ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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獣人国編~ダンジョン『宝物庫』~

ボゴンッ!

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ボゴンッ!〝うぶっ!?〟

ベギンッ!〝げぇっ!…ちょ、待…〟

ズボァッ!〝おごぉああああっ!!〟


【鎧袖一贖】を発動したノアが拳を1発打ち込むとマディアの装甲が凹み、2発目を打ち込むと装甲がひしゃげ、3発目には装甲を突破し、肘の関節部分まで腕を突き刺す。

その間マディアは、尋常では無いノアの力で壁に押し付けられ身動きが取れず、ただ叫ぶ事しか出来なかった。


コツッ…

『ん?この感触…まさか…』

〝あぁあっ!?それに触るなぁっ!!〟

ブワッ!

『!?』ダンッ!

ドスッ!ブスッ!ドスッ!


ノアが突き刺した拳に何か硬い物が当たる感覚を覚え、それを掴もうとすると、体内に張り巡らせていたコードと、マディアが髪の様に垂らしていた触手とが一斉にノアへと向かう。

流石のノアでも全ての攻撃を食らえば毒で1歩も動けなくなってしまうので、マディアの首から手を離して後退する。

だがそれでも3本の触手がノアの左手の甲に突き刺さってしまった。


ズプッ…

『ちっ…』ぎゅぅうう…

ブシュッ…ビチャチャッ…


ノアは咄嗟に左腕を掴んで締め付け、傷口から毒が混じった血を出す。

(『どうだ?』)

(多少残ってるが、戦う分には問題無い。)

(『そうか。
あの嫌がり様、さっきのは恐らく…』)

(あぁ、奴の弱点でもあり動力源でもある魔石だろう。
それよりも毒が厄介だ、多少ごり押しでも仕留めに掛かろう。)

ズダンッ!

〝あぁ!くそっ!来るなぁあぁっ!〟

ブワワッ!

ズダダダダダッ!

スッ、スルルルルッ!


再び接近を図るノアに対し、マディアが触手を放つも悉くかわされ、接近を許してしまう。


〝ああああっ!〟ブォンッ!

『オラァアッ!』バガァッ!


マディアが振るってきた右の打ち下ろしに合わせ、ノアも<渾身>を発動した上で右の拳を振るう。

いくらマディアの装甲が強固になったとは言え、【鎧袖一贖】で更に強化されたノアの一撃が相手では石と硝子である。

ノアの攻撃を受けた右腕は、肘の部分から木っ端微塵に砕け、残骸の雨が降る。


〝がぁああっ!〟ズバッ!

ダンッ!ドズゥッ!〝おぶっ!?〟


距離を取る為に足元から放った触手攻撃も、出始めを右足で踏み潰された挙げ句、がら空きになった右脇腹に強烈な蹴撃を食らうハメになった。

バキッ…メキメキ…

右脇腹には亀裂が入り、中のパーツが所々露出してしまっている。


〝…はぁっ!〟ボッ!

ガッ、ガシッ、ミシッ、ボギュッ!


苦し紛れに放った左の裏拳も受け止められ、3方向違った方向に捻り折られ、力無くだらりと垂れ下がった。


『シッ!』バキャッ!


そうして殆ど無防備になった左脇腹に、渾身の右フックを叩き込むと、肘まで突き入れる。


〝がっ…な、何を…〟

『人間の骨格そのまんま踏襲してるんならあるハズだろう?
『ガキッ!』背骨がよ!』


突き入れたノアの腕が、マディアの体内にあった太く、強固な金属柱を探り当てる。


〝!?止せぇ!ヤメロ!〟

ガガッ!ゴッ!

マディアは折れた腕や、粉砕された腕であるにも関わらずノアの動きを止めようと必死にもがくが

ガッ、ガキッ、ガシッ、ガキッ!

『お前はさっきから叫ぶか"止めろ"位しか言わないじゃねぇか!
いい加減お前さんの相手をするのも嫌になった所だ!』

〝くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそぉっ!離れろぉっ!〟

ドスッ!ブスッ!ドズッ!ドスッ!ズドッ!ズブッ!

