ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず

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旅立ち~オードゥス出立まで

現在4階

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剣士パーティを助けたノアは現在4階への坂を下っている所だった。

(ここから先は初めて行く階だ。<地図化>しつつ5階への坂を見つけよう…)


4階に到達すると<道案内>を発動し、探索を開始するのだが早速違和感がノアを襲う。
何故なら見える範囲で両側の壁が既に見えているのだ。
<地図化>するのが楽になるのでノアとしては嬉しい事ではある。要は真っ直ぐ走っていけば良いのだから。

3階同様樹上に登り<忍び足>を発動して枝伝いに移動するのだがウルフや猪、熊等が少ない代わりに蛇が多い。しかもやたらと死角から飛び掛かって来る。
<気配感知>を持ってるので対処は楽で良い。

右と前から飛び掛かって来た蛇は纏めて尻尾を掴み、振って近くの木に叩き付け頭を飛ばすし、鞄に入れる。
左から飛び掛かって来た蛇は屈んで避ける。上から降ってくる蛇はその都度捕まえ首を捻って鞄に放り込んで行く。

そんな調子で走っていって5分程経った頃に再び違和感が襲う。突き当たりの壁まで到達したのだが5階への坂の入口が見当たらないのだ。

目を瞑り頭の中で<地図化>を開くと4階入口付近の左角に窪みがあるのだがそこだけ<地図化>が完了していない箇所がある事に気付く。

「…まさか。」

5分程掛け来た道を戻る、窪みの部分を確認すると木々や草等に隠れた5階への下り坂を発見する。

「くそぅ…嫌な作りをしているなぁ…まぁ5階への坂が見つかったので良しとするか…」



5階に到達する少し手前でノアが止まる。

「もういるな。」

5階の入口に既に熊1頭、猪1頭がいるのを視認する。戦闘は避けられない様だ。

幸いあちらは気付いてないようなので弓を取り<集中>を発動しつつ矢を番える。


ヒュボッ!

射た矢は熊の右目に深々と突き刺さり熊は突然の激痛に身を捩って悶える。猪はそんな熊に気を取られているのでその隙に走り出し<壁走り>を発動。
壁を踏み台に飛び上がり猪まで滑空、剣を抜き飛び付く際に猪の首に突き刺す、というか突き貫く。

グゴゴガァッ!

猪の首に剣が刺さってはいるが死に至るにはもう少し掛かるだろう。
熊がこちらに向き襲い掛かって来るが猪に刺さった剣を手前に引き、猪を誘導、盾代わりにする。
熊は猪が邪魔でこちらに来れないので怒りで攻撃が大振りになる。熊自身が振った腕で視界を塞いだ形になった所を見逃さず、すかさず屈んだ体勢で熊の背後に回り腰のダガーを抜いて<渾身>を発動。足首を目掛け思い切り振り抜く。

ズシュッ!   ビキッ!

ダガーがへし折れたが気にせずもう1本のダガーを抜く。
足首を斬られ、筋が切れた為か踏ん張りが利かず倒れ込む。直ぐ様喉元にダガーを根元まで突き刺す。

倒れ、もがく熊の無事な左目にへし折れたダガーを突き刺す。少し暴れたがそれによって完全に逃げの姿勢になった熊は脚を引き摺りながらヨタヨタと逃げていくがノアが熊の背中に跨がり既に抜いていたダガーを首の右側に刺し込む。
背中にいるノアを剥がす為身を捩ったりするが勿論そんな事では剥がれないノアは左手で喉元に刺したダガーを掴み、右側に刺したダガーを支えに<渾身>を発動、喉元のダガーを一気に手前まで引き、掻っ斬る。

ゴボオオッ!

喉元から夥しい量の血が吹き出し、悲鳴に血が混じる。
首からダガーを引き抜き熊から離れる、あの出血量だともうもたないだろう。

猪の所に戻るとほとんど動いておらず呼吸も浅くなっていた。これ以上苦しめるのもなんなので貫いた剣を一気に引き抜き、<渾身>を発動し上段から一気に振り下ろす。
その際僅かに猪の位置がずれた為両断まではいかず、傷口から骨が見えていた。
再度踏み込みながら<渾身>を発動し下段から一気に振り抜く。

ズシャッ!

首が転がり完全に命を絶った。熊の方を見るが倒れ込みピクリとも動かない。

剣を腰に差し熊を回収しに行こうとした時だった。
一瞬だけ<気配感知>に何かの反応があったがその方向に向け視線を向けるが姿形は無い。


「気のせい…かな…」


しかし反応が出た近辺の木の陰に何者かの姿があった。


(危なかった…彼の戦いぶりを見ていたら少し気が緩んでしまった…
マズイな…<視線感知>に反応が出ている、正体はバレてないが何かがいるとは感付いてるな…)


何者かが思考を巡らせていると近くの木にダガーが突き刺さる。

スコォンッ!

(ん?闇雲にダガーを投げて炙り出しのつもり…あ!?)


ズザザッ!


何者かがいた場所にノアが滑り込んで来た。

「…おかしいな、ここに何かがいたハズなんだけどな…?」


ノアが首を捻っているその樹上に何者かの姿があった。

(彼は闇雲に投げてたんじゃない、木に刺した際の音の反響音で私の位置を割り出そうとしたんだ…気配、足音は消せても存在を消せるわけではない…気付くのが遅れていたら完全にバレていた…
エメラルダギルド長からの依頼ではあるがこれ以上の尾行は厳しいな…)


「おかしいなー。」

(反応は間違いなくあったんだけどなー。)

ノアが未だに首を捻りながら熊の所に戻ろうとするのと何者かが退散しようとするのは同時だった。
何者かが反転して枝伝いに移動しようとした際に近くの枝に僅かに触れ、葉の乾いた音が出る。

ヒュボッ!ヒュボッ!ヒュボッ!


ノアが<集中>と<洗練された手業>を発動音がした位置に3矢を次々と射る。


「ん~…やっぱり気のせい…か。」


さっきからずっと首を捻ってばかりいるノアはダガーを回収し猪を回収、熊の生死を確認して回収、樹上へ移動し、探索を再開する。


が、直ぐに探索は終了する事になった。5階はどうやら他の階に比べ狭いが強い個体(熊、猪)しかいない様だ。


スタッ!


今ノアは中層に向けての坂の入口に立っていた。

武器はダガーが1本折れた程度、矢は充分ある。
「ヨシ!」と気合いを入れ、坂を下り始める。
層を跨ぐ際、坂は長くなるのだろうか、中層1階の入口が点に見える。
もう体調は通常に戻っている『動く茸』の食事効果はもう終わったようだ。
ここからはノア自身の地力でどうにかするしかない。

ノアは中層に向け走り出す。
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