ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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旅立ち~オードゥス出立まで

騒動の顛末

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夕方頃、ノアとジェイルパーティがギルドに呼ばれベルドラッドから今回の騒動の顛末が説明された。


「という訳で、数々の状況証拠、スキル使用履歴から今回君達が遭遇したバーサークベアはバッツ、ガッツ両名が引き起こした子熊殺しが発端だと断定した。」

「やっぱりアイツらか…」
「はー…」
「最期の最期まで人に迷惑掛けるわねアイツら…」
「じゃあバーサークベアが中層に上がって来たのは人為的な事だったんですね?」

「そういう事だ。普通なら最下層のモンスターが上がって来る事は無い。
最下層のモンスターにとって上階は魔素…
人間でいう所の空気が少なく、居心地の悪い環境なんだ。
特に最下層の魔素は一層濃いから1階上に上がる事すらしないだろうな。」


ここまで話した所で下層探索の光明が見えたジェイルが少し安堵した様な顔をする。


「じゃあ下層探索に向かっても大丈夫なんですね?」

「ああ、そう思ってもらって良い。
ただ下層からのモンスターはどれも脅威だ気を付けて行くようにな。」

「「「「「はい!」」」」」




報告を受け、ギルドを出るノアとジェイルパーティ。


「僕は1度解体小屋に向かうよ。」

「じゃあ俺達は先に訓練所に向かってるぞ?」

「あぁ、そんなに時間は掛けずに向かうよ。」

「ノア君待ってるよー!」


クロラに手を振られ見送られたノアは解体小屋へ向かう。
大体の作業が終了したのだろう、<気配感知>で見ると先程まで職員達でごった返していた小屋にはジョー達とエメラルダしかいない様だ。


<…ではこの金額でよろしく頼むよエメラルダさん。>
<畏まりました。>
<最後の魔石がでかかったですね。これさえあれば防壁は暫く持つでしょうな。>


<聞き耳>で聞こえた内容からすると買取り金が決まった様だ。


「失礼しまーす。」

「お、ノア君丁度良かった。丁度今全て終わった所だよ。ドゥ、報告よろしく。」

「えーっと、諸経費差っ引いて買取り金、865万ガルになります。」

「ごふぅっ!?え!?さっきより300万増えてないですか?」

「いやぁ、胸の辺りに掌サイズの魔石が出て来てね、それだけで200万は下らなかったよ。
それでノア君、現金支払いで良いかな?」

「いやいや、貯めておきます…」

「ですがノア様申し訳ありません。ギルドで預けられる1000万ガルを越えましたので、超過致しました約200万ガルはご自身で持って頂く事になりますが…」

「なぬっ!?えー!そんな大金持ちたくないなぁー…
あ!そうだジョーさんカタログか何かありますか?」

「ん?あるよ。何か欲しい者でもあるかい?」


ジョーが懐から扱っている商品一覧が載った目録を取り出す。


「野営…特に調理関係の商品はありますか?アイテムボックス買ったとはいえ物が嵩張るのはちょっと…」

「なるほどね、野営…調理…あったあった。
これなんかどうだい?『調理器具一体型キッチン』大鍋、フライパン包丁等々初期配置済みの奴、アイテムボックス収納可で330万ガルだけど。」

「おお!求めてた奴ですよ!それさえあれば色々幅が広が「あっ!?」」

「え?」

「ノア君って魔法使えたっけ?この商品魔力で個人登録する物なんだ。」

「使った事無いです…」

「もし買う予定だったらまだ買い手付いてないから、後でししょーの所行ってチャチャっと魔力通して貰うと良いよ。」

「分かりました。ししょーの所ですね!用事を済ませたら後で行ってみます。」


そう言ってノアは解体小屋を出て訓練所へ向かう。
残った面々はジョーに近寄り


「ジョーさん、同性能で魔力登録じゃない物もあったでしょ?
何でわざわざこっちにしたの?」

「ししょーからの頼み事だよ、不審に思われない様に勧めるのは骨が折れるよ…」





「失礼しまーす。」

「おや、ノア君だね、地下の試合場で皆お待ちだ、貸切状態だから大きな音立てても良いからね。」

「ありがとうございます。」


訓練所に到着したノアは職員に挨拶をして地下へ向かう。


「ごめん、遅くなった!」

「いや、丁度クロラの肩慣らしが終わった所だよ。」


観客席にはジェイル、ロゼ、ポーラが座って待機していた。
試合場を見るとクロラが2、3矢射っていた。
今回はあくまで練習なのだがほぼ実戦の様な流れで行う。
使用する矢は矢尻が付いていない物を使用するが当たればそれなりに痛い。


