ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

文字の大きさ
上 下
305 / 1,172
王都編

噛み千切って

しおりを挟む
「グリードはバドロさん達が待機する林側に向かってくるホーミングボアの前足の一部を噛み千切って転ばせるんだ、良いかい?」

リョーカイ。

と、グリードから了承を得られた所でノアは早速行動を開始した。

スラァッ…

アイテムボックスから取り出した荒鬼神2本を両手に持ち<渾身>と<投擲術>を発動。
2本共肩に担ぐと、前方からバシャバシャと飛沫を上げながらホーミングボアが突っ込んでくるので、少し前辺りを狙って1本ずつぶん投げる。


「よい『ブォンッ!』しょっとぉっ!『ブォンッ!』」

ザバッ!ザバァッ!ブゴォオッ!?

先頭を走るホーミングボアの目の前に物凄い速度で荒鬼神が次々に着弾。
大きく水飛沫が上がった為、一心不乱に駆けていたホーミングボアも堪らず動きを止める。

バシャ…バシャシャ…

水飛沫が収まるとホーミングボアの目の前にノアが転移してきていた。
ノアは川に突き立った荒鬼神を引き抜き<渾身>を発動して猛然と振るう。

ブ、ブゴォオ『ゾンッ!』オオッ?
ゴァッ!『ザシュッ!』
ブギャァアア『ゾリッ!』アッ!
ゴォァアッ!『ザバッ!』

僅か2~3秒の間に4頭のホーミングボアの首が飛ぶ。
何頭か置きに突っ込んで来るだけならまだしも、纏めて10頭突っ込んで来ているので手早く処理しなければならない為、悠長にしていられないのだ。



フゴォ『ザッ』オオオ『ガリュッ』オッ!?

ズシャッ!ドシャッ!

鳴き声を聞いてチラリと見やると、林側を駆けるホーミングボアが悲鳴を上げつつ次々と転倒している。

前足の一部が欠損している事から、ノアの指示を受けたグリードの仕業であろう。

<え?何で急に転けた?>
<分かんないけどノア君が何かやったんでしょ。さ、今の内に仕留めるわよ。>

待機していたバドロ達は困惑しながらも転倒したホーミングボアに次々と仕留めに掛かっている。


ボヒュッ!ドズッ!ブゴッ!
ドヒュッ!ズドッ!オゴォッ!

シュバッ!

左右に居るホーミングボアの首目掛けて荒鬼神を投擲したノアは、即座に両手に荒鬼神を転移させると左右のホーミングボアの首から血が大量に噴出。

既に先に倒した者達の血で川は真っ赤に閉まっているが、追加で大量の血を噴出させて水中に倒れ込んだ事で辺りは更に真っ赤に染まる事になった。

パシャッ!パシャッ!ザシュッ!ブゴァッ!

久し振りに<水面渡り>を発動して水面を駆け、近くに居たホーミングボアの首を深々と斬り裂く。

ザボァッ!ドッ!

どくどくと血が吹き出し、川の中に突っ伏したホーミングボアを踏み台にしたノアは樹上に上がり、<縦横無尽>を発動して枝伝いに駆けつつ眼下に居るホーミングボア目掛けて荒鬼神を次々と投擲。

ドズッ!ゴッ!?
ズンッ!ブゴッ!

ブ、ブゴォオッ!ザバババッ!

仲間が凄まじい早さで屠られ、残ったホーミングボアが慌てて山の方に駆けていく。

すると川辺の地面からニュッとグリードが姿を現し


ボクガヤロウカ?


とノアに聞いてきたので


「いや、いい。俺が殺る。」


そう言って背中から弓を取り出して矢を番える。

ホーミングボアの走力は中々の物で、既に森の中に入り、その姿が小さくなりつつある。

ギリリッ!ズバァンッ!

が、そんな事気にしないとばかりに<集中><渾身><偏差撃ち><曲射>を発動して弓を引き絞ったノアは、とても弓の発射音とは思えない音を響かせて矢を発射した。

ドヂュッ!ブゴォアアッ!

