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獣人国編
ハナさん、という方
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「あの、ノア様…
ハナさん、という方とはお知り合いなのですか?」
「うん、以前2人と出会う前の王都で出会ってね、割と"衝撃的な事"を言われたんだ …」
「「衝撃的な事?」」
「あ、あ…ノア殿その話は…」
王都で出会った際、ハナはフォルクから"ノアの素"が見たいという頼みを叶える為、お互い初対面な上にクロラが居るにも関わらず求婚するという行動に出た。
結果ノアの素を見る事には成功したものの、ハナはその時の事をずっと引き摺っていた。
「まぁ、その辺りは置いといて、ハナさん、ってのは愛称みたいなもので、本当はハナ…あれ?ハナ…あれ?何だったっけな…」
以前名前を言われたハズなのだが、その直後の求婚関連のゴタゴタで、すっかり記憶が吹き飛んでしまった様だ。
「あ。」
「「え?」」
ふと周囲を見てみると、先程『獣人国素手喧嘩好き四天王』4人の解説をしてくれた市民2人がまだその場に残っていた。
どうやら大通りの為、人流も多く、動くに動けなかった様だ。
「あの、すいません。
先程の名口調でこちらのハナさんの解説お願いして頂けないでしょうか?」
「え、えぇ…」
「分かりました…」
2人は突然のお願いに戸惑いつつも快く承諾してくれた。
「おい見てみろ!
獣人国の中でも特に忠誠心の高い者のみで結成された騎士団『犬姫』の団長、ハナリーレストバーニヤが現れたぞ!」
(あーそうそう、そんな名前だったね。)
(『解説が居てくれると助かるな。』)
「あぁ。忠誠心の高さに加え騎士としての剣技もかなりの腕前を誇り、フォルク第三王女からの信頼も厚い。」
「いやぁ、そんなそんな…(照)」
(へぇ、団長さんだったのか。)
(『ただの出会い目的じゃなかったのな。』)
「ただ忠誠を誓うあまり、私生活では良縁に恵まれず、「良い男紹介して」と、寿退団した元部下に相談を持ち掛け」
((『うん?』))
「終いには、先日訪れた王都で彼女持ちの人族の少年に求婚するという奇行まで起こすという暴挙に「止めろぉおー!それ以上私の汚点を抉るのは止めてくれぇえー!!」
「あー…」
「にゃぁ…」
解説の2人の言葉を遮る様に叫んだハナは、その場に膝から崩れ落ちた。
先程ノアが言っていた"衝撃的な事"と言う言葉と、解説2人の話していた内容で色々と察したヴァモスとベレーザは、掛ける言葉が見付からないと言った様子でただ立ち尽くしていた。
少しすると、気持ちの整理が付いたのかガバッと起き上がった。
「…そ、そうだ、こんな所で油を売っている場合ではなかった!
現在街の各所に私含めた団員達がビラを配っている途中であったのだ!」
「ビラを?何のですか?…」
「フォルクお嬢様が君達に気を利かせてな、事情を知らない者達への注意喚起の様なものだ。
はいこれ。」ピラッ。
ハナからビラを渡されたノアは、文面を確認してみる事に。
「えーっと…
"本日、夕刻より人族の少年と共に我が国に訪れた同族の男女についてお願いしたい事がある。
見た目等は敢えて明記しないが、獣人であれば1発で分かる事だろう。
この男女は、長らく俗世とは隔絶された場所に居た為、見聞きする物全てが初めての物ばかりである。
変に怖がらせ無い様、必要以上の接触は避けて欲しい。
とは言え、腫れ物扱いをしろと言う訳では無い。
普段通り、仲の良い友人と接するのと同様の感覚でその者達とも接して頂きたい。"か…」
要は先程の様に、目が合っただけで求婚、みたいな事は止めてくれというお達しである。
実際の所、獣人の国に来てまだ1時間にも満たない内に厄介事が発生した為、暫く滞在するつもりであったノアとしては悩みの種でもあった。
このビラを配ったからと言って、直ぐ様周辺状況に変化が現れる、なんて事は無いとは思うが、これが切っ掛けとなって多少なりとも落ち着いてくれる事を願うとしよう。
「…あ、まだ続きがある…
"尚、この男女に関して聞きたい事や要望等があれば、王城まで直接来て貰うか、2人の保護者代わりである少年を通して頂きたい。
この少年の事も敢えて明記しないが、これまた獣人であれば1発で分かる事だろう。"だってさ。」
「…えっと、つまり…」
「さっきみたいにベレーザに求婚する際は王城か僕を通してね、って事だね。」
「そ、それってノア様に迷惑が…」
ポン。
ノアは心配そうにしているベレーザの頭を撫でつつ
「ふふ、前にも言ったけど君達2人を助けた段階である程度腹は決まってた、と言ったろ?
