ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~御前試合の代表決め~

鋭さ

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~獣人国から歩いて1時間程・滅びの森近傍~ 


「あぁノア君ならこの先を真っ直ぐ行った所で両親と訓練の真っ最中だよ。(ジョー)」

「え?両親と…ですか?(ドゥ)」

「ほら耳を澄ませてみなよ。(ジョー)」


(遠くの方から)

ゴォン…
ズズン… 


「ね?(ジョー)」

「え?これ戦闘音だったんですか?(ドゥ)」
「てっきりヒュマノ聖王国の解体が始まったモノだとばかり…(カサグリア)」

「返済能力皆無が決定的となり、差し押さえやら″選別″が近々開始されるとは言え、ここまでの轟音はしないさ。(ジョー)」


獣人国を出て暫し滅びの森近傍に沿って歩いていたドゥとカサグリアだったが、引き返してきていたクロラやジョー、護衛のルーシー姉妹達に出会していた。


「実はかくかくしかじかありまして…(ドゥ)」

「あぁ、それでノア君の下へ向かってるんだね?なら気を付けた方が良いよ。
モンスターの事もそうだけど、2人の激戦に巻き込まれない様にね。(ジョー)」

「「は、はぁ…(ドゥとカサグリア)」」





~そこからまた30分後~


ドゴォッ…!
ズズンッ…!
オァアアアア…

「何かモンスターの悲鳴も混じってきたな…(ドゥ)」
「地鳴り…?もして来たし、そろそろだと思うけど…『パサパサ…』ってかさっきから木屑が飛んできて髪がガサガサよ…(カサグリア)」


目的地に近付くにつれて砂埃や木屑が周囲に舞っている。
それに加えてモンスターの悲鳴までもが聞こえ出し、2人はおっかなびっくりな状態であった。




…ォォォォガァアアアッ!

「ねぇ…?もしかして悲鳴が近付いてきてない…?(カサグリア)」

「…もしかしなくてもその通りだ!
『グイッ!』離れろ!(ドゥ)」

ドゴォンッ!ブゴ…オ…!


と、そう叫んだドゥがカサグリアの服の襟を掴んで引っ張ると、エレファントバッファローの巨体が落下してきた。


「うぇええっ!?何っ!?何何!?(カサグリア)」

ズズンッ!ドゴンッ!

バギバギッ!ゴガァアアッ!


混乱しているカサグリアだが、近くの森から破壊音と破砕音が響いたかと思うと、これまた巨体のダックス憤怒が転がり出て来た。


ッグッ!ブルゥウウ…ッ!ゴァアアアアッ!

「「げっ!?(ドゥとカサグリア)」」


そのダックス憤怒は、顔に付いた泥を払っている最中にドゥとカサグリアの2人に気付き、吠え掛けて狙いを定めて突進してきた。


ゴァアアアアッ!

「ちっ!何かよく分からんがやるっきゃないか!「ドゥ、頑張えー。(カサグリア)」
お前もやるんだよ!(ドゥ)」

…ゥゥゥゥウウッ!


ダックス憤怒が迫る中、ドゥの後ろに隠れるカサグリア。
すると上空から風切り音がしてきて


ド『プギュッ!』ゴンッ!

「「へ…?(ドゥとカサグリア)」」


上空から高速で大木が飛来し、ダックス憤怒の頭部に直撃。
その一撃で頭部が粉砕したダックス憤怒は、ピクリとも動かなくなった。


ストッ。

「よぅ、ジョーん所のドゥとカサグリアだな。
こんな所までどうした?(レドリック)」

「「あ、あなたは…(ドゥとカサグリア)」」


突き立つ大木のすぐ脇にレドリックが降り立った。そう、この大木はレドリックが射出した物であった。





ドドォンッ!ズズンッ!バキバキッ!

「かくかくしかじか…(ドゥ)」
「うんぬんかんぬん…(カサグリア)」

「なる程、それでノア…と言うよりか従者のヴァンディットさんに会いに来た訳だな。(レドリック)」

「あ、あぁ…だがそれよりもノア君は訓練をしていると聞いたのだが…?(ドゥ)」

「あぁ、そうさ。
″見ての通り″訓練の真っ最中さ。(レドリック)」

「「えぇ…(ドゥとカサグリア)」」


姿は見えないものの、断続的な戦闘音とそれに伴った破壊音が周囲に響き渡る。
大砲の掃射を思わせる地響きの連続に、ごく一般的に聞く″訓練″とは全く思えない状況であった。





~滅びの森内部~


ヒュオッ!ゾリッ!ゾリンッ!

「あはははっ!ダメじゃないノアちゃん大木なんか投げてきちゃって!
そんな物量攻撃が私に通じ『トッ。』!『ガギィインッ!』」

『チッ。』


根っ子から引っこ抜いた大木を数本投げ付けられたアミスティアは、造作も無く破壊。

だが高速で移動してきたノアが破壊された幹の一部に身を隠して接近していた事に気付かなかったが、跳躍時の僅かな音に気付き、何とか反応する事が出来た。


(『…力み過ぎたか…』)

(あらやだどうしましょ、″鋭さ″がさっきよりも増して来てるわね…(アミスティア))


さっきからノアの攻撃は1度たりともアミスティアに届いていないが、これはアミスティア自身の膨大な戦闘経験と技術、スピード、勘を頼りに行動しているに過ぎず、実戦訓練の中で″鋭さ″が増してきているノアに焦りを感じてきていた。


(力が増しただけなら対処は容易。
だけど反応速度に思考速度、無駄な動作を極力削る事で洗練された素早い行動を可能にしている…
ふふふ、鍛練を怠らなかったのね。
冒険者生活を始める前より技術も上がってるわ…(アミスティア))


村から旅立ってからというもの、ほぼ連戦続きだったノアは、アミスティアが思っていた以上に成長していた様子。


バキィインッ!

スラッ!

「【神速抜刀術″八ツ裂″】っ!(アミスティア)」

ゴ『ギ!』ガ『ギ!』ガ『ギ!』ガ『ギ!』ガ『ギ!』ガ『ギ!』ガ『ギ!』ガ『ギィンッ!』ッ!

(超速の8連撃を全て弾いた!?
旦那(レドリック)ですら見きれないのよ!?(アミスティア))



【神速抜刀術″八ツ裂″(シンソクバットウジュツ″ヤツザキ″)】…【殲滅剣士】専用技。
殆ど不可視レベルの速度で繰り出される8連撃全てを当てる事で、対象の耐性・防御全てを無視して両断する事が出来る謂わば必殺技である。



『ふっ!』ボッ!

(あ、やっべ。(アミスティア))


【神速抜刀術″八ツ裂″】を全て防がれたアミスティアは、コンマ数秒の硬直時間に襲われる。
ノアと対峙してそれは致命的とも言えた。


「『ガッ!』はーい『ガシッ!』一旦そこまで。ノア、お前さんにお客さんだ。(レドリック)」

『へ?』ぐにっ。

「ノアちゃんに?(アミスティア)」


音も無く2人の間に割って入ってきたレドリックが、ノアの手首とアミスティアの足首を掴んだ。

ちなみにノアの拳はアミスティアに届く前に止められているが、アミスティアの前蹴りはノアの頬にめり込んでいた。
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