ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~御前試合の代表決め~

ダンジョン『竜遇城』

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さぁそれではダンジョンに行こう。
となったのだが、そこから少し時間が掛かってしまった。

何せ開放前のダンジョンに査察とは言え向かう事が出来るのだから他の冒険者からしてみれば堪ったものでは無い。

″俺も″、″私も″と希望者が殺到したのである。

その上、獣人であるラビッツはまだしも、ノアを知らない冒険者はまだまだ居るので、見た目新人冒険者の少年が向かう事に文句を言う者が多々居た。

だがノアが【鬼神】である事、国交樹立に大きく貢献した事等を説明すると9割の冒険者が納得してくれた。

残りの1割は、酒に酔った何処ぞの上級冒険者パーティのリーダーが断固として食い下がってきて、とうとう決闘にまで発展した。

だが流石は獣人国。
その辺の手際は凄まじく、「ふざけんな!決闘だ、決闘!」と声が上がってから僅か10秒で試合場が形成された。


「はいじゃあ決闘開始!」


と声が上がって僅か1秒、″酔い覚ませ!″の意味合いを籠めたノアの強烈なビンタがリーダーの顔面を襲い、一撃で勝負は着いた。

その後パーティメンバーが謝罪し、他の冒険者は一様に縮み上がっていた。
獣人達は何故か盛り上がっていたのでまぁ良しとしよう。

何だかんだで20分程掛かってしまった。

ちなみにクロラ達や両親からは行ってらっしゃい、と手を振っていた。


「それでは今度こそ向かうとしましょう。
″転移″!(セレイア)」


人魚のセレイアがそう言うと、地面に間欠泉の様な水飛沫が上がり、ゲートが登場した。
どうやらこれがダンジョンの入口の様である。

いざ飛び込もうとすると【記者】のラビッツがおっかなビックリな様子だったので、肩車してあげる事にした。


パシャン!


と、飛び込んでから思ったが″濡れないかな?″と少し心配になったが、結果的には大丈夫でした。





~ダンジョン『竜遇城』・難易度″浜″エリア~

ザザ~ン…パシャシャッ!

ザフッ!

