146 / 225
リーベ台頭 編
第146話 聖王国グランツに向けて
しおりを挟む
ロイ一行は、帝都インペリウムの入口でテスティードに荷物を積み込んでいた。
ルフィーナはテスティードが珍しいのか、車体の周りをグルグルと回っている。
「ロイ殿~、これが本当に動くのですか!?」
「ああ、火と風の魔石を燃料にして走るから馬要らずだ。速度も直線なら馬より速い。しかも今回の旅に合わせてうちのマナブが改良を加えていてな、【サスペンション】ってやつを搭載したらしいんだ。原理はわからないが、これで凸凹道で舌を噛むことは無くなるだろう」
ロイの説明の半分ほどしかルフィーナは理解できなかったが、未知の技術に興味津々だった。
「ほえ~、そうなんですね~」
「てか、何でアンタまで俺達に同行するんだよ。テスティードをもう1台用意しなくちゃいけなくなっただろうが……」
ルフィーナは肩を落とした後、苦笑いと共に頭を下げた。
「あ、はははは……。ごめんなさい、フレミー様が付いていきなさいと命令を下したので、第一部隊隊長として、拒否する訳にはいかないのです」
ロイは溜め息を吐いてテスティードに乗り込み、そしてルフィーナに対して部下の面倒を頼んだ。
「私がリーベスタ達に指示を出すのですか!?」
「たかが5人だ。コイツらは本来ならエデンでのんびり出来たのに、アンタがついてくるというから、サポート役として呼び寄せたんだ。というか、アンタはテスティードを操縦できんだろ?」
確かに、と頷いて予備のテスティードを見ると、リーベスタの5人が頭を下げていた。
「一応、アンタのことも考慮して、全員女性だ。こっちと違って仕切りをして着替える必要ないだけマシだろ」
頬を掻きながら素っ気なく言うロイに対し、ルフィーナは目をキラキラさせていた。
「騎士団では種族や男女関係なく扱われます。とても嬉しい限りなのですが、やはりたまには女として扱われたいとも思っているのです。……ロイ殿の言葉は素直に嬉しいと感じてます!」
「……お、おう」
押され気味のロイ、その背後から腕がニュっと伸びてきてロイの身体を抱き締めた。
奥から現れたのはアンジュだった。少しだけ頬を膨らませてルフィーナへ敵愾心を向けている。そのままロイを背後から抱き締めながら、肩口から顔を出して言った。
「ルフィーナさん、ロイ君は私達のだからダメだよ!」
「そ、そう言うつもりでは……」
「奥から見てたけど、完全に女の顔になってた! これ以上は流石に──キャアッ!」
話しが面倒な方向に向かいそうだと判断したロイはアンジュの腕を剥がし、お姫様抱っこで奥に向かう。
ロイの背中はこれ以上語ることはないと物語っており、それを理解したルフィーナは踵を返して別のテスティードの方へ歩き出した。
「ルフィーナさん、ボスから話しは聞いています。ささ、我らがテスティードへお入りください」
「え、ええ……どうも」
ルフィーナは女のリーベスタに促されてテスティードの中に入った。馬車よりも大きく、両サイドの壁に面して座席が配置されていた。奥にある大きな椅子は前方を向いていて、それが御者専用の席であることがわかった。
全員が乗り込むと、テスティードが振動し始めて思わず剣を抜いてしまった。リーベスタはルフィーナの手を優しく握って諭すように言った。
「安心してください、テスティードが起動しただけですから。それと、もうすぐ発車しますから、走行中はあまり立たないでくださいね。転倒しますので」
「そ、そうですね。なんか、初めて帝都に来た時の田舎者の感覚がします。帝都に比べればエルフの住むヘイムダルは田舎ですから」
「ふふ、テスティードに乗った人はみんな最初はそんな感じになりますよ。すぐに慣れます」
リーベスタの人がそういうと、静かにテスティードが動き始めた。窓から外を眺めると、帝都インペリウムはどんどん小さくなっていった。
ルフィーナは心の中で祈った。
フレミー様、ロイ殿の傍で勉強して大きくなって帰ってきます。帝国騎士団第一部隊隊長として、相応しい騎士となるために──。
Tips
リーベスタ
国境線である死の谷の中層に作られた村、エデン。そのエデンの守護を務める組織をリーベといい、リーベのメンバーをリーベスタと呼称している。
影の一族、元近衛騎士、スタークで構成されており、ロイによって派閥なく混ぜられている。
金の刺繍で剣と影が描かれた黒い外套がシンボルマーク。
ルフィーナはテスティードが珍しいのか、車体の周りをグルグルと回っている。
「ロイ殿~、これが本当に動くのですか!?」
「ああ、火と風の魔石を燃料にして走るから馬要らずだ。速度も直線なら馬より速い。しかも今回の旅に合わせてうちのマナブが改良を加えていてな、【サスペンション】ってやつを搭載したらしいんだ。原理はわからないが、これで凸凹道で舌を噛むことは無くなるだろう」
