ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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王都編

それから7時間後

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それから7時間後、1組約20分、全18パーティの対戦が終わり、現在は希望者に対して追加で戦闘訓練を行っている所である。

試合場にはノアとレド。
<受け流し>の訓練をして欲しいとの事なので、大剣を構えるレドに対してノアが猛攻を仕掛けている所である。

ボッ!ヒュバッ!ボッ!ボッ!ヒュバッ!

カカッ!シュリッ!ガカッ!カッ!カッ!

「ほっ。」ボッ!

「ぬぅっ!」ガカッ!

「せりゃっ。」ドボッ!

「うぉわっ!?」ガヅッ!

ノアが繰り出した右拳の連撃をいなしたレドだが、勢いそのままに腰を捻って繰り出された凄まじい速度の後ろ回し蹴りに対処出来ず、まともに受け、5メル程後方に吹き飛ばされる。

ズザザッ!

「さっきと比べて<受け流し>が大分上達しましたね。」

「くっ、は…反撃出来なかった…
言われた通り<受け流し>のレベルは
ガンガン上がってるよ…」


ここまでのやり取りを試合場の外で眺めていたレドのパーティメンバーらが近付き、声を掛けてきた。


「凄いじゃんレド、さっきとは動きが全然違かったわよ。」

「やっぱノア君にお願いしたのは正解だったな。」

「…ってか、ノア君息一つ切れて無いんだな…」

「冒険者になる条件の1つに『両親からの猛攻を三日三晩耐え凌ぐ』と言うのがありましたので、それに比べればまだまだ何て事ありませんよ。」

「何つー親だ…」


既に30分位ぶっ続けで訓練を続けていたレドはヘトヘトになってしまい【斧】持ちの女性に引き摺られる形で試合場を退場する事となった。


「さて、他に何かある方はいらっしゃいますか?」


周囲を見回してみるが、『無い』という意思表示かの様に手をヒラヒラと振っている。
と言うか皆一様に疲れきっている様だ。


「もし何かあれば、いつでも声掛けて下さい。
それでは皆さん今日はお疲れ様でした。
目的達成目指して頑張って下さいね!
では僕は明日の合同素材採取依頼の準備がありますので、これにて失礼します。」

「おう、今日はありがとなー。」

「お疲れ様ー」

「おつかれー」

スタタタタッ…

そう言ってノアは上への階段を駆け上がって行くと、そこにも数人の冒険者が居たので、そちらにも挨拶して【弓】ギルドの建物から出ていった。







「…と言う訳で戦闘訓練依頼の方は一応完了しました。」

「依頼パーティ数は20近く居たハズですが…
まさか1日で終わるとは…」

「いやぁ、あの場に皆揃ってるのに"じゃあまた後日で"なんて言えませんよ~」


そう言ってケラケラと笑うノアだが、それを実行出来るだけの体力と実力に女性職員は心底驚いていた。

ちなみに街中での依頼に限り、職員が定期的に依頼先に訪問する決まりがあるのだが、その都度確認しに行った職員は口々に"指導が的確で非常に丁寧だ"と漏らしていた。


「…ちなみにもう1つ受けました素材採取依頼ですが、明日の朝方街を出立となりますが、大丈夫ですか?
その…体力面とか…」

「ええ、問題ありません。
そう言えば詳しい依頼内容聞いてませんでしたが、ご説明頂いてもよろしいですか?」

「はい畏まりました。
今回の依頼で参加されるのは【料理人】【薬剤】【錬金術】【植物】【洋裁】【防具】【魔術】から各2人ずつの計14人が参加されます。
ノア様は王都周辺地域で普段通り狩猟・採取をして頂くだけです。
期間は最大4日を予定しており、野営をするか、東西南北に位置する村々に泊まるかはノア様にお任せします。」

「素材採取依頼ですよね?【魔術】ギルドの方が参加されてますが…」

「ああ、なる程。
【魔術】の方々はモンスターの血液を生成した物を触媒に魔術を発動する者も居ります。
私はそちらの分野には疎いのですが、魔力が非常に溶け込み易いとの事です。
後はモンスターの体内で生成された微小な魔石でも彼らにとっては貴重品の様なので、出来ればそれも頂きたい様です。」

(血…血液をか…そういった物まで利用するのか…そう言えばヒュドラの血液も高値で売れたんだっけ…
ホント何が需要あるか分からないもんだ…)

「それにしても朝方か…どうするかな…」


外は既に陽が落ち、屋台以外の一般露店は片付けが完了している。
先程アイテムボックスを確認したが、4日程度の野営には事欠かない程の備えはある。

宿に戻って仮眠を、とも思ったが疲労感は無い。

ふと「クロラに会いに行こう」、と頭に過ったノアは、何処に居るのか聞こうとペアリングを嵌めていた腕に触れた所で思い出す。


「あ、しまった。
昨日の御前試合でペアリングとか指輪とか色々壊れちゃってたんだ…
…明日の朝まで予定無いし、クリスさんの所行って購入して来るか。」


と言う考えに至ったノアは、女性職員に礼をして冒険者ギルドから出て行った。







カランコロンカラン

「失礼しまーす。クリスさん居ませんか~?」

「あ、ノア君。」

「おや、ノア君じゃないか。」


【彫金加工】ギルド内に入ると、示し合わせたかの様に目的の人物2人が揃っていた。


「あれ?クロラさんだけなんですね。」

「皆明日に備えて一足先に宿に行ってるの。
ノア君はどうしてここに?」

「僕はホラ、コレです。」


そう言ってノアは、ペアリングを嵌めていた腕を掲げてチョンチョンと指差すと、クロラも事情を察した様だ。


「俺をご指名とは何用かな?」


ノアに応対する為、カウンターに腰掛けていたクリスが立ち上がる。


「実は昨日の御前試合で指輪とペアリングが壊れてしまいまして…この通りです…」

ジャララ…

ノアはカウンターの上に破損した指輪3つと、粉々になったペアリングを置く。


「うわー、こりゃ修理するより買い換えた方が良いな。」

「ん?その話し振りだと修理も出来るのですか?」

「あぁ、魔石は無事だし、粉々とは言えパーツはほぼ揃っている。
多少足りない所は、使用された素材を補充してやれば修理は可能だ。
それにこう見えて俺は、付与魔法も習得しているから付与されてる魔法も元通り復元する事が出来る。
ただ、買い換えた方が安上がりだぞ?」


と、クリスから買い換えを提案されるノアだが


「直せるのであればそちらでお願いします。
オードゥスでクロラさんに贈った思い出の物なので。ね?」


チラリとクロラを見やるノア。
目が合ったクロラは、何処と無く口元が緩んでいる様だ。


「りょーかい。
可愛い妹のそんな表情見せられたら、是が非でも修理してやらないとな。」


ニヤニヤ顔のクリスは、カウンターに置かれた物品を手に奥の工房へと向かっていった。

ギルド内にはクロラとノアの2人だけとなった。

と、その時だった。
ノアは、クロラの肩越しにおぞましい光景を目の当たりにする。

【彫金加工】ギルドの建物の外に通行人を装おいつつ気配を消して<聞き耳>を立て、宿に居るハズのポーラがニタリと笑みを浮かべ、2人のやり取りを観察していた。

百戦錬磨のノアでさえ思わず「ひぃ」と声を上げてしまったのは言うまでもなかった。
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