ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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フリアダビア前哨基地編

早速御出なすったぞ!

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「前方2、右と左から1ずつ!早速御出なすったぞ!」

「おうよ!ルド!ロイ!任せたぁっ!ワシは援護にまわる!」

「「ガハハ!任された!」」


前方からどす黒い色の蜥蜴が凄まじい速度で這ってくるのを確認したノアは、右の阿羅亀噛を抜いて駆け出す。

全長2メル程の蜥蜴が、尻尾を振りながら接近する更に奥からもう1匹も接近してくる。
それを確認したノアは左太ももからカランビットナイフを抜き逆手に持つ。

グルォアアッ!

蜥蜴が勢いそのままに飛び掛かってきたので、滑り込みつつ<渾身>を発動して、腹部を掻っ捌きに掛かる。

ゴギギギズブブッ!ギュアッ!?

硬質の腹部を何とか切り裂くと、蜥蜴は着地に失敗し悶えている。

滑り込みの体勢から地面を蹴って立ち上がったノアは、<集中><投擲術><渾身>を発動して腰の捻りのみで阿羅亀噛をぶん投げ、蜥蜴の尻尾の付け根に突き刺して地面に縫い付ける。

ズゴンッ!ギュアアッ!?

間髪入れず右手で左腰の阿羅亀噛を抜きつつ反転し、阿羅亀噛の側面で背後から接近中の蜥蜴
を迎撃する。

ガギィンッ!「うおっ!?」

2、3歩たたらを踏んだノアだが何とか受けきったノアは、<蹴撃><渾身>を発動して蜥蜴の腹部を思いっきり蹴り飛ばす。

対する蜥蜴は、自身の影に尻尾を突き入れると、ノアの足元から黒い魔法陣が展開し、尻尾の先端が凄まじい速度で迫る。

ゾンッ!ギュォアアッ!

咄嗟に阿羅亀噛で尻尾を袈裟斬りで切断したノアはそのまま回転し、再び<集中><投擲術><渾身>を発動して蜥蜴の胸部に阿羅亀噛を突き立てた。

ゴヂュッ!オゴァアアッ!

<ミチッ…ミチチッ…>

胸部に深々と突き刺さり虫の息の蜥蜴を他所に、地面に縫い付けた蜥蜴が尻尾を切り離して自由に動こうとしているのを<聞き耳>で感知したノアは、再び反転して蜥蜴の元へ。

そうはさせまいと蜥蜴がノアに向き直ると、口先に魔法陣が展開。
ゴウッ!と高熱のブレスを吐く。

ノアは左腕に『鬼鎧殻』を部分展開し、盾にしてそのまま突っ込む。


「おぉおおおおっ!」ギュッ!?


炎の奥から赤黒い籠手を装備したノアが、蜥蜴の首根っこを凄まじい力で掴み掛かりつつ右手に持った刺突武器を蜥蜴の眼に向け突き立てる。




「ガハハ!何とも滾る戦い方をしちょるのぉ、あの坊は!」

「部分的な転移魔法に影魔法、炎のブレスとは攻撃が多彩じゃなぁ!」

「長引いたらジリ貧じゃて、さっさと終わらすぞ!」


左右から来る蜥蜴に対して各々正面に向かい合う様に立つドワーフは、腰にトマホークを差したかと思うと、全員が拳をゴツゴツと打ち合わせる。

ブンッ!ガション!ガション!

ドワーフ全員の腕に魔法陣が展開され、ぶっとい腕の上に更にぶっといガントレットが装着される。


「そぅれ!来るぞぉ来るぞぉ!先ずは力比べといごかぁ!ね!」

ドガァッ!ズガアッ!「「うぬぅっ!」」


ほぼ同時に蜥蜴と組み合ったドワーフは、衝突したと言うのに一歩も動かず、冷静に分析を始める。


「良い膂力じゃなぁ!あと、体表に毒の類いは無い様だの!」

「組成はほぼほぼ鉄じゃな!先程同様アイアンリザードの様じゃ!
じゃが並みの奴とは違うのぉ魔素で強化されとる!」


受けきったドワーフに対してアイアンリザードは、影に尻尾を突き入れ、2人の背後から刺しに掛かる 。

ガギッ!ガギィン!

が、援護にまわっていたドワーフが万力の様な力で尻尾を掴んで放さない。


「坊には感謝じゃのう、影魔法見とらんかったら反応が遅れとったわい!
ほれ!今の内じゃぁ!かましたれぃ!」

「「おぅよ!」」 ガションッ!!


ドワーフ2人が拳を握り込むとガントレットの各パーツが展開。

ドゴッ!!ガヂョンッ! ゴシャッ!

