ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

文字の大きさ
上 下
604 / 1,171
獣人国編~御前試合の代表決め~

カウントダウン

しおりを挟む
「そう言う事なら好きにやらせて貰うぞ!(ゴフゥ)」ゴゥッ!

「俺らのこの拳が君にどれ程通用するかを見るには良い機会だからなぁっ!(ゴファン)」ゴッ!


そう言い放った直後、2人の全身が煌めくと共に威圧感と力の増幅を感じた。


『『ドンッ!』』

ザッ!「ッラァッ!」ガッ!

ザゥッ!「シッ!」ズムンッ! 


ノアの左右に展開したゴフゥとゴファンは、それぞれ右の拳を顔面に、中段蹴りを鳩尾に叩き込んだ。


「「えっ!?」」


マトモに食らってくれるハズが無いと思い、7割位の力で打ち込んだ2人であったが、本当に反撃すらもせず、諸に食らった為、何故か打ち込んだ本人達が驚いてしまった。


「…っ…ん?今のが本気ですか…?
どうやら様子見で打ち込んだって所ですかね?
良いんですか?後8発ですよ?」

「ぬっ!?」


様子見で打ち込んだ事を1発で見抜かれたゴフゥは僅かにたじろぐ。

するとゴファンが前に出て


「本当に避けも、反撃もしないみたいだな…
それじゃあ初っぱなから決めさせて貰うぜ!」

ギュンッ!


ゴファンがノアの前に立ち、腰の付近に″両手″を構え、波動弾を放つ為力を溜め始める。


ィィイイ…

「ノ、ノア様っ!それは無茶です!食らってはいけません!(ヴァモス)」


先程波動弾を食らったヴァモスが観客席からそう呼び掛けるも、ノアに動きはない。
その間もゴファンは力を溜め続ける。
何ならさっきより溜めが長いので、威力を高めているのだろう。


ィィイ″イ″ッ!

「ヴァモス君からも言われてるが、避ける気は無いんだな?(ゴファン)」

「えぇ勿ろ「なら食らぇぃっ!(ゴファン)」バジュゥヴヴヴヴッ!


ノアの返答に食い気味に波動弾をぶっ放すゴファン。
威力に加え、範囲や光量も増大した波動弾はノアの姿をスッポリと覆い隠してしまった。


ジュゥヴヴヴッ…

「最大出力だ、これなら「バトルベアの突進以上ダックス憤怒の突進未満って所か…」んな…っ!?」

ボフッ!

「…全身隈無く衝撃が伝わる感じ…
なる程ね、<苦痛耐性>持っててもそれなりにダメージ来るなぁ…
まぁでも予想の範囲内。」


光の奔流が収まり、波動弾が掻き消えると、先程同様仁王立ちのノアがそこに居た。
眉が少し下がった程度でそれ以外に表情に変化無し。


「「「「「「「えぇ…(観客)」」」」」」」


″『ああっとっ!超犀野人2の十八番である波動弾を諸に食らったにも関わらず、【鬼神】に一切ダメージが入っていない様子!
お聞き下さい!先程まで騒がしかった観客が次々と押し黙っていってます!』″


この闘技場に居る観客の多くはトーナメント戦を幾つも見ており、その中には超犀野人2の戦いを見た者も数多く居る。

彼等が波動弾を放つ度に対戦者は倒れていく様を見ている為、ノアの反応はあり得ないとばかりに皆閉口しているのである。


「くっ、くっくっく…
それでこそ俺達が求めてた【鬼神】だぜ…(ゴフゥ)」

「これでコチラの飛び道具が通用しなくなっちまった…
俺達は【波動″拳士″】だ、やはり残された武器は己の四肢って訳だ。(ゴファン)」


この状況に、超犀野人2の2人は意気消沈するかと思ったが、笑顔を見せ、逆に意気を高揚とさせていた。


「行くぜぇっ!」ドンッ!
「ッラァアッ!」ダンッ!

ズムンッ!ドゴォッ!


咆哮を上げて急速接近を開始した2人は、ほぼ同時にフルスイングの拳をノアの胴体に叩き込む。


ズグッ…

「シッ!」ズドォッ!
「ッシャァアアアアッ!」ドゴォンッ!

「っ…」ズザザッ!


ゴフゥが中段蹴りを打ち込み、ゴファンが<渾身>を乗せた後ろ回し蹴りを繰り出すと、流石のノアもたたらを踏み、後退する。

と、残り3発となった所でノアに変化が現れた。


ズズズ…


″『あ…ああああっ!?
【鬼神】の体から靄の様な赤黒いオーラが立ち昇り始めました!
恐らく提示した10発が終了した瞬間から攻撃を開始する為の準備でありましょう!』″


「お、おいアレ…(ゴフゥ)」

「あぁ、いよいよ始まるみてぇだ、なっとぉ!(ゴファン)」ダッ!


ノアに変化が起こったのも厭わず、ゴファンはその場から跳躍し、ノアの頭上に移動。


グォオオッ!

「ッリャァアッ!」ドゴァッ!

ズズンッ!


