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獣人国編~森の番人~

状況は良くない方向に

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バシュッ!

「オオッ!」ブォンッ!

ガンッ!ゴゴガッ!「ぅぐっ!!」

ゴシャッ!「ぅおっ!?」


スラスター機動で接近したノアは、レントの顔面に巨拳を叩き付けるも、レントは気にする様子も見せずに背中の触手3本を拳の様に振るい、ノアの腹部に3連撃を加える。

その後魔力を籠めた4本目の触手を高速で振り、ノアを大きく吹き飛ばしたのである。

衝撃吸収効果のある防具を纏っているにも関わらず、多少のダメージが入った事から明らかにレントの攻撃力が上がっていた。


バッ!ババッ!

『ちっ!あの触手は邪魔だな。
少し待ってろ、毟ってくるわ。』ダンッ!

「頼む。」


吹き飛ばされたノアに代わり、鬼神が4本の腕をガッと開いて接近を図る。

ボッ!ボボボッ!

ガッ!バシッ!パシッ!ガッ!

『ぬんっ!『ブチブチブチッ!』
っし!これで『ガクンッ!』…お?』


意図も容易くレントの触手を引き千切った鬼神がレントに攻撃を仕掛けようとするも、足が止まる。

見てみると引き千切った触手が絡み付き、鬼神の動きを僅かながらに封じていた。


『えぇい!蛸の脚かよっ!
だがこの程度じゃ足止めにも〔なに、僅かに動きを鈍らせるだけで良い。『森の奉り蛇(サーペンテ)』食らい付け。〕


ジュァア『な『ガブッ!』アアアアアアッ!


足を止めた鬼神の足下から『森の奉り蛇(サーペンテ)』が飛び出して下半身に食らい付く。


『ちっ!さっきから『ギュルルルッ!』』


『森の奉り蛇(サーペンテ)』は鬼神を逃すまいと、咥えた状態で体を巻き付けていき、あっという間に球状に変化。


ジ、ジュァアッ!!
『…ぷぁっ!ンの野郎、邪魔だ退きや…』

ピンッ!


『森の奉り蛇(サーペンテ)』の拘束を力ずくで脱け出しに掛かる中、レントが黒い粒状の物体を弾き飛ばしてきた。


〔『封牢の種(カデイア)』。〕

ドギュルルルルッ!

『ぬお『ギュル『ギュルリッ!』ルルッ!』っ!?』


黒い粒状の物体=『封牢の種(カデイア)』から夥しい量の根が延び、鬼神に巻き付いた『森の奉り蛇(サーペンテ)』諸とも絡み付き、がんじ絡めにしながら強烈な力で締め付けられていく。

ジュァア『ベキベキボキボキッ!』アアアッ…

ブシュゥッ!ギュルルルルルルルッ!

その力は凄まじく、『森の奉り蛇(サーペンテ)』を意図も容易く圧殺しただけでなく、それによって発生した血飛沫や肉体の損壊箇所に根が侵入し、吸収してどんどんと根の範囲が拡大していき、『森の奉り蛇(サーペンテ)』を呑み込んでしまった。


「ちょっ!?大丈夫か鬼神!?」

『(ああ、この程度じゃくたばりはしないさ!
直ぐに脱け出して『ボゴンッ!』んなっ!?硬ぇっ!?)』


鬼神は閉じ込められ、声はくぐもってて聞こえ辛いが、何とか会話は可能。
但し、この『封牢の種(カデイア)』製の拘束はとても強固な様で、鬼神が中からぶん殴っても表面が盛り上がる程度で、それも継続的に延び続ける根に覆われ即座に修復されていった。


「待ってろ!今すぐ根を引き剥が〔させんよ。〕ボッ!ボボボッ!

ゴガガガッ!「ぐうっ!?」


球状と化した根の塊を引き剥がそうとしたノアに触手による猛攻を仕掛けるレント。

ノアはステータス自体は素の状態である為、レントから繰り出され続ける攻撃を魔装鉄甲でガードし、耐えるのみである。


〔正直言って我が子を守りつつ"アレ"を相手に真っ向から立ち向かうのは御免被りたい。
なので一時的に"封印"と言う形を取らせて貰った。
本音を言えば残りの7分を凌げれば御の字だが、持っても5分って所だろう。〕


ゴンッ!ボゴンッ!ドゴッ!ギュルルルッ!


