ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

精神力強化

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「ねぇジェイルぅ、"エレファント・バッファロー15頭の討伐"なんか請けちゃって大丈夫なの?」

「あぁ、俺やロゼは使えるスキルや技も増えたし、動きも見切れる様になった。
ポーラも使える魔法の種類も増えたし近距離の戦闘にも対応出来る様になったしな。
クロラは命中率が格段に上がったし連射も利く。
丁度良いから腕試し的な意味合いで行こうじゃないか。」

「「「おー。」」」


ジェイルら4人は、依頼を請けて滅びの森へと向かっていた。

基本的に彼らは、斥候兼警戒のクロラとロゼが先行し、その後ろをジェイルとポーラが着いていく形を取っていた。

すると先行していた2人が同時に


「わっ!?」
「むっ!?」

「どうしたんだ、2人共?」

「いや、ここから先にある茂みの奥から強い殺気がしてて…」
「うーん…殺気の発生源はピクリとも動いてないよ…
あ、でも他に冒険者が居るみたい。何か陣形みたいなモノ組んでるし…」


強い殺気を感知したのは、街と滅びの森との中間地点。

通常、滅びの森周辺に棲むモンスターは最低でも500メル先からであるので、これだけ近い場所で強烈な殺気を放つモンスターが居た場合、ギルドに報告しなければならない為、4人は一度集まり、ジェイルを先頭にして茂みの奥へと進む事にした。



ズズズズズズズズズズズズズ…

ガサッ、ガサガサ…


茂みを進めば進む程殺気は強くなっていく。
4人は、身近にとんでも無い殺気を放つ冒険者が居る為、割と耐えられるが、普通の冒険者なら進むのを躊躇う事だろう。


「ここから先は開けた場所の様だな…」

「取り敢えず確認だけしてマズそうなら街に一度戻りましょ。」

「「「うん。」」」ガサッ!


4人は意を決して茂みから顔を出し、殺気の発生源を確認してみた。

するとそこには



ズズズズズズズズズズズズズ…

「ふぬぬぬ…」
「ふっ…ふっ…」
「ううう…怖いぃ…」


強烈な殺気を放ちながら地面に胡座をかいて座るノアと、その目の前で額に汗を浮かべながら地面に腰掛け、必死に耐えている【聖女】ミミシラと【紅武士】アックスレイ、【死陣操糸】のヴォルフスティ3人の姿があった。


ズルッ…

「お、皆さんどうしました?」


先程紹介した、"身近にとんでも無い殺気を放つ冒険者"がそこに居り、安心した4人は気が抜けてしまった。





「「「「精神力強化の特訓?」」」」

「えぇ。彼女達から精神干渉に対抗出来るだけの精神力を身に付けたいと相談を受けたんですよ。
ですが街中で殺気を発する訳にもいかなかったので、人目を忍んでここで行ってたんです。」

「いや、駄々漏れだったわよ少年。」

「ええ!?」


そう4人に伝えるノアの後ろでは、ミミシラとヴォルフスティ、アックスレイの3人が肩で息をして暫しの休憩を取っていた。


「わ、私からお願いしておいて何なのですが、これで本当に精神力は鍛えられるのでしょうか…?」

「えぇ、勿論。
精神力鍛えるには、強烈な殺気に当てられ続けた方が手っ取り早いのですよ。
それに他の精神耐性系スキルである<胆力>なんかも同時に取得出来るので打って付けですよ。」

「「「「「「「へー。」」」」」」」


精神耐性系スキルは割と派生スキルが多く、どの【適正】でも有用なスキルが取得出来るのが利点である。

クロラ達には今後個別で実施するとして、今は優先的に3人に教える必要がある。

その後、クロラ達は滅びの森へと向かい、ノアと3人は再びキツイ精神力強化の時間が始まった。

双方有意義(?)な時間を送っている丁度その頃、【勇者】アークはと言うと






ガシャンッ!ガチャガチャンッ!

「おい!何故俺が牢に入れられなきゃならねぇんだ!?
手枷まで着けやがって!俺は【勇者】だぞ!」

「いや、自分の行いを反芻してみて下さいよ。
思い当たる事しかしていないハズですよ?」


魔力やスキルを封じる目的の手枷と足枷を着け、更に精神干渉系対策の符を取り付けた牢に入れられるアーク。

【勇者】と言う肩書きがあるので、一先ず本国に連絡を取っている間、一時的に『犬姫』の監視下にある牢に入れ、反省を促す目的である。

だが今の所反省している様子は無い。


「おい!ミミシラは何処だ!?
ヴォルフスティとアックスレイもだ!アイツら一体何してやがる!」

「彼女達は安全を考慮してノ…じゃない、『ブレイカー』と一緒です!」

「そうだ!その『ブレイカー』とか言う奴は何なんだ!
俺からの頼みを断った挙げ句、拷問紛いな事をしよって!」

「周囲の冒険者からの証言では、最初から『ブレイカー』を操る目的だった様だったと仰ってますが?
まぁ不発に終わったみたいですがね。」

「ぐぬ…
し、しかし俺は【勇者】だぞ!
行く行くは【魔王】討伐と言う使命があるのだ!ならば協力するのが当たり前であろう!」


さも当然とばかりに吠え散らかすアークだが、牢の前に居るハナは言い放つ。


「そうですか?
人を脅し、精神干渉までしてたった1人の冒険者に攻撃を仕掛けたあなたの方が"【魔王】らしかった"ですよ。」

「な、何だと…」

「あの場に居た皆さんが口々に仰られていましたよ?
"孤軍奮闘している『ブレイカー』の方が【勇者】的行動を取られていた"とね。」

「は?何を言ってるんだ?」

「分からない様なら尚更この牢の中で反省する事ですね。」


反省の色が見えないアークを尻目に、ハナは牢の前から離れていった。







~半日後~ 

ザッ、ザッ、ザッ。

「アークさん、あなたに面会しに来た者が来られてます。」

「…何?」


時刻は既に真夜中を向かえ、牢のベッドに横たわっていたアークにハナが声を掛ける。
その背後には騎士鎧を身に付けた壮年男性2人が立っており、牢に居るアークをジッと見詰めていた。


「お、ウチの所(イグレージャ・オシデンタル)の騎士じゃん!
確かニックとフォルトつったっけ?」

「ナック、と申します。」

「ホルト、ですよアーク殿。」

「悪ぃ悪ぃ。
それよりも、"いつも通り"出してくんねぇかな?
ちょっとだけ騒いだら牢に入れられちまってよ。
罰金を幾らか払えば出られるんだが、持ち合わせが無くってよ。」

「…そうですか…」ペラッ…


悪びれる様子も無いアーク。
すると、騎士鎧の1人ナックが懐から羊皮紙を取り出して牢の中に居るアークに見える様掲げ出す。


「【勇者】アーク殿。
あなたが今まで起こしてきた不祥事の数々は、我々の方で処理し、穏便に済ます様取り繕って来ました。
ですが此度は流石に許容限界を超え、我々の力を以てしても処理出来ない程の人物に関わってしまった為、獣人国の方に則り裁きを受けて頂きます。」

ガシャッ!

「はぁ!?ちょっと待てよ!?
たかだか数十人の冒険者を巻き込んだだけ『ドゴッ!』おぐっ!?」


驚きのあまり牢の格子にしがみ付くアーク。
すると、騎士鎧の1人ホルトが腰に差していた剣の鞘でアークを突き飛ばした。


「その"たかだか数十人の冒険者"の中に【鬼神】が含まれているのだ馬鹿者めが!」

「げふっ…き、【鬼神】だと…?」
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