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王都編

ごめんなさい

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「「「「「今回こんな事になってごめんなさい!」」」」」


『新鋭の翼』リーダーであるデミ・スロアを1人後ろに残し、他のメンバー5人がノアの前へやって来ると、全員が一斉に頭を下げる。


「へ?」

「お、おい!お前達何でそんな奴に頭を下げる?」

「何でってデミが発端で御前試合何かやるハメになったんでしょ!?」

「ノア君、だっけ?あのでしゃばりだけなんだ、あなたと戦いって言ってるのは。」 

「「私達も謁見終わったら帰ろうと思ってたんだけど…こいつが余計な事を…」」


当時の事を思い出し、ヨヨヨ…と泣く双子。

(この感じからすると、普段から色々振り回されているんだろうな…)

「はは、苦労されてるんですね。」


ノアがそう言うと、デミ・スロアがノアの元に詰め寄って来る。


「うるさい!黙れ!
おいそんな事より、試合時間や勝敗条件等の決め事をここで今決めようじゃないか!」 


強引な話の切り替えに『新鋭の翼』パーティメンバーは溜め息を溢す。


「それは別に良いですけど、他のメンバーの意見も聞いた方が良いのでは?
リーダーだから決定権はあなたにあるかも知れませんが、自分勝手とごっちゃにしたらいけませんよ?」


『槍サーの姫君』のリーダーからも似た様な事を言われたデミは 体をワナワナと震わせる。


「何だとこ「はい、そこまで!」


この流れを静観していたジョーが間に入って制する。
ジョーは落ち着き払った態度のまま、正式な場へ移動する様に促す。


「すいません、ジョーさん助かりました。」

「なに、ああいった手合は当事者同士だけだと白熱するだけだから、第三者が介入する必要があるしね。」


普通はデミの様な振る舞いをする者とは絡みたく無い物だが、それを分かった上で介入してくれるジョーには感謝しか無い。


「おい!さっさと行くぞ!」

「へいへい。」


一先ず冒険者ギルドの方に向かい、そこで正式に御前試合のルールを決めるとの事だ。

ノアはデミに呼ばれ、口をへの字にし、不満タラタラな顔でパーティらの元へと向かう。

その後ろ姿をジョー達は心配そうに眺めていた。






街の通りを歩く一行。
(但し、先頭を歩くデミから少し離れた所に、ノアを取り囲む様に5人が配置。)

