ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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王都編

鉱山型ダンジョン『ミネリオ』

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「野盗に出会した時はどうなるかと思ったが無事に着いて良かった…
ここが鉱山型ダンジョン『ミネリオ』だ。」


野盗を蹴散らし、歩く事1時間。
ノアとギルドメンバー一行は無事鉱山に到着。

目の前にはぽっかりと大口を開けた大きな岩山に、『ミネリオ』の立て看板が立っていた。

岩山の周囲には兵舎が建っており、20人以上の兵士が常駐している様だ。 


「お、君達は王都の【彫金加工】と【料理人】のギルドの者達だな?」

「ああ、護衛も一緒だ。」

「護衛…え?君1人かい?」


兵士達は護衛と思しき人物、ノアに声を掛ける。


「はい、この通り僕1人での護衛依頼を受理されましたので、ここへ来ました。」


そう言って兵士に王都で受理された依頼書を見せる。


「本当だ。受理印は確かにギルドの物だ…
ちょっと冒険者カードを確認させて貰って良いかな?」


提示する様促されたノアは素直に応じる。


「新人冒険者のノア…
…黒い二刀…もしかして【鬼神】のノアか?」

「え?はい、そうですが…」


と、 ノアが言った途端、兵舎内にいた兵士達がドカドカと音を立てて外に出てきた。

ノア含め、ギルドの面々も何が起こったのか分からないと言った表情をしていると、その場にいる兵士全員がノアに最敬礼をしだした。


「「「【鬼神】のノア殿、今回我等が故郷、フリアダビア奪還に尽力して頂き、誠に感謝しております!」」」

「あー…なるほど、そう言う事ですか…」


兵士の顔を改めて見てみると、皆10代後半から20代前半と比較的若い人ばかりである。
恐らくあまり育たない内に街が占領され、王都に避難。
あちらにも鉱脈とかあったから、その経験を生かしてこちらに配置されたのだろう。


「ええっ!?フリアダビアに派遣された新人冒険者がいるって噂あったけど、あれノア君の事だったの!?」

「いや、通りで新人にしては強い訳だよ…」

「妙に大人びてたり、歳の割に落ち着いてると言うか…」

「皆さん、取り敢えず落ち着いて下さい …」


ギルドの面々は、ノアが【二つ名】持ちだった上にフリアダビア奪還の立役者だった事に衝撃を受けていた。

最敬礼をしたまま微動だにしない兵士だったり、その場にいる者達が落ち着きを取り戻すのは、そこから暫く経ってからの事だった。



「君はこのダンジョン初めてだろうから説明するぞ?
鉱山型ダンジョンって事から分かると思うが、採掘も出来るし、モンスターも当然現れる。
ただ出てくるモンスターは多種多様だ。
地面から魚が飛び出すし、ただの岩の塊が実はゴーレムだった。
何て事もザラにある。あとトラップや宝箱何かも仕掛けられているからそこは注意してくれな?」

「はい、分かりました。」


 説明を受けたノアは早速中に入る事に。
兵士達からは「気を付けて」とか「頑張れよ」等恭しい程に手を振って見送られた。


岩山の入り口は、高さ、幅が共に5メルもあり、割と広く、なだらかな下り坂になっており、それが地下へ向かって延々と続いている様である。

中は完全に真っ暗という訳では無く、ほんのりと明るい程度である。
<夜目>が無いと分かり辛い為、ノア以外はランタンに火を点けている。

中に入ってからはノアが先頭に立ち先行する形を取る。
何故なら、兵士の話だとトラップが仕掛けてあるらしいので<罠感知>を持っている者が先行した方が良いと判断した為だ。

