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アルバラスト編

ズルルルルルッ!

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ズルルルルルッ!「うん、やっぱり美味い。」

引き続きノアは屋台で出されていた『シオラァメン』なる物を食べていた。


「最近王都で売り出し中の食べ物なんだ。
今はスープが一種類しか無いが、直に『ミソ』だとか『ショウユ』だとかを出すらしいよ。」

「こんな細い麺は初めてです。
スープもこんな透き通っているのにしっかり味がして…
おじさん、もう一杯!」

「しっかしよく食べるねぇ、もう5杯目だよ?」   

「まだまだ入りますが、色々と食べたいので次で終わりにします。」


ラァメンを食べているノアの視線の先では『ワイバーンステーキ』ののぼりが上がっていた。


「はい、お待ちどう様。
お次はワイバーンステーキかい?」

「ワイバーンの肉なんて食べた事無いですから…美味しいですか?」

「美味しいよー、値段はそこそこ張るけど、払う価値はあるよ。
最近竜種ダンジョンの魔素上昇の影響で乱獲しまくったから値段は大分抑えられているから食べるなら今だね。」

「ぷはーっ、御馳走様でした。お代の5000ガル置いておきますね。」

「え!?早!ありがとう、また来てくれな。」


屋台から離れたノアはのぼりの所まで向かう。
ちなみに今回は丼を10杯分借りる訳にもいかなかったのでグリードへのラァメンはお預けとなった。許せグリード。

真夜中な為、人が少ないのが幸いして席には直ぐに座れた。


「ワイバーンの肉は初めてかい?」

「はい、初めてです。」

「竜種ダンジョン『ドラガオ』で乱獲されたとは言え100グラム5000ガルだけど良いかな?」

「それでは400グラム分下さい。」


そう言ってノアは2万ガルをテーブルへ置く。


「ほー、君さっきから色々と食べてた様だから少し心配してたけど結構稼いでるんだねぇ。」

「今日臨時収入があったのでね、それで懐が潤ってるんです。」

「へー何があったか知りたいもんだ。」


店主はノアと会話してはいるが手はしっかりと動かしているのでこういう感じのスタイルでいつもやっているのだろう。


「この街へ来る途中にゴブリンの巣を見付けましてね、その討伐報酬金です。」

「おや?ゴブリンって倒してもそこまで稼げなかった気がするが…」

「200匹いたのでそこそこ稼ぎになりました。」

「200!?はー…お若いのになかなかのやり手だねぇ…
何だい?中級冒険者さんかい?」

「いえいえ、冒険者始めてまだ一月も経ってませんよ。」

「はっはー、冗談が上手いねぇ。」

(本当なんだけどなぁ…)


そうこう話している内に片面が良い色に焼き上がっていく。


「実際ワイバーンの肉ってどうですか?」

「焦げた肉になっても食事効果が1つは必ず付く、ってんだから大した食材だよ。
まぁ私はそんなへまはしませんがね。」


店主は冗談を良いながらも皿へと盛り、ノアの前へ提供する前に食べやすい大きさに切ってくれた。


「お熱い内にどうぞ。」


そう促されたのでノアは直ぐ様パクリと頬張る。

(柔…)(『柔らけー…』)


「正直焼いただけってのはどうかと思いましたが、この肉は変に手を加えない方が良いですね!」

「うんうん、正直でよろしい。」


柔らかくはあるが、脂身自体は少なく軽く塩コショウを振っただけなのに肉の存在感が凄い。


「屋台で出してはいますが肉の処理は手を抜いてません、どうです?柔らかいでしょ?」


言葉が上手く出せないノアはただただ店主にコクコクと頷くだけであった。


「…もう無くなっちゃった…」

「はは、美味そうに食うねぇ。」

「この肉を食べるにはまたここで食べるか、自分で獲るしかないのか…」

「未だに『ドラガオ』は魔素上昇が続いているから比較的安くは食べられるけど獲りに行くのはオススメしないな。」

「それは何故ですか?」

「『ドラガオ』の場合魔素上昇でダンジョン全体のモンスターの脅威度が上がっちまったんだ。
以前までは新人冒険者の4人組パーティ以上ならある程度戦えたんだが、今は中級冒険者パーティ推奨になっちまった。」

