ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~御前試合の代表決め~

力を制御した事による弊害

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ノアによる鬼神の力の制御が完了した所で、ある問題が浮上。
それによってノアとノアの両親以外は獣人国へ帰る事になった。

と言うか、この場から離れざるを得なくなった。

理由としては、先程ルーシー姉妹が言っていたが、ノアが力を制御した事で今まで放っていた威圧感や殺気等も自身の中に封じ込めてしまった事に起因する。

一見良い事の様に思われるが、それは対人にのみ限った事である。

忘れてはならないのは、今皆が居るのは″滅びの森″と言うモンスター多出現地帯だ。

先程ノア含めた3人が凶悪な殺気を放った事で、知能の低いモンスターが怒り狂って一行を襲ってきて瞬殺された。

それにより他のモンスター達は森の中から静観するに留めていた。

だがその凶悪な殺気の大本と言える対象から殺気が霧散し、消失した。
これを森の中から静観していたモンスター達は″弱ったのでは?″と勘違いし、ひっそりと潜むのを止めて行動を開始したのである。

それなら再び殺気を振り撒けば良いのでは?と思うかもしれないが、3人は元々この場でひっそりとノアの訓練に勤しみたかった。

故に状況的に判断すれば都合が良くなったので、殺気を振り撒いてモンスターを散らす事はせず、ノアもそれに倣う事にした。





グルルルル…ズシャリ…
ブフーッ…ブフッ!ジャリ…
ウホッ!ウホホッ!


薄暗い森の中から鼻息荒いダックス憤怒、エレファントバッファロー。
それに獣人国近辺では見ない、強靭な体躯をしたゴリラが姿を現した。

ノア達はそこから100メル位離れた場所に居た。


『ごめんね、わざわざ来て貰ったのに早々に帰る羽目になっちゃって。』

「いやいや、えぇんよノア君。
あっちが何や力になれただけで来た甲斐があったっちゅうモンちゃね。(ミダレ)」

『ではクロラさん、ポーラさん。
ミダレさんの事お願いしますね?』

「うん。(クロラ)」
「あいよ。(ポーラ)」

「あ…ね、ねぇノア君?(ミダレ)」

『ん?どうしましたミダレさん?』


獣人国までミダレの護衛をお願いした後、その場を離れようとしたノアにミダレが呼び止める。

当のミダレは、呼び止めたは良いモノの何やらクロラとポーラに視線を送ってアワアワしていた。


「あ、あんなぁ…
…や、やっぱノア君が獣人国に戻ったら話すっちゃよ。!
モンスターが彷徨いてる状況じゃきん、ノア君も気が散っちゃうでしょ…?(ミダレ)」

『ふふ、分かりました。
どんな話か楽しみにしてますよ。』


何故か顔を赤くしたミダレはそそくさとクロラ達の所へ駆けていく。
クロラからは<緊張するよねー>とか言われ、ポーラからは<思い切って言えば良かったのに>とか聞こえて来たが、変な詮索をしない様ノアは<聞き耳>は解除した。





ウボォオオオオオッ!ドンッ!


別れの挨拶を邪魔するかの様に、森から出て来たゴリラがノア達の下へ駆け出してきた。


『さ、皆さん早くここを離れて。』

「ノア、奴の相手してこい。
皆がここを離れるまでは俺たちが張っておく。(レドリック)」

「力を制御したとは言っても動かし方にまだ慣れていないでしょう?
早めに慣れさす為にも行ってきなさい。(アミスティア)」


実はノア、先程ミダレが倒れそうになった所を助けに入ったが、自身の速力に驚き思わず抱き抱える事を止めて手を添えるだけに留めていたのである。

それをアミスティアは、力を制御出来たものの力加減がまだ掴めていないと見抜き、森から現れたモンスターを練習台にする様促したのであった。


『ありがとう。行ってくるよ。』パァンッ!


そうアミスティアに言い残して、こちらに向かってくる″魔雲天ゴリラ″へ駆けていった。





″魔雲天ゴリラ(マウンテンゴリラ)″…滅びの森南端。更に南部にある『廃都』周辺に生息する希少なゴリラ。
筋骨隆々、逞しい手足、鋭い眼光を持つ一般的なゴリラと同様な見た目をしているが、攻撃力に防御力共に高い。

別地域に生息する魔雲天ゴリラは比較的温厚だが、『廃都』・滅びの森周辺に生息する個体は狂暴性が凄まじく、一説では昔『廃都』で実験動物として飼われていた種の生き残りと言われている。

名前の通り″雲天″時や薄暗い場所を好む為、目撃数が少なく、素材も希少。



″ウボォッ!ウボォオオオッ!″ドガガガガガガガッ!

『雄叫びそのものが攻撃だなこりゃ!
まるで<猿叫>みたいだ、なっ!』ズドンッ!


魔雲天ゴリラの咆哮は直進方向の空間が歪む程の音圧を持ってノアに迫る。
それに対してノアは足下の地面を踏み抜いて地面をひっ剥がし、盾の様に前面に配置。


ゴガッ!ボガァアッ!


だがそんなものでは魔雲天ゴリラの咆哮は防げず、土砂の盾は粉砕。
だがその跡地にはノアの姿は無かった。


パンッ!パパァンッ!

『シッ!』ドボォッ!

ボキボキボギンッ!ボァア″ア″ア″ア″ア″ア″ッ!


空気が爆ぜる音を響かせながら駆け込んできたノアの拳が魔雲天ゴリラの脇腹に突き刺さる。
まるで巨岩を殴った時の様な感触が拳に伝わるが、直ぐに焼き菓子の様にホロホロと崩れ去る様な感触に変わり、魔雲天ゴリラの内臓を破壊していった。


ゴンッ!ガッ!ガガッ!

『速…えっ!?ちょっと待ってよ、今軽めに殴ったつもりだよ…?』

(『ハッハー!そうだろうそうだろう!
それが俺本来の力だぜ主!』)


魔雲天ゴリラの体が地面と平行に吹き飛ぶ事約10メル。
水切りの小石の様に地面を跳ね、土煙を上げて転がった後、魔雲天ゴリラはピクリとも動かなくなった。

パンチの威力もそうだが、ノア自身そこまで速く動いたつもりも無く、いつも通り踏み出した直後、信じられない速力が発生したのであった。


(『俺と言う存在を掌握し、沸き上がるエネルギーの全てを行動面に転化してるんだ、速力も上がれば威力も上がる。
威力も今までの比じゃねぇんだ、恐ろしい事になるぜ。ククク…』)


と、明らかな出力の違いを機嫌良く説明する鬼神に対し


(あっぶねー…今の調子で意識せずにミダレさんを抱き止めていたら怪我させてたかもしれない…
こりゃしっかり力加減を覚えないと日常生活でも大変な事になるぞ…!)


突然得た力に気を良くする事無く、寧ろ力の大きさを実感し、更に制御する為に尽力する事を誓うノアなのであった。


((『ふ…そういや主はこういう奴だったな。
自分の事より人の事…まぁ力加減を見誤って面倒事にならない様に対策を取る事は大事なこったな。』))

(『さ、主よ。
仕留めた魔雲天ゴリラっつーヤツを回収しつつ他のモンスターにも腕を振るってみようぜ。』)

(りょーかい。)





「…なぁアミ、どう思う?
あの鉄壁の防御力を誇る魔雲天ゴリラをワンパンで仕留めたぜ?(レドリック)」

「そうねぇ…これからの訓練、こっちも全力で挑まないとならないわねぇ。(アミスティア)」


と、息子の変化に驚きつつもどこか嬉しそうにしている2人なのであった。
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