るものだと思っていた為、苦言を呈す。

だが、後続でやって来たエルグランドが語り掛ける要に伝えつつ前線を指差した。

すると


『『『『ヴォオ″オ″オ″オ″オ″オ″オ″オオ″オ″ッ!!!』』』』


迫り来るモンスターの群れの更に奥で、身長30メルにもなる巨大な人型モンスター『デイダラボッチ』が唸り声を上げながら首の後ろ辺りに手を回して暴れていた。

良く見ると、首の後ろにノアが貼り付いており、そこから止めどなく大量の血液が噴出していた。





ブジュゥウッ!ブシュッ!

『ヴォオ″オ″オ″ッ!ア″ア″ア″ア″ア″ッ!』

『んのデカブツが!『ザグッ!』1体1体に時間『ブスッ!』掛けられないんだよっ!『ドスッ!』』


『デイダラボッチ』の首に貼り付いたノアは、両手に荒鬼神ノ化身を持ち、恐ろしい速度でザクザクと肉を削いでいき、大木の様な脊髄を露にしていた。

既に『デイダラボッチ』は戦意喪失しており、唸り声が悲鳴に変わってきていた。
そんな事知った事では無いとばかりに返り血を浴びながら斬り進めていき


『ッラァアアッ!』『ゴリンッ!』

『オ″ガァア″……ッ…』ズズンッ!

スタッ!

『…グリード、邪魔になるから喰うか埋めておいてくれ。』

ボリンッ!

《了解しました主様。》


 先程決めた方針も何処へやら。
討伐した『デイダラボッチ』に見向きもせず、返り血を拭って次のモンスターへと駆けていった。





「最前線は彼処だ。
だが、正直前線に出るのはオススメしないな…(エルグランド)」

『『『『『コクコクコクコクッ!(『灰塵』メンバー一同)』』』』』


恐ろしい光景を目の当たりにした『灰塵』メンバー達は、素直に後方支援、並びに穴を埋めるべく行動を開始したのである。
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