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二章『お忍びでえと』
(二)
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「わざわざ嘘をついてまで着物を贈るなんて、お館様らしくもないですね。いつもの貴方なら、あそこまで粘ったりしないでしょうに」
すずが去った後の、大神の部屋にて。奥で薬草茶を煎れていた薊が、もう堪えきれないとばかりに笑いを噛み殺していた。大神は肩を震わせる薊を軽く睨みつつ、はあ、とため息をつく。
「ああでも言わなきゃ、すずは恐縮して受け取ってくれねえんだよ。すずのために用意したものなのに、受け取ってもらえないなんて悲しいじゃんか」
実は、先ほどすずに渡した着物は、大神がわざわざ機織りの神に頼んで用意してもらったものだ。最近屋敷にやってきた少女に世話になっているから、お礼になにか贈り物をしてあげたい──そう持ちかけたところ、機織りの神は張り切って上物の着物と帯を仕立ててくれたのだった。
それだけではない。今まで大神がすずに渡した贈り物は、すべて他の神々から協力を得て用意した、すずのための品々なのである。ヤマモモの砂糖菓子は菓子の神が、根付けやお守りは縁結びの神がそれぞれ用意したものだ。
「失礼ながら、少々圧が強いのでは? すず殿にお礼がしたいとは言っても、あの勢いでは彼女が困ってしまいますよ」
「そりゃ分かってるよ。他の奴にだったらここまでしねえと思う。けどよ」
すずは、あまりにも謙虚すぎる。美徳なんて綺麗な言葉だけでは片付けられないほどに、遠慮がちすぎる。それこそが、大神がすずに強く迫らざるを得ない、たった一つの理由だった。
「あの子、自分の寝間着は使い古しのボロでいいとか、自分の飯は余ったものでいいとか言うんだぜ……。ありゃ普通の域を飛び越えてる。押しつけないとなんでも断られちまうよ」
保護した当初のすずの状態だけでも、彼女が大変酷い扱いを受けてきたことは分かっていた。が、ここまで自虐的になっているところを見ていると、大神は胸が痛くなってくる。
欲しがって当然のものすら欲しがらない彼女に、どうにかこうにか受け取ってもらおうと考えた結果が、『仕事の報酬』という苦肉の策だった。
「それにしても、色々と用意しすぎでは……?」
薊は部屋の奥に視線をやって、そのまま上へ向く。視線の先には、大神が頭を悩ませながら用意したのであろう品々が、まだまだうず高く積まれていた。
可愛らしい衣類に、ふわふわのぬいぐるみに、簪や櫛、草履など――。
「すずが喜びそうなものが分からなかったんだよ」
大神も、すずが気に入るものが一つでもあればいいのだが、という気持ちで最初は用意していた。けれど、人間の少女への贈り物選びなどしたことがない大神である――女中たちの意見も参考にしたとはいえ、最終的にはあれこれ悩むのも面倒になり、この贈り物の山ができたというわけだ。
これらを一気に贈ろうものなら、すずは間違いなく吃驚してひっくり返る。なので、大神は少しずつ、労働に対する対価という形で彼女に贈ることにした。
「ふふ、お館様はすず殿に大変心をお寄せなのですね。ふふふ」
「なんだよ。なに笑ってんだよ」
「いえ、なんでも」
傍から見ている薊からしてみれば、たった一人の少女のことに四苦八苦している大神が可笑しくてしょうがないのだろう。お銀との茶飲み話のいいネタにもなりそうだ、などと考えているに違いない。
「……自分でも、やりすぎかなって思うよ」
大神の声は突然、静かに語りかけるようなものに変わる。薊の反応が面白くないから意図的に変えた、というわけではなかったのだが、それまで笑っていた薊はハッと顔を上げた。
「あの子自身は、悲しみを見せようとしないからさ。本当は不満だったりすることも隠してないかなって、気になっちまうんだ」
「それは……」
薊は黙り込む。どうやら、彼も大神と同じ予感を抱いていたらしい。
すずは、どんなにつらい思いをしていても、内側に飲み込んでしまう。己が内の悲しみを悟らせまいと、決して表に出さないのだ。
甘えたところのない性格は、彼女の強さの証でもある。しかし、大神にとっては──救いの神にすらすがらないすずの頑なな強さは、初めて遭遇したようなものだ。
「あの子になにをしてあげたらいいのか、全然分からないんだ」
あの贈り物たちは、大神なりのあがきだった。
すずを喜ばせるには、何をどうするのがいいのか、彼も皆目分からなかった。だから今も、必死に模索しているのだ。
「なんて、こんなの神様が言う台詞じゃねえよな」
神妙な面持ちの薊に向かって、大神は乾いた笑みを漏らす。
