53 / 225
帝国編
第53話 イグニア邸を目指して
しおりを挟む
ロイ一行は帝国の領土に無事に入ることができた。
一行は、開幕から帝都に行くだろうと思っていたのだが、ソフィアの話しにより"反貴族制度武装組織"の創設者であるエイデン=イグニア氏の領土に行くことになった。
勿論反対意見は出ない、ここまで来ることができたのもスタークのお陰でもあるからだ。
位置的には王国の国境をなぞるように東へ。
そして一行はとても深く広大な森に入っていった。先頭はスタークを率いるダートが、真ん中に影の一族が、最後にアンジュの元近衛兵で並んでいる。
粉雪がパラパラと降っている。これはロイ達が国境を越えてから降りだしている。帝国領土そのものが寒冷地であるのと同時に、今が"青の節"であることも起因して寒さに慣れてない人はくしゃみをしている。
スタークのメンバーとソフィアは帝国出身だから、軽快に進んでいくしそこまで寒そうではない。
ソフィア……そのスリットの入ったドレスで寒くないのだろうか?
ロイの疑問を余所にソフィアはキョロキョロと周囲を警戒している。と、その時、先頭のダートが後ろを向いて満面の笑みで語り始めた。
「王国民の人達、雪が珍しいだろ? その珍しさを噛み締めておきなさい。すぐに見たくなくなるはずだから……」
「……」
返事をする余裕がない、正直黙って案内して欲しいものだ。
「えー、コホンっ! くれぐれも道から逸れたりしないでくれ、スノーウルフが闊歩しているからな。奴等の牙はとても痛いぞ?」
長時間の旅に疲れたのか、影の一族の1人がダートに突っ掛かった。
「なぁダートさん、俺達王国騎士と互角以上にやりあったんだぞ? 狼程度に負けるわけないだろ」
ダートはムッとした表情を浮かべて言った。
「あまり舐めない方がいい、慣れない環境下での戦闘は想像以上に体力使うからね。それに、君は壁の上から矢を射っていただけだろう? 前線で体張って戦ってたのはロイ殿ではないか」
ダートも折角の忠告が無下にされて頭にきたようだ。言い返し始めた……これが続けば内乱が起きかねないな。
さて、どうするか……。
「うるさーーーーいッ! ダートだっけ? スノーウルフの注意だけですぐに前向けば良かったのよ、変な気は回さないでいいわ!」
キレたアンジュがダートを諌めた。そして今度は影の一族へ視線を向ける。
「それと、あんたはダートの気持ちを考えなさい! 王国に来てあんたらを保護し、そして命をかけて国境越えを手助けしたのよ?」
「……はい」「……わかった」
両者共にしょんぼりしている。そしてロイは隣にいたユキノが離れ始めてるのに気付いて"シャドーウィップ"で引き戻した。
「……離れるなって言ってたろ?」
「うぅ、寒くて、眠くて……ZZZ」
「お、おい! 歩きながら寝るなよ……しょうがないな」
ユキノの肩に腕を回し、自身の外套の中にユキノをスッポリと入れた。ユキノはビクッ!とした後、ロイの服を掴んで共に歩き始めた。
目は潤み、顔は少しだけ紅くなり、頭をロイの胸元に傾けている。
「そこっ! イチャイチャしない!」
「してねえよっ!」
アンジュの指摘に周囲から笑い声が上がり、全体の士気が向上した。
「ロイさん……私達、夫婦だって……」
「そんなこと誰も言ってないぞ?」
ロイは悪ノリするユキノの髪をワシワシとかき混ぜて報復した。
そして後方の騒ぎに気付いたソフィアはダル絡みを始めた。
「なんで脇の下に手を入れてるの?」
あ、いつの間にか入れてた、他意はない。それにこっちのが離れにくいし。
「いや、ユキノが離れないようにだな……」
「なんで少し手を前にしてるの? ユキノ、嫌だったらきちんと言わないといけないわよ?」
う……徐々に手が前に行ってた。気を付けないとな、浄化行為で慣れすぎてる。
「私? う~ん、慣れました……かな?」
「疑問符!!」
ソフィアもこう言ってるし、もう一緒に添い寝するのは止めた方がいいかもしれない。最初は目を瞑って喚いていたが、今は顔を赤くして目を合わせてくるだけだしな。
そうこうしている内に森が拓けてきた。急激な景色の変化に一同は驚く。
──ここがイグニア領。
雪対策に鋭角な屋根の家が建ち並び、広大な畑には赤いトマトがいっぱい生っている。
まだ昼というのに魔石を活用した街灯が灯っており、それが街全体を仄かに照らし、オレンジ色の幻想的な光景に昇華している。
「ロイ殿、あの大きな建物がエイデン様の屋敷です」
ダートの指差した先には、城のような大きな建物がある。
「……大きいな」
「領地持ちとは言え、下級貴族……狭い方ですよ」
ダートは何か思うところがあるのか、少し自嘲気味に答えた。
ロイはそれ以上突っ込んだ話しは聞かず、黙ってついて行くことにした。
☆☆☆
新章開幕! 恒例の現ステータス公開です!
