ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

終戦そして再会

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パキィィイインッ!


両断された神々の恩恵(ベネフィシアル)はガラスの割れる様な音を立て、粉々に砕け散った。


「「「「「「「「オォオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」」」」


神々の恩恵が砕け散った事に、後方で防御陣形を取っていた時雨、足軽兵、ラインハード含めた者達から歓喜の声が上がる。


ズズズ…

「ノア様ッ!」
「「ノア君!」」
「やったな!」


影の中に避難していたヴァンディット、ハナ、ハウンド、アークが少し離れた影から飛び出して来た。


ぐっ!d( ̄   ̄  )


ノアは無言で応え、皆の下に歩き出した。



『『『『『『ギュンッ!』』』』』』



『っ!?』

「「「「「「「「え?」」」」」」」」


突如、地面に転がっているスバルテーノ(下っ端)の亡骸、『地獄門』を囲う様に結界が形成される。
勿論その範囲内にノアも入っていた。



"破壊された場合、所有者含め今まで生み出した創造体全てを別時空へと飛ばし、抹消されます。"



『あ!ヤバい忘れてた!』


ノアが神々の恩恵(ベネフィシアル)の説明文を思い出したが、既に手遅れであった。

結界の壁面に夥しい量の文字盤が現れ、針がぐるぐると回り出す。
ちなみに結界の外の光景は、時が止まったかの様に停止していた。


ガンッ!ゴガンッ!ガンッ!

『ダメだ!魚籠ともしない!』


結界を殴り付けるノアだが、『地獄門』同様に破壊不可能な様子であった。


『くそっ!漸く、漸く終わったと思ったのに!
帰ってまた皆と、何でもない日常を送れると思っていたのに!』


『『『『『ギュルルルルルルッ!』』』』』


ノアの叫びも空しく、文字盤の針は既に目で追い切れない程の速度に達し、説明が無くとももう終わりが近い事を予感させていた。


『……』

(『…主。』)


『『『『『ギュルルル











『…ん?』

(『あれ…?止まった…?』)


音が止み、文字盤の動きも止まったので別時空に飛ばされたモノと思い、周囲を見回してみたノアだが、外の光景は相変わらず止まったままで、夥しい量の文字盤もあべこべな方向に針を向けていた。

すると


コンコンコン。


結界の外は時が停止しているハズなのに、1人の人物が結界まで歩き、外から結界を小突いていたのだ。

しかもその人物にノアは見覚えがあった。




『…"暦"さん?』

〝あ!覚えていましたか!やっぱり神に付随する者の威厳と言うヤツですかね。〟

『いや、僕の知り合いで後光が差してる人はあなた位ですし…』


結界の外に立つ"暦"には常に後光が差している為、表情は分からない。
だが後光が差してるだけでその者の正体は容易に察せられるので、特に問題は無かった。


〝びっくりしましたよ。
あなたの"暦"を見てみたら"別時空に飛ばされる"ってあったのですもの。
なのでこうして助けに来たのですよ。〟

『…神様って介入はしないハズでは?』

〝あなたの世界にタイムマシーンがあって、それの事故によって別時空に飛ばされてしまったら介入はしませんでしたが、太古の昔の失われた技術で別時空に飛ばされてしまったらどうしようもありませんからね。流石に助けますよ。
まぁあなたに"お願い"をしにきたというのもありますがね。〟

『"お願い"…ですか…?』

(『タイムマシーンって何だ?』)


"暦"の言葉に嫌な予感を感じるノアではあったが、この危機的状況を脱してくれるのだ、取り敢えず話を聞く位はするつもりだ。





パンッ!

