ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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再びアルバラスト編

ジェイル、ロゼ、ポーラ

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大体2時間程経った頃、ノア達に先んじてジェイル、ロゼ、ポーラ、商人のベイゼルらは、アルバラストの北門付近に到着した。

のだが


「「「「これは一体どういう状況だ…?」」」」


以前アルバラストを訪れた時はいつの時間でも街からは笑い声や、常時開催のドンチャン騒ぎの音が聞こえて来たものだ。

ただ現在アルバラストへの道は、300メル程手前から篝火が焚かれ、街からは照明弾の様な物が3発程上がり、辺りは煌々と照らされている。

北門を直ぐ出た辺りの場所にも篝火が焚かれ、何故か観客席が設置されている。

街を覆う防壁の上にはギッチギチに人が集まり、"何か"を今か今かと待ちわびている様だ。

ジェイル達の一団が現れると、その集団から色々と声が上がる。


「来たか!?」
「いや、違うな。普通の冒険者達だ。」
「あれ?あいつはベイゼルじゃないか。」
「おーい、お前さん達!早く街に来た方が良いぞー!」


状況的には物々しいのだが、辺りに渦巻く雰囲気に覚えがある。
先日王都で行われた御前試合の開始直前の期待と興奮を静かに抑えている雰囲気に似ている。

すると


「皆さん、アルバラストへお急ぎ下さい。
もう間も無くここは戦場となります。」


辺りを警戒していた街の兵達がジェイル達の元に。


「え?また野盗でも現れたのですか?」

「いえ、実はかくかくしかじかに御座います。」


兵達からこの状況を掻い摘まんで説明される一同。


「「「「え?何で…?」」」」

「「本当ですよね…」」


説明を受けた上で訳が分からない、と言った様子の一同に、苦笑いを返す事しか出来ない兵達であった。






「よっ、こいしょ、っと…
これで魔導具の配置は完了したかな?」

「ええ、これで全てです、アルバ領主!」


兵達と共に街の各所に魔導具を設置したアルバは額の汗を拭う。


(…にしても、"現役"の頃に盗ったこの認識阻害の魔導具がまさか役に立つとは…いやはや…)

「さて、後は"彼"の到着を待つだけ…ん?竜?」


アルバが北門の方に目をやると、東洋で見られる翼の無い竜が空を漂っているのを視認。
その竜が徐々に降下している様だ。







グルルル。

スタッ!トッ!ストッ!スタッ!


