ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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アルバラスト編

中級冒険者のルディア

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俺は中級冒険者のルディア、【槍】の適正を持っていて普段はこの街『アルバラスト』に拠点を置いている。

パーティメンバーの【忍】朧、【拳士】レオ、【槍】ルディアの3人で組んでいる割と名の売れたパーティだ。

今日この街に変な冒険者がやって来た。

ゴブリン200体を倒したと言い、報酬金を見ず知らずの奴に渡したり、野盗3人捕まえた事で今まで進捗しなかった野盗壊滅がもう間近まで迫ったり、変に人脈あったり、変に場馴れしてて大人びてたり、極め付けに諜報部が出て来たり…


ははーん、アイツもしかしてどっかの貴族の坊っちゃんが世直しの真似事で世間を放浪中とかそんな所かな?


現場叩き上げの俺達が世の中そんな上手く行かないことを教えてやらないと。

そんな事を思って夜中メンバーのレオと飯食ってたらあの坊主ワイバーンステーキ食ってんだもんな。
機会を伺って坊主を闘技場まで誘ってみた。
レオは元々戦闘馬鹿な所があったから取り敢えず戦ってみたいと言ってたし丁度良いだろう。

さて、どの程度で音を上げるかな。


「お、バカ!レオ、【獣化】する気か!?」

「ソレホドノテアイダ!ソレニヤツノメヲミロ!コノスガタニナッテモヤツハドウジテスライナイ!」


レオに言われて坊主を見るが、先程ギルドで見た表情そのままだ。
平然とさっき自分でぶん投げた剣を腰に戻している。
何故、何故そんな落ち着いていられる、レオの【獣化】は見た目はまんま魔獣だぞ?



流石に速度が段違いに跳ね上がった事で坊主が受け止め切れなくなったか…ここまでだな…
いや、それ以前にレオは通常状態でも十分強いんだぞ?
バトルベアとタイマン張れるんだからな…


『ゴギンッ!』

「ウゴァッ!」


試合場の方から金属で金属を叩く様な音が聞こえてレオが倒れる。
顎に食らった様だ、少しふらついて…え?何だ…アレは…


「うわー、鎧蜂よりは柔いけど大分防御力上がってるな…」


ノアの眼は赤黒く染まり、赤黒いオーラを立ち昇らせたノアがレオに歩み寄る。
何とか回復したレオは突進を仕掛ける。



グルォアアアアア『ガシッ!』グフッ!?


ノアは、口を開け猛烈な速度で噛み付きを行って来たレオの下顎を掬い上げ、力任せに地面に叩き付ける。

ドゴァアッ!ウグァッ!?

(割と強目に叩き付けたハズだがカウンターは灯らないか…って事はこれは"壊す"つもりで戦わないとなぁ。)

ニタリと嗤うノアの表情に恐怖を覚えるレオ。

ノアは拳を振り下ろし顔面を殴り付ける。が、寸前の所でレオはこれを回避、破砕する石畳の礫が顔を叩く。

地面を1回転がり直ぐ様起き上がったレオは吼え掛かる。


「ナンダソノスガタハッ!?」

「姿に関してはお互い様です、さっき言ったじゃないですか、勝ったら教えるとねっ!」


ノアはレオに向かって急速に接近を開始、僅か2秒程で肉薄する距離まで接近。

するとレオの口先に魔方陣が発生。


「エクスプロージョン!」


ゴバァアアアッ!

レオの目の前で大爆発が発生、爆炎が吹き荒れるも

ゴギィンッ!ウゴォアッ!?

「魔法使えたんですね!目の前で爆裂魔法撃たれるのは2回目ですよ!」


ノアは臆する事無く爆煙の奥から拳を繰り出してレオをぶん殴る。
その代わりに爆裂魔法を諸に食らった為2つ目のカウントが灯る。


「フザケルナ!エクスプロージョンダゾ!?セメテヒルメ!」

「攻撃力は魔方陣で無効化されるんですから後は持ち前の<火耐性>でどうとでもなるっ!」


爆煙から飛び出したノアがレオに迫る。
予想外の行動でレオの思考は止まり掛かっており、ノアの接近を止める為エクスプロージョンを連発する。


「エ、エクスプロージョン!エクスプロージョン!」


ノアは連発される爆裂魔法をギリギリで回避、後方では何発もの爆裂魔法が炸裂、闘技場内は爆音が響く。

再びノアの目の前でレオの口先に魔方陣が展開、するとノアは魔方陣ごとレオの口先を掴む。


「一蓮托生ってねぇ!」


ドガァアアアンッ!グォアッ!?「あっはっはー!」


レオは4つ目、ノアは3つ目のカウントが灯る。
今度は爆煙の奥からレオが飛び出して来た、口元からは未だに黒煙が立昇る。

オオラァアアアアッ!ドガァッ!

レオが<渾身>を乗せた拳を繰り出すとノアは顔面に諸に食らう。
ノアの4つ目のカウントが灯る。
ノアがまともに食らった事に違和感を覚えるレオ。


「そっちから接近してきてくれてありがとうございます!」


ノアは顔面の腕を引っ張り足を刈って押し倒すと拳を握って<渾身>を発動。

レオも拳を握り込むと同時にガントレットに嵌め込まれた装飾が光だし、拳に魔方陣が展開。

両者ほぼ同時に拳を繰り出し同時に互いの顔面に撃ち込まれる。

レオからは爆裂魔法とパンチの同時攻撃による爆裂拳を繰り出し空中に火柱が上がる。

ノアは純粋な攻撃力を込めた拳を撃ち込み、着弾地点を中心に直径5メルの石畳を破砕、爆炎と土煙が立ち昇った所で両者同時に試合場から弾き出された。





「おーい、お2人さん大丈夫かい?」


試合場の外で【獣化】が解除されたレオが大の字に寝転び、【鎧袖一贖】を解除したノアが尻餅を付いて項垂れていた。


「あー大丈夫です…"アレ"使った反動が来てるだけですので。」

「何なんだよ、坊主さっきのアレは…まぁ良い、おい、レオ大丈夫か、って聞いてるだろ?」

「大丈夫だ、くっくっく…あっはっはっは、あー負けた負けたぁ!
負けてこんな清々しいのは久しぶりだ!」

「何言ってるんですか、最終的には相討ちでしたよ?」

「何を言う、少年の【適正】は知らんが俺と同じ土俵に立って奥の手まで使った。
最後まで拳で戦おうとしたが魔法を使って搦め手まで駆使した上での引き分けだ。
これはもう負けと同じだ、だが悔しいといった感情は無い。
非常に楽しい戦いだったぞ!」

「もし機会があればまたやりましょう。」

「ああ。ルディア、お前はどうする?」

「あのな、純粋な火力だけで言ったらパーティで最強のお前が勝てなかったら俺が敵う訳無いだろ、それに…」


ルディアが試合場の方を見たのでノアとレオがそちらを向くと、試合場の石畳が所々破砕し、その下にある魔方陣が剥き出しになっている為、職員が総動員で修復作業にあたっていた。


「こんな状況じゃ暫くは無理だろう?」


その後ノアとレオは職員達に謝罪、職員達は気にしないでとは言ってたが、使える様になるには半日程掛かるとの事だ。


「うぐ…痛たた…俺らはこの後宿に戻るが、少年はこの後どうするんだ?」

「そうですね…腹減ったので取り敢えず食品街にでも行ってますかね。」

「「そ、そうか…」」


激戦で疲れきったレオに対して軽い足取りで地上を目指すノア。
その後ろ姿を見たレオはポツリと呟く。


「完全に負けたな…」 
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