ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

文字の大きさ
上 下
278 / 1,171
王都編

金髪メイド服のラベルタとドゥ

しおりを挟む
3人が『ジョー・アルマゼナ』に戻ってくると『槍サーの姫君』の面々と、ジャロルは居らず、金髪メイド服のラベルタとドゥが出迎えてくれた。


「お帰りなさいジョー様、お姉ちゃん。
それと…大丈夫ですかノア様?」

「お疲れ様ですジョーさん、ラーベ。
…で、ノア君は何でしゃがみ込んでいるんだ?」


ジョーとラーベの隣で転移酔いしているノアが、無言のorz状態で膝から崩れ落ちていた。

すると、影からヴァンディットが姿を現し


「大丈夫ですか、ノア様?
先程は真っ暗で出てこれませんでしたが、酔いに効果的な物をお渡ししますね!」

「おぉ…そう言った薬「はい、ミカンです。酔いには酸っぱい物が良いと昔お婆ちゃんが言ってました。」


ヴァンディットが影から取り出したのは、何の変哲も無いただのミカンであった。

民間療法的な物だと思ったが、厚意を無下にする訳にもいかないので頂く事にした。


ムッチャムッチャ…「酸っぺ…あ、でも良いかも…」

「でしょう?」


ヴァンディットが剥いてくれたミカンを頂いていると、思いの外頭がスッキリとしてきた。
ミカン1個食べ終わる頃には体調はいつもの調子に戻っていた。


「ノア君の体調が戻った所だが、さてどうするかな…
時間的には朝方だが、未だ王城は隊員やギルド員の出入りが多いみたいだから、少し落ち着いてから報告に向かうとするか…」


ジョーが外の様子を見つつ、顎に手をやって思案していた。

ジョーの言う通り外は薄らと空が白み始めており、街中にチラホラと人が現れ始めていた。

ノアは商会の外に出て、体を伸ばしていると


「ん?」

「どうかしたのかい?」

「…あ、いや…
そういえば、街に来てる貴族やご令嬢っていつ頃帰るんですかね?」

「うーん…皆御前試合目的で来ていたハズだし、ノア君は昨日から姿を消してるし、諦めて今日辺り帰り出すんじゃないかな?」

「…であれば僕は宿へ行って寝る事にします。
何だかんだ昨日の戦闘で疲れましたので…」

「そうだね、そうすると良い。
私は後で王城に行ってくるけど、もし何かあったら後で伝えに行くよ。」

「助かります。それではまた。」


そう言ってノアは商会から離れ、路地を通って宿へ向け歩いていった。








スタスタ…スタ。

宿へ向け、路地を歩いていたノアが急に立ち止まる。


「商会前で何やら張っていた様ですが、何か用があるんですよね?
適当に口実作って出てきたんで、もう出て来て貰って構いませんよ。」


そうノアが虚空に声を掛けると、路地の先から伏し目がちのデミ・スロアと『新鋭の翼』の面々が顔を出す。

前日、造魔核を取り込んだコモン・スロアに襲われ片腕を切り落としたデミだが、既に処置が施されたのか腕は完治していた。

だが、デミの表情は優れない。
前日の人を見下した様な表情や、ノアを一目見るや何かしら突っ掛かってきたデミは何処へやら、だ。

無理もないだろう。
自分の父親が人ならざる存在になってしまったのだ。


「デミ…」

「…あぁ…」

  
意気消沈としたデミに、傍らに立つリナが声を掛ける。


「…き、昨日は、化け物と化した父上の…暴走を食い止めて…ありがとう…
実の親が…生物兵器を製造していたとは知らなかったんだ…」

「ほぅ?」


疑いの目を向けるノア。


「ほ、本当よ、昨日全てが終わった後、隊員や諜報部の連中がデミの記憶を何度も探り、事情聴取も行って『シロ』と判断されたわ。」

「…どうやら、ペラペラと喋る俺の性格が幸いしたらしい…喜んで良いのやら…
俺が父上から指示を受けたのは、『宴の席で【鬼神】との御前試合を取り付けろ』と言う事だけだ…」

