ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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王都編

報告を聞こう

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「さて皆々方、連日に及ぶ調査ご苦労。
早速で悪いが、現段階での報告を聞こう。」


エルニストラ王が席に付くや王室内に犇めく様に集まった隊員、諜報部、職員、その他協力者に報告を促す。

王の隣には側近のシアロが立ち、その後ろでは書記官だろうか、3人の人物が一言一句聞き逃すまいと身構えていた。


「確か事の発端は、エルベストの従者からの密告であったな?
闇ギルドとの繋がりを匂わせる言動、書類が見付かったとか。」

「はい左様で。
こちらの調査の結果、繋がりの確認が取れたのでエルベストの通う大学の学園長経由で『ヒュドラの竜血』の買取りを依頼し、アルバラストでの買い付けに誘き出し、闇ギルドとの取引現場を押さえるつもりでした。」

「選りに選って【鬼神】殿の従者に絡むとはな…
まぁ潜んでいた闇ギルドの連中は捕縛出来たし、奴は街で暴れた件でしょっ引く事になったから一先ず良しとしよう、という事になったのだったな…」


エルニストラ王が顎に手をやりながら当時の事を話していると、そこまで話した所で隊員のライリが声を上げる。


「そこからは私が報告致します。
調査を続ける内、エルベストとの繋がりの中にコモン・スロアの名が挙がった事で事態が急変しました。
コモン・スロアは過去に人身売買や闇ギルドへの横流しの罪で取り締まった事がありますが、証拠不十分であった為、軽めの刑を課す迄に留まりました。」

「あぁ、奴は取引や会合全てに出ず、手下を二重、三重に介す上に偽の情報を長し、幾度も空振りを食らった事があったな。
前回証拠不十分だったのも偽情報に踊らされた結果だったしな。
それからすると今回公の場に姿を現したのは、今までのコモンからすれば考えられんな…」

「私兵から聞き出した情報ですが、コモン・スロア自ら私兵らに陣頭指揮を執る為だった様です。
エルベスト捕縛後、関係性を疑われ無い様、証拠となる書類関係を全て焼却した様です。
が、かなり慌てていたのでしょう、暖炉や焼却炉から羊皮紙の燃え残りが幾つか見付かっており、只今解析中です。」

「ご苦労、その後の両名の動向はどうだ?」


ライリの配下らしき男性が前に出て来る。


「エルベストは降格処分の後、意気消沈となって酒に溺れており、特段の行動は取っておりません。
変わりにコモン・スロアの方は闇ギルドの伝手を使い、方々から奴隷の他に『ヒュドラの竜血』を100リル程購入しています。
恐らくこの段階で既にエルベストを手駒とする予定だったのでしょう。」

「私自身、竜種の血液の恐ろしさは良く知っている。
大量に浴びれば発狂する間も無く即死、私の様に体の一部で済めば竜種の力を得る。
…だが、奴はその辺りの見極めをどうやって…おい、先程コモンは奴隷を買ったと言ったな?」


話を聞いていた王が険しい顔をし、報告をしていた隊員に問い質す。


「お察しの通り、コモンは奴隷を使い『色々と』実験していた様です。
近くの山林を確認しました所、夥しい数の人骨が見付かりました。
その後恐らく力を得られる量が分かってきたのでしょう、ヒュドラの持つ『不死』を恐れ、炭化する程の高温で焼かれ原形が分からない物までありました。」

ダンッ!

「…何と非道な事を…
…すまない、報告を続けてくれ…」


コモンの所業に王が机を叩き、体をわなわなと震わせる。
直ぐ様平静を取り戻し、隊員に報告を続ける様に促す。


「『ヒュドラの竜血』ですが、エルベストに使用するのが主目的では無かった様で、昨日試合場で使用した『造魔核』の製造が本来の目的だった物と思われます。」

「観客避難の際に入れ物として使用されていた懐中時計は、自領で作られた製品で、中に残っていた残留物を解析しました所、先日アルバラストに出現したヒュドラの物と相違ありませんでした。」

「造魔核の製造方法等が書かれた書類等は見付かっておらず、知っているのはコモンのみという事でしょう。」

「で、あれば良いがな…
ベルドラッド、捕らえた私兵からは何か情報は聞き出せたか?」


王から声を掛けられたベルドラッドが前へと出る。


「私兵らは『知らん』の一点張りでした。
ですが明らかに何か知っている様でしたので、専門の方に託しました。」

「それが君達か。
すまないな、バラス、アルキラー夫妻。
この手の仕事は引退すると申しておったのに引き受けて貰って…」


エルニストラ王は、申し訳なさそうにベルドラッドの背後に立つ2人に謝罪を言う。


「王からの依頼だ、無視なんて出来ませんよ。」

「もーまーんたーい。
隊員さーん、例の人をお願いしまーす。」


バラスの発言と共に王室の扉が開き、後ろ手に縛られたコモンの私兵を連れた隊員が現れる。


「…ま、また、"アレ"をやるのか!?
ヤメロ!止めてく『ガシッ!』むぐぅっ!?」

「あなた、329また貸してー。」

「はいよ。」ズルリ…


騒ぎ立てる私兵の口を掴み、問答無用で黙らせたバラスがアルキラーから夥しい量の触手を生やした掌程の大きさの軟体生物を受け取り、私兵の頭にベチョッと乗せる。


「うごぉあぁああああああっ!?
ご、ぉおぉああああ…あ……ナ、ナンデございマショウ、バラス様…」

「昨日も聞いたけどー、今回の件で知ってる事をここで話して欲しいの。」

 
周囲のドン引きを他所に、軟体生物に乗っ取られた私兵は意気揚々と話し出す。


「我らコモン・スロアの私兵総勢320名はバラス様の忠実な下僕故、隠し事等ございません。
此度の国盗りは南・北方の山中に潜伏しております、闇ギルド総勢120名との合同作戦にございます!
優先的排除目標は『エルニストラ王』『【鬼神】』の2名!
街に居る者は無差別的な殺害を認めるとのお達し!
ですが、貴族共と令嬢は殺さず身代金を取る等の行為はその者らの好きにしろとの事です。
それと造魔核製造方法は分かりませぬが、使われた材料は大体把握しております。
『ヒュドラの竜血』『蜥蜴系モンスターの臓物』『スライムの核』『新鮮な人間の赤「もう良い!バラス殿、その者を黙らせてくれ!」

「はーい。」バリィッ!

「ぉがぁあああああっ!?」


未だ意気揚々と喋り続ける私兵の頭から軟体生物をひっぺがしたバラスは、私兵の首根っこを掴んで下がる。


「…はぁ…さて、あの造魔核の…ヒュドラ変異体とでも言おうか。
アレと【鬼神】殿の"アレ"について分かる者は居るか?
私は途中まで居たが、大技を撃った直後【鬼神】殿によって遠ざけられてな、最後まで居らんかったので知る者有らば説明を頼む。」

「……。」

「……。」

「まぁ、そうだろうな…」

「やはり本人と彼をよく知ってそうな者に直接聞く他無いか…
どのみち彼に謝らなければならない事もあるしな…
誰か【鬼神】殿と商人のジョーを呼んできてくれぬか?」
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