ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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王都編

やっほー、数日ぶりー

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「やっほー、数日ぶりー。」 

「数日振りですねバラスさん。」


ノア達が旧試合場に到着すると、既に街中の解体職人が待機していた。
冒険者ギルドのマスターであるジャロルから事前にサイズを聞いていたのであろう、大工が櫓を2基立てている。

(解体で櫓が出てくるとはなぁ…)

と、ノアが現場の状況を確認していると、解体職人の集団がノアの元にやって来る。
ちなみにその中にアルキラーもしっかり居る。


「おぅ、持ち込んで来たのは【鬼神】の坊主だったか!
準備は完了してないが早速現物を見たい。
建設中の櫓ん所に出して貰えっか?」


代表の者だろうか、筋骨隆々のおっちゃんが前に出て来てノアに素材を出す様に促す。

ノアは指定された場所へ移動し


「あ、皆はそこで待っててね。」


と一緒に着いてきたクロラ達に待機する様に言う。


「ランペイジ・クロコダイルの尻尾。」


と唱えると、アイテムボックスからズルンと尻尾の先端が飛び出し、地面に置きつつ後ろに下がっていき、先ずは尻尾を取り出す。 

おお~っ…

周りの解体職人から声が上がる。
モンスター名を聞いた数人は最初、魔素強化された個体だと知らない為、大した事無いな、と判断していたが、いざ20メルを越える尻尾が取り出されると皆の目付きが変わった。

クロラ達も目をパチクリさせている。


「ランペイジ・クロコダイルの胴体。」

おおおっ!?

と唱えるとアイテムボックスから巨大な頭とゴツゴツとした胴体が姿を現すと、一気に場が盛り上がってきた。

ある者は見た事無い大きさの素材に目を輝かせ、ある者はどう解体するか周囲の者と話し合ったりしている。

また、ここに居る集団とは大分離れた場所でこちらを見ている7人組からは「先週あのモンスターと同じ種と戦ったわい。」と言う会話が聞こえたりしている。




「…と、コレの解体をお願いしたいのですが良いでしょうか?」

「おお、任された!これだけの大物はいつ以来か!
若手の良い教育材料にもなるぜ!
お前ら、やったるぞ!!」

「「「おおー!」」」 


解体職人が意気揚々と解体作業を開始した。
ちなみにバラスは大剣クラスの包丁を肩に担ぎ、通常の職人では対処が難しい部分を担当するらしい。





「うわぁ…凄い大きさ…
ノア君、あれ、1人で倒したの?」

「グリードにも攻撃して貰ったけど、トドメは自分が刺したよ。」

「なぁノア君…あのワニの首の所、内側から外側に向かって突き破ってる様に見えるんだが…」

「察しが良くて助かるよジェイル。」


残りのロゼとポーラもトドメの刺し方を察したのか、隠す事無く「うへぇ…」という顔をしていた。





~30分後~

やはりと言うべきか、全長50メルを越えるワニの解体は、容易に事が進まない様だ。

ノアは荒鬼神を使っている為、特に苦慮する事は無かったが、ランペイジ・クロコダイルの岩肌の様な強固な皮を中々突破出来ずにいるらしく、解体職人達は額に汗を浮かべ、侃々諤々と話し合い、位置を変えながら地道に切り進めていた。

バラス、アルキラーの2人が持つ道具を使えばその辺り容易いだろうが、解体職人達の矜持を考えてか静観に務めている。

その間アルキラーは離れた場所に居た7人組の所へ行き、何やら話している様なのでノアはそれを気遣い、<聞き耳>を切る事にした。


「…食事に誘ってくれたのは有り難いけど、まだまだ掛かりそうだから皆食事に行ってきても良いよ?」

「いやいや、誘っといて『腹減ったから先行くよ』は酷いからね、付き合うよ。」


ヴァモス、ベレーザは言わずもがな、クロラ、ロゼ、ポーラの3人もジェイルと同意見の様だ。


「そう言う事ならこれ食べる?」


と、ノアがアイテムボックスから取り出したのはランペイジ・クロコダイルの肉を使って作ったハンバーグサンドである。

当初は北の村でバドロ達用の飯兼素材採取依頼3日目、4日目に向けての食事として作製したのだが、依頼が中断となった為アイテムボックスの中に大量に残る事になってしまった。