それに獣人の方達は、問題解決に腕っぷしを使ってくる様だし僕としてもそっちの方が得意だしね。
2人はこの国を楽しむ事だけ考えれば良い。」
「「は、はい。」」
「さて、お腹空いただろうから街を散策がてら屋台回ろう屋台。
さっきから良い匂いがあちこちから漂ってきて辛抱堪らなかったんだよね。」
「はい、ボクもです。」
「おにゃじく。」
「ヴァンディットさんはどうですか?」
「お腹の方はそこそこですが、珍しい素材が無いか見て回りたいですね。」
「という訳でハナさん。
僕達は街を回ろうと思うのですが、良いですか?」
「えぇ、獣人国ヴァーリアスフェアレスを心行くまでお楽しみ下さい。」
という事で漸くノア達一行は、街の散策を開始する事にした。
『獣人国ヴァーリアスフェアレスは、形が多少歪ではあるものの、直径3ケメルもある巨大な円形の街である。
その中を大通りが十字に敷かれ、道沿いに屋台が連なり、その裏手には市民達の家々が所狭しと建てられている。
街を中心に西に進めばアルバラストが、東には怨敵であるヒュマノ聖王国、北は王都で、大分南下した所にドワーフの国があるとの事。
ちなみに、ヒュマノとヴァーリアスフェアレスとの中間地点には年々広がりを見せている、広大な『滅びの森』という森があり、そこから溢れた魔獣や、高位のモンスターが生息している為、冒険者向けに討伐依頼や素材採取依頼が頻繁に行われている。
その上『滅びの森』がある事で、ヒュマノからの間者すらその森を突っ切ってまで獣人国に入り込む事はしないそうだ。
ヒュマノからすれば「間者を送り込んでまで探る用事も無い」と強がっているが、ただ単に『滅びの森』を突っ切れるだけの実力を持つ者が居ないだけである。
主な産業は豊富な果実の栽培と、地下から採掘する事で得られる宝石等が主である。
その際に採れる膨大な量の粘土等を用いてレンガ等も自国、他国向けに販売していたりする。』
という情報を、巨大な何かの塊肉を丸焼きにしている屋台の主人から聞いた。
ジュー…パチチ…
「わぁああ…」
「ふにゃぁあ…」
巨大な塊肉が火に炙られ、脂が滴る度にヴァモスとベレーザが目をキラキラさせている。
「これ、何の肉なんですか?」
「『滅びの森』で獲れた『デリィヴァ・バッファロー』っつー超凶暴なモンスターの肉だよ。
バカデカいから1頭倒すだけで80人前位の肉が獲れるんだ。」
「へー、今度『滅びの森』関係の依頼合ったら受けてみようかな。」
「いやいやそんな気軽に行ける様な所じゃ無いよ?
さ、焼き上がったぞ。
デリィヴァ・バッファローの塊肉3人前な。」
「「いっただっきまーす!」」ガブリッ!
「頂きます。」ハグッ!
