ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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王都編

大丈夫かな?

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「…とまぁそんな訳で、無事捕縛が完了した後、私の元に戻ってきたノア君に国交のお願いをした訳さ。
…って、大丈夫かな?」


リヴァイアが一通り説明を終え、壁から映像を消してノア達の方へ振り向くと、ノアの体をペタペタと触り状態を確認しているラーベとヴァンディットの姿があった。


「も、もう大丈夫ですから2人共落ち着いて…」

(ヴァンディットさんは良いとして何でラーベさんまで…)

「ほら、ラーベ、ノア君が困っているだろう?」

「はっ!?」


直ぐに我を取り戻したラーベがジョーの元へと引き下がる。
それを見届けたリヴァイアが話を続ける。


「さて、これで私共とノア君との経緯は知って貰ったと思います。
最後に国交を結びたい理由なのですが、実は私としてはそこまで理由みたいな者は無いんです。」

「「「「え?」」」」


リヴァイアの意外な意見に驚く一同。


「私みたく古参の者は人と関わらなくっても何て事無いんだけど、それを若い世代にまで押し付けるつもりは無いの。
別にしきたりでも何でも無いから外の世界を見てみたい、って望む者にはそれが実現出来る未来を見せてやりたい、そう思っただけよ。」


ガラス張りの壁の外、地上の方を見てリヴァイアが呟く。


「でも外は知っての通り厳しい世界でしょ?
いきなり私達海洋種が進出してきたら何事か、って思うじゃない?
その第一歩として国交を結べたらな、ってね?
ごめんなさいね、こんなフワッとした理由だけど…」

「良いのでは無いですか?
切っ掛けは些細な事ばかり、理由は後から付いてくる場合もあります。
私も商人になったのは小さな切っ掛けでしたから。」


ジョーがラーベの頭をポンポン叩きながら話す。

この話が切っ掛けとなりジョーとリヴァイアは暫く話し込む事になった。

王に報告する事柄も含まれると思ったのでノアは自ら席を外す事にした。

話の邪魔にならない様に静かに扉から出るノアとヴァンディットは、暫く龍宮城内を見て回る事にした。






暫く龍宮城内を歩いていると、神殿の中央部に500メル四方の吹き抜けを見付けた。
そこでは先程の小人魚達が楽しそうに追いかけっこをしていた。

何とも微笑ましい光景だったのだが、小人魚の1人がノアとヴァンディットに気付き2人の元へとやって来たのだ。


「お兄ちゃん、リヴァちゃんとはもうお話は良いの?」

(リヴァちゃん…リヴァイアさんの事かな?)

「リヴァイアさんはお話し中だから散歩してる所だよ。」

「そっかー。」

ひらり…

小人魚を追ってきた女性の人魚(にしては背びれや尾ひれが長く、周囲をひらりひらりと舞っている)がノアを一目見るなり


「黒い二刀…それにその防具…
もしや君かしら?大海獣族の…クラーケンの倅を懲らしめたとか言う少年は。」

「へ?」

「「「「このお兄ちゃんだよ。」」」」


女性の人魚を追ってきた子供達が皆ノアを見てそう言う。


「あの、もしかしてクラーケンの事ですか?」

「そう。
攻撃は代わり映え無いし、隙は多いけど、それ以上に範囲攻撃が強すぎて、他の種族でも勝てないから付け上がっていたアイツよ。」

(そう言えばクラーケン(成体)も似た様な事言ってたな…)

「えぇ、確かに自分ですが…」

「…い。」

「え?」

「戦ってみたい…」

「えぇ…」


またいつも通り戦う流れになるのか、と嘆息するノアだが、人魚をよく見てみると少し様子がおかしかった。

確かにノアと戦いたそうにウズウズしてるのだが、顔を青白くさせ(元々人魚は肌が青白く、血色はあまり宜しくないが)、冷や汗をダラダラかき、体はカタカタと震えている。


「大丈夫ですか?」

「た、戦いたい…戦いたいんだけど…」


だが言動と様子が噛み合って無いので不思議がっていると


「ダメだよ、ツカっちゃん。」
「この間リヴァちゃんが言ってたでしょ?
『ここにやって来た人族に戦い挑んじゃダメ』って。」
「リヴァちゃんに『ガツン』とやられちゃうよ?」


ツカっちゃんと呼ばれた女性人魚は、小人魚の発した『ガツン』に反応して体をガクガクと震わせていた。
余程リヴァイアの『ガツン』が恐いらしい。

暫くして落ち着いた女性人魚は、深々とノアに頭を下げてきた。

どうやらクラーケンの倅を懲らしめた者を一目見るだけに止めるつもりだったが、実際に会った事で闘争本能が沸き上がってしまったらしい。

それと同時に先日リヴァイアが、握り拳を作りながら釘を刺された事を思い出し、固まってしまったとの事だ。

と、そんな事を話していると


「ツカイさん、よく堪えましたね。」

「リ、リヴァイア様!?」


ジョーとラーベと共にリヴァイアがノアの元に現れた。

ツカイと呼ばれた女性人魚はガチガチに固まり、小人魚達は「リヴァちゃん、リヴァちゃん」と言いながら挨拶している。


「いやぁ、遠目から見掛けた時は喧嘩を吹っ掛けてるんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ。」

「は、ははっ、何を仰いますかリヴァイア様…
大切なお客様にそんな…」

「そうですね、そうなっていたら『ガツン』では無く『ゴチン』でしたからね。ウフフ。」

「は、はは、ははははは…」


リヴァイアは終始笑顔だったが、小人魚達は何となく色々察したのであろう。
2人のやり取りが終わるまでノアの足にしがみついていた。







「本日は良いお話が出来ましたね。」

「戻り次第王に今日の事をお話し致しましょう。」

「それではあなたにもコレをお渡ししておきましょう。」


そう言ってリヴァイアはジョーに、ノアにも渡した転移符を渡す。


「宜しいのですか?」

「何を言いますか、こちらこそ宜しかったのですか?
私共としては不要な物を、しかも大量に引き取っていただいて…」

「寧ろ無償で引き取らせて頂いて感謝しております。
何分、王都近郊に海はございませんし、鉱山も一時的に使用出来ない状態でしたので非常に助かりました。
ですので、何れ同等の品で返礼させて頂きます。」

「うふふ、律儀ですのね。」


どうやらジョーは海洋種から何かしらの品物を戴いたらしい。

ただ、リヴァイアの発言からして海洋種にとっては不要な物らしいが、一体何を戴いたのだろう…

何はともあれ、ジョーもリヴァイアも良い顔をしているので話は上手く行ったのであろう。







ノア達一行(ヴァンディットは影に戻った)は海底神殿の前へと移動し、別れの挨拶をしていた。


「それではノア様、ジョー様。
いつでも好きな時に来て頂いて構いませんので、またいらして下さいね。」

「今日は色々と手助けして頂いてありがとうございました。
今度は別の人と一緒に来ると思います。」

「それでは先程の話を含め、王に報告致しましょう。」

「良い返事が聞ける事を楽しみにしていますわ。」


ノアはアイテムボックスから転移符を取り出しでジョーの商会『ジョー・アルマゼナ』の店内を想像する。

シュバッ!

リヴァイアの後ろでは小人魚達がブンブンと手を振ってみおくっていた。
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