ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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旅立ち~オードゥス出立まで

ライルと伐採師

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準備が完了し、ダンジョンの入口に向かうと荷物持ちのライルと伐採師が立っていた。

「やぁノア君。いつもレーヴァが世話になっとるにゃね。」

「いえいえ、荷物の心配をせず伸び伸び出来てますからいつも助かってます。」

「初めて同行するけど今日はにゃんで僕にゃ?」

「ライルさんは索敵も出来ると聞きましたので今回の場合はその方が危険性が下がりますので。」

ノアの発言に頷くライル。ノアは視線を後ろの伐採師に移す。

「何故ここに伐採師が、と思うかもしれないけどエルフは種族的に弓が得意なの。
私はアルミラ、今日はよろしくね。新人冒険者さん。」

「よろしくお願いします。中層ではあれなので詳しいことは上層5階で話します。
とりあえず上層5階までの<地図化>は済んでますのでそこまでは最短距離で向かい、遭遇しそうな敵はこちらが誘導しますのでなるべく回避します。
どうしても避けられない場合はこちらで対処します。」

一通りの説明を終え入口へ向かう。先程購入した武器はライルの鞄の中に仕舞っていく。今回は数が数なので大型の鞄で来てもらっている。


ダンジョン入口に着くと既に話が通っているのか入口の兵士はノアに声を掛ける。

「無茶はするなよ。相手は苦万蜂の大群なんだろ?逃げても誰も文句は言ゃあしない。」

兵士の言葉を受けノア、ライル、アルミラの顔付きが変わる。
ノアが一言告げる。


「行きます。」


3人は同時に駆け出す。先行するのはノア、続いてアルミラ、ライルと続く。
1階に到達すると林の手前で

ノアは<地図化><木登り上手><縦横無尽>を発動。
アルミラは<気配感知><敵視感知><綱渡り>を発動。 
ライルは<疾風>を発動。

ノアはいつも通り木々や岩を避け、最短距離で進む。
アルミラは早くも樹上に行く、不安定な枝を伝っているが<綱渡り>のお陰で速度はノアとそこまで変わらない。
ライルは種族的には脚はあまり早くないが<疾風>の補正と体のバネを駆使し障害物をぬるぬる避けていく。

あっという間に池の畔にたどり着く。
アルミラは樹上からおもいっきり飛び上がり池を飛び越す。
ノアは前と同じく畔でおもいっきり踏み込み勢いで飛び上がり、<水面渡り>で不足分を駆ける。
ライルは<水面渡り>を発動しそのまま駆け抜ける。

3人ほぼ同時に2階への穴に入る。

「今の所軽く走ってみてどうですか?」

「私はまだ大丈夫よ。早いわね、あなた。(早いなんてもんじゃないわ。種族的に補正掛かってるのに何で着いてくのがやっとなの…)」


「こちらもまだ大丈夫にゃ。レーヴァから聞いてはいたがかなり早いにゃね。(早い段階で<疾風>使わないと間に合わにゃいにゃ…)」

各々心の中で焦りつつも速度は緩めない。

「あ、2階の入口に2頭ウルフがいます。先行して始末するのでそのまま駆け抜けて下さい。」

「え?ちょっ…」

言うが早いかノアは今の速度より更に加速し<忍び足>を発動。ウルフの元に駆ける。

音も無くウルフの前に到達したノアはわざと1頭の前で急制動を掛け、ウルフの視界を跳ねた土で塞ぐ。その間もう1頭のウルフの首を跳ね、視界を塞がれ動けないウルフの首も跳ね飛ばす。


アルミラとライルがノアがいる場に着いた時、ウルフ2頭の首が宙を舞っている所であった。

そのまま駆け抜ける2人、ノアは剣を腰に下げ直し、ウルフの片足を手に持ち駆け出す。


「すいません、お待たせしました。」

2人と合流し鞄にウルフを収めつつ進行する。

「…ノア君。いつも君はこんな感じの事を?」

「そうですね。今回は急いでるので雑になってしまいましたが。」

(そう言う事じゃ無いんだけどね…)


「にゃはは!こりゃレーヴァが興味持つハズにゃ。」





その後特に接敵すること無く5階への坂を下る。

「ちょっ、ちょっと良いかしらノア君…」

「にゃ…僕もちょっと良いかにゃ…」

「まぁここまで来たらもう直ぐですしここからは歩きますか。」

肩で息をする2人をよそに平然としてるノアに質問が飛ぶ。

「ねぇ…ノア君は疲れてないの?」

「あ、心配しないで下さい。本気で走ってないので戦いに支障はありません。」

ノアの返答に膝から崩れ落ちたい気持ちを抑えて先を進む。

「お、5階が見えてきましたね。
ちょっと早いですが先に作戦を話します。
中層1階に到達したら苦万蜂の察知範囲ギリギリまで近づいてライルさんに預けてる武器を各所に設置します。
完了した後アルミラさんと協力して弓で射落として数を減らしていきます。
纏まった数の苦万蜂が攻めてきたらアルミラさん達は上層への坂の入口まで後退して僕の討ち漏らしの対処をお願いします。」

「…ちょっと良いかしら。作戦は分かったけど苦万蜂の敵視はどうやって取るの?」

「<気配放出>で自分に敵視を向けさせます。討伐数を増やしていけば自ずとこちらを脅威と認識するでしょう。」

「僕はアルミリャの援護って事で良いのかにゃ?」

「ええ。それでお願いします。あとは2人共刺されそうになったら迷わず逃げて下さい。」

2人共、共に頷く。

そんな話をしていると5階に到達。
直後ライルがノアに報告をする。

「前方に熊がいるにゃ。あっちはまだこちらに気付いて無いようにゃ。奇襲するにゃら…ノア君?」

ライルから報告を受けたノアはそのまま歩き続ける。わざとらしく足音を立てて進むノアにライル、アルミラは焦り始める。

熊も音に気付きノアを完全に視界に捉える。
熊はゆっくり立ち上がりノアに向け吠え掛かる。

「それを待ってた。」

ノアは直ぐ様腰のダガーを片手に1本ずつ抜く。
<集中><投擲術><渾身>を発動し熊の右目を狙いおもいっきり投げる。
勢いそのままに深々と突き刺さるダガー、その衝撃で顔が跳ね上がり首が露になる、すかさず右手のダガーも同様に投げ、首に深く突き立つ。
熊の頭が下がるのを見越して弓を取り矢を番え、頭が下がったので無事な左目に向け矢を射る。

見事命中し完全に視界を潰したノアは左手で腰のダガーを取り逆手で持ち熊の元に駆ける。
闇雲に腕を振り回すだけになった熊の攻撃を掻い潜り熊の首まで来るとダガーを肩に深く突き刺す。
ノアを掴もうとすると肩に激痛が入り上手く動けない熊、ノアはその隙に首のダガーを掴み<渾身>を発動して手前に一気に引き斬る。

熊は血が混じった雄叫びを上げ地面に沈む。
首から夥しい量の血が出ているのでもう助から無いだろう。

一旦2人の所に戻るノア。  

「さぁ、あともう少しです。行きましょう。」

ノアの戦い振りを見た2人は呆然と固まっていた。何度か呼び掛けられてやっと平静を取り戻す。

「大丈夫ですか?」

「いや、あまりにも見たこと無い戦いかただったからつい…」

「にゃかにゃか凄まじかったのにゃ…」

2人の感想を聞きつつ熊を回収、一息着いていよいよ中層に向け、坂を下る。
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