「ふーん…『ドラガオ』ってダンジョンはここから遠いんですか?」

「この街の西門を出てまーっ直ぐ進んで行けば1日で着くよ。
…まさか行くのかい?」

「行くだけ行ってみます。ダメなら即逃げ帰りますよ。」

「そうしてくれ、俺が勧めて君が死んじまったら夢見が悪いからね。」


店主と暫しの間話していたノアだが背後から歩いてきた2人組の冒険者に声を掛けられる。


「お?坊主、ワイバーンの肉食ったのか?美味いだろ。」


後ろを振り返るとギルドで朧と一緒にいた槍使いと【拳士】の獅子型獣人が立っていた。


「ええ、本当美味しかったです。お2人も食事しに?」

「いや、俺らはなかなか寝付けないから闘技場にでも行こうと思ってね、坊主も良ければ行かないか?」

「へー、闘技場何て近くにあるんですね。」

「まぁ、知らないのも無理無いか、今日この街に来たんだもんな。
実はこの街の地下に闘技場があるんだ。」

「え!?」






「ここ、ここ。この街の東西南北、計4箇所に地下へと続く螺旋階段がある。
ここを降りていくと地下闘技場が姿を表すんだ。」


2人の冒険者の後に続き螺旋階段を降りる。
100段程は薄暗い階段が続いたが、そこから先は階段2段置きに、落下防止用の欄干が取り付けられている。
欄干の隙間から下を見ると東西南北4箇所に広めの試合場が設けられ、真ん中に円形のカウンターが設置されている。

4つある試合場の内2つは使用されており、激しい戦いが行われている。


「おー、すげぇー。」

「だろ?この街は割と血の気が多い奴が多くてな、夜な夜なこういった感じで試合が行われたりしている。」

「ルールはあるんですか?」

「勿論だ、1つ目は殺しは御法度。
ただそんな事気にしてたら戦いに身が入らないだろうからそれぞれの試合場の地面、壁に専用の魔方陣が付与されててな、一定の威力が加わると無効化されカウントされる。
対戦前にカウント数を設定しておけば、その回数を越えたら自動的に試合場から弾き出される、っていうこった。」

「へぇ。」

「2つ目は金銭が絡む賭けは無しだ。
前にあったんだよ、新人冒険者脅して金銭が絡む賭けさせて金をむしり取るって事がね。」

「それさえ守れば後は何やっても良いんですね?」

「そう言う事だ、後は各々が決めれば良いとさ。」

「そうですか。
それじゃあ早速始めますか、獣人さんが何かウズウズしてるみたいなので。」


獅子型獣人の手を見ると頻りにガントレットをわきわきさせている。


「わざわざステーキ屋店主との会話の切れ目まで待ってくれてたんです。
この場ではいさようならは無作法というものでしょ?」

「…気付いてたか…」

「<気配感知>に引っ掛かってましたし、何かギラギラした視線を感じましたからね。
お2人で戦いますか?サシでやりますか?」

「勿論サシでだ、お前さん武器を色々持ってるが何使っても良いぞ。
こっちから誘ったんだしな。」

「それは有難い。」


3人は中央のカウンターへと向かう。
職員に試合の登録、ルールを設定してそれを試合場の魔方陣に登録。



今回、カウント数は5回、ギブアップ可、制限時間無し、武器は何使っても良いと言うルールで行う。


「ではお2人共試合場の方へ!」


職員に促され試合場へ。
試合場の広さは幅も奥行きも100メル(メートル)だと言う。こりゃ広い。
床は石畳で、更にその下に魔方陣が描かれている様だ。


「そう言えば君、剣にナイフ、鎌…か?あと弓、色々持っているが、【適正】は何なんだ?」


返答に困ったノアは獅子型獣人に告げる。


「そうですね…僕に勝ったら教えてあげても良いですよ。」
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