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獣人国編~御前試合の代表決め~

無茶っす!

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~前日・ゴーマン邸にて~


「おいゼラ!ゼラは居るか?(ゴーマン)」

「は、ここに。」

「気が変わった。
今現在我が部下達が開発中の軍事兵器を幾つか持っていき、獣人国で試験して来い。(ゴーマン)」

「?先程騒ぎは起こすなと…」

「獣人国からただ情報を得ただけでは私の腹の虫が治まらん。
奴らは人間擬きであり、動物擬きでもある。
つまり両方の性質を併せ持つ。
兵器の実験材料としては十分な相手であると思わんかね?(ゴーマン)」

「…確か試作品の殆どが実験段階で、不安定な物が多いと聞き及んでいますが…」

「あぁ、報告によれば周囲に甚大な被害を出すとかほざいておったな。
全く、″甚大″などと抽象的な文言で報告しおって。
被害半径、殺傷能力、死亡者数等と言った明確な報告があれば″そっち方面の強化″に尽力出来るものを…(ゴーマン)」

「……。」

「まぁ良い。
被害が出たら出たで、しっかりと情報を纏めて来い。
兵器開発の良い資料となるからな。
話は以上だ、行け。(ゴーマン)」

「…は。」





カッカッカッ…

「ゼラさん、出動ですか?(『宵闇』一味※以下″一味″)」

「あぁ、獣人国に行き新種族の情報を取ってこい、だとさ。
それと試作品の性能試験も兼ねろってさ。(ゼラ)」

「…また嫌な仕事を押し付けやがって…
俺達を殺し屋集団か何かと勘違いしてんじゃねぇか?(一味)」

「だろうな。
だが、ここ以外俺達の居場所は無い。
素直に応じるしかないさ。
話はここまでにして直ぐにでもここを発つぞ。(ゼラ)」

「へい。(一味)」





~現在夜8時頃・獣人国より500メル程離れた小高い丘~


「さて、半日街の外から他領の諜報員共を監視してみたがどう思う?(ゼラ)」

「獣人国ってここまで警備厳しかったか?
最速で10秒、最長でも30分程で捕らえられていたぞ?(一味1)」

「獣人達は気配を気取る事に長け、機敏ではあるが幾らなんでも早すぎるぜ。(一味10)」

「″穴″と呼べる場所からの侵入、陽動しての侵入、正規の侵入、どのやり方でも、だ。
こいつはちと骨が折れるぜ?(一味18)」

「闇夜に差し掛かっても尚ペースは落ちんかった。流石にマズイと察したのか、他領の諜報共も一時撤退する始末だ。どうするゼラ?(一味29)」

「…あまりやりたくは無いが、ゴーマンから押し付けられた試作品を使い、逆に騒ぎを起こして侵入するって手もある…(ゼラ)」

「なる程、阿鼻叫喚の渦と化せば気配もぐちゃぐちゃとなり、流石の獣人達でも手に負えなくなると言う訳か…(一味41)」

「静寂で駄目なら騒乱か…
やり方は任せるぜ、ゼラさんよ。(一味47)」

「では俺と先行班は″透かしの装衣″″収奪煙幕″を装備して街へ侵入。
即座に大通りへ向かい、″収奪煙幕″を使用。
直ぐにその場から離脱せよ。(ゼラ)」

「「「「「おう。(先行班)」」」」」

「他の者は″デコイ″を持ち街へ侵入。
文字通りデコイしか出さんハズだが、試作品故不安定だ。
不審な挙動を見せたら直ぐに諜報活動を止め、破壊行動を取れ。(ゼラ)」

「良いのか?ゴーマンの思惑に背く事になるが…?(一味50)」

「構わん。俺達は殺し屋集団では無い。
無用な殺生は極力避けたい。
俺の意見に反対の者が居れば今すぐ本作戦から抜けろ。(ゼラ)」

「「「「「「「……。(一味一同)」」」」」」」

「居ないな。では始めよう。(ゼラ)」


「「「「「「「おう。(一味一同)」」」」」」」





~市街地~

雑貨屋兼倉庫兼住居の、とある3階建の建物の屋上には現在2~30人程の獣人達が犇めき、眼下の通りを歩く人々を観察していた。


「さて、通りを歩く人々を1人1人観察していては、幾ら僕でもかなりの時間を要します。
ではどうやって怪しい人物の見極めを行うか。
今僕達が居る様な背の高い建物に上がり、俯瞰して街を眺めてみると良いでしょう。」 