「おっととと…あれ?明るいぞ。」

「うわ~。青い空、白い雲、エメラルドグリーンの海!
こんな綺麗な景色、写真でしか見た事ありませんよ~!(ラビッツ)」


獣人国では夜だったハズなのにゲートを通って降り立ったダンジョンの中は太陽燦々の何処かの海岸であった。

初めて見る綺麗な景色に、ラビッツは耳をピンと立てて浮き足立ってる様子。


ストッ。

「いやー、いつ来ても良いモノですなぁ。(ヤン)」

「仮想空間とは言え細部に拘りましたからね。(セレイア)」

「あ、あの、このダンジョンの中は写真とか撮っても大丈夫でしょうか?(ラビッツ)」

「えぇ構いませんよ。
ほぼ完品ですし、リヴァイア様のチェックは通っておりますから。(セレイア)」

「後は難易度設定だけなのですよね…?」

「「あははは…(ヤンとセレイア)」」


ノアの肩から降りたラビッツは一目散に海を目指す。
美麗な景色をまずは目で楽しみつつ片眼鏡(モノクル)を構えて無心で景色を取り出した。

その後はダンジョン内全体をゆっくりと撮影。
砂浜に、その辺のヤシの木、岩礁に居た煌びやかな生き物等々を撮影した。

本人は無心であった為、気付いた頃には砂まみれになっていた。





パタパタ…

「ご、ゴメンねノア君、つい夢中になってて…(ラビッツ)」

「いえいえ。
そういえばセレイアさん、ダンジョンの中ですけど、モンスターの反応は無いみたいですが?」


ラビッツの服を叩きつつセレイアに問い掛けるノア。
<気配感知>で警戒していたノアであったが、幾ら待ってもモンスターの反応所か影も形も出てこない。

すると


「お連れのラビッツさんが恐らく撮影に入ると思ったのでモンスターの出現を一旦止めております。(セレイア)」

「あー、なる程。」

「あ、あれ!?私待ちでしたか!
言って下されば巻きましたのに…!(ラビッツ)」あたふた…

「気にしない気にしない。(ヤン)」


どうやらセレイア権限でモンスターの出現を止めていただけらしい。


少ししてラビッツの撮影が一区切りした頃合いでダンジョンとして本格的に稼働する事となった。

つまりモンスターを湧かせるという事である。


「それではラビッツさん、モンスターを湧かせますので私達の下へ。(セレイア)」

「あ、はい!(ラビッツ)」

「ノア君は手伝いとかいいんだよね?(ヤン)」

「えぇ。」


ノアの所に居たラビッツはセレイアとヤンの近くへ移動、ノアは1人で砂浜に佇む。


「それでは行きますよ、ノア君。(セレイア)」

「はいどうぞ。」

パァアアアッ!「おぉおおお…」


セレイアがノアに確認を取った直後、砂浜全体が淡く光だす。
それに伴って砂浜の下に次々と反応が現れ始めた。


「おー、これまた次々と…
あ、この反応はカニ…?いやでも長さが…」

「ねぇねぇノア君、君には今一体何が見えてるんですか、教えて下さいよぉ~お!(ラビッツ)」


<気配感知>を持ってないラビッツは下の反応が分からない様で、曖昧な事しか言わないノアに焦れったい素振りを見せる。

ラビッツは子供位のサイズなので、まるで店先で駄々をこねる子供の様であった。


(『つってもこれは何と言ったものか、って感じだな…』)

(うん…″ラビッツさんなら丸呑みに出来そうなモンスターがウヨウヨ居ます。″とは言えないしね…)


砂浜の下には、一番小さくても小柄な牛位の大きさのモンスターしか居ない為、ラビッツにどう伝えたら良いか少し悩んでいた。


「…例えばさっきラビッツさんが撮影していたそこのヤシの木…「あ、そこの立派なヤシの木ですか?(ラビッツ)」それ、多分モンスターの一部です。」

「ひょえぇえ『ズズズ…』っ!?(ラビッツ)」


海と言えばコレ!と言える植物のヤシの木。
高さ5メルはあろう立派なヤシの木がモンスターと聞かされ、思わず悲鳴を上げるラビッツ。

すると偶然かは分からないがヤシの木が持ち上がり、下からゴッツい蟹が出てきた。


ズズズ…カシッカシッ。

ザフッ!ザフッ…


蟹の横幅は6~7メルあり、ゴツいハサミは人間の胴体程もある巨大なモノであった。

砂の中から出てきた蟹はハサミを動かしつつ、目の前に居たノアを素通りして砂浜を歩いていった為、どうやら敵意は無い様だ。


「あのモンスターは見たままの名前で″ヤシ蟹″と言います。
背中のヤシの木は疑似餌等ではなくれっきとしたあのモンスターの一部で、ヤシの実にあたる部分が卵になります。(セレイア)」

「へ~。(ラビッツ)」

「どうしますラビッツさん、あのモンスターも撮っておきますか?」


砂浜をのそのそと歩くヤシ蟹を指差し、撮影するかどうか聞くと


「いえ、初見時のインパクトは中々のものですからあれは敢えて撮らないでおきましょう。
撮るとしても全体像は明かさず、体の一部を写すのみに留める事で正体を暴いてやろう、ってフィールドの探索欲を上げる事にも繋げます!(ラビッツ)」

 (『おぉ、流石【記者】だな。
インパクト重視ではなく、あくまで読者目線で物事を考えてるんだな。』)

(さっき″店先で駄々をこねる子供″なんて考えててゴメンね…。)


などと考えつつ、続々と出現して来るモンスターに目を通していくノアなのであった。


※モンスター紹介は次回行います。
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