ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~森の番人~

巻き込まれ事故の犠牲者

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ここで各人の状況を説明しておこう。
ドワーフ3人組やエスメラルダらは、引き続きデイダラボッチが先程出現した穴から沸いてくる危険度(中)~(高)の駆除を。

鬼神は、『滅びの森』内にて不完全な状態だが上位存在へと進化するレントを待ち構えていた。

ノアも同じく『滅びの森』内に居り、未だがんじ絡め状態のまま、レントにより召喚された『聖樹の奉り蛇(サーペンテ)』に転がされていた。

そしてグリードはと言うと、先程までレアナ相手に一方的な蹂躙を仕掛けていたが、苦し紛れに召喚した相手に全魔力を吸収され、結果的に命を落としてしまった。

だがこの場に新たな存在が現れた。
レアナが喚び出した召喚獣の『亞龍・プロスペリダージ』である。

別にレント・レアナと仲が良いとか、眷属だから、とかそんな関係では無く、"ここら辺に生息している植物系モンスターの中で1番強い奴"だったから、に過ぎない。

だが、相手がマズかった。

只の竜種なら問題無かったのだが、相手は純粋な龍種に比べれば力は劣るものの、それでも"亞龍種"である。



【禁忌龍】(壁)龍種>亞龍種>竜種>亞竜種>ワーム・蛇等



貴族の爵位で言えば伯爵クラスに相当し、龍種はある種の矜持の様な持ち合わせている為、こういった不躾な行いは非常に好まない。



『亞龍・プロスペリダージ』 …大陸の南方にある森『静謐の森』で静かに暮らす小型の翼龍。
前述した様に"不躾な行いは好まない"とあるが、別に気性が荒いと言う訳では無い。

何なら近隣の村に住む子供達の遊び場として場所を提供したり、滑り台代わりに尻尾や翼を貸している光景を見掛ける事がままあり、一部の地域では心優しき龍種として知られている。

だが亞龍種である為、暴れでもすれば街に甚大な被害が出る事は必至である。



「くそっ…レアナの奴め…よりによって亞龍種を喚び出してくるとは…
下手すりゃレント・レアナよりも厄介だぞ…」

「でもアレの出現のお陰か、湧いて出てきたモンスター達も畏縮して出てこない様だから多少気が楽になったわ…」

「確かに際限無く湧く言うのも気が落ち着かんわな…」

「…にしてもあの翼龍、こんまい(小さい)が、何ちゅう殺気を放っとるんじゃ…」

「フリアダビアん時の【魔王】幹部よりも漏れ出てんぞ…」


『亞龍・プロスペリダージ』という上位存在の出現により、デイダラボッチの出現によって出来た穴から湧いて出てきていたモンスターの出現が一気に鈍化。

斧や弓を肩に担ぎ、一息入れる一同だが、表情が明るくなる事は無い。
寧ろ眉間に皺を寄せ、ここからの戦略をどうするか思案している様だ。


[………。]


だがそんな一同の心配を他所に、当の『亞龍・プロスペリダージ』は、召喚時のポーズのまま1歩も動けずに固まっていた。

理由は至極簡単で、召喚直後から目の前に立っていた少女(<人化>状態のグリード)から放たれている、明らかな格上の存在感に当てられていたからだ。

丁度ルーシー姉妹がノアに初めて会った時と同様の反応である。


[は…わわわ…]

《なんか怯えている様だけど取り敢えず落ち着いて貰えるかしら?
あなたは"コレ"に喚ばれてここに来たのよね?》


グリードが足元を指差すと、そこにはレアナ"だった木屑の山"が積もっていた。


[は、はい。そうです…]

《つまり私とは敵対関係を取るという事で良いのかしら?》


グリードの凶悪な口と長い尻尾を妖しく揺らめかせながら、亞龍・プロスペリダージの答えを待っている。    


[め、滅相も御座いません!
この者とは私自身何の繋がりも御座いません!先程急に喚ばれました!]


亞龍・プロスペリダージは、ここで変な受け答えをするのは非常に宜しくないと本能で察知し、正直に答える事にした。


《むー…分かりました、信じましょう。
どちらにしろ、私には嘘を見抜く手立ては無いので。》

[あ、ありがとう御座います!]ババッ!