ロイの説明の半分ほどしかルフィーナは理解できなかったが、未知の技術に興味津々だった。
「ほえ~、そうなんですね~」
「てか、何でアンタまで俺達に同行するんだよ。テスティードをもう1台用意しなくちゃいけなくなっただろうが……」
ルフィーナは肩を落とした後、苦笑いと共に頭を下げた。
「あ、はははは……。ごめんなさい、フレミー様が付いていきなさいと命令を下したので、第一部隊隊長として、拒否する訳にはいかないのです」
ロイは溜め息を吐いてテスティードに乗り込み、そしてルフィーナに対して部下の面倒を頼んだ。
「私がリーベスタ達に指示を出すのですか!?」
「たかが5人だ。コイツらは本来ならエデンでのんびり出来たのに、アンタがついてくるというから、サポート役として呼び寄せたんだ。というか、アンタはテスティードを操縦できんだろ?」
確かに、と頷いて予備のテスティードを見ると、リーベスタの5人が頭を下げていた。
「一応、アンタのことも考慮して、全員女性だ。こっちと違って仕切りをして着替える必要ないだけマシだろ」
頬を掻きながら素っ気なく言うロイに対し、ルフィーナは目をキラキラさせていた。
「騎士団では種族や男女関係なく扱われます。とても嬉しい限りなのですが、やはりたまには女として扱われたいとも思っているのです。……ロイ殿の言葉は素直に嬉しいと感じてます!」
「……お、おう」
押され気味のロイ、その背後から腕がニュっと伸びてきてロイの身体を抱き締めた。
奥から現れたのはアンジュだった。少しだけ頬を膨らませてルフィーナへ敵愾心を向けている。そのままロイを背後から抱き締めながら、肩口から顔を出して言った。
「ルフィーナさん、ロイ君は私達のだからダメだよ!」
「そ、そう言うつもりでは……」
「奥から見てたけど、完全に女の顔になってた! これ以上は流石に──キャアッ!」
話しが面倒な方向に向かいそうだと判断したロイはアンジュの腕を剥がし、お姫様抱っこで奥に向かう。
ロイの背中はこれ以上語ることはないと物語っており、それを理解したルフィーナは踵を返して別のテスティードの方へ歩き出した。
「ルフィーナさん、ボスから話しは聞いています。ささ、我らがテスティードへお入りください」
「え、ええ……どうも」
ルフィーナは女のリーベスタに促されてテスティードの中に入った。馬車よりも大きく、両サイドの壁に面して座席が配置されていた。奥にある大きな椅子は前方を向いていて、それが御者専用の席であることがわかった。
全員が乗り込むと、テスティードが振動し始めて思わず剣を抜いてしまった。リーベスタはルフィーナの手を優しく握って諭すように言った。
「安心してください、テスティードが起動しただけですから。それと、もうすぐ発車しますから、走行中はあまり立たないでくださいね。転倒しますので」
「そ、そうですね。なんか、初めて帝都に来た時の田舎者の感覚がします。帝都に比べればエルフの住むヘイムダルは田舎ですから」
「ふふ、テスティードに乗った人はみんな最初はそんな感じになりますよ。すぐに慣れます」
リーベスタの人がそういうと、静かにテスティードが動き始めた。窓から外を眺めると、帝都インペリウムはどんどん小さくなっていった。
ルフィーナは心の中で祈った。
フレミー様、ロイ殿の傍で勉強して大きくなって帰ってきます。帝国騎士団第一部隊隊長として、相応しい騎士となるために──。
Tips
リーベスタ
国境線である死の谷の中層に作られた村、エデン。そのエデンの守護を務める組織をリーベといい、リーベのメンバーをリーベスタと呼称している。
影の一族、元近衛騎士、スタークで構成されており、ロイによって派閥なく混ぜられている。
金の刺繍で剣と影が描かれた黒い外套がシンボルマーク。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ロレーナに資格はない!」
「歌の下手なロレーナ!」
「怠け者ロレーナ!」
教会の定めた歌姫ロレーナは、王家の歌姫との勝負に負けてしまった。それもそのはず、聖なる歌姫の歌は精霊に捧げるもので、権力者を喜ばせるものではない。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
あれ?なんでこうなった?
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。
…‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!!
そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。
‥‥‥あれ?なんでこうなった?
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる