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旅立ち~オードゥス出立まで

エメラルダ

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その場に残ったエメラルダはふと『何がここで行われたのか』興味が湧き、隊員らに治療を受けているノアに近付いて手をかざす。


「眠ってる坊やに<鑑定>を使うのは野暮じゃないかい?」


声を掛けたのは普段の姿に戻ったレーヴァだった。


「王都への報告もありますから、仕方無くですよ、レーヴァさん。」

「そうかい。なら止めやしないよ。」


レーヴァはノアの傍らに座って事のなり行きを眺める事にした。

エメラルダは手をかざし目を瞑って<鑑定>を発動、しかしもう1つ<閲覧>も発動する。


<閲覧>…対象者の記憶を覗き見るスキル。レベルが上がるとより長時間、より鮮明に見る事が可能。


(時間は…20分前から遡りますか…
ん?動きが速すぎてよく分からない…
?何でしょう蒼い光『おい。』)


エメラルダが目を開くと眠ってるハズのノアがエメラルダの手首を掴んでいた。

治療していた隊員らも驚いて動きを止める。


『『俺』が疲れきって寝てるってのに記憶を覗き見るのはどういった了見だ?』

「わ、私はあくまで、王都への報告の為に…」


ゆっくりとノアの体が起き上がりエメラルダの目を赤黒い瞳が睨み付ける。


『以前も誰か人を寄越して『俺』を調べてたな?
追跡して来た奴がお前がつけてる香水と同じ匂いを放っていたからな、よく覚えてるぜ?
その追跡者もな!』

「あ、いや…あの…」

『安心しな、『俺』はぐっすり寝ているからこの会話は聞こえてない。
正直に話せ。』

「だから言ったでしょう?王都への報告と


<強制閲覧>発動。

『俺』の目が更に紅く光り、エメラルダは身動き1つ出来なくなる。

「ぐっ!?ががっ!?あっ!?」

『ふ~む。興味本位と王都の報告、情報屋への情報提供、計画への勧誘、味方に付ける為の画策、敵にまわった時の処理の仕方ね、なるほどなるほど…』

「うっ…ぐぁ…ま、待ちなさい。今のは違…」

『ん?違ったか、ならお前さんの記憶にあった奴ら1人1人に聞いて回ろうか?そうだな、まずは食料品店の』

「や、止めて、話す。話します。」

『はっはっは、いや、いい。覗いたからある程度把握した。
合言葉にサイン、その他諸々な。
隠しだてしなきゃ良いだけだ、今後は気を付けろよ?』

「は、はい…」

『あぁ、あと『俺』を治療中の隊員2人もこの事は他言無用な?
エメラルダ含めて3人共俺のオーラに触れたろ?『楔』を撃ち込んだから気を付けな?』

「な!?何を…」

『ほら、不安そうな顔すんな、平静を装え、平静を。
普段通り過ごしてりゃ何も起きねぇんだからな、くっくっく。』

「「「………。」」」

『んじゃ俺はまた寝るから後よろしく。』


そう言って横になると赤黒いオーラは消え、ノアは寝息を立てる。



「…エメラルダギルド長、何してくれたんですか…」
「…俺達完全に巻き込まれただけじゃないですか…」
「ご、ごめんなさい…」
「とりあえず彼の言う通りこの事は他言無用で行きましょう。
何か『楔』がどうとか言ってましたし…」
「えぇ、そうですね…」



だから言わんこっちゃ無い、という顔をするレーヴァ。


(『ま、そんな効果俺のオーラには無いんだけどな。』)






~2日後~

「ふがぁ~っ!よく寝『ビキッ』ぐあっ!?」


ノアが目を覚ますといつも借りている宿のベッドの上だった。
2日間寝っぱなしだったのと筋肉痛で体がガチガチに固まっていた。


(服は一昨日のままだけど綺麗になってるからクリーンか何か掛けてくれたのかな…ん?)


自分の太腿の辺りを見るとクロラが寝息を立てて寝ていた。
ずっと看病してくれていたのだろう。
頭を撫でると「う~ん」と発して身を捩る。
可愛いなぁ、等と思っているとある事に気付く。

(あ、これ動けないヤツだ。
太腿を少しでも動かすと絶対に起きるしどうしたもんかなー…あ。)

「…あ。」

もそりと起き上がったクロラと目が合う。

「お、おはよう。」


ガバッ!


クロラがノアに抱き付き、胸に顔を埋める。
突然の事で動けずにいると抱き付いているクロラが震えているのが伝わる。

「おかえりなさい…」

「うん。ただいま。」

ノアも優しくクロラを抱きしめる。





「それでノア君、体の方は大丈夫なの?」

「いや、ずっと寝てたからもう色んな所がバキバキになってて…」

「…確かにさっき抱き付いた時背中から『ゴキッ』って聞こえたもんね…
ノア君今日はどうするの?」

「とりあえず食堂行って何か食べようかなーって思ってます。
クロラさんも一緒にどうですか?」

「え、良いの?」

「えぇ、ずっと僕の看病をしてくれたお礼という事で。」

「やった!行こ、行こ!」

「…でもその前に…そこの2人は何やってんですか?」


ノアの視線の先には部屋の扉の所で(恐らく)ポーラとロゼの耳だけ見えていた。

「いやーごめんごめん。たまたま部屋の前にいたら『バキバキ』『抱き付く』『食べるって』単語が聞こえて…その…」


「要は"始まったな"って思った訳よ。」


「「始まらないから!!」」


なんやかんやあって着替えを済ませたノアは下に下りる。
下にはジェイルがいて一通り礼を言われた後、そのまま通りに出て一緒に食堂まで向かう。

「しかし…良いのか?俺達まで…」

「良いの良いの、お疲れ様会だと思えば。」

「それと、ハイポーションと万能薬の代金なんだが…」

「あぁ、気にしないでくれ。僕が勝手にやった事だしね。」

「しかし…」

「いーから。」


ジェイルが申し訳なさそうに言うもノアはキッパリと断る。
その時思い出したかの様にクロラがノアに投げ掛ける。

「ねぇノア君…今度…一緒に潜らない…?」

「一緒にですか?良いですよ。」

「おや?意外とあっさり承諾したのね、少年。」

「以前の僕だったら断ったでしょうけど、クロラさんからのお願いですからね。
断る理由はありませんよ。」


ノアの返答を素直に喜ぶクロラ。


「それで、いつ行きますか?」

「そうだな、こちらも装備の修理や再購入、ダンジョンの入場規制とかあるから3日後とかかな?」


バーサークベアとの戦いでカイトシールドが破損したジェイルは再購入する事になった。
(※今回あまりにもイレギュラーな事だった為、装備の交換、再購入は無償になりました。)


「入場規制という事はまだあの2人見付かって無いのか…」

「いや、見付かりはしたぞ?死体としてな。
不可解な事が多いからまだ調査中らしいが…」

「そうか…情報ありがとうございます。」


ノアとジェイルパーティがギルド前を通った時にノアが用事を思い出し、皆は先にギルドへ向かう様に伝える。


「食堂で待ってるねー!」

クロラに手を振り、ノアはギルド内に入っていく。
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