コッコッコッコッ…

「う~ん…この石、蓄光作用でもあるのかな…
これのお陰で中がぼんやり明るいんだな。」


ノアはぼんやり光る石を片手に、なだらかな坂を下る。


「それは『蓄光石』って言って、弱~い光も中に封じ込める性質がある石だ。
因みにその石を割ると強い光が放出されるから気を付けてくれ。」

「簡易的な目眩ましにもなるんですね。」

「まぁな。だが下に行けば行く程、出てくるモンスターの目は退化してる奴ばかりだから役に立たないぞ。」


今はまだ蓄光石のお陰でほんのりと明るいが、目が退化するという事は完全に真っ暗な場所も存在するのだろう。


「そういえば目的の場所はどの辺りなんですか?」

「この坂を下った突き当たりにちょっとした安全地帯があるんだけど、そこから下層に向かう昇降機があるのだが、それを使って暫く降りた先の『レベル8』って層にお目当ての鉱脈がある。」

「『レベル8』?」

「今の所最下層は『レベル26』まである。
この先採掘が続けば『レベル』はどんどん更新されていくだろう。」

「まぁその分強力なモンスターが出てくるだろうがね。」


オードゥスと違い、『上層・中層・下層』と言う表記ではなく『レベル』表記の様だ。
因みに昇降機とは別で下に下りる道がある。
その為、自分の実力に見合った探索を出来るという事で割と人気の狩り場でもあるが、王都から少し距離が離れているのが難点。




「あ、昇降機ってあれですか。」

「そうあれあれ…ん?」


暫く歩いていると視線の先に薄らと結界が張られた無骨な機械仕掛けの昇降機が見える。

その昇降機前を見てみると体の大きな男性獣人がしゃがみ込んでいた。


「どうかしましたかー?」


ノアがその獣人に呼び掛けると男性獣人は飛び起き、ノアの方に走ってくる。


「すまない君達、昇降機の稼働に必要な魔力が無くてな、少し魔力を分けて貰えないだろうか…」


昇降機の動力源は魔力らしく、どうやらそれが枯渇して困っていた様だ。
余剰魔力を蓄えられる指輪を所持しているノアは獣人からの呼び掛けに応じる事に。


「良いですよ~…ってあれ?ドゥさんじゃないですか。
どうしてここに1人で居るんですか?」

「あれ?ノア君じゃないか、どうしてここに…
それに後ろの方達は…?」


前から走ってきた男性獣人は商人のジョーが経営していると言う商会の従業員のドゥだった。
最近あまり絡みが無かったが、獅子型獣人だった為よく覚えている。そしてモフい。





ゴウン、ゴウン、ゴウン…

「石灰岩?」

「そう、石灰の注文がフリアダビアから大量に来たんだけど、ジョーさんの護衛でルーシー姉妹は居ないし、カサグリアは王から直接依頼があってどっか行っちゃったから動けるのは私しか居なかったんだ。」

「石灰何て何に使うんです?」

「フリアダビアにいるドワーフが『コンクリ』とか言う物を作るのに必要なんだとさ。」

「石灰岩であれば私達がこれから向かう『レベル8』でも採れますよ?」

「それは本当かい?であれば御一緒しても良いかな?」

「ええ、どうぞどうぞ。」


話の流れでドゥも『レベル8』にて採掘する事になった。


「それにしてもカサグリアさん、王からの直接依頼てどんな依頼なんです?」

「王絡みだからあまり言えないが、ノア君の【適正】同様カサグリアの【適正】も中々珍しいからこう言った依頼がよく来るんだよ。」

「へ~。」


確かに王からの直接依頼なのでノアはこれ以上深くは聞かない事にした。


「それにしてもかれこれ30分位降りてますけど『レベル8』って言ってもかなり深い所にあるんですね。」

「『レベル8』で大体浅い海の底位の深さがあるからね。
今が『レベル6』だから後10分位で着くよ。」


決して昇降機の速度も速いとは言えないが、それにしてもかなりの時間が掛かっている。

下層には歩きでも行けるとは聞いたが、最下層の『レベル26』に歩きで行った場合どれ位掛かるのだろう、等どうでも良い事を考えるノアだった。
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