ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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アルバラスト編

んな訳あるかい

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ノアが名乗るとハミル村長代理が「新人冒険者だと?んな訳あるかい!」と一蹴されてしまった。


実は数日前にも新人冒険者がこの村に来たという。
剣2人に弓1人のバランスが取れた3人パーティだったというが 、ウルフ3頭を10分以上掛け何とか撃退したが「用事を思い出した。」と言いそそくさと大通りを進んでいったらしい。

そんな事があった為たった1人で、しかも10秒足らずでウルフ4頭を倒してしまったノアを新人冒険者とはとても思えなかったらしい。


その後、冒険者カードを見せた事で何とか納得して貰った。


「うぬぬ、確かに新人冒険者の様ですな。
すまない、疑がって悪かった。」

「いえいえ、構いません。
それとさっき僕が倒したウルフは村の物として扱って下さい。」

「良いのですか?」

「先程の親子から食べ物が足りなくなってきたと伺いました。
少しでも足しにして下さい。」

「厚意に感謝します。
さぁ、怪我人は手当てを!手の空いてる者はウルフを回収してくれ!」


ハミルの指示で腕から血を流していた村人は回復玉を口の中で転がしつつ腕の血を洗い流しており、どうやら既に傷口は塞がった様だ。

ノアが倒した4頭のウルフは村人達が回収し、村の入口にはノアとハミルが残っていた。


「最近になってウルフや猪が山から出て来たと伺いましたが本当ですか?」

「ええ、冬はそういった事はありませんでしたが、春になった途端頻繁に現れる様になりました。」

「…うーん…となると…」

「何か思い当たる事が?」

「そうですね、思い当たる事があるので、どちらにせよ山の方を見て来ないと判断出来ませんね。」


そう言ってノアは村を出て山の方へと向かおうとすると最初に助けた少女(確かミミとか言う名前)が不安そうな顔でノアに問い掛ける。


「お兄ちゃん行っちゃうの?」


その少女以外にも何人かの村人が不安そうな顔をする。


「ちょっと原因を調べに山の方までね。
大丈夫、直ぐに戻ってくるから村の外に出ない様にね。」


と、言ってはみたものの皆の顔は不安そのものだ。
そこでノアはある事を閃く。


「それじゃ僕が村に帰ってくるまでの間皆を守る護衛を置いておくよ。」

「護衛?」

「そう、ウルフや猪何か全く相手にならないとても強い護衛だよ。」

「でも…どこに?」

「実は直ぐ近くにいるから安心して。」


ミミや村人がキョロキョロと周囲を見渡すもその様な姿は無い。
するとノアが周囲を見渡して1頭のウルフを指差す。


「良いかい?あそこのウルフを見ててね。」


ノアが指差す方向を見る一同。


「グリード、首から上は食って良い、但し一撃で仕留めるんだぞ?」

<グル!>

頭の中に響く声に一瞬驚いたが直ぐに情報が流れ込んできた。


スキル<念話>を獲得

『グリード』がスキル<念話>を獲得しました。

『グリード』と<念話>が可能になりました。


突然の事で黙ってしまったノアにミミが心配そうな顔をする。


「……。」

「お兄ちゃんどうしたの?」

「ああ、ごめんごめん、それじゃあいくよ。」

<グリード、行け!>


ノアが念話で指示を出すとウルフの頭の真下から物凄い早さでグリードが飛び出し、首から上だけ噛み千切って再び地面に潜る。

頭部を持っていかれたウルフは暫く立ったままだったがゆっくりと体が揺れ、その場に崩れ落ちた。
村人達には速すぎて何が起こったか分からないといった様子だ。


「ね?」

「ね?じゃないですよ!え、待って!待って!何が起こったんですか!?何がいるんですか!?」

「暗くなる前には戻ってきますのでご安心を。
あ、護衛が倒したモンスターは回収して大丈夫ですから。」

「ねぇ待って!待ってって!」


ミミや村人が物凄く色々聞きたそうにしているが、色々無視して山へ向かう。
暫し歩いていると雑木林の辺りまで来たので<木登り上手><縦横無尽>を発動して樹上に上がり枝伝いに進む。

(山の麓まで来たがモンスターの反応無し、か…)

ノアは枝伝いに斜面を登り始める、樹上から村を俯瞰で見れる位置まで来ると<気配感知>に未確認の反応を感知。
ただ反応の位置からして地面の下である。

(この山、洞窟か洞穴でもあるのか?)

更に進むと視界の中に小さな洞穴を見付けたノアは、入口近くに降りて石を拾う。
久しぶりに<気流感知>を発動してどこかと繋がっているかどうかを確認する。

(一応風の流れはあるのか…)

次にノアは洞窟内に石を投げ、反響音を確認する。

<カツーン>
<コツーン>
<カラ…>

「うーん…上方向にも反響しているが下方向の方が深いな…行ける所まで行って見るか。」


ノアは<夜目><忍び足>を発動して洞窟内の探索を開始する。
洞窟の内部は人1人が通る分には十分な広さで、なだらかな下り坂となっており探索がしやすい。
ふと足元を見ると地面の所々に動物やモンスターの骨が散乱していた。


「これは…当たりっぽいな。」


更に奥へと進むと<気配感知>の反応に先程同様未確認の反応を感知、ノアがいる地点の真下辺りに軽く20体はいる様だ。

少し進んだ先に部屋の様な穴がぽかりと空いており、異臭が漂っていた。

(相変わらず臭ぇ…確認が取れたら早々に離脱するか。)

ノアは更に慎重に歩を進め、反応がある部屋の真横までやって来た。
近くまでやって来ると予想していた通りの鳴き声が聞こえてくる。

ゲギャギャギャ! ギュアッ!

(そうそう、この汚ならしい鳴き声。)


ノアは部屋の外から顔をひょこっと出す。
視線の先にはウルフの死骸に群がる緑色の肌をした小人『ゴブリン』が死肉を貪っていた。


『ゴブリン』…この世界に広く生息している害獣。繁殖力がとても高い。
身長は大人の腰程しかなく、1匹1匹は非常に弱い、武器さえあれば子供でも倒せるが、中途半端に知能を持っており狡賢く、常に集団で行動している為、数の暴力で狩りをする。
また、ある程度の数に達すると食糧を求め、人里に攻めて来る事もあるので見付けたら駆除する事が推奨されている。


(20体か…少ないな、まだ昼だから狩りに行ってるのかもしれない。
よし、狩るなら夜だな。)


ノアは早々に洞窟から脱出し、付近を探索。
結果、中へと通じる穴は3ヶ所と判明した。


(取り敢えず一旦村へ戻って村人に報告だな。)

(『それで、どうやって駆除する?特訓の時みたいに炙り出しでもやるか?』)

(いや、それだと事後処理が面倒だ。
グリードも参加させて全て駆除しよう。)

(『ほう?何か考えがあるんだな?』)  

(まあね。一先ず村に戻ろう。)


そうしてノアは来た道を戻っていった。
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