アイアンリザードの顔面に拳を叩き込むのと同時に、展開されたパーツが瞬時に戻った勢いが加算され、強固な表皮ごと頭骨を粉砕し、絶命に追いやる。

顔の穴という穴から血を流し、ぐったりと項垂れたアイアンリザードを視認しつつ


「駄目じゃな、威力が弱い。
まぁ<復元>時のパワーではこんなもんじゃろうがな。」

「それ程の威力があっても駄目なんですか?」


阿羅亀噛2本を腰に戻しつつ、戦い終えたノアがドワーフの元へやって来る。


「おぅ坊!そっちも終いか!あっちゅう間に2体仕留めるとはやりおるのう。」

「僕がいた街で、攻撃が多彩だと聞いてたので対処出来たまでの事ですよ。」

「ふふん、誇らぬ所もまた良いのぅ!
このガントレットじゃがな、この街に来る前に即席で作ったもんだ。
展開したパーツを瞬時に戻した時の反動を利用して拳の威力を上げるもんじゃが、頭骨を砕く位しか威力があらんかった。
木っ端微塵になる様に作ったつもりじゃったのだがな。」

(十分過ぎると思うけどなぁ…)


<…ズッ…ズリ…><…ズルズル…ズル…>
<…ジャリッ…ジリッ…><…ズチャリ…>
<ヒタ…ヒタ…><…ズシャッ…ズシャ…>

キュルルォア!シュォアアッ!ジャァアッ!


「正面から1、左から4、右2…いや、まだまだ来てますね…
知らない反応が2つ…別個体の様です。」

「おぅバト、左行くぞ。
4の内2はお前さんやっちょくれ!」

「おぅさ!任せぃ!
ロイ右の2は頼んだぞぅ?」

「だぁれに言うとる、安心せい!坊主は変わらず先駆けかのう?」

「勿論!個体数変更、正面4、左6、右3!」


攻撃目標を定めている間も続々と<気配感知>の中に反応が現れ続ける。


「ガハハ!悠長に喋っちょる暇は無い様だのぉ!
ほいじゃあまたここで会おうぞ坊!」


そう言ってドワーフ2人が左、少し間を置いて残りのドワーフがガントレットを撃ち鳴らして右へと向かい、ノアが正面へと駆け出す。

正面からは左右の壁を這って蜥蜴型が迫る。
が、ノアと蜥蜴2匹との間の空間に魔法陣が展開。

グバァッ!

大蛇が魔法陣から大口を開けて飛び出し、ノアに飛び掛かる。
大蛇の表皮はアイアンリザード同様、どす黒く金属質の光沢を放っている。

即座に阿羅亀噛を抜いたノアは更に加速してそのまま突っ込む。


「わざわざ弱点晒してくれてどうもっ!」

ドヂュッ!ジャァアッ!?


速度はそのままに、阿羅亀噛を大蛇の口の中に突き立てたまま突進を続け、左側の壁を這って来た蜥蜴に突撃。

飛び上がったノアは腰を素早く捻って<渾身>と<蹴撃>を発動。
阿羅亀噛の柄に強烈な後ろ回し蹴りを仕掛け、大蛇の頭を刃が貫通、蜥蜴の首元に深々と突き刺さる。

蹴りの勢いを利用して右側の壁にいる蜥蜴に向け跳躍、両太ももの刺突武器を抜き<渾身>を発動して蜥蜴の上顎と右手の甲に突き刺す。


「くっ!硬ぇっ…!」


突き刺した刺突武器は右手の甲を貫き、壁に縫い付ける事は出来たものの、上顎に刺した刺突武器は下顎まで貫通したが、壁に縫い付ける事は出来なかった。

が、動きを僅かでも止められれば良い。
先ずは最後尾の4匹目を処理するのを優先。

着地するノアの右足を狙って蜥蜴が大口を開けて迫るので、鬼鎧殻を腰から下の右足部分に発動。

ガギィッ!ガギギッ!

蜥蜴が右足を噛み千切りに掛かるが全く牙が通らない。

そうこうしている内に、両手持ちした阿羅亀噛に<渾身>を上乗せして真下に一気に突き刺す。

ズドンッ!ゴッ!ボギン!

強固な首の骨を両断、更に<渾身>を発動して首を撥ね飛ばす。


ゾクリ…


背後から嫌な気配を感じたノアが振り返ると、頭、胸、腰の位置に魔法陣が展開、即座に炎のブレスが噴射され、ノアが立っていた場所が炎で埋め尽くされる。

ノアが大蛇と共に突き刺した蜥蜴が苦し紛れに炎のブレスをノアの近くに展開。

ノアは鬼鎧殻も回避も出来ずに炎に飲み込まれた。


ズバァッ!ギュオッ!?


首に深々とカランビットナイフを突っ込まれた蜥蜴は力無く崩れ落ち、炎のブレスを噴射している魔法陣も即座に霧散して辺りは静寂に包まれた。


「い、今のは危なかった…」
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