「大方、王都を乗っ取ろうとした際に僕が障害になるとでも思ったんじゃないでしょうか?
だから御前試合で6対1何てアホみたいな構成で試合吹っ掛けてくる事、普通有り得ないですしね。
エルベストまで動員していたみたいですが、不発に終わりましたがね。」

「途中6対1所じゃない場面何ヵ所かあったけど、それすら凌いでいたじゃない…」

「6対1位、親との特訓で何度も経験してますからね。何て事ありませんよ…」

「「どんな特訓よぉ…」」


ノアの発言にミミとララが苦笑いを溢す。

その後、チラリとデミの方を見たノアは


「デミ…さんは納得してるんですか?
化け物に成り下がったとは言え、僕はあなたの父親を殺したんですよ?」


この一言にデミはピクリと反応する。


「納得してる、と言えば嘘になる…
化け物になって腕を持っていかれそうにもなったがそれでも俺にとって父親である事に変わりは無い…
だが君と戦って痛感したよ、戦術的にも精神的にも敵わない、とね。
化け物に成り下がった父親は本来、家族の手で幕を下す物なのだろうが、今の俺達じゃどう足掻いてもアレには勝てなかっただろう…
寧ろ被害を拡大させていたのは明白だ…
だから納得していない所もあるが、感謝している部分もある。
気持ちの整理が付いていないからか、自分でもどういった感情なのかが把握出来ていないんだ…」

「まぁ、昨日の今日ですからそれは仕方の無い事。
それよりもデミさん、これからあなたに対する風当たりは強いものになるでしょうね。」

「…あぁ、もう既に自領から爵位取り消しの文が届いた。
母上は早くに亡くなっているから俺には身寄りも無く天涯孤独だ…
何だ?今まで馬鹿にしてきた分の仕返しでもするつもりか?」

「自暴自棄になる暇があるなら今後の身の振り方を考えるんですね。
天涯孤独?デミさんの後ろに居る5人は関係無いって事ですか?」

「あ…」

「あなたはこれから貴族でも何でも無い只の『デミ』だ。
今までの自分の行い、振る舞いを思い返して今後もそのままでいくつもりならこれ以上何も言うつもりはありません。
改心しろ、とは言いませんが少しでも考え方を改めないと本当の意味であなたは天涯孤独になるりますよ?」

「う…」

「あなたは性格はクソですが、戦闘面ではしっかりリーダーらしく指示、統制は取っていたと思います。
性格はクソですがっ!」

「ノ、ノア君抑えて抑えて…(ミミ)」


ノアは御前試合でのデミを思い出す。

ノアの攻勢に対し、何度も即時即決で回復や攻撃方法等の的確な指示を飛ばしていた。
【万能】と言う適正に驕らず、実力を身に付けてきたと言う点に関してノアは評価しているのだ。


「僕は別にあなたを馬鹿にするつもりも、貶めるつもりもありませんよ。
寧ろデミさんがより良い方向に向かって行こうという気概があるのであれば、喜んで協力致しましょう。」


肩を落としてノアの話しを聞いていたデミはどう反応したら良いのか分からないと言った顔をする。


「…とまぁ、冒険者生活1ヶ月の僕が偉そうな事を色々と言いましたが、最終的に決断を下すのはデミさん、あなたです。
…が、その前に皆さんとよく話し合って今後の事を相談して下さい。」


そう言ってノアはその場に『新鋭の翼』の面々を残し、路地を後にした。
しおりを挟む
感想 1,251

あなたにおすすめの小説

ダンジョンで同棲生活始めました ひと回り年下の彼女と優雅に大豪邸でイチャイチャしてたら、勇者だの魔王だのと五月蝿い奴らが邪魔するんです

もぐすけ
ファンタジー
勇者に嵌められ、社会的に抹殺されてしまった元大魔法使いのライルは、普通には暮らしていけなくなり、ダンジョンのセーフティゾーンでホームレス生活を続けていた。 ある日、冒険者に襲われた少女ルシアがセーフティゾーンに逃げ込んできた。ライルは少女に頼まれ、冒険者を撃退したのだが、少女もダンジョン外で貧困生活を送っていたため、そのままセーフティゾーンで暮らすと言い出した。 ライルとルシアの奇妙な共同生活が始まった。

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...