『ぐっ、ぅぐっ!…っ!』ボタボタ…


何としてでもノアを引き剥がそうと、マディアはノアの首や手足に無数の触手を突き刺していく。
それによってノアの全身からは血が滴り、足元には血溜まりが出来ていく。

だがノアは<激痛耐性>や<痩せ我慢>、自前の<毒耐性>を信じ、背骨を掴んだ手に更なる力を込めていく。


『暴れたきゃ好きなだけ暴れりゃ良い!
これで…『ミシミシ…』少しは『ピキビキッ…』大人しくしやがれってんだ!』

ボギンッ!

ガグンッ!〝あがっ!?〟

グシャッ!カランカラン…


ノアが背骨を握り潰した直後、短い悲鳴と共に膝から崩れ落ち、マディアは強かに顔を打ち付けてピクリとも動かなくなった。

ドッ!『ぐっ…』ドドッ!

ノアは毒が回っていた為、それに上手く反応出来ずに巻き込まれる形で5メル程離れた場所に弾き飛ばされてしまった。







トトト…

「だ、大丈夫ですか、冒険者様…!?」


ラインハードが血に塗れて俯せで倒れるノアに駆け寄って来た。

身を案じるかの様にノアの体に触れようとすると


『さ、触るな!
…今の僕は毒の塊みたいな物だ…触れるだけでも毒を貰ってしまうだろう…』ポタポタ…

「し、しかし…」

『はは、だーいじょうぶ…重傷に見えるでしょうが、見た目程傷は深くない。
体の20ヶ所に穴が空いてるのと毒の影響で体が上手く動かせないだけですので…』ポタポタ…


普通、人はそれを重傷と言うのだが、ノアにとってはもう何度も経験している出来事の1つに過ぎず、クラーケンの一件に比べれば屁でも無い、と思っている程である。







バチンッ、ザキッ!「…ぃしょっと…」


【鎧袖一贖】を解除したノアは、腰から荒鬼神を外して床に突き刺し、杖の様に宛がって立ち上がる。

ふらつくノアを心配する様に直ぐ後ろにはラインハードが控えていた。

ポタタ…ヨロヨロ…

〝…は、ぐっ…待て、待って待って待って待って!もう良いでしょ?
お互い戦闘不能みたいな物じゃない、見逃してくれればあなたも、そこの女にも関わらない様にする!だか「死ね。」

グォッ!

問答無用、とばかりに床に突っ伏したマディアへ向け、荒鬼神を振り上げるノア。
狙いは先程触れた動力源の魔石がある胸の辺り。

だが


〝糞がっ!〟ビキンッ!ズガンッ!

「くそっ…往生際の悪い…」


荒鬼神が突き刺さる直前、腰から上を外し、破壊されて使い物になら無くなった腕も外して虫の様に這って逃げ出すマディア。


ズボッ!「ふっ!」ブォンッ!

バギャッ!〝はっ!ははっ!〟


直ぐ様床から荒鬼神を抜いたノアはマディアへ向けて投擲。
左肩を抉り飛ばされながらも、嬉々とした声を上げるマディア。

それもそのハズ、進行方向にはラインハードが立っていたからだ。


シュルルッ!「あっ!?きゃぁあっ!?」

〝ははぁっ、捕まえたァ…!
オラァ、これを見な糞ガキがぁっ!
動くんじゃないよ!少しでも動いてみろ、大事に守っていたお姫さんの体がズタズタに引き裂かれる事になるよぉ?〟


這いつくばってラインハードの元まで辿り着いたマディアは、触手を伸ばして足に絡み付くと、即座にラインハードに触手を突き付け、口を塞いだ上にノアへ向けて盾の様に構えた。

マディアは機兵なので表情は分からないが、腹立たしい程の笑みを浮かべている事だろう。


〝くけけけ、形勢逆転って奴ね。
好き勝手やってくれたじゃなーいー?
これからたーっぷり嬲ってやるわ、覚悟してなさい?〟

「好きにすりゃ良いさ。
ただその人は関係無い、満足したら解放して貰えますか?」

〝あー、良いとも。
その代わり100発はぶん殴らせて貰うわよ?〟

「100発…ね…案外優しいんですね。」

〝はん!そんな口を聞くのは100発食らった後にしな!〟

ブンッ!ゴギンッ!


マディアはラインハードを触手で拘束したまま、無事な右腕を振るいノアの顔面に拳を叩き込んだ。
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