アイテムボックスの中に入れてるから腐る事は無いが、当分はこのハンバーグサンドが主食になるだろうなぁ、と考えていた。

ノアとしては残飯処理みたいな扱いをさせてる様で申し訳なさそうに差し出したつもりだったのだが、ノア自身の料理の腕前と【ソロ】の特性が加算された食事の為、そのハンバーグサンドからは腹の虫を鳴らすのには十分な香りが漂っていた。


ぐぎゅるるるる~…


ノアの隣に居るクロラを筆頭にジェイル、ロゼ、ポーラの3人に加えヴァモスとベレーザも同様に腹が一斉に鳴り出す。


今更だがごく一般的な新人冒険者の食事を紹介する。

王都等の街に滞在している時は、稼ぎさえあれば屋台街に立ち寄って食事を摂れば良いが、外ではそう言う訳にはいかない。

新人冒険者故<スキル>が未熟な為、おちおち外で料理も出来ないので、基本的な食事は保存の利く物が殆ど。
干し肉、塩漬け肉、硬ぇパン、デザートは干した果物とかだ。

その辺り両親からの"教育"を受けたノアだから出来る事であるので、ノアが普通とは思ってはいけない。


「い、良いのかい?幾らになる?」

「いや、お金は良いよ。
先を見越し過ぎて作り過ぎちゃっただけだから。」

「いやいや少年よ、これはお代取れるぞ…
そのハンバーグサンドからヤヴァイ匂いしてるし…」

「臭い?アレ?
日が経っちゃったかな…?」くんくん

「ノア君ってどうしてそうたまにポンコツになるのかなぁ…」


結局ノアは皆からお代を受け取る事はしなかった。
クロラ達は納得してない様子だったが、既に隣ではヴァモスとベレーザがガツガツと食べ進めているのを見た為、食欲の方が勝ってしまった様だ。


「じゃあ「「「「頂きまーす!」」」」

『ガプッ!』

皆の反応については言わずもがなである。
割と大きめのサイズだった為、皆一様に4口目までは無言でバクバクと食べ進めていた。


「ふももも。」

「お、出ましたね、ふももさん。」

「うん、だってふごくおいひいもん。」


クロラから「ふもも」が出た事にご満悦のノアである。


「あらクロラ、あなた前まで少年にその『ふもも姿』見られるの躊躇ってたじゃない?」

「そーそー、今までだったらノア君が見てる事に気付いたら平静を装ったりしてたじゃん。」


目敏く反応の変化に気付いたポーラとロゼはクロラに詰問してきたので、ノアが代わりに返答する。 


「ふふふ、僕の大切な思い出なのですよ。」


実にザックリとした説明にロゼは首を捻るが、「あの時の話か」と、当時現場に出現したポーラが色々察した様だ。

結果、宿に戻った時にクロラが事情聴取を受ける事が確定した瞬間でもある。


「…にしても相変わらず凄い食事効果だな…
高級店位じゃないか?食事効果に(大)が付くのって…」


ジェイルが食事効果を見て冷や汗を流している。
ちなみに宿等で出てくる食事の効果は、大抵(微小)か(小)である。

使ってる素材にも寄るだろうが、(大)が付くのはジェイルが言った通り高級店か、名の知れた名店、王室等で出される食事位である。


「そう言えばクロラさん、<大好物>持ってましたよね?
今って追加で何が発動されてますか?」

「ふぇ?あ、ちょっと待っててね。」


クロラは他の3人に発動している効果を確認し。追加で付与されてる効果を割り出している様だ。


「えーっと、『<感知系スキル>範囲拡大20メル増』だね。」

「うわぁ…凄い効果が発動してる…
前にも聞いたと思いますが、クロラさん<大好物>ってどうやって取ったんですか?」

「う、うーん…いつの間にか取ってたから条件は分からないんだよね…」

「うーん、やはりそうですか、仕方ありませ「「教えたげるよ。」」

「え?」


突然後ろから声を掛けられたノアは慌てて振り向くと、先程アルキラーが話していた7人組の中に居た、20代位で人間寄りの獣人の姉妹がお腹を擦って立っていた。

キュルルル~

「「…教えたげるから、私達にもそのハンバーグサンド頂戴…」」

「えーっと…」


どう対処したら良いか、少し困ってしまうノアであった。
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