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旅立ち~オードゥス出立まで
中層1階
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ノアは現在中層1階の入口に立っている。周囲の風景はあまり変わらないが<気配感知>に引っ掛かっている反応は全く知らないモンスターを示している。
視界の先に1頭の鹿が見えるが上層にいた鹿よりもガタイが良く少し大きい。
そして何より特徴的なのが頭に生えたカイトシールドの様な立派な角だ。
あれがギルドの説明にあった『盾鹿』だろう。あちらもこちらを視認するが上層の鹿と違い逃げようとしない、寧ろ掛かって来いとばかりにこちらを見てくる。
ノアは背中の弓を取り矢を番え即座に射る。
『盾鹿』は向かってくる矢を見定め頭を倒しカイトシールドの様な角で弾く。
「おぉ、刺さりもしない。弾く、か!」
ノアは口元が緩むのを抑えられずまた直ぐ様矢を番え射る。
盾鹿はまたかとばかりに頭を下げ矢を弾く、頭を上げるとノアの姿は無い。
ノアは剣を抜き<忍び足>を発動した状態で猛烈な速度で盾鹿の隣に接近していた。
盾鹿が反応出来ずにいた所を見逃さず地面すれすれに剣先が走りそのまま剣を振り抜く。
盾鹿の首は綺麗に跳び地面に角が突き刺さる。
(普通の鹿よりガタイが良い分少し強目に斬らないといけないな…)
と頭の中で思考する。
普段なら首は放置しているがあまりにも立派だった為体と一緒に回収、鞄の枠を2つ使うかな?と心配したが一緒の枠に収まった。
視界の先にまた新たな盾鹿を見付けるが少し様子がおかしい。盾鹿の周囲に何かが飛んでいた。
目を凝らして見てみると
「…蜂?」
盾鹿の周りに人の頭部程の大きさで黒と黄色の体色の蜂が飛び、体に毒針を突き刺している様だ。
刺された盾鹿はよろよろと木にもたれ掛かり暫くすると激しく体を痙攣させ始める。
強い毒なのだろうあまりの激痛に顔を木に擦り付け木の表面を削り、顔から血が吹き出すのもお構い無しの様子だ。
時間にして僅か数秒の事ではあったが盾鹿はぐったりしているが死んではいない様だ。
刺された傷口からは止めどなく血が滴っている。
暫く観察していると蜂がこちらに気付いて寄ってくる。感知範囲は恐らくあちらの方が広いのだろう。
飛んでくる蜂は全部で4匹。剣、矢、ダガーどちらで対処しようか悩んでいるとある事を思い出す。
ノアはポーチを探り
「確かここに…あった。」
と言って肉を焼く時等に使った鉄串を取り出す。
<集中><投擲術><洗練された手業>を同時発動。蜂に向け次々と投擲していく。
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
蜂の頭部に鉄串が刺さり、地面に落ちていく。鉄串でつつき、生死を確認する。虫系はやたらしぶといので念入りに確認していく。
「うわぁ~デカイ蜂…これが『苦万蜂』か…針太いな…一応回収して後で薬草小屋の猫獣人の人に見て貰おう。」
苦万蜂を回収した後、苦万蜂に刺された盾鹿の所まで行く。未だにぐったりしているのでこれ以上苦しめるのもあれなので介錯しようと剣を抜いた時だ。
盾鹿のいる樹上から種の様な物が落ちて体の上を転がる。
その種(?)が盾鹿の血に触れた瞬間、一気に根が生え、滴る血を遡り傷口に向かっていく。
傷口に根が侵入するとさっきまでぐったりしていた盾鹿が暴れ、根を剥がそうと必死にもがく、その間も根の数は増え続け、種は赤く染まっていく。
そして種が発芽した瞬間から盾鹿の体が急速に痩せ細り、芽は急速に成長し根は体をがんじがらめにしていく。
少しして若木程にまで成長した頃には盾鹿の体は根にほとんど取り込まれてしまった。
この光景にノアは思わず「エグっ」と発する程であった。
その後近くに数個程転がっていた種と若木で調べてみた結果どうやらこの木は、葉と幹は普通の樹木と変わらないが凶悪さは種と根にある様だ。
種と根を地面や動物の皮膚に触れさせても変化は起きないが、液体に触れさせると途端に猛威を振るう。唾にも反応する程だがその液体が枯渇すると瞬く間に鈍化する。
「…これが『吸血樹』か…そのまんまだな…てか中層1階からこんなの出るのかよ、殺意高すぎだろ。」
周囲の樹木を見てみると根の部分に骨が見えている物が多々あるので恐らく殆どが『吸血樹』なのだろう。
暫くその場に留まり、思考に耽っていた為かまた新たに5匹の苦万蜂の反応を感知した。
この苦万蜂、数は多く毒は強力な様だが動きが単調なので落ち着いて対処すればそれ程苦じゃない。
先程同様鉄串を使用して倒す。
回収した後直ぐ様その場を離れる。少し間を空け、自分がいた所を見ると新たな苦万蜂が集まっていた。
(何だ?死ぬ間際に仲間を呼ぶ習性でもあるのだろうか…)
苦万蜂の反応に注意しつつ探索を続けていると1階の<地図化>が完了するよりも早く中層2階への坂の入口を見付ける事が出来た。
しかしノアは入口の光景を見て絶句する。
「何だよ…あれ…。」
ノアが見た光景は入口を半分蓋をする形で蜂の巣が被さり、巣の上部は天井と一体化しているとてつもなく巨大な物だった。
<気配感知>の反応では中にいる苦万蜂の数は少なく見積もっても100は下らないだろう。
