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旅立ち~オードゥス出立まで

いざ中層へ

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いつも起きる時間を少し過ぎ、宿から出て「いざ中層へ」と行きたい所だったが前日に壊したショートソードとダガーを買いに通りを歩いていた時だった。
何かダンジョンの方向が騒がしかったので覗いて見ると30人程の冒険者が並んでいた。


前日のジョーとの会話を思い出す。

(そういえばダンジョン入りは普通だったら昨日辺りからって言ってたっけ…) 

見たとこ数分置きにダンジョンに入っている様なので人数的にもう少し掛かりそうだ。
先に武器屋に行って武器を購入してから食堂に行こくとする。

武器屋に着くとガーラではなく別の職員がいた。
デオの工房にいるんだったな、と<聞き耳>をたてると


<ドゴゴゴゴゴゴ!>

(あれ?鍛治場の音ってこんなだったっけ?)


「凄い音でしょう?デオさんとガーラさんがスキルを総動員して依頼品を作ってるんですよ。今工房内の室温がかなり高いので…ほら、レリーもこちらに避難してきてるんですよ。」

職員が天井の方を指差すと隅の方に『シルクスパイダー』のレリーが虫を食べていた所だ。
目が合った気がしたのでとりあえず手を振る。


「あ、そうだ。ショートソードとダガー、矢を20本買いに来ました。」


「はい。1万2千ガルになります。他に何かご所望の品はありますか?」

「あ、これはこちらで処分して貰っても良いですか?」


と言ってへし折れたショートソードとダガーを職員に手渡す。

「こ、これは…!」

驚く職員だが話すと長くなりそうなのでそそくさと店を出る。



朝から何も食べてないのでとりあえず食堂に向かう。

「おばさーん!開いてますかー?」

「あぁ、開いてるよ。1人ならカウンターでねー!」

カウンターの席に座り近くにある各食事内容が書かれた札を手に取る。
何にしようか考えていると隣から声が掛かる。


「やあ少年。この間は世話になったね。」

渋い感じのおじさんの声がしたので横を見るとこの間より少し大きくなった『歩く茸』が小皿の中に張られた水に脚を突っ込んでいた。


ノアが何とも言えない光景に固まっていると


「すまない。朝の水分補給の時間でね。
君に採取された時は終わったと思ったがここの女主人は良い人だ。今はここでの暮らしの方が楽しいと思えるよ。」


「あ、あぁ、それはどうも…」

「すまない、自己紹介がまだだったね。私はチャールズ。この間より成長して『喋るし歩く茸』に進化したんだ。これからもよろしく。」


するとチャールズは小指の先程しかない小さな手を出す。恐らく握手なのだろう。人差し指を当ててこちらも自己紹介をする。

「僕はノア、つい最近冒険者になった者です。」


「これはご丁寧にどうも。そういえば君は朝ごはんを食べに来たんだったか。であれば『動く茸』のクリームシチューがオススメだよ。」


(そういえばおばさんも『動く茸』を勧めてたっけ。)

「それではこれにします。おばさーん。『動く茸』のクリームシチューで!」

「あいよー!」



暫くチャールズと会話をしているとノアの元にたっぷりの野菜とたっぷりの牛乳を使った香ばしいシチューとパン2つが届く。

「熱い内にお食べなね。」

「うわぁ~良い匂い!頂きまーす。」

ノアは匙を手に取り掬って直ぐ様頬張る。
口の中の野菜がホロリと解れ、噛むまでもなく蕩ける程煮込まれた肉。
パンはシチューに浸し、トロトロになった生地を頬張る。

「んまい。」

感嘆の声を上げたノアが、さぁもう一口と匙を上げると中から茸が出てくる。見た目は小振りな普通の茸だ。

「お、それが『動く茸』だ。…僕の子だよ…。」

(食い辛ぇ…)


本人(?)が見てる前で食べるのは気が引けるが食べない訳にもいかないのでパクリといく。

「お、美味しい。」

(味も普通の茸と…いや噛む度に何か出汁の様なものを感じる。)

「気に入ってくれて良かったよ。これで我が子も…浮かばれる…。」

(次回頼み辛ぇ…)

「そうだ少年。もしまたダンジョンの上層1階に行くなら私の仲間を連れてきて貰えないだろうか?池の近くにいるハズだ。
名前を呼ぶか私の名前を出せば来てくれるだろう。」

「分かりました。因みにお仲間の名前を教えて貰っても良いですか?」

「クリスチャンとレベッカと言う。」

(何でもれなく名前がカッコイイんだろう…)


了承したノアは料理を完食し、席を立ってお代を払う。

「はい、毎度あり!気を付けて行ってらっしゃい。」

手を振ってノアを送り出すおばさんとチャールズ。
腹を満たしたノアはダンジョンの入り口へと向かうと入り口付近には残り3人となっていた。
あともう少しだろうからと列に並ぶ。

各武器、回復玉の確認等を行っていると前の3人から

「あれ?訓練所で見なかったけど冒険者ですか?」

と声が掛かる。
前を見ると剣士、弓、神官(かな?服装的に)の3人が立っていた。全員女性だ。


「ああ、自分は訓練所に行かずそのままダンジョンに潜ってたんだ。
というか訓練所の存在を知ったのは昨日なんだけどね。」

「そうだったんですね。あれ?そういえばパーティの方々は…」

神官(?)の女性が話し掛けて来た。

「自分は1人なんですよ。」

「え!?1人で!?大丈夫なんですか?」

「まぁ今日は戦闘はなるべく回避して中層まで行く予定ですのでそこまで大変な事にはならないでしょう。」


「「「中層!?」」」


3人共驚きの表情を見せる。と同時に彼女らの番が来た様だ。

「気を付けて下さいね。」

そう言い残し3人はダンジョンの中へ、次の番を待つノアに兵士が説明をしてくる。

「おう!坊主か。悪いがこの砂時計の砂が落ちるまで待ってくれ、他のパーティと当たらない為の処置なんだ。」


「人数多かったですものね。」

「ああ、昨日訓練所での講習が終わったから今日からだろうなとは思ってたがね…そういやさっき話が聞こえたが中層まで行くんだって?」

「まぁ極力戦闘はしませんがね。」

「ま、そうは言うがこれまでの実績があるからな。鞄2つ持ってきな。」

(ホントに戦うつもりは無いんだけどな…)


チラっと砂時計を見るとあと少しなので前屈みになるノア。

「ん?どうした坊主。」

兵士の問いかけと砂時計の砂が落ちきるのは同時だった。

「行ってきます。」

ノアは一気に駆け出した。
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