「俯瞰で、ですか?(若手1)」

「ええ。<地図化>や<反響定位(エコーロケーション)>を持っていればそちらを用いて貰っても構いませんが、持っていなければこのやり方で行きましょう。
簡単に言えば、″点で見るのでは無く、少し俯瞰して全体を見てその中から異物を見付け出す″と言う訳です。
ではそちらの方、この視点から見て行動だけであなたならどの人物に目を付けますか?」


ノアは『影狼』の中から無作為に獣人を指名する。


「こ、行動だけですか?…うーん…(若手)」

「動きだけでは無く、服装も見てみると良いですよ。」

「服装?(若手)」

「えぇ、例えばあそこに居る酒瓶を持って座り込んでいる人を見てみて下さい。」

「え?あ、あの人ですか…(若手)」


ノアが指差す方向には通りから少し外れた路地近くの壁際に座り込む男性が居た。
酒瓶を持っている事からして酔い潰れている様だ。


「衣服が乱れ、酔いの熱を冷ます為に胸元をはだけさせていたりと、いかにも酔っ払いを装っていますが、足下の靴はしっかりと履かれています。」

「え?それだけで、ですか?(若手)」

「勿論それだけじゃありません、あの酒瓶をよく見て下さい。
中に羊皮紙とペンが入っています。
万が一巡回中の兵士や騎士達に介抱されても、路地に瓶を置いておき、後で回収すれば良いですからね。」

「うわ、本当だ…(若手)」
「「「すげぇ、これだけの情報で侵入者を見付けてるよ…(若手達)」」」

「まぁ後は…ん?」


続けて説明を行おうとしたノアだが、突然防壁の方へ目を向けた。


「どうなされたノア殿?(リーダー)」

「<虫の知らせ>が反応している…
こういう時は何か起きる時の前触れが殆どです。」

「精度の方は?(リーダー)」

「今の所百発百中。」

「左様ですか。
それでは君達、今はこの辺で終いにしよう。
今すぐ戻り、いつもの黒装束に着替えてくるのだ。(リーダー)」

「「「「「「「ハッ!(若手達)」」」」」」」

『『『『『ザザッ!』』』』』


『影狼』リーダーの言葉を聞いた若手達は即座に散開していった。


「ではちょっと確認に「私も同行致しましょう。」では。」

ザッ!


ノアと『影狼』リーダーはほぼ同時に行動を開始した。





ザザザザッ!

「リーダーさんはこのまま防壁に向かって下さい。」

「ノア殿は?」

「ちょっと『ジャキ!』上空から見てきます。
何かあれば合図を送ります。」

ボッ!バシュッ!

「はは、行動が早い。」


腰の荒鬼神ノ化身を抜いたノアは防壁直上目掛けてぶん投げ、即座に転移した。





~防壁直上100メル地点~


バシュッ!

(『今ん所<気配感知>内に怪しい反応は無いな。』)

(なら…<夜目><反響定位(エコーロケーション)>発動。
…範囲のギリギリ外に集団の反応…いや、姿は見えないが十人規模の集団の反応を感知。
<熱感知>追加発動。
…反応からして人間ではあるが、何故姿が見えない、そう言う適正か?)

(『まぁ何にしても…』)

(だね。)


スチャッ!

『『『ギリリッ!』』』 『『『バギュゥウンッ!』』』


ノアは背中から弓を抜き、即座に眼下に向けて射ったのであった。





~防壁~


ズザッ!

「ぅおっ!?あ、お疲れ様です『影狼』殿。(兵士1)」

「今は挨拶はいい。
それより『ドゴッ!』ぬっ!?」

ドゴンッ!ダガッ!

「「「「ぅおおおっ!?(兵士達)」」」」


防壁に到達した『影狼』の直ぐ近くの足場に高速で矢が突き立つ。

『影狼』リーダーは直ぐにノアの言っていた合図であると判断した。


「静まれ!侵入者接近の合図だ!
皆の者、2人体制で持ち場に付けぃ!(リーダー)」

「「「「「お、おう!(兵士達)」」」」」

ボッ!バシュッ!ズダンッ!

「十人規模の集団がこちらを目指して来ている!姿が見えない為2人体制では駄目だ!3人体制で待て!
攻撃の″起こり″に発する気配を気取れ!」

「「「無茶っす!(兵士2、3)」」」
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