ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~中級冒険者試験~

いつもの流れ

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「…どうやら私達以外片付けられたみたいね。(職員48)」

「あぁ、第12~14地点の反応がごっそりと消えたし悲鳴も消えた。
確かあの辺りは人質役のリアナが居たから、安全な場所に運び、こちらに来るとしたら1分半程だろう。
そこで合否判定官であるミゼラに相談があるんだが、良いかな?(職員49)」

「…何でしょうか?(ミゼラ)」

「彼は『【忍】【隠密】【諜報】【盗賊】【義賊】』等も含まれた上での【暗殺】実地試験なのだろう?
俺達以外の47人が既に仕留められ、人質も救出済み。
つまり前述の5適正は既に合格に足る程の技量は持ち合わせている訳だ。(職員49)」

「だから最後位純粋な【暗殺】の技能を見てみたいのだけど…どうかしら?(職員48)」

「…とか何とか尤もらしい事言ってますが、単純にあの子と戦ってみたいだけなんじゃないですか?(ミゼラ)」


そう話を持ち掛けた2人の後ろで『暗殺対象』の札を下げて椅子に座る職員のミゼラはいぶかしむ。


「そーんな事(職員48)」ソワソワ…

「無ーいよ(職員49)」ソワソワ…

「「ねー!」」ワクワク!

(くっそ、コイツら…少しは本音を隠せ!(ミゼラ))


露骨な程にワクワクしている2人を前にし、ミゼラは心の中で悪態を付けていた。


(こんの2人は…あくまで試験だ、って言ってんのに、彼が最終地点まで到達するのを分かった上で配置したな…!
まぁこの2人の言い分も分からないでは無い。
最初の10人を?誰にも気付かれる事無く処理した段階で【忍】【隠密】の合否基準に達している。
ゴザルやゴワスの様な前例を作ってしまったのもあって断り辛い…ぐぬぬぬ…)

「分かりました!
もうすぐ彼がこの場に来ると思いますので呼び掛けてみます!
ですが、彼が断った場合2人の案は却下!
2人は普段通り対処して下さいね!(ミゼラ)」

「「うっす!(職員48、49)」」

(分かってんのかな、コイツら…)

「【暗殺】実地試験中のノア様!お聞きになられてるでしょうか!?」


ミゼラは一抹の不安を感じながらも、近くに居るであろうノアへ向けて声を上げるのであった。





~防壁にて~

ストンッ!

「はい、リアナちゃん安全な場所に着きましたよ。一先ずここに居て下さいね。」

「あ、ありがとうございます。あ、あの…(リアナ)」

「ん?どうしました?」


第12~14地点の職員を片付けた後、人質役の少女リアナを安全な場所に避難させに来たノアが選んだ場所は防壁の上であった。


「ノアさん凄くカッコ良かったです!
殆ど見えなかったですけど、お父さん(職員38)をいとも簡単に倒しちゃうし、あんなに沢山の人相手に立ち向かう姿がとても男らしかったです!」

「あ…うん、ありがとう。
それじゃ僕はこ「応援してます!頑張って下さい!」あ、ありがとうね。あの…もうちょっと声抑えて…皆見てる…から…」


何とも歯切れの悪そうなノア。
それもそのハズ、防壁の上に居るという事はノアとリアナ以外に見学者であるクロラやハクア達、他の冒険者パーティや街の住人、先程ノアが捕縛した職員達が勢揃いしていた。

その中にはリアナの父親(職員38)も居たりする。


『『『『『『『『『ジーッ』』』』』』』』』

(うぅ、皆の視線が痛い…
特にクロラさんとポーラ、リアナちゃんのお父さん(職員38)からの視線には別の感情も混じってる様な…)


防壁の上に居る全員から何とも言えない視線を受けたノアが居たたまれなくなっていると、助け船(?)と取れる報が届く。


″「【暗殺】実地試験中のノア様!お聞きになられてるでしょうか!?
現時点を以ちまして【忍】【隠密】【義賊】【盗賊】の合格基準は満たされたと判断し、残りの【暗殺】技術の合否に移りたいと思います!
最終地点にてお待ちしておりますので3分以内にお越し下さいませ!」″

「ほ、ほら、呼ばれちゃったから僕はもう行きますね。」ダンッ!


職員のミゼラから召集が掛かったノアは、足早にその場から去っていった。


「まるで愛人と一緒に居た所を知り合いに見られた時の間男みたいな動きだったわね。(ポーラ)」

「<千里眼>と<読唇術>で大体の状況知ってたから気にしなくても良かったのに…
ちょっと妬いちゃったけど…(クロラ)」

「それにしてもあの【盗賊】の少年め。
とんでもないモノを盗んでいきおって…(ポーラ)」

「ん?ポーラちゃん、ノア君何か盗ってったっけ?(ハクア)」

「そんな素振り見えなかったけど…(ユカリ)」


ポーラが漏らした言葉にハクアとユカリは首を傾げる。
するとポーラは、少女の方を指差し


「彼女の心よ。(ポーラ)」

「「「「「あー…(納得)」」」」」


ポーラが指差した方を見ると、そこには乙女の眼差しでノアの背中を見やるリアナの姿があった。      

そんな娘の反応に、リアナの父親である職員38は、何とも言えない表情をしていた。







ザッ!

「お越しになって下さり感謝します。
先程申し上げた通り、【忍】【隠密】【義賊】【盗賊】の合格基準は満たされたと判断しましたので、これより【暗殺】の方に移らせて頂きます。」


と、街の広場の中央で椅子に座り、首から『暗殺対象』と書かれた札を下げた職員のミゼラが告げる。


「あのー、今更で申し訳無いのですが、僕【暗殺】系のスキルは持ってますが、どういった技術があるかとか細かい所は分からないのですが…」

「御心配なさらず。
捕らえられた職員から伝えられてくる報告を鑑みるに、そこらの暗殺者より暗殺者らしいですから…(ミゼラ)」


後にこの日の事を時系列的に纏めて国に報告した所、『あなた達は何を相手にしていたの?』と再提出を要求されてしまったとか何とか。


「なので先程と同様に戦って貰って構いません。(ミゼラ)」

「ミゼラさんの下に居る方々とですか?」

「……(ミゼラ)」


と、ノアがミゼラの椅子の下を指差すと、椅子の影が揺らぎ、2名の男女が現れる。
どうやら夫婦の様だ。


ズルリ…

「おやおや…やっぱり気付かれてたか…(職員49)」

「いや…気配だだ漏れでしたよ…?」

「そりゃあ、あの【鬼神】のノアと戦えるんだもん。ワクワクしちゃうわ。(職員48)」


黒髪、黒いローブ、黒いズボンに黒い革の靴と手袋を装着していて全身黒い。
2人共口元に笑みを浮かべてはいるが、目は真剣そのものである。





「えー、ではこれより【暗殺】の最終試験を開始します。
街の中全てがフィールドとなりますので、先程の実戦試験同様、建物に″破壊不可″が付与されておりますので存分に暴れて貰っても構いません。
あ、でも流石に地面を含めると広大過ぎるので、なるべく壊さない様にして下さいね。(ミゼラ)」

「「あいよ。(職員48、49)」」

「はい。」

「ちなみにこちらの2人は、元上級冒険者でもあり、【暗殺】を生業としていたジャック、リーパー夫妻です。(ミゼラ)」

「ジャックだ、よろしくな。」

「リーパーよ。」スッ…


と、各々の自己紹介しつつ、妻のリーパーが手を差し出し、握手を求めてきた。
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