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オーパーツ奪還作戦
第21話 アグニの塔 恋慕
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2人は話しが終わると、今後の全権を委ねる為にロイの前に立った。岩に腰掛け、白銀の剣を杖代わりに伏せていたロイは顔を上げて問いかける。
「話しは終わったのか?様子を見る限り、今のお前が素の性格って感じか?」
マナブは頷き、そしてロイの足元で土下座を始めた。
「僕達は暴走し、そして結果的にロイさんの両親や同胞を殺めてしまいました。謝って許される事じゃないけど……本当にすみませんでした。ロイさん、僕の覚悟は出来てます───」
覚悟を見届けたロイは立ち上がり、そして聖剣グラムを振りかぶる。
胸に燻る僅かな棘にロイの手が止まる。王が聖武器と偽り闇の武器を渡したこと、そのせいでコイツらがそうなってしまった事もわかる。だが、このやるせない気持ちはなんだ?
ユキノの悲しそうな顔を一瞥したロイは考える。マナブを斬る理由、そしてやるべき事と戦いの最中に浮かんだ両親の言葉。ここでロイが剣を振り下ろしてもきっとユキノは文句は言わないだろう。だが、そうなればユキノの悲しそうな顔はもっと増える……。
思えば、ユキノは笑顔よりも辛そうな顔をしている事が多い、そうロイは思い返す。次にマナブへと視線を戻せばその体は小刻みに震えていた。死を覚悟し、震える手を握り拳を以て耐えるその姿にかつての粗暴さは消え失せている。
旅に出てからのロイは少しだけ救われていた。何も出来ないくせに甲斐甲斐しく世話を焼こうとするユキノ。傷つけられても助けたいと願う優しさと、その裏にある脆さ。何より、崩落後に死が確定されようとするロイを助けたのはユキノだ。
それら全てを踏まえた上でロイは行動を起こした。
バンッ!!
「え?」
マナブは間の抜けた声を発し、そしてまだ生きてる事を実感した。見守っていたユキノは口に手を当てて泣きそうな顔をしている。そして後頭部へ衝撃が加えられた事を遅れて認識したマナブは、手をその部分に添えると本が乗せられている事に気が付いた。
ロイが土下座をするマナブの後頭部に、浄化された禁書『グリモワール』を叩きつけていたのだ。
「俺のパーティに加われ。だが勘違いするな……許した訳じゃない。次、害を成したら間違いなく殺す、いいな?」
「は……はいッ!!」
マナブは浄化されたグリモワールを胸に抱き抱えて涙を流す。そして感極まったユキノがロイを押し倒す形で抱きついた。
「ロイさぁんッ!……ズビィィィ……ありがどぅございばずぅぅ~~」
ロイは服とユキノの顔の間を影でコーティングしながら頭をワシワシと撫でる。
お前、さっきまで中古呼ばわりされてたのになんでコイツの為に泣けるんだよ……ったく、俺もお前もわけわかんねぇ……。
ロイはそう思いつつも、嬉しさで涙を流すユキノに少しだけ笑顔を浮かべるのだった。
『ステータス』
隕石の魔道書;変質した上級土魔術の魔道書。
ステータスを唱えても簡素な説明しかなく、マナブの禁書は武器としての性能も、それまでの能力も失われていた。弱体化はしたが、それでも一般的に購入可能な魔道書の中では最上級のレベルだった。
自身の弱体化に目を伏せて納得したマナブはロイに向き直り、これまでの経緯、そして自身の想いを語った。
「ロイさん、僕は───」
休み時間はいつも教室で本を読んでいるマナブ、高校生活の3年間ずっと続けてきたことだ。手にしている本は将棋に関する解説書、将棋の大好きな彼にとって相棒とも言える存在だ。
3年の夏、いよいよ進路に関してピリピリしてきた教室でそれは起きた。
「よぉ、ガリ勉。何読んでんの?……将棋?うわ、マジかよ。おーい、コイツ面白いもん読んでるぜ!」
「か、返してよ!そんなに乱暴に扱ったら破れちゃうよぉ!」
成績が芳しくない為か、憂さ晴らしにマナブから本を取り上げ、クラスの同級生達はキャッチボールのようにパスを繰り返す。そしてそこに彼女が現れた。
子犬のようにトテテと間に入って本を取った後、本を抱き抱えて同級生に言った。
「じ、受験が上手くいかないからって、こういうのはいけないと思います!こんな事してる暇があったら少しは勉強した方がいいと思います!……ほらイトウ君、行こ?」
周囲はたじろぎ、そして沈黙する。正論、そして学年のアイドルに諭されて尚反論できるわけもなく、手を引かれるマナブを周囲は呆然と眺めるしかなかった。
「えーっと、シラサトさん?ここって立ち入り禁止なんじゃ……」
高嶺の花に連れられて辿り着いたのは屋上、普段は立ち入り禁止の場所だった。彼女は近くのベンチに座り、手招きしてきた。
「良いの良いの!今まで誰も来たことないし、本を読むならここが一番です!ほ~ら、イトウ君もここで本を読も?」
そう言って本を返してもらったが、本の温もりにマナブは真っ赤に赤面してしまう。学年のアイドルと謳われるシラサト ユキノが先程まで必死に抱き抱えていた本……表紙の温度だけで彼女に包まれてるような錯覚に心臓がドキドキしてしまう。
イトウ マナブはこの日、初めて初恋を経験した。
「話しは終わったのか?様子を見る限り、今のお前が素の性格って感じか?」
マナブは頷き、そしてロイの足元で土下座を始めた。
「僕達は暴走し、そして結果的にロイさんの両親や同胞を殺めてしまいました。謝って許される事じゃないけど……本当にすみませんでした。ロイさん、僕の覚悟は出来てます───」
覚悟を見届けたロイは立ち上がり、そして聖剣グラムを振りかぶる。
胸に燻る僅かな棘にロイの手が止まる。王が聖武器と偽り闇の武器を渡したこと、そのせいでコイツらがそうなってしまった事もわかる。だが、このやるせない気持ちはなんだ?