「あら?クロラ達じゃない、少年は…と言うかその人誰?」

「あ、ポーラちゃん。
ノア君はこの道の先で諜報部の人と話してるから先に門兵の人に冒険者カードを見せに来たの。
…で、この人は…」

「そこからは私が話そう。
失礼、お嬢さん。私はヴァリエンテ・ルルイエ、この騒ぎを起こした不届き者の父親だ。
兵の者、我が息子は今何処にいるかな?」

「は!こちらに。案内します。」

「…頼むよ…
という訳で皆々方、すまないが失礼するよ。」

「あ、ここまで乗せて頂きありがとうございました。」


クロラに続いてヴァモスとベレーザが頭を下げる。
ルルイエは門兵らと共に門を潜り、街の中へと消えていった。


「さて、一段落した様だから早い所街に入るとしようか。」

「「「「「「「うわっ!?」」」」」」」


後ろから声が掛かり振り向くと、皆の背後に諜報部の者が立っていた。


「あれ?あなたがここに居ると言う事は…ノア君は?」

「彼は道の先で腹ごしらえを済ませてから来るよ。
それと彼から"要望"を預かってるから伝えに来たんだ。」

「「「「「「「要望?」」」」」」」








『『『『えー、"野盗200人殺し"の討伐にご参加の皆様にお伝えします。
もう間も無く討伐対象の方が街に来られますのでこの像の前にお集まり下さい。』』』』


街の中では『エレメンタル・フェアリーズ』の4人が参加者に向けて呼び掛けを行う。


「っしゃぁっ!遂に始まるか!」
「ひゃっはー!楽しもうぜぇ!」
「待ってたぜ!この時をよぉっ!」


街の各所にてノアの事を待っていた者達が『エレメンタル・フェアリーズ』の呼び掛けに応えて中央に続々と集まっていく。

今回の依頼の定員上限により参加出来なかった者達(主にノアの通り名を聞いて純粋に戦いたい者達)が少し羨ましげに参加者を見やる。


『『『『えー、ここで皆様に"野盗200人殺し"から"要望"があるとの事でお伝えします。』』』』

ざわっ…

「何だ、何だ?我に返って怖じ気付いちまったかぁ?」
「妥協案の提案かな?」
「はっはっは!八百長はごめんだぜ?」


などなど、酷い言われ様だが、彼女らの口から発せられたのは全く逆の事であった。


『『『『"待っててやるから今すぐ支援魔法(バフ)を掛けまくれ。"』』』』

「「「「「「「「は?」」」」」」」」

『『『『"攻撃、防御、体力、スピードなどなど、上げられるステータスは全て上げてから掛かって来い。
"野盗200人殺し"なんて物騒な通り名が付いてるが別に殺すつもりは無い。
今自分が待機している場所まで酒の臭いが漂ってきてるが、大方数にかまけて余裕ぶっこいて酒でも飲んで待ってるんだろ?"』』』』


実際その通りで大半の参加者は泥酔状態である。


『『『『"負けた時の言い訳に使われるのもなんだからさっさと酔い醒ましてバフ掛けて準備しろクソ共。
今回のこの件は割と頭に来てて、ストレス溜まってるから発散しに来たのにお前らがそんなんじゃ観てる方も興醒めしちまうぜ?"』』』』

プッ…
クスクス…
あはは…

討伐対象から心配されると言う状況に周囲から笑い声が上がる。


『『『『"飲んだくれ200人だっけ?
そんな奴ら大した脅威にならないから、もういっそこの際だ、俺の噂を聞き付けてやって来た挑戦者何かもアルバラストに居るんだろ?
お前らも観てるだけじゃつまらんだろうから全員纏めて掛かって来な、相手してやるよ。"』』』』


ざわっ…


この発言に街の各所からどよめきが上がる。


『『『『"結果的に"野盗200人殺し"なんて
通り名が付いちまったが、元々野盗500人を1人で相手取るつもりだったんだ。
現状から100人増えようが200人増えようが誤差よ誤差。"』』』』


「ほ…言ってくれるねぇ。」

「滾るぜぇ…」

「それでこそ、あの御方だ…」


街の至る所に居る冒険者が腰を上げて像の元を目指す。


『『『『"それに俺の通り名を知ってる奴等は俺の【二つ名】も知ってんだろ?
俺は【鬼神】のノアだ。
そんな細かい事は気にしねぇから戦いたい奴はこの際片っ端から掛かって来い、全員相手にしてやる。
そんじゃ、今から行くから準備しときな。"
だ、そうでーす。』』』』


「「「「「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」」」」


微震が走る程の歓声が上がると、各々が行動を開始する。

ノアに全く脅威と認識されていない酔っ払い共は、酔い醒ましを求め、顔を真っ赤にして錬金術ギルドへ駆け出し、参加出来ないと思っていた者達は、急ぎ武器防具の手入れを行う。

像の前でノアからの要望を読み上げ終わった『エレメンタル・フェアリーズ』の4人は、それぞれ魔力を練り始める。


『『『『皆さーん!頑張って下さーい、ご武運をお祈りしてまーす!』』』』

シュパァッ!

4人の妖精からの激励と共に広域支援魔法街全域に発動。
参加者所か全ての者に攻撃力(大)・防御力(大)・体力常時回復・移動、反応速度上昇率2割増が付与される。

勿論、ギルド内で1発ぶん殴られ、頬を赤く腫らしているカルルも例外では無い。


ガ、ゴォオン…


広域支援魔法が発動されたのと時を同じくして北門が開け放たれていく。
徐々に開かれていく門の遥か向こうでは、少年が1人街を目指して歩みを進めていた。






ガ、ゴォオン…

「お、開いた。」

(『つー事はいよいよ開戦だな。』)

「まさか僕が"こっち側"になるとはね。」

(『まぁ良いじゃねぇか、この際思いっきり暴れてやろうじゃねぇか。』)

「それもそうだ。
こっちとしては対話したつもりだったけど、良い返事が貰えなかった。ならば…」

『戦争だな。』
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