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旅立ち~オードゥス出立まで

ダンジョンに入って9時間

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ダンジョンに入って9時間。

場所を上層5階に移し、交代しつつひたすら熊の討伐を行っていた。
現在クロラとポーラが熊と戦っている。


「そういえば何で熊をひたすら狩り続けてるんだ?」

「ギルドでクエスト貼り出されてたんだ。
熊の討伐1頭につき2万5千ガル(素材の報酬は別)。(ジェイル)」

「あ、やっぱりそちらも受けてたんですね?(ミラ)」

「あぁ、なかなか美味しいからね(ジェイル)」

「こんな美味しいクエスト受けない方がおかしいよ。(ミラ)」

「ごめんね…おかしくて…(ノア)」

「あああ、違うの、これは言葉のあやで…(ミラ)」

「ミラ、本人を目の前にしてひでー(ガルベラ)」
「ひでー(ルドルフ)」

「そういや、ギルドからもう1つ言われた事あったな。(バルドロ)」


バルドロの説明によるとギルドから"ダンジョン内の魔素が上昇しているのでモンスターが湧き易い"状態らしく、大型モンスターを討伐し、ダンジョン内の魔素を消費すればじきに落ち着くらしい。


「なるほどね、クエストの内容的にも報酬的にもギルドとしても美味しいって訳ね。
あ、後方で熊が2頭湧いたよ。」


<気配感知>で熊の出現を確認したので周囲に知らせると、先程まで戦っていたポーラとクロラから声が上がる。


「し、少年…ちょっと休憩するわ、流石に熊5連戦は堪えるわ…」

「了解、次どうしますか?」

「じゃあ僕とミラが行くよ。ミラ、行こっか。」

「りょーかい。ルド、早速<渾身>試しに行きましょう。」


後方の熊へ向け駆け出すルドルフとミラ。
ちなみに先程からノアは戦闘に参加はしていない。
サボっている訳では無く、クエストを受けてい為、ノアとしてはあまり旨味が無い。
それならクエストを受けているジェイル、ルドルフパーティの方にまわし、<気配感知>で見張りと戦闘の助言等を出している。

ちなみに現在2パーティの熊討伐数はジェイルパーティが36頭、ルドルフパーティが42頭である。
割と楽に倒せる様になったとは言え、流石に皆疲労の色を隠せない。

見た所、クロラ、ルドルフ、ミラはまだ大丈夫と言った所だが他は待ってる間、うつらうつらと来ている。


「2人の戦闘が終わったら休憩取りましょうか。」


そのノアの発言に周りから質問が飛ぶ。


「え?少年、ここら辺で休憩出来る所あるの?(ポーラ)」

「いや、無い。」

「まさか木の上とかか?(バルドロ)」

「いや、地面の上だぞ。
まぁとりあえず2人の元へ行こうか。」


皆、頭の上に「?」が浮かんだ状態だがとりあえずノアに着いて行く事にした。





「よし!完了…ってあれ?どうしたんだ皆?」


丁度熊2頭を倒し終えたルドルフとミラの元へ全員集まる。


「流石に皆疲労の色が見えて来たので仮眠しようかと。」

「「「「「「「「仮眠!?」」」」」」」」

「いやいや、休むならまだしも寝るのはマズいでしょ!?(ミラ)」

「というか寝れる場所あるの?(ポーラ)」

「あぁ、これから作る。とりあえず着いてきてくれ。」


ノアに促され、全員5階の角に集まると、ノアは徐に地面に手を付き、魔力を流す。
地面が均され、更に石畳の様に表面を整える。
表面をペタペタと触り、手に土が着かないのを確認。


「うん、よし!皆ちょっと適当な所に座ってみてくれ。」


そう促され、各々適当に座る。
広さを確認した後、ダンジョンの壁に魔力を流し、壁を作る。
人が通れる様にしつつ、他のモンスターが通れない様に壁を交互に作り、蛇行した道を作る。
その更に外側の地面に魔力を流して硬質化させた土で地面から杭を生やす。