レントからの攻撃を防御しつつ横目で鬼神の方を見るが、鬼神自体も拘束を逃れようと中で暴れ回っている様だが、『封牢の種(カデイア)』による修復が拮抗し、直ぐにどうこうなる物には到底思えなかった。

だがノアの中では、ここから鬼神を救い出し、戦況を打破する考えが無い訳では無い。

簡単な事である。

"発動中の【一神同体】を解除すれば良い"だけだ。

拘束中の鬼神は解放されノアの体に戻り、普段通りの力を発揮可能になったノアは再び【一神同体】を発動してレントを攻め立てれば良いのだ。

という事でノアは【一神同体】を解除する旨を鬼神に伝えたのだが


『えっ、今ッ!?馬鹿馬鹿ヤメロッ!
そんな事したら状況がマズイ事になる!
何とかここから直ぐにでも脱け出すから少し待っといてくれ!』


と、何故か頑なまでに拒まれてしまった。

理由を聞こうとしたのだが、そんな余裕を与えまい、とばかりにレントが更なる猛攻を仕掛けてきてしまった。






ガンッ!ガゴッ!

ゴガッ!ゴガガガッ!

〔どうしました?
我が子の誕生を阻止しに来たのでしょう?
残り3分程でこの地に生誕してしまいますよ?〕

(くっ…腹立たしいがコイツの言う通り、あれから戦況は何1つ変わっていない…
鬼神も…特に変わりは無い…こうなったら…)


未だ防戦一方のノアは、幾多にも及ぶ猛攻の残滓に当てられ、顔は真っ赤に染まっていた。


〔やはり君と"アレ"を別離させて正解でしたねぇ。君1人ならばどうとでもなる。
君からは昨日程の脅威も感じない事からして"アレ"が君の本体なのだろう、『ジャキッ!』なぁっ!!『ドヂュッ!』〕

「ぅぐっ…!?」バ『ズルッ…』ババシュッ!


素のステータスのノアでは追いきれない速度で触手を振るわれ、防具の素材と素材の継ぎ目にある脇腹に触手の先端を突き入れられた。

直ぐにスラスターを連続発動して距離を取りつつ脇腹から触手を退き抜くノアだが、口と脇腹からはドス黒い血が止めどなく溢れていた。


タッ、タタッ、ビチャチャッ!

「…ぅえっ!?げへっ…!!」


ノアの顔からは脂汗が噴き出し、見る見る内に顔色が悪くなっていく。

ノアの血がベットリと付いたレントの触手は、まるで茨の様に幾つもの返しが付いており、凶悪な形状を模していた。

恐らくノアの体内はズタズタに引き裂かれている事だろう。


チャッ、チャキッ!『『ビキッ!』』くぴっ。

〔回復ですか…させるとお思いで?〕ドゥッ!


アイテムボックスから小瓶2本を取り出し、手荒く飲み口をへし折り、一気に煽ったノアへ向けて攻勢を仕掛けるレント。

だが


ブフゥッ!ビチャチャッ!

〔!?目潰し!?
この期に及んで姑そ『ジュァアアアアッ!』っ!?ゴォオオオッ!?〕


向かってきたレントに口内に含んでいた薬品を吹き掛けると、白煙を上げながらレントの体が溶解し始めた。

実はノアが口にしたのは回復ポーション等では無く、マドリックから貰っていた『根絶椰子の実』製の原液であった。

対植物系モンスター相手には劇薬である為、効果は覿面であった。


〔ガァアアッ!糞がっ!ヤりやがったな!〕ブォンッ!

バッ!バシュッ!ヒュオッ!


激情に任せた大振りな攻撃を屈んで回避したノアは、スラスター機動を駆使し、レントが守っていた核へと手を伸ばす。



ドスッ!「ぁぐっ!?」


ノアの左足に激痛が走る。
どうやらレントが自身の触手を伸ばし、ノアのふくらはぎや太腿に突き刺した様だ。
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