(一応ロイは裏で細かくステータスをチェックしてます)
・マナブ、サリナは闇武器が完全に浄化されてしまったため、レベルが表記されません。(ある程度は元の武器の特性を保有)
・ユキノはロイの"聖剣グラム"に"魔杖テュルソス"が紐付けされてるので完全浄化は免れてます。
・Sランクの武器は聖、闇、それ以外にも存在しており、いずれも遺物武器と称されます。
『ステータス』
ロイ&ユキノ (影魔術師、治癒術師)
グラム+96
総合力9230
『聖剣特性強化』
テュルソス+96
総合力8990
『スキル向上』
サリナ ”槍術師”
隕石の槍(雷)
マナブ ”土魔術師”
隕石の魔道書(土)
ソフィア ”聖騎士”
聖槍ロンギヌス+140
総合力13800
『魔力増幅』
アンジュ "剣姫"
セレスティアルブレード
一行は、開幕から帝都に行くだろうと思っていたのだが、ソフィアの話しにより"反貴族制度武装組織"の創設者であるエイデン=イグニア氏の領土に行くことになった。
勿論反対意見は出ない、ここまで来ることができたのもスタークのお陰でもあるからだ。
位置的には王国の国境をなぞるように東へ。
そして一行はとても深く広大な森に入っていった。先頭はスタークを率いるダートが、真ん中に影の一族が、最後にアンジュの元近衛兵で並んでいる。
粉雪がパラパラと降っている。これはロイ達が国境を越えてから降りだしている。帝国領土そのものが寒冷地であるのと同時に、今が"青の節"であることも起因して寒さに慣れてない人はくしゃみをしている。
スタークのメンバーとソフィアは帝国出身だから、軽快に進んでいくしそこまで寒そうではない。
ソフィア……そのスリットの入ったドレスで寒くないのだろうか?
