ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

文字の大きさ
上 下
548 / 1,171
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

聞いてた内容と違うんですが?

しおりを挟む
「お、あそこじゃなかか?(バド)」

「防壁に大穴…確かに説明にあった通り…
ん?何か争ってますね…」

「「「「「「え?」」」」」」

(<千里眼>発動!)


『滅びの森』南端から約500メル程離れた地点で、視界の奥に高さ5メル程の防壁を見付けた一行。

ギルドからの説明通り、防壁には大穴が空き、その奥には家屋らしきモノが見えた。

だが、防壁の前で十数人の集団が蠢き、微かに剣戟の音が聞こえてきた為、ノアが<千里眼> を発動して集団の方を見やる。

すると


「防壁を守ってると思しき兵3人と野盗らしき集団16人が争っています!」

「な…ドルフ!ガルフ!(ハクア)」

『『ヴォゥッ!』』ドンッ!


ハクアの呼び掛けに応じた2頭は、直ぐ様その場から駆け出し、防壁へと向かう。


「2頭を向かわせた!私達も後に…
って、速ぁっ!?(ハクア)」


前を行くノアに伝えたつもりであったハクアだが、既にノアの姿は無く、ドルフとガルフの倍の速力で追い越し、先行していた。








ギンッ…ガギンッ!

「ぐあっ!」

「へっ!手こずらせやがって!」
「だが、3人でよく持ち堪えたな。」
「安心しろ、一切合切奪ってってやるよ!」

グァッ!

「くっ…」


手にしていた剣を落とされた自警団の男性目掛け、剣を振り上げる野盗。


ゥゥウウウ…


絶体絶命の状況に覚悟を決める男性だが、彼の耳に金切り音の様な物が聞こえた、かと思うと


『ズドンッ!』ぶぇっ!?」

パラパラ…「よし、間に合いましたね。」

「…へ?」


野盗の足下に何かが着弾したかと思うと、野盗は吹き飛ばされ、代わりに3本の刀剣を携えた少年が立っていた。


「な!?おま、一体何処から…」
「デラが居ねぇ!デラを何処やったぁっ!?」
「ついでだ!そのガキも殺っちまえ!」

「「「「「おおおっ!」」」」」


突然現れたノアに混乱する野盗達だが、直ぐに標的をノアに変更して全方位から駆けてくる。


「でやぁっ!『ゴキンッ!ドズッ!』あ″あ″あ″っ!」
「ヒョオッ!『ゴッ!』ぉん…」ドサッ!
「じぇあ『ビチッ!』ぶっ!?」ドゴッ!


振り上げた剣を手首から2つの意味で外して足の甲に突き立て、向かってきた野盗の顎を殴り気絶させ、体が1回転する程の強さで繰り出したビンタを打ち付けて、等向かって来る野盗を悉く屠っていくノア。

そうして半分程を屠った所で


『『ヴォゥッ!』』

「うわぁあっ!?」
「でけぇ狼だ!?」
「な、何でこっちからモンスターがっ!?」


と、ハクアの従魔2頭が到着し、足を掬ったり、腕に甘噛みして放り投げたり、体当たりしたりして野盗を次々に倒していった。

それを見届けつつ足下で呆然としている自警団の男性に目をやる。


「き、君は一体…」

「あ、依頼を請けてやって来ました新人冒険者のノアです。」ペラリ…

「…い、依ら「ノア殿~!」ドドド…

「「ん?」」


自警団の男性に依頼用紙を手渡していると、ノアを呼ぶ声と共に足音が響いてきた。


ドドドッ!「大丈夫で御座いますかー?」

「うわぁあっ!?モ、モンスターが…!」

「足早いなー、クリストフ…」


ドルフ、ガルフに続き、この場に到着したのは、見事なフォームで駆けてきたクリストフであった。

クリストフを知らない自警団の男性からすればモンスターと思っても仕方無い事だろう。

一先ず男性を落ち着かせ、ドルフ、ガルフが伸した野盗達を捕らえる事に。
生憎縛る物が無かったが、クリストフ即席菌糸ロープで縛り上げる事にした。

やはり【つかえるキノコ】は使えるキノコである。






「お、おおっ!皆無事だったか!
急に静かになったから心配したぞ!」

「こちらの冒険者のお陰だよ村長。
この間出した依頼を請けて来てくれたんだ。」

「おぉ…こんなに…」


村入り口近くの家屋の影に心配そうに1人の男性が立っていた。
それに気付いた自警団の男性がノアを紹介し、喜びの表情になる村長だが、直ぐに暗い表情へと変わる。

するとそれを察したバドが村長に歩み寄り


「村の状況は大体察しとる。
ワシらはそこの坊に着いてきただけじゃ。
金の事ならその1人分だけ考え時ゃエエぞ。」

「いや、しかし「それよりも村長(むらおさ)よ、村の状況を教えてくれんかのぅ。
モンスター退治に来た思ったら野盗に襲われとったモンで、こちとら少し混乱しとるんじゃ。
なぁ坊よ。(ルド)」

