ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~ダンジョン『宝物庫』~

閑話:外でのやり取り③

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あれから少しして、中で再び動きがあったのか瓦礫や何かの破片が出現し始めた。
このままでは危ないとの事でクッション代わりの羊獣人(羊寄り)やクロラ達、ジョーは退避する様に言われた。

現在『宝物庫』前は火消しの者達や兵士、『犬姫』の騎士団、冒険者ギルド長のガラパゴ等が警戒しつつ、瓦礫の撤去作業を行っていた。


「…何かかなりの大事になってきたわね。」
「一体中で何が起こってるんだろうな…」

チャリ…

「…これは、何かの調度品の破片みたいだな…」
「こちらのは何かの部品みたいです…」
「こっちは…空の魔石…みたいです…」

「「「うーん…?」」」


ジョー達は足元に転がっていた細かな破片を手に取り、中で何か探っている様だが皆目検討がついていない様子。

すると


ズドンッ!

「おわっ!?」
「ひっ!?」
「な!なっ…?」
「何が起こった!?」


中で機兵が放ったガトリング砲を一時的に凌ぐ為に使用した荒鬼神が弾き出されてきた。
地面に落下した衝撃で地面は少し揺れ、近くにいたハナがビクッと反応した。


「な、何じゃこりゃ…」
「剣だよな…」
「あれ?この武器確か…」

「あ!それはノア君の武器です!」


弾き出された武器の出所を知っているクロラが声を上げる。


「こ、こりゃ…阿羅亀の素材で造られた剣じゃないか…
何ちゅう物を武器にしとるんだこの少年は…」


剣の素材を見て驚き、声を上げるガラパゴ。

するとその直後


〝挑戦者が4層(正規ルート)『女王直属護衛三機兵』を撃破し『最終防衛戦線』を突破。
最奥5層(正規ルート)『女王の工房』にて『ネウトロメカニコ(機兵中立国)女王ラインハードの因果』を開始。〟


「ネ、ネウトロ…何だって?」
「女王ラインハード?…あれ?何かの文献で見た様な…」
「おい誰か歴史詳しい【学者】呼んできてくれ!」
「『因果』って聞こえたけど …」


報せにあった様に中では大詰めな展開になっているみたいだが、外に居る者達にとっては何のこっちゃである。

その後呼ばれた【学者】や【考古学】の者達に聞いてはみたものの『ネウトロメカニコ(機兵中立国)』の記録自体が少なく、特に情報を得られぬまま時を過ごす事になった。






~それから30分後~


〝最奥5層(正規ルート)『女王の工房』にて行われた『ネウトロメカニコ(機兵中立国)女王ラインハードの因果』を『女王の救済』という形で完了となりました。〟


((((((((((((よく分からない事がよく分からない内に終わってしまった!!))))))))))))


この騒ぎの真相を知りたくてやって来た者達は一様に驚きに身を固めていた。


〝尚、この一連の(正規ルート)での挑戦は完了しましたので、2度と同じルートは辿れなくなりました。〟


「「「「「「ぅえぇえっ!?」」」」」」


よく分からなかったが、後で入って確認すれば良いか、と高を括っていた者達から驚きの声が上がる。


〝挑戦者である冒険者には称号【功労者】、【一国の救世主】を授与します。
また現在、正規ルートの宝物庫にて『魔装具』の選択をし…
あ、決まった様だね。
挑戦者が『魔装・破城槌式鉄甲』を獲得しました。〟


「「「「「「「おー!」」」」」」」


称号の授与に加え、珍しい『魔装具』を受け取ったという報せに沸く周囲の者達。

すると少し間を空けて再び声が響く。


〝1人の女王と彼女を慕う兵達を救ってくれて感謝する。
君の冒険者生活に幸あらん事を祈ってるよ『ガガガ…』尚、ダンジョンの全権がラインハードに移りました。
新しく生まれ変わるであろう『宝物庫』に御期待下さい。〟