300キロ位はあろうゴファンの巨体から繰り出された踵落としがノアの左肩に直撃する。

赤黒いオーラを立ち昇らせたノアは微動だにしなかったが、ノア自身の足下には僅かに陥没が発生していた。


ズズズ…ズル…

『2。』

「「「「「「ひ、ひぇぇぇ…(観客)」」」」」」


赤黒いオーラの噴出が強くなり、肩甲骨の辺りから赤黒い腕が2本追加で生えてくる。
この恐怖のカウントダウンに、観客席の各所から悲鳴の様な物が上がってきていた。


「アアアアアッ!」ゴギンッ!

『1。』

ズズズ…


肩に足が乗ったまま、そこを軸にしてノアの顔側面に蹴りを叩き込むも、ノアのカウントダウンは止まらない。


ストッ。

「オオオオオオオオオッ!」ギィイ″イ″イ″ッ!

「次が最後だゴファン!必ずカウンターが来る!直ぐに逃げられる様にしておけっ!(ゴフゥ)」

「おぅよっ!(ゴファン)」


地面に降り立ったゴファンは即座に腰溜めの体勢になり、拳に力を溜め始めた。
ゴファンの右腕に光が集まって行くと共にドンドンと光量が増していく。

相当量の力を溜めているにも関わらずゴフゥは攻撃後のゴファンの身を案じている。

何せ力を溜め続けているゴファンの目の前に立つノアは、豪豪と赤黒いオーラを立ち昇らせ、赤黒く染まった眼でゴファンを睨み、肩甲骨の辺りから生成した腕を軽く動かし、十指をポキポキと鳴らしながらゴファンの攻撃を今か今かと待ちわびていたのだ。

誰だって不安しか抱かない状況である。

そしていよいよその時が訪れた。


「ッゼェァアッ!」ボッ!

ズゴゴ『ゴッ!』『バガァッ!!』ンッ…


まるでハンマーをフルスイングで振り上げるかの様な動きで、目の前に立つノアの腹部目掛けて力を溜めに溜め、<渾身>に<二連撃>、攻撃力上昇スキル<我武者羅(がむしゃら)>をも乗せた拳を叩き込むゴファン。

ゴフゥから攻撃後直ぐに逃げられる様に、と言われていたが、その姿は防御、回避等をかなぐり捨てた攻撃全振りの姿勢であった。

そして拳を叩き込んだ瞬間、ゴファンの顔面に赤黒い塊が激突。
ゴフゥの言った通りノアからカウンターが飛んで来たのである。
その衝撃は凄まじく、300キロ近いゴファンの巨体が、ノアの目線の高さまで跳ね上がる程であった。


「…っ!?…っ!…っ!?」


ゴファンは自身の身に一瞬何が起こったのか分からず、痛みも忘れて混乱していた。

だが目の前に立つ【鬼神】は、跳ね上がる自分に握手でもするかの様な手の形をさせて近付いてきたのだけは分かった。

しかも生成した左手3本で、である。

その動作で余計にゴファンは混乱してしまい、その動きの意味を知ったのはぶっ飛ばされた後の事であった。


『<発勁>。』

『『『パガァッ!』』』

「っ!?…っ!?」…ゥウ…ダガンッ!

「がっ!?」


予備動作が一切無い<発勁>がゴファンの腹部に3発全弾が命中。
まるで、射出された大砲の様にぶっ飛ばされたゴファンは、観客席との仕切りに激突するのであった。
しおりを挟む
感想 1,251

あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。 そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。 ‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!! これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。 「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
15歳になり成人を迎えたリュカは、念願の冒険者ギルドに登録して冒険者になった。 そこで、そこそこ名の知れた冒険者Dランクのチームの【烈火の羽ばたき】に誘われる。 そこでの生活は主に雑用ばかりで、冒険に行く時でも荷物持ちと管理しかさせて貰えなかった。 それに雑用だけならと給料も安く、何度申請しても値段が上がる事はなかった。 ある時、お前より役に立つ奴が加入すると言われて、チームを追い出される事になった。 散々こき使われたにも関わらず、退職金さえ貰えなかった。 そしてリュカは、ギルドの依頼をこなして行き… 【烈火の羽ばたき】より早くランクを上げる事になるのだが…? このリュカという少年は、チームで戦わせてもらえなかったけど… 魔女の祖母から魔法を習っていて、全属性の魔法が使え… 剣聖の祖父から剣術を習い、同時に鍛治を学んで武具が作れ… 研究者の父親から錬金術を学び、薬学や回復薬など自作出来て… 元料理人の母親から、全ての料理のレシピを叩き込まれ… 更に、母方の祖父がトレジャーハンターでダンジョンの知識を習い… 母方の祖母が魔道具製作者で魔道具製作を伝授された。 努力の先に掴んだチート能力… リュカは自らのに能力を駆使して冒険に旅立つ! リュカの活躍を乞うご期待! HOTランキングで1位になりました! 更に【ファンタジー・SF】でも1位です! 皆様の応援のお陰です! 本当にありがとうございます! HOTランキングに入った作品は幾つか有りましたが、いつも2桁で1桁は今回初です。 しかも…1位になれるなんて…夢じゃ無いかな?…と信じられない気持ちでいっぱいです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...