上 下
731 / 1,134
獣人国編~全ての始まり~

10年前、全ての始まり。~謎の人物~

しおりを挟む
~滅びの森近郊の野営地~


「森の番人レント・レアナ討伐お疲れさま~!
かんぱ~い!(アミスティア)」

「「「「「かんぱ~い!」」」」」  


酒瓶片手にアミスティアが乾杯の音頭を取ると、討伐依頼に参加した2クランのメンバー達も酒瓶片手に一気に煽り出した。

現在『死屍累々』と『極大射程』両クランでは森の番人レント・レアナ討伐後の祝賀会が行われている所であった。

この2クランは、仕事終わりに祝賀会を行うのが定例行事になっていた。


「いやぁ、やっぱ最後は姐さん(アミスティア)と旦那さん(レドリック)の2人が決めてくれましたね。」

「姐さんの″微塵斬り″でで足止めして、旦那さんが巨大な″火柱″を射出してトドメを刺すなんてな…」

「あれ一体何を撃ち込んだんです?」

「あれは巨人族が住む地域にあった火山から噴出してきた″火山弾″だよ。
引き延ばされて棒状になったから″ストック″してたんだ。(レドリック)」

「「「「えぇ…」」」」


両クランの奮戦もあったが、最終的にはアミスティアの超高速斬撃術の″微塵斬り″によって再生する傍から身体を斬り落とす事でその場に留まらせ、レドリックが″ストック″していた数千度にも達する赤熱した大木サイズの火山弾5発を撃ち込んで完全に焼失させた。

正直な所、もうこの2人だけで良かったんじゃないか?と思って仲間が聞いてみると


「バカ言っちゃいけないわよ!
週末に息子のノアちゃんとピクニックに行く予定なのよ!長引いたりしたらどうするの!?(アミスティア)」

「つまり、ちゃっちゃと終わらせる為にお前達を呼んだんだ。(レドリック)」

「「「「えぇ…」」」」


その代わり、両クランメンバー達の報酬は割増で設定されているので、文句等は無かったのである。


「ねぇアミさん、レドリックさん、またクランに『最上級冒険者への推薦状』が届いてましたけど…」

「子育てで忙しいからパス。(アミスティア)」

「子供との時間が減るからパース。(レドリック)」

「ですよね…」

((((″あの″戦闘狂の2人がこんな子煩悩になるとはねぇ…))))チビチビ…


等とワイワイ騒ぎながら他愛の無い話で盛り上がっていると


チリ…

「ん?
何かが高速で接近してくるぞ…?(レドリック)」

「え?モンスターとか?(アミスティア)」

「いや、モンスターじゃなくて一応人の様だ。
だが気配がおかしい…殆ど感じ取れないし、尋常じゃない速さで突っ込んで…(レドリック)」


″『『『ズアッ!』』』″


「「うぉっ!?」」
「わっ!?」
「……っ!?」
「!(アミスティア)」

「っ!?何だこの反応!今度は隠す事無くヤバイ気配を出してやがるぞ!(レドリック)」

ダンッ!

「あ、ちょっとレド!(アミスティア)」ダガッ!

「「あ、ちょっ!」」
「取り敢えず私達も行きましょ。」

「「「「「おぅ!」」」」」ズザッ!


当時既に感知系スキルを殆どカンストさせていたレドリックが、高速で接近してくる謎の反応を感知。

当初気配等は殆ど無く、レドリックのみが気付く程度の反応だったのだが、直後その場に居た全員が感知出来る程の強烈な反応が放出された事で、レドリックを筆頭に他のクランメンバーもその場から飛び出していった。





(おいおい何だこの殺気は…放出してんのは本当に人か…?
さっき討伐した森の番人よりヤベェ奴だぞこれ…(レドリック))

ダダダッ!ゴ『パァンッ!』


謎の人物が放出している殺気は最低でも森の番人以上であると推定された為、足に力を籠めたレドリックは、衝撃波が発生する程の速度で疾走し始めた。





パパンッ!パンッ!パンッ!ガガガッ!

「よぉ、アンタ。
誰かは知らん『ズルッ…』…チッ!無視かよ…(レドリック)」


衝撃波を発生させながら、黒装束を纏った謎の人物に高速接近してきたレドリックが声を掛けるも、まるで【忍】の『土遁の術』でも使ったかの様に地中に潜んでしまった。

その対応にレドリックは思わず舌打ちをする。

その直後


ドバァ『ガシッ!』

「ぅおぉ『ガボボボッ!』っ!?(レドリック)」

ガチンッ!

「な、なぁ…えぇっ!?(レドリック)」


突然地中から腕が飛び出してきてレドリックの両足を掴むと、凄まじい力で引っ張られ、首から下が地面に埋まってしまったのだった。

突然の事だったがレドリックが出ようとするも、周りの土が固められ、身動き1つ取れなくなってしまった。


ボガアァッ!ズダダダダダダッ!


レドリックが拘束された直後、物凄い勢いで地面が捲り上がり、殺気剥き出しの謎の人物が勢い良く出現。

レドリックの方を見る事も無く、再び高速で駆けていった。


ギッ!ギリリッ!

「チッ!俺の事は『ゾリンッ!』眼中に『ゾッ!』無ぇってか!『ゾリンッ!』(レドリック)」

バガッ!

「ちょ、大丈夫!?レド?(アミスティア)」

「助かったアミ!
…ヤベェなアイツにまんまとやられちまった。
相当腕が立つ野郎だぜ?(レドリック)」

「取り敢えず皆に足止めさせに向かわせてるわ。
これで少しは…」

ガガッ!ドッ!ゴガッ!ズガガッ!ドボッ!ゴガガッ!カッ!コッ!ゴカッ!

「いや…(レドリック)」

『『『『『ズシャッ!』』』』』

「アイツらじゃ足止めにもならん。(レドリック)」


地面に拘束されたレドリックの下にアミスティアが到着。
地面を3度斬りつけて脱出の手助けをしたのであった。

その間、20人近く居る『死屍累々』『極大射程』のクランメンバー達が黒装束を纏った謎の人物を取り囲んだものの、武器を手にする事無く、近接格闘のみで周囲に居るクランメンバーを次々に撃破していった。





ザ『ブォン』『ドゴォッ!』

「待て!お前は一体何者なんだ!(レドリック)」


クランメンバー達を各個撃破していった後、再び駆け出そうとした謎の人物の目の前にストックしていた巨木を突き立てて足止めするレドリック。


チキ…   ズッ…


謎の人物の動きが僅かに止まった事を確認したアミスティアとレドリックが攻勢を仕掛けようとした正にその時であった。


『キィィイイイイ…』

「ん『ズムッ!』…?(アミスティア)」
「は『ドゥッ!』…?(レドリック)」


謎の起動音の様な物が鳴り響いたかと思うと、直後に2人の腹部に衝撃が走る。


「…かはっ…(アミスティア)」ガクッ!
「ぐ…ぇ…(レドリック)」ズシャッ! 

ズザッ!ズダダダダダダッ!


いつの間にか謎の人物が拳を固めて2人の前に立ち、拳を撃ち込んでいた。
全く反応出来なかった2人は共に崩れ落ち、意識を手放し掛けていた。

やはりと言うべきか、謎の人物は2人に見向きもせずに駆け出し、その場を後にした。
進行方向はスパルティア。

2人は未だ回復せず、スパルティアへと高速で駆けていく謎の人物の後ろ姿を眺める事しか出来なかった。

それから約5分後、2人はスパルティア方面から膨大な魔力の奔流を感知したのであった。
しおりを挟む
感想 1,248

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処理中です...