プツッ。


やたら人間じみた声の後、再び機械じみた声が聞こえ、報せが終了した。


パッ!「…っとと…」


直後大扉の前方の空間が光だし、ニュッと足が飛び出した。

ズチャリ…

その場に着地したのは、【一神同体】を解除し、肩口から手の先迄を光沢のある鈍色のガントレットを装着したノアであった。


「ふぃーっ…
時間的には2時間も経ってないハズなのに大分潜ってたみたいな錯覚を覚えるよ…」

(『まぁ途中息付く間も無かったし『『タタタッ!』』

『『ガバッ!』』

「お帰りなさいませノアさ『ガシッ!』まふ。」
「ノア様~!寂しかったのに『ガッ!』ゃぉん。」

「分かったから出て来て早々抱き付かないの。
ヴァモスはごめんな、あの時馬鹿デカい声出しちゃって。」

「いえ、何もお役に立てず…ってノア様!?
どうしたんですか、全身血塗れじゃないですか!?」

「あ、クリーン掛けるの忘れてた。」


『宝物庫』から出て来たノアの全身は、先のマディア戦で流した血で塗れていた。
既に乾いてはいるものの端から見れば何事かと思うだろう。


「ノ、ノア君!大丈夫なの!?」

「あ、クロラさん。
えぇ、傷はもう塞がってますし、ただ血に塗れてるだけです。」

「ノア様、大丈夫なのですか!?」

「あれ?ラーベさん…
あぁ、ジョーさんの護衛ですね?大丈夫ですよ。」

「ちょ、ノア君、こんな血塗れで…
一体全体中で何があったのよ!?」

「ん?ハナさんが何故ここに…って、あ。」


クロラ、ラーベ、ハナの3人が心配そうな表情でノアに駆け寄ってきた。
そしてここでノアが漸く周りの状況を確認し出す。


キョロ「……。」(周りに人だかり…)
キョロ「……。」(瓦礫の山…)
キョロ「……。」(デカい亀の人…腕に冒険者ギルド長の腕章…)


チョイチョイ…(クロラ達やベレーザ達を呼ぶ。)


「…あ、どうも、お疲れ様でし『ガシッ!』「まぁ待ちな少年。」


しれっとこの場を離れようと思ったノアだが、でっかいガラパゴに肩を掴まれ、阻止されてしまった。


「…もしかしなくてもこの騒ぎは…」

「まぁそういう事だな。
こちとら訳が分からない内に始まって、訳が分からない内に終わっちまったから困ってるんだ。」

「え、えぇ…
ですが今日はもう遅いですし、この国に来たのも今日が初めてなのでまた後じ『ポンッ。』「"御協力御願い出来ないでしょうかねぇ。"」

(あ、これ逃げられない奴だ…)


ガラパゴは、声量は今までと変わらないながら、何と無く有無を言わさない様な圧を感じさせる雰囲気を纏っていた。


「…それによ、周り見てみろぃ。
皆君に何があったのか聞きたそうにしているだろ?
ここでじゃあまた後日ってなったら四六時中追っ掛けられるぜ?」

「…まぁ確かに…」


周囲を見渡すと、エサを前に「待て!」を食らった犬の様にノアを見詰め、黙って佇む獣人達の姿があった。


「だが安心しな、こっちは何があったか根掘り葉掘り聞くが、住人達には最重要な部分は暈して世間に公表する。」

「それは余計に追っ掛けられるのでは…?」

「全てネタバレ食らうよりか、考察の余地が残ってた方が面白く感じるだろ?
意外かもしれんが、獣人達は割とそう言った気質なんだ。
ただ【学者】や【探索者】の者達は突って来るだろうがな。」

「まぁその程度なら…」

「じゃあ決まりだな。
冒険者ギルドの一室までご同行願おうじゃないか。」

「はい。
皆さんはどうしますか?内容的にネタバレになると思いますが…」

「あ、あの…」

「クロラ、あなたは少年に付いて行ってあげなさい。
私らはもう1回『宝物庫』に挑戦してくるから。」

「ポーラちゃん…うん、分かった。」


という訳でクロラはノアに付いて行く事に。


「それじゃあ私も付いていっても良いかな?
商人として気になる事もあるしね。
それとラーベ、君もノア君の事心配だろう?護衛として着いてきなさい。」

「ふぇ!?は、はい!」


ラーベも追加。


「あ、王に報告があるので私も「「私達も着いて行きまーす!」」


ハナだけで行く予定であったが、騎士団『犬姫』のサクラとモコも着いて行く事になった。
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