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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

軽い仕返し

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「ハッ!?ここは何処だ!?
なっ!?暗っ!?目隠しかっ!?」

「目覚めて早々騒がしい人ですねぇ…
まぁいくら叫んでも大丈夫ですよ?
"それ専用"に作られた場所ですからねぇ。」 


アークが目を覚ますと、何処かの場所で目隠しをされ、後ろ手に縛られた状態で座らされていた。

アークは状況に着いていけず、困惑していると


「なぁ少年よ、こいつらはもう解体(バラ)しちまって良いんだよなぁ?」

「ん?あぁ、良いですよ。
使える部分は切り取って残りは処分しちゃって下さい。」

「りょーかい『ズダンッ!ビチャチャッ!』」


アークの周囲には他に誰かが居り、刃物で何かを切断する音と、水音が響く。


「い、今のは何だ!?
おい!ミミシラ!ヴォルフスティ!アックスレイ!」

「あの3人ならもう居ないぞ。
色々と情報を聞き出そうとしたが大したモノが無かったのでね。」

「おい!俺にこんな事してタダで済むとおもってるのか!
良いか俺はなぁ…」

「【勇者】だろ?それ位知ってるぞ。」

「なっ…!?」


身動き取れないアークは、素性が既に知れている事に驚き身を強張らせる。


「【勇者】アーク。
西方にある国、イグレージャ・オシデンタルの生まれで、同郷の【聖女】ミミシラと共に【勇者】パーティとして仲間を集めつつ全国を練り歩いている途中と…
だがここ3年は大した実績も無く、【勇者】アーク自身の悪癖である女癖の悪さと、大抵のスキルを所持しているという【勇者】の特性を遺憾無く発揮した結果、仲間が中々集まらず、自国内でも悪評が流れ始め、歯止めが効かなくなってきた…
【聖女】の力の源とも言える自国の信者からの信仰力も衰えてきており、アークの両親は頭を抱える毎日…はぁ…良い点が1つも無い…」

「う、うるせぇ!何故お前がそれを知っているっ!」

「それだけじゃないぞ?
イグレージャ・オシデンタルでは現在、何とか自国での評価を上げようと、"とある冒険者"の戦績をアーク含めた【勇者】パーティの戦績として広めているが、数多くの商人が異を唱えた事で、逆に求心力が下がる事態に…」

「知った事か!それは国の仕出かした事で俺には何も関係が無ぇだろ!」

「まぁ聞きなって。
その結果、毎月送られて来ていた支援金が明日を以て停止。
また、今回の一件は揉み消す事が到底不可能な程の目撃者が出た為、獣人国からイグレージャ・オシデンタルに向けて強制送還指示を出すも、"今自国の恥部を国内に戻すと、今度こそ国内での求心力が破綻する"との理由で送還すら行われず、強制労働の任を2ヶ月受けるとの事。」

「はっ!?お前冒険者だろ!?何故そんな判断をお前に下されなきゃならないんだ!?」


自国内の事情だけならまだしも、何故か今後の予定を話されるアーク。


「言っておくが、別に俺は国に対して何か影響力がある訳でも無いし、告げ口するつもりも無い。
だが、これは今後の"アンタの予定"らしいぞ。」

(って、暦さんが言ってた。)




~タイトル:『暦の改変』の後~


〝えーっと、【勇者】パーティのプロフィールは何処にしまったかしら、っと〟

ガサガサ…

「……。」

〝あ、あったあった…『バサッ!』ああっ!?〟

バサササッ!


暦が胸元に手を突っ込み、メモの様な物を探していた様だが、出した弾みで落としてしまった。


〝ああ、メモを。
【勇者】パーティのプロフィールが書かれたメモを落としてしまいましたよー(棒)。〟

「……。」


何故か暦の発言が白々しく感じるノア。


「…これ見ちゃいけないものでは?」

〝ああ!【勇者】パーティのプロフィールに加えて、ここ数年前後の予定が書かれた、"他人に見られたらマズイ代物"を落としちゃったよおー(棒)。
見ないで。絶対に見て覚えないで下さいね?〟