ユキノの悲しそうな顔を一瞥したロイは考える。マナブを斬る理由、そしてやるべき事と戦いの最中に浮かんだ両親の言葉。ここでロイが剣を振り下ろしてもきっとユキノは文句は言わないだろう。だが、そうなればユキノの悲しそうな顔はもっと増える……。
思えば、ユキノは笑顔よりも辛そうな顔をしている事が多い、そうロイは思い返す。次にマナブへと視線を戻せばその体は小刻みに震えていた。死を覚悟し、震える手を握り拳を以て耐えるその姿にかつての粗暴さは消え失せている。
旅に出てからのロイは少しだけ救われていた。何も出来ないくせに甲斐甲斐しく世話を焼こうとするユキノ。傷つけられても助けたいと願う優しさと、その裏にある脆さ。何より、崩落後に死が確定されようとするロイを助けたのはユキノだ。
それら全てを踏まえた上でロイは行動を起こした。
バンッ!!
「え?」
マナブは間の抜けた声を発し、そしてまだ生きてる事を実感した。見守っていたユキノは口に手を当てて泣きそうな顔をしている。そして後頭部へ衝撃が加えられた事を遅れて認識したマナブは、手をその部分に添えると本が乗せられている事に気が付いた。
ロイが土下座をするマナブの後頭部に、浄化された禁書『グリモワール』を叩きつけていたのだ。
「俺のパーティに加われ。だが勘違いするな……許した訳じゃない。次、害を成したら間違いなく殺す、いいな?」
「は……はいッ!!」
マナブは浄化されたグリモワールを胸に抱き抱えて涙を流す。そして感極まったユキノがロイを押し倒す形で抱きついた。
「ロイさぁんッ!……ズビィィィ……ありがどぅございばずぅぅ~~」
ロイは服とユキノの顔の間を影でコーティングしながら頭をワシワシと撫でる。
お前、さっきまで中古呼ばわりされてたのになんでコイツの為に泣けるんだよ……ったく、俺もお前もわけわかんねぇ……。
ロイはそう思いつつも、嬉しさで涙を流すユキノに少しだけ笑顔を浮かべるのだった。
『ステータス』
隕石の魔道書;変質した上級土魔術の魔道書。
ステータスを唱えても簡素な説明しかなく、マナブの禁書は武器としての性能も、それまでの能力も失われていた。弱体化はしたが、それでも一般的に購入可能な魔道書の中では最上級のレベルだった。
自身の弱体化に目を伏せて納得したマナブはロイに向き直り、これまでの経緯、そして自身の想いを語った。
「ロイさん、僕は───」
休み時間はいつも教室で本を読んでいるマナブ、高校生活の3年間ずっと続けてきたことだ。手にしている本は将棋に関する解説書、将棋の大好きな彼にとって相棒とも言える存在だ。
3年の夏、いよいよ進路に関してピリピリしてきた教室でそれは起きた。
「よぉ、ガリ勉。何読んでんの?……将棋?うわ、マジかよ。おーい、コイツ面白いもん読んでるぜ!」
「か、返してよ!そんなに乱暴に扱ったら破れちゃうよぉ!」
成績が芳しくない為か、憂さ晴らしにマナブから本を取り上げ、クラスの同級生達はキャッチボールのようにパスを繰り返す。そしてそこに彼女が現れた。
子犬のようにトテテと間に入って本を取った後、本を抱き抱えて同級生に言った。
「じ、受験が上手くいかないからって、こういうのはいけないと思います!こんな事してる暇があったら少しは勉強した方がいいと思います!……ほらイトウ君、行こ?」
周囲はたじろぎ、そして沈黙する。正論、そして学年のアイドルに諭されて尚反論できるわけもなく、手を引かれるマナブを周囲は呆然と眺めるしかなかった。
「えーっと、シラサトさん?ここって立ち入り禁止なんじゃ……」
高嶺の花に連れられて辿り着いたのは屋上、普段は立ち入り禁止の場所だった。彼女は近くのベンチに座り、手招きしてきた。
「良いの良いの!今まで誰も来たことないし、本を読むならここが一番です!ほ~ら、イトウ君もここで本を読も?」
そう言って本を返してもらったが、本の温もりにマナブは真っ赤に赤面してしまう。学年のアイドルと謳われるシラサト ユキノが先程まで必死に抱き抱えていた本……表紙の温度だけで彼女に包まれてるような錯覚に心臓がドキドキしてしまう。
イトウ マナブはこの日、初めて初恋を経験した。
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