翼龍でありながら、それはそれは綺麗なお辞儀だったそうな(ドワーフ談)。


《それでは帰って宜しいですよ。
今は少々立て込んでおりますので部外者はご退場下さい。》 

[立て込んで?
そういえばここは『滅びの森』では…?
ドワーフにエルフ…皆さんはここで一体何を…]



『『『『ブワッ!!!』』』』



「「「ぬっ!?」」」
「なっ!?」
「始まったか!」

《!》
[ん?何ですか?この魔力の跳ね上がりは…?]


後方の『滅びの森』内部から急激な魔力の集束反応を感知した一同。
あまりの急速な事態に、森から突風が吹き荒れた。


[魔力が集束し、収束していく…
この一連の流れは上位存在への転換反応に似ている…!]

《主のお仲間様の作戦らしいけど…これ大丈夫なのかしら…》

[え?あなた様に"主"が居られるのですか?]

《ええ。その森の中で戦ってるわ。》


この時、亞龍・プロスペリダージの中で1つの考えが生じる。


([目の前に居られる方の正体は分からないが、絶対敵にまわしてはイケない存在だ。
現状我への評価は"興味無し"か下手すれば"や敵対"であろう。
この方の主が森の中で戦っているのであれば、力添えし我への評価を上げるべきでは無いだろうか!?])


ある種直感的な生存本能が働いたプロスペリダージは直ぐ様行動に移す事にした。


[あ、あの、どうやらお困りの御様子。
このプロスペリダージがお手伝い致しましょう!]

《え?良いけど、ヘマしたら喰い殺すわよ?》

[…………………っす…]


自分の生存本能に従って行動したハズなのだが、何故か致死率が上がった気がしたプロスペリダージであった。





ビキビキビキッ…シュゥウウッ…ボゴゴゴッ!

〔お、おおおぉ…一帯の魔力が私の中へと流れ込んでいく…〕


鬼神の目の前で上位存在へ進化中のレントは、膨大な魔力が流れ込んできているからか、体からは軋む様な音と共に所々が破砕し、即座に再生されながら徐々に体が肥大化していく。

ズズズズ…

自身の体から続々と蔓が延び、より遠くにある木々に絡み付いていく。
恐らく根絶椰子の実製の薬品により機能しなくなった根の代替と思われる。

ボコッボコボコボコ…

背中の触手も数を増し、高く、広範囲に広がっていく。

ズギュル、ズギュルルッ!

ここまで来ると、人型を保っていたレントの姿が徐々に一本の大木の様に変化していく。


〔…あぁ、レアナ…死してしまったのか…『ボココッ…』残念だ、とても残念だ…
君に代わって『ミキミキ…』私が願いを叶えるとしよう…〕


同族の為か、レアナの死を悟ったレントが悲しい表情を見せる中、鬼神が気になったので聞いてみる事に。


『"願い"っつったな?
お前達の願いはテリトリーの拡大じゃなかったか?』

〔それもそうだが、それは"種族的な願い"であって"私達の願い"では無い。
君は私達の名を知っているかな?』

『"森の番人レント・レアナ夫妻"だろ?
それがどうした。』

〔"夫婦"にとっての願いって何だと思う?〕

『そりゃあ…あ!『ズドンッ!』


何かに気が付いた鬼神は、一足飛びで急速接近し、進化途中のレントに襲い掛かる。




ゴバァアッ!『うおっ!?』


地面の下から大木の様な根が出現し、鬼神は高さにして約100メル近く上空に跳ね上げられてしまった。


『チッ!しくじったな…って、おいおい…
本当に大丈夫なんかよこれ…』


100メル近い高さに居る鬼神が俯瞰で見た『滅びの森』は、各所から大木の様な根が飛び出し、肥大化していたレント自身の体も天を目指す大樹の様に屹立し始めていた。

地面に向け落下し始める鬼神と、急速に成長し巨大化中のレントの視線が交差する。


〔夫婦としての願いと言えば"子供"だろう?
私自身が子供達を産み出す生命の樹となり、この地を私達のテリトリーとして覆い尽くしてやろう。
その後全て終わった後に再びレアナをこの地に産み落とす。
それで万事解決だ。〕

『はっ!こっちにしてみりゃ万事休すなんでなっ!全力で阻止させて貰うぜ!』


そう言いきった鬼神は、眼下に居る者の元へと降下し始めていった。
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