森の中からホーミングボアの悲鳴が聞こえる。
少しの間苦悶の鳴き声が2、3聞こえた後辺りは静寂に包まれた。


「ふぃーっ、取り敢えず終わりかな。」

スタッ

「グリード、お疲れ様。
後でアレ、丸焼きにしような。」

オー、アルジワカッテルー。

グリードがご機嫌になった所で、ノアの元にバドロとディオ、現場責任者のダンがやって来る。


「おーいノアく…うおっ!?
こ、このモンスターは御前試合の…」

「じゃあさっきホーミングボアが転けてたのはこの子の仕業だったのね…」

「何だ?こんな生き物見た事無いぞ…
まぁ良い。坊主、お前さん無茶苦茶強かったんだな…」

「まぁ一旦その辺りは置いといて、皆さん協力感謝します。
ダンさん、こういったモンスターの襲撃は以前もありましたか?」

「1頭2頭とかはあったが、こんな数は今まで無かったな。」

「そうですか…となると…「おーいノアくーん!ちょっと来て貰えるー?」


林の方に居るマールとストラが声を上げてノア達を呼んでいる。
何かあったのか分からないが一先ず向かう事にした。







「お二方どうしまし…ん?これは…」


ノア達が2人の元へ集まると、仕留めたホーミングボアの死体が横たわっていたのだが、体をよく見てみると、太い杭の様なものが突き刺さった跡が楕円に付けられていた。

近くのホーミングボアの死体も見てみると、丸太の様なもので強く叩かれ、体の一部が陥没していた跡が見受けられた。


「この杭の様な跡、こりゃ何かの牙が突き立った跡だぞ!」

ツツッ…「傷口の血、まだ乾ききっていないわ。
ここから差程離れていない所で噛まれた様ね。」

「ホーミングボアの走力を鑑みれば、3~4ケメル圏内って所かしらね。」

「うーん、陥没痕に泥が付いてるな。
水棲モンスターにでもやられたかな?」


バドロ達は各々状況証拠のみでモンスターと生息域を割り出そうとしている様だ。


「ダンさん、この辺り若しくは上流で、この様な事が可能なモンスターを見たり聞いた事はありますか?」


そう聞かれたダンは少し考え込んだ後、小さく首を振る。


「いや、無い…な。
上流の方は未開拓で人も殆ど寄り付かない。
今俺達が居るこの場所すらここ最近まであまり通らなかった位だよ…」

「そうですか…
うーん、どうするかな…取り敢えず上流の方に見回りでも行ってきますかね…」


などとノアが呟いていると

のそ、のそっ…

話し合うノア達の背後にデカピパラがのそのそと歩み寄って来た。


「んお?どうしたんだお前さん。」

キュルル、キュルルル。

「デカピパラってこんな鳴き声何ですね…」
「図体の割には可愛らしい声してんじゃん。
どうした?遊んで欲しいのか?」

グルッ!!

「違うな。」
「うん多分違う。」
「"そうじゃない"って言ってるんじゃない?」
「いやいや、コイツモンスターだぜ?
俺らの言葉分からんだろ。」

キュルルル、キュッ、キュッ。

「「「これ、分かってるっぽいな…」」」


実際デカピパラは、ノア達の会話を理解している素振りを見せている。
基本は"キュルキュル"と可愛らしく鳴くが、相手が違う事を言ったら否定の意味で"グルッ"と鳴く様だ。


「うーん…申し訳ないが、お前さんは俺らの言葉理解しているみたいだが、俺らはお前さんの言葉が分からないんだ、悪く思わないでくれよ?」

キュルル…

「"分からないんじゃしょうがないか…"と言ってるみたいですよ。」

「「「「え?」」」」キュッ!?


声のした方を(デカピパラ含め)見ると、ヴァモスとベレーザが立っていた。


「あれ?言ったらマズかったですか?」
しおりを挟む
感想 1,251

あなたにおすすめの小説

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...