ロイの疑問を余所にソフィアはキョロキョロと周囲を警戒している。と、その時、先頭のダートが後ろを向いて満面の笑みで語り始めた。
「王国民の人達、雪が珍しいだろ? その珍しさを噛み締めておきなさい。すぐに見たくなくなるはずだから……」
「……」
返事をする余裕がない、正直黙って案内して欲しいものだ。
「えー、コホンっ! くれぐれも道から逸れたりしないでくれ、スノーウルフが闊歩しているからな。奴等の牙はとても痛いぞ?」
長時間の旅に疲れたのか、影の一族の1人がダートに突っ掛かった。
「なぁダートさん、俺達王国騎士と互角以上にやりあったんだぞ? 狼程度に負けるわけないだろ」
ダートはムッとした表情を浮かべて言った。
「あまり舐めない方がいい、慣れない環境下での戦闘は想像以上に体力使うからね。それに、君は壁の上から矢を射っていただけだろう? 前線で体張って戦ってたのはロイ殿ではないか」
ダートも折角の忠告が無下にされて頭にきたようだ。言い返し始めた……これが続けば内乱が起きかねないな。
さて、どうするか……。
「うるさーーーーいッ! ダートだっけ? スノーウルフの注意だけですぐに前向けば良かったのよ、変な気は回さないでいいわ!」
キレたアンジュがダートを諌めた。そして今度は影の一族へ視線を向ける。
「それと、あんたはダートの気持ちを考えなさい! 王国に来てあんたらを保護し、そして命をかけて国境越えを手助けしたのよ?」
「……はい」「……わかった」
両者共にしょんぼりしている。そしてロイは隣にいたユキノが離れ始めてるのに気付いて"シャドーウィップ"で引き戻した。
「……離れるなって言ってたろ?」
「うぅ、寒くて、眠くて……ZZZ」
「お、おい! 歩きながら寝るなよ……しょうがないな」
ユキノの肩に腕を回し、自身の外套の中にユキノをスッポリと入れた。ユキノはビクッ!とした後、ロイの服を掴んで共に歩き始めた。
目は潤み、顔は少しだけ紅くなり、頭をロイの胸元に傾けている。
「そこっ! イチャイチャしない!」
「してねえよっ!」
アンジュの指摘に周囲から笑い声が上がり、全体の士気が向上した。
「ロイさん……私達、夫婦だって……」
「そんなこと誰も言ってないぞ?」
ロイは悪ノリするユキノの髪をワシワシとかき混ぜて報復した。
そして後方の騒ぎに気付いたソフィアはダル絡みを始めた。
「なんで脇の下に手を入れてるの?」
あ、いつの間にか入れてた、他意はない。それにこっちのが離れにくいし。
「いや、ユキノが離れないようにだな……」
「なんで少し手を前にしてるの? ユキノ、嫌だったらきちんと言わないといけないわよ?」
う……徐々に手が前に行ってた。気を付けないとな、浄化行為で慣れすぎてる。
「私? う~ん、慣れました……かな?」
「疑問符!!」
ソフィアもこう言ってるし、もう一緒に添い寝するのは止めた方がいいかもしれない。最初は目を瞑って喚いていたが、今は顔を赤くして目を合わせてくるだけだしな。
そうこうしている内に森が拓けてきた。急激な景色の変化に一同は驚く。
──ここがイグニア領。
雪対策に鋭角な屋根の家が建ち並び、広大な畑には赤いトマトがいっぱい生っている。
まだ昼というのに魔石を活用した街灯が灯っており、それが街全体を仄かに照らし、オレンジ色の幻想的な光景に昇華している。
「ロイ殿、あの大きな建物がエイデン様の屋敷です」
ダートの指差した先には、城のような大きな建物がある。
「……大きいな」
「領地持ちとは言え、下級貴族……狭い方ですよ」
ダートは何か思うところがあるのか、少し自嘲気味に答えた。
ロイはそれ以上突っ込んだ話しは聞かず、黙ってついて行くことにした。
☆☆☆
新章開幕! 恒例の現ステータス公開です!
(一応ロイは裏で細かくステータスをチェックしてます)
・マナブ、サリナは闇武器が完全に浄化されてしまったため、レベルが表記されません。(ある程度は元の武器の特性を保有)
・ユキノはロイの"聖剣グラム"に"魔杖テュルソス"が紐付けされてるので完全浄化は免れてます。
・Sランクの武器は聖、闇、それ以外にも存在しており、いずれも遺物武器と称されます。
『ステータス』
ロイ&ユキノ (影魔術師、治癒術師)
グラム+96
総合力9230
『聖剣特性強化』
テュルソス+96
総合力8990
『スキル向上』
サリナ ”槍術師”
隕石の槍(雷)
マナブ ”土魔術師”
隕石の魔道書(土)
ソフィア ”聖騎士”
聖槍ロンギヌス+140
総合力13800
『魔力増幅』
アンジュ "剣姫"
セレスティアルブレード
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる