ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~御前試合の代表決め~

制御完了

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((『おいおいマジかよ…
まだ触りの部分とはいえすんなりモノにしやがった。
この段階だけで3日位擁すと思ったんだがな…』))


心の中でそう呟く鬼神だが、ノアは更に集中力を深めていく。


(さて、息を止めるイメージのままじゃ、内側から沸き上がるエネルギーの勢いに押され、放出を止める事が出来ずに体表面に漏れ出してしまう…ノアという入れ物を何かで全身を包み込む必要が…
あ、これがさっき鬼神が言っていた水を包むイメージか。)


自身を入れ物に例え、自身の体をすっぽり覆える物が無いか思考を巡らせる。


(たまに使う【鬼鎧殻】みたいに、完全防御出来るスキルとかあれば一番楽なんだが…
そんな都合の良いモノは持ち合わせていないし、常時発動していたらその分魔力も消費するだろうし…
あ、魔力があったな…)


思考を巡らせたノアは、魔力の存在に行き着き、オーラを押し止めながら手に装着した指輪から魔力を自身の全身に這わせる様イメージする。


″<魔力操作>を取得しました。″

(…あれ?新しくスキルを習得したぞ…?
ってか持ってなかったんだ…あ、そうか、魔法に頼り切らない様に父さんから言われてあまり訓練しなかったんだった。)


ここに来て新しくスキルを習得したノア。
ノアは新人冒険者なら誰でも持ち合わせていると言う″生活魔法″を取得したのも、属性魔法を覚えたのも、冒険者生活を開始して初めて訪れた街オードゥスであった。

しかも<魔力操作>と言うスキルは、割と初期の初期に覚える基本的なスキルであり、【魔法使い】等の適正が魔法制御をする際には必須と言えるスキルである。

つまりノアは今にして漸く初歩的スキルを取得したのであった。


ズズズ…ズ…
コォオオ…

(…オーラの放出が更に抑制されたが、今度は魔力の消費量が増えた…
抑制を維持したまま魔力の″膜″を薄くしていく限界値を見極めねば…
薄く…薄く…薄く…駄目だ、薄すぎる…よし、これ位なら魔力の自然回復量よりも少し多い位だ…)

(『くっくっく…』)

(何だよ、遅くて笑ってんのか?)

(『ん?あぁ、癪に触ったのなら謝るよ、何でもない。続けてくれ。』)

((『遅いなんて飛んでもない、早すぎて笑っちまっただけだよ…』))





「どう見るよアミ。(レドリック)」

「ノアちゃんの帯びてた力がどんどん希薄なものになってってるわね。
だからと言って弱まっていってる訳では無く、集束していってると言った方が良いわね。(アミスティア)」

「こりゃ、恐ろしい事になりそうだぞ?
ノアは力所か″気配″すら封じ込めてやがる。
″一撃必殺の力を持った奴が気配や音も無く背後に立つ″んだぜ?(レドリック)」

「ふふふ、恐ろしいわね。(アミスティア)」





「わぁ、凄い…もう何も感じないね…(クロラ)」
「えぇ、少年の姿でここまで圧を感じないと何か不思議な気分…(ポーラ)」

「あ、あっちはもう少しかなぁ…
何て言うか、今はまだ制御出来てなくて拮抗してるって言『ぶはっ!』『ズァッ!』ひぃんっ!?(ミダレ)」


制御しつつあるノアに安堵の表情を浮かべるクロラとポーラであったが、突如ノアが噎せ出して膝から崩れ落ちた。

再びのオーラの放出に、ミダレ含めた3人に再び症状が現れる。


『はぁ、はぁ…くそっ!
一定以上を越えるとオーラの放出が止められない…』

(『悠長にしてて良いのか?彼女達が苦しんでるぜ?』)

『え?…くそっ!』

ズズ…ズ…


地面に手を付き、息を整えるノアであったが、鬼神に促され離れた位置に居る3人に目をやると、オーラに当てられた『30倍』状態のクロラとポーラ、自前の体質で身を悶えさせたミダレの3人が目に入った。

それを見て地面に崩れ落ちた状態のノアが再びオーラの放出抑制を再開した。





~2時間後~


『漢度3000倍』の効果は大体30分程で解け、その後2回目の服用を行った。
流石に3回目はヴァンディットの判断で止めにし、ミダレの反応を見て判断する事となった。

あれから時間を掛ける毎にじわじわとオーラの放出を抑制してきてはいるが、体内に封じ込め切る段階になると、体表を覆う薄い魔力の膜だけでは抑える事が出来ずに噴き出してしまうのだった。


『ぶはっ!』

「ふ…んっ…(ミダレ)」ビクッ…


もう何度目かになるか分からないオーラの放出に、身を竦めるミダレだが、最初に比べれば反応は大分抑えられている。


(『よう主、流石にアドバイスしてやるからよく聞きな。』)

(ま、待って、もう少し、もう少しで…)

(『良いから聞けって、主は何でも1人で抱え込む癖があるからこういう時位頼れよ。
それに彼女(ミダレ)もそろそろ限界っぽいしな。』)

(う…)


何度も屈服状態になり掛かっている為か、ミダレの表情に疲労の色が出ていた。
そんな光景を目の当たりにしてしまえば、独力でどうにかしようとしていたノアも従わざるを得なかった。





(それで、アドバイスって何?)

(『魔力の膜で体表面を覆うのは正解、これで半分って所だ。
後は中で抑え付けている俺のオーラを″どう利用するか″だな。』)

(利用って…抑え込むだけで精一杯なのにそっちまで頭が回るか…あ、そう言う事?)

(『気付いたか?常日頃俺のオーラを体に纏わせたり、集束させて腕に変化させたりしてるんだ。
それをただ抑え付けるだけで利用しない手は無いだろう?』)


鬼神の言葉を聞いたノアの脳裏にある考えが浮かび、それを即実践する事にした。





(う、うぅ~…頭がクラクラしてきたっちゃ…
少ししゃがんで休みたいっちゃけど、ノア君あんなに頑張ってるのにあっちだけ休むのは気が引け『ぐらぁ…』るにゃあぁ…?)


度重なる屈服状態の連続に、流石のミダレも眩暈を起こして体が大きくぐらついた。

少し離れた場所に居るクロラが直ぐに気付いたが、間に合いそうになかった。


「あ。(アミスティア)」
ガッ。「待。(レドリック)」


体がぐらついたミダレに気付き、前に出ようとしたアミスティアだが、それをレドリックが制した。




パァンッ!パパァ『ガシッ。』ンッ!

ズザザッ!

『おわっ、たっ、たっ、と…』ザザッ…


破裂音の様なモノが響いたかと思うと、背中から地面に倒れ込もうとしていたミダレの姿が掻き消えた直後、ミダレを抱き抱えるノアがたたらを踏んでいた。





「…んみゅ…
あ、いけない…少し気を失って『大丈夫?ミダレさん?』…んぇ?(ミダレ)」


直ぐに目を覚ましたミダレの視界には、間近に迫ったノアの顔があった。

ただ少しいつもと違う所があり、ノアの全身の肌表面には″赤黒い炎の様な紋様″が浮かび上がり、ユラユラと揺らめいていた。


「ふぇ…ノア…く…あ、あれ?何とも無い…?(ミダレ)」


そして何よりも大きく違うのは、ノアと至近距離で対面しているハズなのに、ミダレに屈服状態の症状が全く現れていない事であった。
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