あたふた…

「……。」ヒョイ。ペラペラ…


拾おうとしている様だが、中々手に取れない様子の暦。
ノアは明らかに"見ろ"と言われている様にしか聞こえなかった為、拾うついでにメモをペラペラ捲り、内容を確認する。


「…はい、これ。
…神様は直接介入出来ないからこんな回りくどい事を?」

〝何の事かなあ?(棒)〟





(あれ、絶対わざとだったよなぁ…)


前日の出来事を思い出して1人ごちるノア。


「はっ!神様にでもなったつもりか?
良いか?俺様はこの世界の【勇者】だ。
ヒュマノが召喚したなんちゃって【勇者】とは訳が違う。
俺が"自国の恥部"?俺を失えばどれ程の損失になるか分かったもんじゃないぞ?」

「【勇者】…勇ましき者…ねぇ…
おかしいな、俺はずっと"浅ましき者"しか見てないがなぁ…」

「ぬ、ぐくく…
い、今に見てろ…ここから出たら【勇者】の恐ろしさをとくと見せ付けてやろう…」

「おー怖い怖い…
まぁ欲しい情報は特に無いし、早い所さっさと"処分"しちゃいますかね。」


ノアが"処分"と言った辺りでアークが何かを思い出す。


「ん?"処分"…?
そういやさっきお前、"あの3人ならもう居ない"と言わなかったか…?」

「何だ、漸く気付いたか…
あぁ、もう居ないよ、"処分"しちゃったからね。」

「な、何だと…?」


と、ここで目隠しされているアークは漸く周りの状況を確認し出す。


ダンッ!バチャッ!バチャチャッ!

ズルッ…ボタボタ…モワァ…

(何かを叩き割る音に、液体が流れる音…
それと何だこの臭い…まるで何かの生き物を殺…
ま、まさか…)

「お、おい待て!俺をどうするつもりだ!?」

「………。」


ノアは答えない。

だが


「なぁ少年、"そこの"も処分しちまって良いんだよなぁ?」

「えぇ、活きが良いので早い所済ませましょう。」

「な…待…」

「じゃあ自分の方で血抜きしておきましょうか?」

「お、頼むよ。」

「お、おい…!」


目隠しされているアークを置き去りにして、ノアともう1人の人物が何やら会話をしている。
だが内容からして宜しくない事が起こるのは明白であった。


スラッ…ツゥ…

「うおっ!?熱っ!?お、おい!今何しやがった!?」


アークの首に何やら熱い感触が伝わり、首筋に生温かい物が垂れる。
その感触に嫌な物を感じたアークはただただ叫ぶ。


「知ってます?人間って切られると"熱い"って感じるらしいんですよ。
まぁ冒険者やってるんだからその程度の事は知ってるでしょうがね…」

「え!?ええ!?じ、じゃあ今お前『ガシッ!』むぐぅっ!?」


アークが何か発しようとするも、ノアに口を塞がれてしまい、何も言えなくなってしまった。


「だーいじょうぶ。
直ぐにさっきの3人の元へ迎える様にしますよー、っと。」

ズッ、ズズズズズズ…

「むぐぅっ!ぐむむむむ、むぅっ…」


アークの抵抗虚しく、ノアは手にしたナイフを首筋に這わせ続けるのであった。









「…おい良いのか少年。
この【勇者】、気絶しちまったけど。」

「うーん…この程度で気を失うのか…
【勇者】としても冒険者としても程度が知れるなぁ…」


ノアと解体場のおっちゃんは、気絶してテーブルに突っ伏しているアークを見下ろしていた。


「僕はただ、お湯で温めたナイフを当ててただけなんだけどね。
まぁおっちゃんの協力あっての事ですけどね。」

「何言ってんだ、俺は2人の隣で魔蛸を解体してただけだぜ?」


そう、今ノアとアーク、見届け人である『犬姫』のハナが居るのは街の解体場である。

他の3人は冒険者ギルドに移動し、操られていた者達と一緒に治療中であった。


「さて、特に有益な情報も無かったのでハナさんに預けますね?」

「は、はい…
それよりもノア君さっきの話って…」


ハナは、さっきノアが言っていた内容の真偽を問い質している様だ。


「さぁ?
適当な事言っただけですよ。」
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