「あ、ノア君早かったね。準備とか大丈夫?」

「うん、大丈夫。ちょっと装備外す位かな」


そう言って背中の魔竹弓に阿羅亀噛2本、刺突武器2本(回収済み)、カランビットナイフ2本を装備から取り外す。


「よし、いーよー。」

「じゃあいく、ねっ!」    バシュッ!


戦闘開始と共に矢を射るクロラ以前と比べると速度、威力共に上昇している。

パシッ

胸辺りに射ち込まれた矢をノアは掴み取る。


「おー、前より威力上がってますね。」

「それをいとも簡単に取らないでよー。」

バシュッ!バシュッ!


愚痴を溢しつつも連続で矢を射る。射ち出された矢を右、左と掴み取るが、ノアは違和感を覚える。


(あれ?クロラさん<洗練された手業>持ってないハズじゃ…しかも1本は普通の矢じゃない…矢が淡く光ってる…)


【弓】限定取得・常時発動スキル<矢継ぎ早>…3割(初期)の確率で矢を射った直後に魔力を消費して光の矢を生成する。
上達すると確率が上昇。


(自分が持ってるスキルの中でこれに該当するものは無い…恐らく【弓】限定の技かスキルだろう…
なるほどね、<洗練された手業>を使ってこれをされたら半端ない速度での連射が可能だ。)


ノアは掴んだ矢を離し、クロラに近付く。
対してクロラは矢筒から矢を数本纏めて取り発射、少し広い範囲に拡散して射ち出す。


「うおっ!?」


射ち出された矢は6本、足元に1本突き立ち、片足を上げ1本回避、2本は掴み取り、首を傾け1本回避するも1本肩に当たる。


「やった!」      ザザッ! バシュッ!


喜びつつもノアと一定距離を保つ為移動を欠かさないクロラは近付けさせない様に間髪入れず射る。


(お~良い動き。
ただ離れるだけじゃなくて退きながら射ってるから迂闊に近寄れない。
けど、ここは敢えて…)


飛んで来る矢を体勢を低くする事で回避し、勢いそのままに接近する。


「!?」


(さぁ、接近されてどう出る!)


するとクロラの空いた手が急に光り出し、瞬時に手元に矢が複数本出現、再び拡散する矢を射ち出す。


【弓】限定取得・発動スキル<招来>…攻撃後、取り落とした矢を即座に手元に戻すスキル。
上達すれば消費する魔力量が減少する。


ズバッ!

「くっ!?」


ノアは足にブレーキを掛け、即座に半回転。
大きく弧を描く様にして拡散矢を回避、クロラの元へ駆け出すも


ドスッ! 


駆け出すノアの足先に矢が当たった。
クロラもそうだがノアが1番驚いた。


(誘われた!?)

「ノア君なら避けると思ったから、私なりに誘導させて貰いました!」


再びクロラの手が光り、複数本矢を番え即座に発射、これを掻い潜って避けるも隙間無く複数本の光の矢がノアに迫る。


「え!?嘘、それにも効果発動するの!?」


<招来>で手元に矢を戻し、拡散矢を発射、<矢継ぎ早>の効果が発動し、即座に拡散矢を再発射。
ノアに点では無く面で矢が迫る。


ジャッ!ジャララッ!       バシッ!


ノアは下がりもせず回避もせず立ち止まり、素早く手を動かし、最小限の動きで矢、光の矢を掴み取る。
間髪入れずに首辺りに射られた矢を掴み取り地面に落とす。


「ええ~!?これで当たらないの~?」

「いやいや、今のは流石にマズかったので慌てましたよ…
想像以上に強くなっててビックリしました…」

「え!?ホント?
【固有スキル】が発動してから色々と他のスキルも発現したんだ!
じゃあそろそろ【固有スキル】発動してみるね!」


クロラの上達に素直に嬉しくなるノア。


「さーて、どんなスキルかな…」
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