ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~御前試合の代表決め~

急ぎ足で次のエリアへ

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ザザ~ン…

にゃ~お?てしてし…

「…大丈夫だよニャーゴ…
流されちゃったけど僕は無事さ…」カションッ。

シタッタッタッタッ!ズダッ!

「あああああ、ノア君ごめんなさい!
生きてますかぁっ!?(セレイア)」

「生きてますよ~。」


ノアは高波に呑み込まれた後、″浅瀬″エリア端にある岩礁まで流され何とか漂着した。

ノア同様流されたニャーゴが真っ先にやって来て安否確認をしていると、海面をダッシュして駆け付けたセレイアが開口一番に謝罪してきた。

その後、ヤンとラビッツもやって来てノアの安否を心配していた。
 




「ひ、一先ず何事も無くて安し〔おぅい!そこに居る人間よ!先程は済まなかったなぁっ!〕


無傷なノアに安堵した様子のセレイアであったが、先程の巨大な人型から大声が届き、安堵の声は掻き消された。


〔儂の庭を壊された故、怒りに我を失っておったわ!ガハハッ!〕

「ガハハッじゃありませんよ″赤珊瑚将軍″!
今日はお客様が来られるから静かにしててと言ったでしょー!(セレイア)」

〔あやや!?海洋種も居られましたか。
いやいや、″フォルタ・レーザ″の童共が儂の庭を荒らさなければ、元より出てくるつもりはありませんでしたぞ!〕


ノアの隣にセレイアが居た事を漸く認知し、肩を竦めて説明する巨大な人型改め″赤珊瑚将軍″。



赤珊瑚将軍…″浅瀬″エリアに暮らす、海藻や付着物製の髭を蓄え、巨大な赤備えを纏った巨人族。趣味はアクアリウム。

日がな1日海底で埋まって過ごしているが、丹精込めて整備した庭(″浅瀬″エリア兼アクアリウム)を害されれば途端に怒り狂って出現し、対象を吹き飛ばす。

ちなみに″赤珊瑚将軍″を討伐すると、″年季の入った甲冑一式″と″とっても整備が必要な魔大太刀″を入手出来るが、上級冒険者のレイドパーティ必須。



「ねぇセレイアさん?
この赤珊瑚将軍…でしたっけ?この人が言ってる″フォルタ・レーザ″って、さっきの渦巻き貝の事ですか?」

「え!?アイツ名無しじゃなかったっけ?(ヤン)」

「いえ、先程の渦巻き貝は確かに名無しですが、″フォルタ・レーザ″と言うのはその名無しが成長しきった個体の事を言います。
″浅瀬″エリアの2つ先、″深海″エリアに居る巨大モンスターです。(セレイア)」



フォルタ・レーザ…古い言葉で″要塞″と言う意味。″深海″エリアに生息し、300メルを越える超大型モンスター。

幾多も屠ってきた大型モンスターの骨を海底火山の熱でもって溶かし、岩盤の様な強固で分厚い殻を持つ。
砲門は200を超え、貝殻先端のレーザー砲台は超長距離射撃を可能とする。

だが脅威度で言えば下から数えた方が早いレベルである。



〔いやはや済まぬな、儂のせいで足止めをしてしまって。
今は言葉での謝罪しか出来ぬが、もしまた相見えたら詫びの1つでも出すとしようぞ。〕

「出来る事ならあなたが出て来る事態にならない様に努めます…」


赤珊瑚将軍とまた相見えると言う事は、″浅瀬″エリアの珊瑚礁を荒らし、ぶちギレた赤珊瑚将軍に出会すと言うことだ。

可能であれば出会したくはない。


〔つれないねぇ。
先程、害獣の放った光線を真っ正面から迎撃した手腕、是非とも味わってみたいと思ったのに『ザブザブザブ…』

「あ…っすー…」


何ともフラグになりそうな言葉を残して海中に消える赤珊瑚将軍。
ノアは今までの経験から「あ、これ後でやり合う事になるな…」と何と無く察し、諦めの吐息を漏らすのであった。





ザザ~ン…

「と、取り敢えず落ち着いた事ですし、視察の続きをしましょうか…(セレイア)」

「…そうですね…
そう言えば最初の話だと、新人冒険者に探索を有利に進めさせてあげる為に″浜″エリアで″海生物の残滓″を多く取得させるとの事でしたが、ここでもモンスターを倒した時に同様のモノを入手しましたし、やはり中級~上級冒険者が先行する形になるのでは?」


気分を変えようと、視察の続きを提案するセレイアと乗っかるノア。
普通こんな事があったら中々切り替える事が出来ないものだが、流石はノアである、サラッと気持ちを切り替えて視察の続きをし出したのである。

先程赤珊瑚将軍が名無しの渦巻き貝を屠った時に″海中生物の残滓″を全員が入手した。
これがあれば魔導具の類を取得出来るのでは?と考えたノアであるが


「よく見てみてノア君、さっき″浜″エリアで入手したのは″海生物の残滓″。
ついさっき入手したのは″海中生物の残滓″で微妙に違うでしょ?(ヤン)」

「あ、本当だ。」

「実はですね…(セレイア)」


セレイアの話では″海生物の残滓″と″海中生物の残滓″は字面は似ているが、全くの別物で、″海生物の残滓″は魔導具の作成に必要な素材で、″海中生物の残滓″は魔導具の強化に必要な素材らしく

魔導具シュノーケル→魔導具ボンベ
魔導具スーツ→魔導具耐圧スーツ
魔導具ゴーグル→魔導具耐圧ゴーグル

にそれぞれ強化しないと″浅瀬″エリアより深度が増す″海中″エリアでは対応出来なくなるとの事らしい。


「…となると流石にさっきの名無しの渦巻き貝がここに居るのはマズイのでは…?
あんなのが居たら毎度毎度キレ散らかした赤珊瑚将軍が出て来てこのエリアが滅茶苦茶になっちゃいますよ?」

「そうですね…あのモンスターは次の″海中″エリアに配置転換しましょう。(セレイア)」


ちなみに赤珊瑚将軍自体は″浅瀬″エリアに残留する事となった。

理由としては、珊瑚礁に良からぬ事をする者も出て来るだろうし見せしめを作る意味合いがあるだろうとの配慮だ。

後は単純に唯一珊瑚礁がある″浅瀬″エリアから彼を配置転換してしまったら、それこそキレ散らかした暴れる事態になりそうだ、との考えであった。





「ニャーゴおいで、次のエリアに行くよ。」

んぉ?にゃ~お。


今の今まで海面を気持ち良さそうにふよふよと漂っていたニャーゴを呼ぶ。
犬掻きならぬ猫掻きを行ってノアの下にやって来た。


にゅるるん。

「おわっ!?」

「あー良いなぁ…(ヤン)」


ノアの下までやって来たニャーゴは肩に乗るでもなく、マフラーの様に首に巻き付く。

何とも言えない感触に、ノアは変な声を上げるもニャーゴは気にせずそこで落ち着いていた。


「じゃあ色々ありましたが次のエリアに向かいましょうか。」

「はい。(セレイア)」

「「うん。(ヤンとラビッツ)」」


色々とゴタゴタがあり、やや急ぎ足になったが、漸く次のエリアである″海中″に向かう一行であった。   
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