「そうですね。
何か込み入ってそうなので、直ぐに状況の確認して対処したいですしね。」

「あ、はい、分かりました…」


1人分の報酬は流石に、と感じた村長の言葉を遮り、ルドとノアが協力してこの話を終わらせた。





~村中央の広場にて~


「あ!村長!それに皆!無事だったんだね?」

「あぁ、この少年とお仲間さん達があっという間に片付けてくれたよ!」


村中央の広場に着くと、鍬や牧草フォークを手にした十数人の住人が待機していた為、野盗を迎え撃つつもりだったのだろう。

他には5つのテントが張られ、その中に親子が入り身を寄せ合っていた。

ふと村の奥を見ると破壊された家屋が何軒かあった為、元住人なのだろう。

依頼には2軒の家屋が破壊されたと書いてあったが、その時よりも被害が増えている様だ。


「1週間程前に村の守りである防壁が『滅びの森』のモンスターに突破され、反対側の防壁まで抜け、今もそこに跋扈しております…
1日2日は何かに怯えたかの様に動かなかったのですが、3日目辺りから活動し、家屋を破壊し始めました。」

「ヤツら、急に行動するから心休まる時が無いのよ!」

「ちなみにさっきの野盗は?」

「防壁があんなんなっちゃったから好機とみたんでしょう。」

「2~3日前から彷徨いてたよ。
恐らくモンスターの行動を見て、村を襲っても乱入されないかどうを確認していたんだと思う。」

「なる程ね。
モンスターと野盗の襲撃ですか、これまた厄介な…
…今の所<気配感知>内に反応が無いのでこっちから済ませますか…」スッ…


村長や村の住人から説明を聞いたノアは徐に立ち上がり、さっき伸した野盗の下へ向かう。





ペチペチ…

「…っ…」

ビチィッ!

「ぶっ!?」

「目覚めました?
手短に聞きます、
「んぇ?何だガ『ズブッ!』ぎゃあ″あ″あ″あ″っ!?痛い″!痛い″ぃ!」


先程足の甲に剣を刺し、気絶していた野盗をひっ叩き強制的に覚醒させるノア。
だがまだ寝惚けていた様で、甲の傷に指を突っ込んで目を覚まさせる。


「「……っ!?」」


ハクアとユカリはノアの突然の行動に、体をビク付かせていた。


「もう一度聞きますよ。
あなた達は斥候で、本隊が何処かに居るのではないでしょうか?」

「そ、そうだ!俺らは斥候で、俺達が戻らねぇと拠点に居る仲間が襲ってくるぞ…!
分かったら俺達を解放しろ!」

「何人?場所は?」

「…は?『ズグッ…』グガガッ!ご、ごごご、50人!場所は道沿いに進んだ廃村だ…!
い、言っただろ!だから指『グボッ!ドッ!』…っ…!」

ドサッ!


場所と人数を聞き出したノアは、指を即座に抜くと、首筋に手刀を打ち込み、再び気絶させる。


「ノア殿。(クリストフ)」ザッ!

「ノア君。(エスメラルダ)」スッ…

「…頼みます。」

ダッ!ノシノシノシ…


野盗が倒れ込むのと、【つかえるキノコ】のクリストフ、エルフのエスメラルダが立ち上がるのはほぼ同時であった。

クリストフが名乗りを上げたのは驚いたが、ノアは2人に任せる事にした。


「2人共、捕まえたらここに戻ってきて下さいね!」

「「はーい!」」


あれよあれよという間に話が進み、展開に着いていけない村の住人達や、ハクア、ユカリ含めたクロラ達は呆然としていた。
しおりを挟む
感想 1,251

あなたにおすすめの小説

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

黄金の魔導書使い  -でも、騒動は来ないで欲しいー

志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。 そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。 ‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!! これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。 「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

魔境育ちの全能冒険者は異世界で好き勝手生きる‼︎ 追い出したクセに戻ってこいだと?そんなの知るか‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
15歳になり成人を迎えたリュカは、念願の冒険者ギルドに登録して冒険者になった。 そこで、そこそこ名の知れた冒険者Dランクのチームの【烈火の羽ばたき】に誘われる。 そこでの生活は主に雑用ばかりで、冒険に行く時でも荷物持ちと管理しかさせて貰えなかった。 それに雑用だけならと給料も安く、何度申請しても値段が上がる事はなかった。 ある時、お前より役に立つ奴が加入すると言われて、チームを追い出される事になった。 散々こき使われたにも関わらず、退職金さえ貰えなかった。 そしてリュカは、ギルドの依頼をこなして行き… 【烈火の羽ばたき】より早くランクを上げる事になるのだが…? このリュカという少年は、チームで戦わせてもらえなかったけど… 魔女の祖母から魔法を習っていて、全属性の魔法が使え… 剣聖の祖父から剣術を習い、同時に鍛治を学んで武具が作れ… 研究者の父親から錬金術を学び、薬学や回復薬など自作出来て… 元料理人の母親から、全ての料理のレシピを叩き込まれ… 更に、母方の祖父がトレジャーハンターでダンジョンの知識を習い… 母方の祖母が魔道具製作者で魔道具製作を伝授された。 努力の先に掴んだチート能力… リュカは自らのに能力を駆使して冒険に旅立つ! リュカの活躍を乞うご期待! HOTランキングで1位になりました! 更に【ファンタジー・SF】でも1位です! 皆様の応援のお陰です! 本当にありがとうございます! HOTランキングに入った作品は幾つか有りましたが、いつも2桁で1桁は今回初です。 しかも…1位になれるなんて…夢じゃ無いかな?…と信じられない気持ちでいっぱいです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...