屋台の主人からこんがり焼き上がった塊肉を渡され、ヴァモスとベレーザは直ぐ様かぶり付く。
屋台という事もありナイフやフォークは提供されず、塊肉にただ棒が突き刺さっただけ、という大分豪快な見た目をしている。
「…柔。」
肉自体しっかり焼いてあるハズなのに滅茶苦茶柔らかく、直ぐ様肉汁が溢れ出る。
「「ンンンフフフフフフ。」」
ヴァモスとベレーザが何とも言葉になら無い言葉を発し、美味しさを表現している。
そんな中
「うん、美味し……あれ?」
「おや、どうしたんだ少年?」
「あ、いや、肉はスゴい美味しいんですが、何かえぐ味を感じて…
…これは、塩…かな…」
「美味しい」と言い掛けたノアだったが、そんな評価を下す。
普通であれば怒られそうなものだが
「うーん…少年はなかなか良い舌を持ってるな。
味に影響が無い様、塩の量は最低限に抑えたつもりだったが、分かる人には分かっちゃうか…」
屋台の主人は顎に手をやり、参ったな、といった顔をする。
何か事情がある様なので聞いてみると
「実はこの肉の味付けで使った塩はな、ヒュマノから買い付けた物なんだ。」
「…ほぅ。」
ハナさん、という方とはお知り合いなのですか?」
「うん、以前2人と出会う前の王都で出会ってね、割と"衝撃的な事"を言われたんだ …」
「「衝撃的な事?」」
「あ、あ…ノア殿その話は…」
王都で出会った際、ハナはフォルクから"ノアの素"が見たいという頼みを叶える為、お互い初対面な上にクロラが居るにも関わらず求婚するという行動に出た。
結果ノアの素を見る事には成功したものの、ハナはその時の事をずっと引き摺っていた。
「まぁ、その辺りは置いといて、ハナさん、ってのは愛称みたいなもので、本当はハナ…あれ?ハナ…あれ?何だったっけな…」
以前名前を言われたハズなのだが、その直後の求婚関連のゴタゴタで、すっかり記憶が吹き飛んでしまった様だ。
「あ。」
「「え?」」
ふと周囲を見てみると、先程『獣人国素手喧嘩好き四天王』4人の解説をしてくれた市民2人がまだその場に残っていた。
どうやら大通りの為、人流も多く、動くに動けなかった様だ。
「あの、すいません。
先程の名口調でこちらのハナさんの解説お願いして頂けないでしょうか?」
「え、えぇ…」
「分かりました…」
2人は突然のお願いに戸惑いつつも快く承諾してくれた。
「おい見てみろ!
獣人国の中でも特に忠誠心の高い者のみで結成された騎士団『犬姫』の団長、ハナリーレストバーニヤが現れたぞ!」
(あーそうそう、そんな名前だったね。)
(『解説が居てくれると助かるな。』)
「あぁ。忠誠心の高さに加え騎士としての剣技もかなりの腕前を誇り、フォルク第三王女からの信頼も厚い。」
「いやぁ、そんなそんな…(照)」
(へぇ、団長さんだったのか。)
(『ただの出会い目的じゃなかったのな。』)
「ただ忠誠を誓うあまり、私生活では良縁に恵まれず、「良い男紹介して」と、寿退団した元部下に相談を持ち掛け」
((『うん?』))
「終いには、先日訪れた王都で彼女持ちの人族の少年に求婚するという奇行まで起こすという暴挙に「止めろぉおー!それ以上私の汚点を抉るのは止めてくれぇえー!!」
「あー…」
「にゃぁ…」
解説の2人の言葉を遮る様に叫んだハナは、その場に膝から崩れ落ちた。
先程ノアが言っていた"衝撃的な事"と言う言葉と、解説2人の話していた内容で色々と察したヴァモスとベレーザは、掛ける言葉が見付からないと言った様子でただ立ち尽くしていた。
少しすると、気持ちの整理が付いたのかガバッと起き上がった。
「…そ、そうだ、こんな所で油を売っている場合ではなかった!
現在街の各所に私含めた団員達がビラを配っている途中であったのだ!」
「ビラを?何のですか?…」
「フォルクお嬢様が君達に気を利かせてな、事情を知らない者達への注意喚起の様なものだ。
はいこれ。」ピラッ。
ハナからビラを渡されたノアは、文面を確認してみる事に。
「えーっと…
"本日、夕刻より人族の少年と共に我が国に訪れた同族の男女についてお願いしたい事がある。
見た目等は敢えて明記しないが、獣人であれば1発で分かる事だろう。
この男女は、長らく俗世とは隔絶された場所に居た為、見聞きする物全てが初めての物ばかりである。
変に怖がらせ無い様、必要以上の接触は避けて欲しい。
とは言え、腫れ物扱いをしろと言う訳では無い。
普段通り、仲の良い友人と接するのと同様の感覚でその者達とも接して頂きたい。"か…」
要は先程の様に、目が合っただけで求婚、みたいな事は止めてくれというお達しである。
実際の所、獣人の国に来てまだ1時間にも満たない内に厄介事が発生した為、暫く滞在するつもりであったノアとしては悩みの種でもあった。
このビラを配ったからと言って、直ぐ様周辺状況に変化が現れる、なんて事は無いとは思うが、これが切っ掛けとなって多少なりとも落ち着いてくれる事を願うとしよう。
「…あ、まだ続きがある…
"尚、この男女に関して聞きたい事や要望等があれば、王城まで直接来て貰うか、2人の保護者代わりである少年を通して頂きたい。
この少年の事も敢えて明記しないが、これまた獣人であれば1発で分かる事だろう。"だってさ。」
「…えっと、つまり…」
「さっきみたいにベレーザに求婚する際は王城か僕を通してね、って事だね。」
「そ、それってノア様に迷惑が…」
ポン。
ノアは心配そうにしているベレーザの頭を撫でつつ
「ふふ、前にも言ったけど君達2人を助けた段階である程度腹は決まってた、と言ったろ?
