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旅立ち~オードゥス出立まで

ギルドにて

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街に戻ったノアはギルドにてエメラルダと話していた。


「ノア様、先程王都からの招待状の件について返事がありました。」

「…返事は何と?」

「やはり一度は顔を出して欲しいとの事だそうです。
他のダンジョンの功労者は全員招待を承認しているそうなので1人だけ参加しないのはそれはそれで変な印象を持たれるかと…」

「まぁそうなりますよね…分かりました。
招待受けます。」

「それでは冒険者カードに紐付け致しますので一度提出して頂いても良いですか?」


エメラルダに促され、冒険者カードを渡す。
暫し掛かるとの事なので街に出ようとした所で


「ちょっ!ちょっとお待ち下さいノア様!」


突然のエメラルダの大声にノアは愚か周囲の職員もビクッと体を強張らせる。


「どうしたんですか?大声出して…」

「どうしたもこうしたもありません!
この間取られた【特殊清掃員のお得意様】の称号が消えて新しい称号をお持ちな上、既に1段階変化してるじゃないですか!」

「あー…取りましたね…さっき。」

「何ですかこの称号は?私の<鑑定>でも見えないなんて初めてですよ!?」

「まー確かに見るには特殊な条件が必要ですしね。」

「それにノア様、いつの間に『契約獣』を…しかも何ですかこの『特殊契約獣????』って!
見た事ありませんよ!?」

「じゃ、紐付けお願いしまーす。」

「あ、待って下さいノアさ」バタンッ!


そう言って詰問してくるエメラルダに後を任せてノアはギルドを出る。


「やあ、ノア君。中が騒がしかったけど何かあったのかい?」

「あーいや、エメラルダさんが何故かエキサイトしただけですよ。
それにしてもジョーさんはギルドに用事でもあるんですか?」

「いや、ちょっと知り合いにノア君がいたら門の近くに来る様に伝えて欲しいと言われてね。」

「門ですか?分かりました。」


ノアはジョーと別れ、ジョーに伝えられた門へと歩き始める。
翌日街を出ようと決めていたノアとしては本日中に用事を済ませられた事に少し安堵していた。

(あれ?この反応は、クロラさんだ。)

門の近くまで来るとクロラが手を振って待っていた。


「ごめんね、ノア君どこにいるか分からなかったから人探しが上手なジョーさんにお願いしたの。」

「そう言う事でしたか。すいません、さっきまで上層1階に行ってたので。」

「通りで街のどこ探してもいなかった訳だね。」

「それで…何かありましたか?」

「あ、ごめん、ちょっと待ってて。」


そう言ってクロラは鞄からペアリングを取り出し、ノアに装着する様に促す。
腕に装着したノアは具合を確認、ペアリングに付いた苦万蜂の眼石が淡く紫色に光っていた。


「この間言ってた物が完成したんですね?」

「うん、ジョーさんの所のカサグリアさんに<付与>お願いしたの。」

(へーあのエ裸婦…エルフのカサグリアさん<付与>出来たんだ。)

「それじゃ使い方教えるね。
ペアリングの装飾に向かって"レター"って唱えたら淡く光だすから、相手に伝えたい事を話して暫くすると相手のペアリングに送られるんだって。
届いたら装飾が更に淡く光るからそれで分かるんだって。」

「へー…"レター"
どうも、ノアです。届きましたか?」


暫し待つとクロラのペアリングが光だす。
装飾にクロラが触れると文字が浮かび上がり、先程のメッセージが表示される。


「おー。これで離れてても連絡取れますね。」

「うん、本当は"念話"の<付与>にしようと思ったけど、ノア君いつもどこで戦ってるか分からないから"手紙"にしたんだ。」

「気遣ってくれてありがとうございます。」

「私達明日の朝またダンジョン潜るの、だからこれを渡せるのが今しか無かったんだ。」

「そうですか…次に会うのは王都になるかもですね。」

「うん…そうなるかな…」

「それじゃあクロラさん成分貰いますね。」


そう言ってノアはクロラを引き寄せ、抱き締める。
いつもと違って強引なノアになすがままのクロラも腰に手を回して抱き付く。


「ダンジョン頑張って下さいね。」

「うん、頑張る。それで私も王都に行くね。」


暫しの間抱き締めていたが不意に離れる。


「このままだと街を出たくなくなるので次会う時までの楽しみにします。」

「私も。
それじゃノア君、またね。」

「うん。また。」


お互い手を振って別れ、姿が見えなくなるまで背中を目で追い続けた。







「ふが~~~っ!よく寝た~っ!」

(『相変わらず『俺』の第一声は何かおかしい気がする…』)


昨晩クロラ成分を補給したノアは快眠だった様で、肌がツヤっとしている。
腕を回したり体を2、3解し終わると装備を整えて宿を出る。

「今日までありがとうございました。」

「はっはっは、街の英雄さんを泊めた宿として箔が付いたから良いってもんさ、またこの街に来た時は泊まってきな。」


宿を出たノアはギルドに向かう。


「おはようございまーす。」

「おはようございますノア様、今からご出立ですか?」

「ええ、往来が少ない方が動きやすいので。」

「結局【称号】の事や契約獣の事は教えて下さらなかったですね?」

「こちらとしてもあまり口外したくなかったのですいません。」

「分かりました。
それではこれから出立されるノア様の行く先に幸あらん事を祈っております。」


挨拶を簡単に済ませたノアはギルドを出て門へと向かう。


「お、坊主、そういや今日街を出るんだったな。」

「ええ、短い間ですがお世話になりました。」

「なーに、世話になったのはこっちの方だぜ、街の英雄さんよ。
お前さんが作ったハンバーグ旨かったぜ。
また街の近くに来たら寄ってくれよな。」

「はい。」

「そうだ、ギルドでも言われたと思うが、野盗とゴブリンには気を付けろよ、奴ら腐る程いるからな。」

「ゴブリンはいいですけど、野盗って捕まえたらどうすれば良いですか?」

「俺達みたいに街の中や街の外を巡回してる兵士に預けるのが一番だが、いない場合は近くの村に預けるか、最悪木に括り付けるだけでも良い。
誰かしらが見付けるだろうからな。」

「分かりました。見付けたらそうします。」

「あとゴブリンは数が多いから片耳を取っとくだけで討伐数としてカウントされっから、街に着いた時に報告するとそれなりの報酬になるから覚えときな。」


その後も困ってる人がいたら極力助けてやると貢献度(?)が上がるだの、馬車が襲われてる所を助けてやるとムフフな展開が期待出来るだのと色々と教えてくれた。


「おっと、悪い、話込んじまったぜ。
引き留めて悪かったな、それじゃ頑張れよ。」


兵士に手を振って街を後にする。
腕に嵌めたペアリングがポォっと光ったので確認すると一言添えられていた。


"行ってらっしゃい!"


「"レター"…行ってきます。」
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