「とりあえず即席だけど休憩所の出来上がり。
暫くここで寝ると良いよ。」

「…少年、土属性魔法持ってたのね。」

「この間色々ありましてね。
何か不人気な属性魔法らしいけどこういう時良いでしょ?」

「そうね。私の氷魔法だったら凍えちゃうものね。」


即席ではあるものの、横になって寝られる為概ね好評の様だ。


「寝る時は装備を外すか緩めとくと良い。
起きてまた行動を再開しようとして体がガチガチになってたら辛いでしょ?」


そう言われ各々装備を緩めていくのを見届けたノアは休憩所を出ようとする。



「あれ?ノア君は寝ないの?」

「僕は見張りをやっとくよ、ゆっくり寝てて。」


そう言って休憩所を出る。
が、ジェイル、ルドルフ、ミラの3人も続く。


「皆も休んどいた方が良いですよ。」

「いや、俺はまだ大丈「カイトシールドを地面に置く回数が増えてます。
本当は腕がしんどいハズですよ?」

「…見られてたか、でも自分はここで寝る事にするよ。
直ぐに対応出来る様にね、ノア君は良いのかい?」

「自分は<不眠不休>と<短眠>のお陰であと5日は寝なくても大丈夫だよ。」

「「えぇ…(ルドルフ、ミラ)」」

「さて、と…」


ノアはアイテムボックスから回復玉と毒消しを取り出し、回復玉を握り潰し砕いて毒消しでくるみ団子状にする。

「すいません、ルドルフさん、ミラさんどちらか火貰えますか?」

「あれ?ノア君、生活魔法使えないの?」

「習った事無くて…」

「じゃあやり方教えてあげる、凄く簡単だから。」


そう言ってミラは人差し指をピッと立てる。


「良い?ノア君。
指先に魔力を流して火がポッと着くのを想像してみて。」


言われてノアは指先に火が着くのを想像すると

ポッ!        「おわっ!」

本当にあっさり火が着く。


「他に水を出したい場合、風を出したい場合も同じ要領で出せる様になるから次試してみてね。」

「ありがとうございます。」


そうして着けた火を先程の団子に近付け、端に軽く火を着ける。
じわじわと燃える様に調整し、近くの岩の上に乗せる。


「なぁノア君、それは何なんだい?」

「これは即席の香みたいなもんですよ。
これで出た煙に微回復の効果があるので寝てる間に回復も一緒に行えるんです。」

「「「へぇ~。」」」

「さ、皆さん寝て貰って大丈夫ですよ。
熊が来ても、殺気飛ばすか、心強い味方にお願いしますので。」

「味方?」


3人共気になる様なので呼ぶ事にする。

パンパン!

ノアが手を叩くと少し離れた地面が盛り上がり、飢餓ミミズが出てくる。


「うわっ!飢餓ミミズじゃないか!?」

「称号のお陰で呼び出せるんです、それに意外と強いんですよ。」


そう言って飢餓ミミズに指示を出す。


「ここに近付いてくるモンスターがいたら食べちゃって良いです。」


すると地面を潜る飢餓ミミズ。
少しすると視線の先に熊が現れ、こちらに気付き近付いてくる。

こちらまであと僅か、と言う所で熊の動きが止まったので足元を見ると熊の左足が地面に刺さっていた。

ゆっくりと着実に地面の中に熊が引っ張られていく。
じたばたと暴れたり、足を引き抜こうとするも何も出来ずに地面の中に吸い込まれていった。


バキッボギッベギッボリッボリッ…


熊が引きずり込まれた地面から色々砕く様な音が聞こえ、音が止むとひょこっと飢餓ミミズが現れる。


「その調子でお願いします。」


そう言うとまた地面に潜って行った。


「ね、意外と強いでしょ?」


そう3人に言うが3人共衝撃的な光景に口をあんぐりと開けたまま固まっている。


「お、俺、やっぱり寝るよ…」
「わ、私も…」
「す、すまないノア君僕も寝るよ…」

「?そうですか、おやすみなさい。」


肩を落としげんなりした3人が中に入っていき、それを見届けたノアは再び見張りを続ける。
暫くの間、寝息と破砕音が響いていた。
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