それに獣人の方達は、問題解決に腕っぷしを使ってくる様だし僕としてもそっちの方が得意だしね。
2人はこの国を楽しむ事だけ考えれば良い。」
「「は、はい。」」
「さて、お腹空いただろうから街を散策がてら屋台回ろう屋台。
さっきから良い匂いがあちこちから漂ってきて辛抱堪らなかったんだよね。」
「はい、ボクもです。」
「おにゃじく。」
「ヴァンディットさんはどうですか?」
「お腹の方はそこそこですが、珍しい素材が無いか見て回りたいですね。」
「という訳でハナさん。
僕達は街を回ろうと思うのですが、良いですか?」
「えぇ、獣人国ヴァーリアスフェアレスを心行くまでお楽しみ下さい。」
という事で漸くノア達一行は、街の散策を開始する事にした。
『獣人国ヴァーリアスフェアレスは、形が多少歪ではあるものの、直径3ケメルもある巨大な円形の街である。
その中を大通りが十字に敷かれ、道沿いに屋台が連なり、その裏手には市民達の家々が所狭しと建てられている。
街を中心に西に進めばアルバラストが、東には怨敵であるヒュマノ聖王国、北は王都で、大分南下した所にドワーフの国があるとの事。
ちなみに、ヒュマノとヴァーリアスフェアレスとの中間地点には年々広がりを見せている、広大な『滅びの森』という森があり、そこから溢れた魔獣や、高位のモンスターが生息している為、冒険者向けに討伐依頼や素材採取依頼が頻繁に行われている。
その上『滅びの森』がある事で、ヒュマノからの間者すらその森を突っ切ってまで獣人国に入り込む事はしないそうだ。
ヒュマノからすれば「間者を送り込んでまで探る用事も無い」と強がっているが、ただ単に『滅びの森』を突っ切れるだけの実力を持つ者が居ないだけである。
主な産業は豊富な果実の栽培と、地下から採掘する事で得られる宝石等が主である。
その際に採れる膨大な量の粘土等を用いてレンガ等も自国、他国向けに販売していたりする。』
という情報を、巨大な何かの塊肉を丸焼きにしている屋台の主人から聞いた。
ジュー…パチチ…
「わぁああ…」
「ふにゃぁあ…」
巨大な塊肉が火に炙られ、脂が滴る度にヴァモスとベレーザが目をキラキラさせている。
「これ、何の肉なんですか?」
「『滅びの森』で獲れた『デリィヴァ・バッファロー』っつー超凶暴なモンスターの肉だよ。
バカデカいから1頭倒すだけで80人前位の肉が獲れるんだ。」
「へー、今度『滅びの森』関係の依頼合ったら受けてみようかな。」
「いやいやそんな気軽に行ける様な所じゃ無いよ?
さ、焼き上がったぞ。
デリィヴァ・バッファローの塊肉3人前な。」
「「いっただっきまーす!」」ガブリッ!
「頂きます。」ハグッ!
屋台の主人からこんがり焼き上がった塊肉を渡され、ヴァモスとベレーザは直ぐ様かぶり付く。
屋台という事もありナイフやフォークは提供されず、塊肉にただ棒が突き刺さっただけ、という大分豪快な見た目をしている。
「…柔。」
肉自体しっかり焼いてあるハズなのに滅茶苦茶柔らかく、直ぐ様肉汁が溢れ出る。
「「ンンンフフフフフフ。」」
ヴァモスとベレーザが何とも言葉になら無い言葉を発し、美味しさを表現している。
そんな中
「うん、美味し……あれ?」
「おや、どうしたんだ少年?」
「あ、いや、肉はスゴい美味しいんですが、何かえぐ味を感じて…
…これは、塩…かな…」
「美味しい」と言い掛けたノアだったが、そんな評価を下す。
普通であれば怒られそうなものだが
「うーん…少年はなかなか良い舌を持ってるな。
味に影響が無い様、塩の量は最低限に抑えたつもりだったが、分かる人には分かっちゃうか…」
屋台の主人は顎に手をやり、参ったな、といった顔をする。
何か事情がある様なので聞いてみると
「実はこの肉の味付けで使った塩はな、ヒュマノから買い付けた物なんだ。」
「…ほぅ。」
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