端から見れば絡まれている様に見えるが、実際はそんな事は無く


「へー、鉱山で何か事故が起こったとは聞いたけど、ノア君巻き込まれてたのね。」

「通りで防具はズタボロ、腹には穴が開いていた訳か…」

「その…体調は大丈夫なの?」

「ええ、もう問題ありません。
ですが防具が使い物にならなくなったので【防具】ギルドの方へ行ってました。」


割と和気あいあいと会話を行っていた。

ノアの周囲にいる5人は、装備を見た感じ腰にレイピアを差しているので、恐らく【剣士】のリナ。

見た目が瓜二つな双子のミミとララは、目深に被ったフードの下から時折チャリチャリと音が立っているので【暗器使い】か何かだろう。

黒いローブを身に纏い、色々な魔石が埋め込まれた杖を持つガドラは多分【魔法使い】。

目の下に深い隈が出来ているノンという女性冒険者もガドラ同様ローブを身に纏っているが、杖等を持っておらず、この者だけ【適正】が把握出来ない。


「おい!そんな奴と話すな!探りを入れられるぞ!」


パーティメンバー5人がノアと和気あいあいと話すのが気に食わないのか、デミが怒鳴って来た。


「あの人っていつもあんな感じ何ですか?」ボソッ

「そうよ、幾ら言っても直さないから皆嫌気が差してるの。」ボソッ  

「「私ら2人実家が農家なんだけど、最近冒険者辞めて実家に戻ろうかな、何て考えてるの…」」ボソッ

「俺もこの歳で胃潰瘍の薬を常飲する事になるとは思わんかったなぁ…」ボソッ

「医者から言われたわ、『冒険者辞めないと心壊れちゃうよ』って。」ボソッ

「皆さん苦労してるんですね。」ボソッ

「「「「「はぁ~…」」」」」ボソッ

「おい聞こえてるぞ!」


デミに怒鳴られた為、一旦会話を中断して何の気無しに通りを眺める。

謁見の日に比べると通りには人が多くいる。
その半数以上は身なりの良い貴族の人達が殆どだ。

皆先頭を歩く『新鋭の翼』リーダーのデミに目をやっている。

(やはり貴族の間で中々有名なのだろう。)

<来たわ『耳障り』よ…>
<『耳障り』が来たわ、離れましょ。>
<あの性格じゃなければなぁ…>
<あれ?あの黒い剣の…>

(…悪い意味で有名な様だ。)

などと貴族の間で彼がどの程度の評価を受けているかを知った所で、ノアに声が掛かる。


「あ、あの、貴方は【鬼神】のノアですか?」

「ん?」


声のした方を見ると、何処ぞのご令嬢だろうか、可愛らしい髪飾りとピンクのドレスを着た12~3才位の女の子が3人程ノアの元に駆け寄って来ていた。

ノアはその子と同じ目線になる様にしゃがんで問いに答える。


「ええそうですよ。」

「「きゃーっ!」」
「握手して下さい!」


と、言われたので握手をすると、それを皮切りに13~6才位のご令嬢が次々とやって来てはノアに挨拶をしていく。

ノアは訳も分からず、やって来たご令嬢達に握手しては挨拶し返すのを繰り返した。


「「「御前試合頑張って下さーい、応援してまーす!」」」

「ど、どうも…」


手を振ってノアの元から離れていくご令嬢達に、苦笑いを返す事しか出来ないノアにデミが


「何を油を売っているのだ!さっさと来い!」


と、掴み掛かって来たのでこれをヒラリとかわす。


「何をそこまで怒ってるんですか。
ご令嬢方から挨拶されたのですから無下に出来ないでしょ?」

「ぐぬっ!?」

「気にしないでノア君、デミはあなたがご令嬢達にちやほやされてるのが気に食わないだけなの。」

「ば、リナ、お前余計な事を…」

「何だ、只の嫉妬ですか…」

「…んだと、コラ!」

ガシッ!


この言葉にイラッと来たのか素早い動きでノアの襟首を掴むデミ。

が、襟首を掴んだ手を素早く外し、捻り上げたノアは後ろ手に締め上げつつ足を刈って、地面に腹這いになる様に押し倒す。


「こんな人の往来激しい所で騒ぎ起こそうとするなよ。
たかだか数分すら待てないのかアンタは。」

「ぐっ、くそっ!」


デミは身を捩って体を起こそうとするも、信じられない力で押さえ込まれ、身動き1つ取れない様だ。


「あ、あの私達、何か失礼な事を…?」


先程ノアに挨拶をして来たご令嬢達が心配そうにノアに問い掛けて来る。


「いえいえ、御前試合まであと数日ですから血の気が多くなってるのでしょう。
ご心配無く、貴女方に責任等ありませんよ。」


安心させる様にニコッと笑い掛けてやるノア。
ご令嬢達は何故か顔を隠してそそくさと親の元へと帰っていった。


「ほら、冒険者ギルドまであと少しなんですから暴れないで下さいね?」

「お、俺に指図す「黙れ、騒ぐならこのまま腕折るぞ。」


デミは後ろ手に組伏せられたまま、背後から強烈な殺気を感じていた。


「ノ、ノア君、私からも言うから…ね?」

「「お、落ち着いて少年よ、こんな事で腹立ててたらキリが無いから…」」

「…分かりました。
僕も少し頭に血が上っていた様ですね…」


そう言ってデミの手を離したノアは、振り返る事無く冒険者ギルドの方へと歩いて行った。

解放されたデミは憎々しげにノアを睨み付けていた。
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