下手すると下の階の苦万蜂もこの巣を共有している恐れがあるので正確な数は分からない。
流石のノアもこれには困惑し一度街へ戻る事にした。
視界の先に1頭の鹿が見えるが上層にいた鹿よりもガタイが良く少し大きい。
そして何より特徴的なのが頭に生えたカイトシールドの様な立派な角だ。
あれがギルドの説明にあった『盾鹿』だろう。あちらもこちらを視認するが上層の鹿と違い逃げようとしない、寧ろ掛かって来いとばかりにこちらを見てくる。
ノアは背中の弓を取り矢を番え即座に射る。
『盾鹿』は向かってくる矢を見定め頭を倒しカイトシールドの様な角で弾く。
「おぉ、刺さりもしない。弾く、か!」
ノアは口元が緩むのを抑えられずまた直ぐ様矢を番え射る。
盾鹿はまたかとばかりに頭を下げ矢を弾く、頭を上げるとノアの姿は無い。
ノアは剣を抜き<忍び足>を発動した状態で猛烈な速度で盾鹿の隣に接近していた。
盾鹿が反応出来ずにいた所を見逃さず地面すれすれに剣先が走りそのまま剣を振り抜く。
盾鹿の首は綺麗に跳び地面に角が突き刺さる。
(普通の鹿よりガタイが良い分少し強目に斬らないといけないな…)
と頭の中で思考する。
普段なら首は放置しているがあまりにも立派だった為体と一緒に回収、鞄の枠を2つ使うかな?と心配したが一緒の枠に収まった。
視界の先にまた新たな盾鹿を見付けるが少し様子がおかしい。盾鹿の周囲に何かが飛んでいた。
目を凝らして見てみると
「…蜂?」
盾鹿の周りに人の頭部程の大きさで黒と黄色の体色の蜂が飛び、体に毒針を突き刺している様だ。
刺された盾鹿はよろよろと木にもたれ掛かり暫くすると激しく体を痙攣させ始める。
強い毒なのだろうあまりの激痛に顔を木に擦り付け木の表面を削り、顔から血が吹き出すのもお構い無しの様子だ。
時間にして僅か数秒の事ではあったが盾鹿はぐったりしているが死んではいない様だ。
刺された傷口からは止めどなく血が滴っている。
暫く観察していると蜂がこちらに気付いて寄ってくる。感知範囲は恐らくあちらの方が広いのだろう。
飛んでくる蜂は全部で4匹。剣、矢、ダガーどちらで対処しようか悩んでいるとある事を思い出す。
ノアはポーチを探り
「確かここに…あった。」
と言って肉を焼く時等に使った鉄串を取り出す。
<集中><投擲術><洗練された手業>を同時発動。蜂に向け次々と投擲していく。
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
蜂の頭部に鉄串が刺さり、地面に落ちていく。鉄串でつつき、生死を確認する。虫系はやたらしぶといので念入りに確認していく。
「うわぁ~デカイ蜂…これが『苦万蜂』か…針太いな…一応回収して後で薬草小屋の猫獣人の人に見て貰おう。」
苦万蜂を回収した後、苦万蜂に刺された盾鹿の所まで行く。未だにぐったりしているのでこれ以上苦しめるのもあれなので介錯しようと剣を抜いた時だ。
盾鹿のいる樹上から種の様な物が落ちて体の上を転がる。
その種(?)が盾鹿の血に触れた瞬間、一気に根が生え、滴る血を遡り傷口に向かっていく。
傷口に根が侵入するとさっきまでぐったりしていた盾鹿が暴れ、根を剥がそうと必死にもがく、その間も根の数は増え続け、種は赤く染まっていく。
そして種が発芽した瞬間から盾鹿の体が急速に痩せ細り、芽は急速に成長し根は体をがんじがらめにしていく。
少しして若木程にまで成長した頃には盾鹿の体は根にほとんど取り込まれてしまった。
この光景にノアは思わず「エグっ」と発する程であった。
その後近くに数個程転がっていた種と若木で調べてみた結果どうやらこの木は、葉と幹は普通の樹木と変わらないが凶悪さは種と根にある様だ。
種と根を地面や動物の皮膚に触れさせても変化は起きないが、液体に触れさせると途端に猛威を振るう。唾にも反応する程だがその液体が枯渇すると瞬く間に鈍化する。
「…これが『吸血樹』か…そのまんまだな…てか中層1階からこんなの出るのかよ、殺意高すぎだろ。」
周囲の樹木を見てみると根の部分に骨が見えている物が多々あるので恐らく殆どが『吸血樹』なのだろう。
暫くその場に留まり、思考に耽っていた為かまた新たに5匹の苦万蜂の反応を感知した。
この苦万蜂、数は多く毒は強力な様だが動きが単調なので落ち着いて対処すればそれ程苦じゃない。
先程同様鉄串を使用して倒す。
回収した後直ぐ様その場を離れる。少し間を空け、自分がいた所を見ると新たな苦万蜂が集まっていた。
(何だ?死ぬ間際に仲間を呼ぶ習性でもあるのだろうか…)
苦万蜂の反応に注意しつつ探索を続けていると1階の<地図化>が完了するよりも早く中層2階への坂の入口を見付ける事が出来た。
しかしノアは入口の光景を見て絶句する。
「何だよ…あれ…。」
ノアが見た光景は入口を半分蓋をする形で蜂の巣が被さり、巣の上部は天井と一体化しているとてつもなく巨大な物だった。
<気配感知>の反応では中にいる苦万蜂の数は少なく見積もっても100は下らないだろう。
下手すると下の階の苦万蜂もこの巣を共有している恐れがあるので正確な数は分からない。
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