ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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旅立ち~オードゥス出立まで

たいりょー、たいりょー

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「にゃ~、たいりょー、たいりょーにゃ!」

「結構生えてましたからね。」

「これだけあれば当分大丈夫にゃ!」


3人と別れ、目的地の中層に到着した一行は魔力草の採取を開始、大量に群生していた為、かなり時間が掛かった。
2人の護衛中に苦万蜂に遭遇し28匹を駆除、毒針と毒袋が有用な為これも回収。
最終的に魔力草238枚を採取し、依頼は完了となった。

また猫獣人2人を肩に乗せ街に向け走り出し、街に着いた頃には空は暗くなり掛けていた。


「このまま完了報告する為にギルドに向かうにゃ!」

「はーい、了解。」


ギルドの扉を開け、中に入ると肩に猫2匹を乗せたノアに視線が集まる。


「「護衛依頼が終わったのにゃ!」」

「え?あ、畏まりました。素材は全て薬草小屋の方で?」

「にゃ!こちらの必要分貰ったら後はギルドにお任せするのにゃ。」

「畏まりました。
はい、ノア様、依頼達成です。報酬金は4万ガルになります。」

「あれ?報酬金多過ぎないですか?確か1万ガルだった様な…」

「ししょー様から『素材数が100を越える』『日を跨がない』場合に無条件で報酬を倍にと仰せつかっております。」

「…そう言う事ですか、では有り難く頂きます。」

「「また不足したら宜しくなのにゃ~」」


猫獣人2人から手を振って見送られギルドを出る。
向かうは食堂、パンの注文を請け負ってくれたおばちゃんの元だ。


「お、来たねぇ、待ってたよ。」


食堂まで来るとおばちゃんが待ち構えていた。
挨拶を済ませるとノアはおばちゃんと共に食堂の中へ。

ドスン!

「ほいよ!パン50個だ!こんなにどうするんだい?」

「ダンジョン内でも手軽に食べられる様にハンバーグを挟もうかと。」

「なるほどね、悠長に皿持って食べる訳にいかないものね。
どうする厨房使うかい?今の時間お客来るにはまだ早いし…」

「ではお言葉に甘えて使わせて貰います。」




「はいよ、包丁だ。」

「どうもありがとうございます。"ハンバーグ"!」


ノアはアイテムボックスからハンバーグを数皿ずつ取り出し、パンに切れ目を入れ、ソースを掛けて挟み、軽く押さえる。


「うん、こんな物でしょう。」


完成した物をアイテムボックスへ投入する。


「パン切ろうか?」

「はい、お願いします。」


~10分後~

「ありがとうございます、お陰さまで早く終わりました。」

「良いって事よ。
そういや明朝潜るんだろ?早く帰って寝た方が良いんじゃないか?」

「その前に軽く食べてからにします。」

「ああ良いよ。何食べたい?」

「それでは、」


その後ノアは食堂でおばちゃん特製シチューを5杯、パン8個を食べ宿に戻ってこの日は就寝した。軽くって何だっけ。





「ふぁ~~っ!よく寝た~…
さて、水浴びしてこないといけないんだけど、まだまだ寒いしな~…あ!」


ノアはある事を閃き実行、僅か数分後にノアは装備を整え、宿の受付まで下りる。


「試しにやってみるもんだな。普通に水浴びるよりさっぱりしたし。」


ある事をして気分爽やかに階段を下り、カウンターの前を通ると宿の主人から


「ほい、これ薬草小屋の店員さんからマナポーション4本預かってるよ。
2本はオマケだと、礼は今度来た時で良いってさ。」


ノアはマナポーションをアイテムボックスに仕舞って宿を出る。
アイテムボックスから昨日作ったハンバーグサンドを取り出して朝飯代わりにムシャる。

食べ終わりと同時に<気配感知>にジェイルパーティの反応を感じる。
そのままダンジョン前に行き、兵士に挨拶して少し待つと


「やぁ、ノア君おはよう。待たせたかな?」
「おはー!」
「やぁ少年。」
「おはようノア君!」

「おはようございます、今丁度来た所です。」

「では、全員揃った事だし早速向かうか。」


集まって間も無くダンジョンへ向かう一行、その珍しい組み合わせに兵士も一行を目で追う。
上層への坂を下りつつノアが話し掛ける。


「とりあえず戦闘は交互にやらないか?
実を言うと皆の戦いっぷりをあまり見た事が無いのでね。」

「確かに防衛戦の時に少しだけ戦ってはいたが皆いっぱいいっぱいだったものな。
皆はそれでも良いかな?」

「「「りょーかーい。」」」


するとノアが背中の弓と矢を取り出し、矢を番える。

「じゃあ、まずは言い出しっぺの自分から行くとするよ。
丁度入口付近に猪が1頭いるから、ね!」

「「「「え!?」」」」

ズバァンッ!

破裂音と鋭い風切り音を立てて一直線に矢が射ち出され、入口から少しだけ見えている猪の鼻先に命中、突然の強い激痛と衝撃に猪は吹き飛ばされ地面を転がる。
矢を射った直後、矢が突き刺さる前に素早く駆け出し猪の元へ向かう。

猪はふらつきながらも何とか立ち上がるが、既に剣を手にしたノアが真横に到達していた。

ザシュッ!

猪の首を撥ね飛ばした後周囲の反応を探る。
今の所、他の動物はいない様だ。

少し遅れてジェイルらがノアの元に辿り着く。


「あーいかわらずノア君は凄まじいねー、よくあそこから猪見えたね?」

「見えた訳じゃないよ。
<気配感知>に反応が引っ掛かっただけだよ。」

「いやいや、少年よ、坂の途中からここまで割とあるぞ?
<気配感知>ってそんな広い範囲も感知出来るのかい?」

「自分はずっと発動しっぱなしですからね、結構範囲は広くなってるハズですよ。
皆さんは持ってないのですか?」

「いや、この間のバーサークベアの時に発現した。」

「で、あれば常時発動しておいた方が良いですよ。
初期は範囲が狭くて反応も朧気ですがかなり有用なスキルですので。」


ノアに勧められ、ジェイル達もそれぞれ発動しだす。

「お。」
「あー。」
「ふむ。」
「ほー。」

「まだ1人1人の感知範囲は狭いけど、皆が少し散らばればそれなりの範囲を探る事が出来るよ。」

「なるほど、これは確かに良いスキルだ。」

「不幸中の幸いだが"強い気配を持った者の気配に当てられる事"が<気配感知>の手っ取り早い取得方法なんだ。
まぁあくまで自分の場合だけどね。」

「そうなのか?教本だと確か"周囲の気配をよく探る"とかだった気がするが…」

「多分それ、効率悪いと思う。
スキル持って無い人が周囲の弱い気配探ったって何のこっちゃって感じだしな。」

「けーけん者は語る、って奴だね!」

「自分の場合、教本等は無く全部親からの"直接指導"だったから効率最優先で教わったよ…」


何故か遠い目をして当時を振り返るノアにロゼが提案をする。


「その"直接指導"っての?あたしにも教えて貰ってもいーい?」

「…確かロゼさん<忍び足>と<縦横無尽>、それに<気配感知>のレベルを上げたいんでしたよね?打って付けのモノがありますよ。」

「え!ホント?それやりたーい!」

「しかも<激痛耐性>に<苦痛耐性>、上手くいけば<恐怖耐性>も一緒に覚えられると言う、まさに一石五鳥の「い、いやー、後半3つは今度でいーかなー…」」


ノアとロゼのやりとりを眺めているジェイル、クロラ、ポーラは思う。

(((無事にスキル覚えられるのだろうか…)))
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