『『『『『ギュルルルルルルッ!』』』』』

『…これ大丈夫なんですか…?』

〝大丈夫大丈夫。
今正しい時間軸に戻しているだけですから。〟


結界の壁面に存在する夥しい量の文字盤の針が一斉に動きだした。
ノアとしてはどうしようも無いので"暦"を信じる他無い。


〝正しい時間軸に戻るのにはまだ時間が掛かります。
それまで私からの"お願い"を聞いてくれませんか?〟

『すー………はぁー………はい!何でしょう!』

〝そんな身構えなくても…〟


気楽に話してはいるが、"暦"は一応神に付随する者なのだ、身構え位はするだろう。


〝うーん…もう打ち解けたと思ってたのに…
まぁ良いです。私からの"お願い"と言うのはノア君、あなたに"依頼"を受け『すー………』待って待って、最後まで聞いて…〟


何と無く予想していた通りの言葉が出てきた為、深い深ーい深呼吸をかますノア。

そんなノアに"暦"は説明を始めた。



〝うーん…"依頼"と言うと仰々しいですが、時折私か、使者を送りますので、"ちょっとした"お願い事を聞いて貰いたいのです。〟

『神様の言う"ちょっとした"がどれ位の規模のモノになるやら…』


世界の時を止める事が可能な存在の"ちょっと"
とは如何なる物なのか、想像が出来ないのだ。


〝いやいや、そんな大層な事ではありません。
"とある街であの人に声掛けて"とか"あそこの村でお手伝いして"とかの些細なモノですよ。〟

『…そんなので良いんですか?
何か裏があるのでは…?』

〝あるにはあるけど『あるんかい。』そんな後ろ暗い事柄じゃないから安心して。〟


まぁ神様の頼み事なのだから多少裏があるのは仕方無いか、と諦める事にしよう。





〝で、早速なのですがお願い事良いですか?〟

『え、もうですか?
内容によっては考えさせて貰いますよ?』

〝えぇ、構いません。
それではノア君、"街に戻った後で君にある依頼が来ます。それを受けて下さい。"
それだけです。〟

『え?それだけ…?』

〝えぇ、それだけです。〟

『…うーん…』


本当に大層な事では無さそうなお願いに、顎に手をやって考えるノア。


〝ちなみにその依頼には君の想い人も参加致しますよ。〟

『しょうがないなぁ…』

(『もうちょい悩めや。』)


鬼神からのツッコミもあったが、"暦"からのお願い事を聞く事にしたノアであった。





〝…おっと、そうでした。
こちらからお願いしておいて報酬の話をしていませんでしたね。〟

『…いや、その程度なら別に報酬とかは…』

〝そう言う訳にはいきません。
『チャリ…』"コレ"を外に持ち出されたら困るので回収させて頂くのですから…〟

『っ!?な、何であなたがそれを…!?』


"暦"の手に先程壊したハズの神々の恩恵(ベネフィシアル)が握られていたのだ、ノアが驚くのは無理の無い事である。


〝コレはこのステージをクリアした事で受け取る事の出来る、神々の恩恵(ベネフィシアル)の"劣化版"です。〟

『…"劣化版"…?』

〝えぇ、"劣化版"ではありますが能力は4段階目まで使用出来ます。
この世界では"時"を使用して生命を産み出す仕組みですが、外では"他者の命"を使って生命を産み出す事になりますし、『時空召喚』も使用出来ます。
例え所有者が君であったとて、その様なオーバーテクノロジー…異質な代物を外に出す訳にはいかないのですよ。〟

『…まぁ確かに…』


"暦"の説明を聞いた上で、ノアとしても"劣化版"神々の恩恵(ベネフィシアル)を得られたとしても表では大っぴらに使い辛い為、どの道死蔵だな、等と考えていた所であった。

だがノアはもう1つ気になる事があった。


『…でも今の説明だと、ラインハードさんなんかは大丈夫なのですか?
僕らからして見てもかなり高度な存在ですが…』

〝ご安心下さい。
彼女は近い将来"機人族"という種族の発起人となり、良好な関係を築くので、オーバーテクノロジーと言われる程の存在では無くなりますよ。〟

『そ、そうですか。』


サラッとラインハードの先の"暦"を言われたノアであったが、そう言う事なら一安心である。


〝それに引き換え、この神々の恩恵(ベネフィシアル)は、最低でも3000年以上経たないと開発されない技術です。
その様な物を世に出せばとても恐ろしい事になるでしょう?〟

『…まぁ確かに…
"暦"さんがそう言うならお任せします。』

〝助かります。
そしてノア君、あなたが報酬として受け取るハズだったこの導具に代わり、私から"お願い事"を聞いてくれた報酬を授けたいのです。〟


"神々の恩恵(ベネフィシアル)の代わりに神様から報酬を受け取る"。

どちらかと言えば後者の方が御利益がありそうである。


〝生憎私からは金品の類はお渡し出来ません。
ですので、私からは"時"を報酬として授けたいのですが如何でしょう?〟

『…"時"を?
…え?つまりどういう事ですか?』

〝回りくどかったですかね。
端的に言えば暦の延長、つまり君の"寿命を延ばす"と言う意味です。〟

『えっ!?何で"暦"さんがそれを…
あ、僕の"暦"を知ってるのなら当たり前か…』


突然の"暦"の発言に、気が動転してしまうノアであった。
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