すずのことを深刻に考えていた大神を見て、薊は後ろめたい気持ちになったのかもしれない──そういえば、とあたかも不意に思い出したかのように、大神に提案してきた。
「そろそろふもとで祭りがあるのではありませんか? 雪解けが進んだ街の方なら、梅の市が始まる頃ですよ」
「おお、それだ!」
梅の市とは、北国島の観光名物のひとつである。梅の名木を鑑賞するのはもちろんだが、出店にも珍しいものが多く並ぶ。雪解けで長らく閉ざされていた町同士が、自由にお互いの地を行き来できるようになったことを祝う目的もあるので、方々からあやかしたちが集まって、とても活気づくのだ。
「屋敷の外で楽しいことをしてくれば、すずも喜んでくれるかもしれない! よし、善は急げだな!」
言うが早いか、瞬く間にぱああっと明るい笑顔になった大神は、ぴゅーっとすずのもとへ走っていった。
「すず殿のこととなると、一直線ですねえ」
薊は主の背中を見送りながら、ぽそっと呟いた。
*
「……で、どうしてこうなったんです」
そして、翌日の昼下がり――薊は目の前の光景に首を傾げていた。なぜか、大神の周囲には、十数人のあやかしの子供たちがわらわら集まっていたのだ。
「いや、お茶の間にいたすずに『遊びに行こうぜ』って勢いよく声をかけたらな、ちょうど子供たちの相手してたところだったんだよな。そしたら、子供たちが遊びって言葉に反応しちまって……」
「勢い余って、声をかける時機を完全に見誤った、と」
「そういうこった」
本来、大神が連れていくのはすず一人だけだったのだが、遊びに行けると目を輝かせた子供たちを無視するなど、心優しい大神にはできなかった。
さらに、子供たちが友達同士で声をかけて回ったため、最終的にこのような大所帯で出かけるはめになったというわけである。
大神が薊を呼んだのは、子供たちの引率の手伝いを頼んだからだ。
「後でメシでもおごるから、今日だけ同行してよ。この人数だと、さすがに目が行き届かねえからさ」
「子供たちのためならば、致し方ありませんね」
大雪が降っている間、あやかしたちはほとんど屋敷の中にこもって過ごしていた。遊び盛りの子供たちからしてみれば、外で遊ぶこともできなくて苦痛だったことだろう。息抜きにはいい機会だ。
「しかし、お館様……その格好は一体?」
大神は今、大きな編み笠を目深に被り、襟巻で口元を隠している。地味な柄の綿入れ半纏をまとい、濃紺の髪は黒に染めていて、いつもの粋な装いとはかけ離れていた。
「決まってるだろ、変装だよ。俺は誰もが二度見しちまうほどの美貌の持ち主だからな、こうして顔を隠さなきゃ、ふもとの民が黄色い声を上げて驚いちまうだろ?」
「…………」
「……頼むからボケたらツッこんでくれ」
「無茶を言わないでください。貴方は本当に顔がいいので、事実にツッコめと言われても困ります」
「苦言言うフリしてニコニコと褒め殺すなよ」
「では、すず殿はどうされたのです?」
「出かける準備中。今頃、お銀たちが張り切って着付けてるんじゃねえの」
大神が誘ったとき、すずは外に着ていく着物がないからと一度断ったのだが、その場にいた一人の女中が「それなら私が貸してあげる!」と背中を押したのだ。さらにその後、他の女中たちやお銀にも話が波及し、最終的には『すずを可愛くしよう大作戦』が女中総出で繰り広げられることになったのだった。
ずいぶん時間をかけるんだなあ、と大神が待ち遠しく思い始めたところで、
「はあい、お待ちどおさま!」
というお銀の声が聞こえる。すると、子供たちが一挙にわあっと歓声をあげた。
「すずちゃん、きれい~!」
「お化粧してる~!」
女中たちに連れられてやってきたのは、華やかな着物をまとったすずだった。
芥子色の落ち着いた風合いの紬に、帯揚げは鮮やかな青緑。その上から質素な花柄の羽織と、温かそうな襟巻きを身につけている。
「どうです? 雑誌を参考にみんなで考えてみましたのよ」
「東国島のハイカラな女の子って、こんな雰囲気でしたよねえ」
女中たちがほほほと自慢げに笑っている中、すずは絶賛する子供たちを前に、照れくさそうに頬を染めている。薄い朱色の紅を引いた唇は、ゆるやかに弧を描いていた。
「うそ……いつもと全然違うじゃん……」
「これはまた……見違えますなあ」
巫女装束を着たすずには、周囲の大人もにっこり微笑んでしまうようなあどけなさがあったが、今のすずはなんだか垢抜けていて、淑女に近づきつつある少女といった感じだ。
あまりの変貌ぶりに、大神や薊は目を丸くしていた。
「どうでしょう? 大神様とお出かけするのに、ふさわしい姿になれたでしょうか……?」
「ふさわしいもなにも! すげえ似合ってるよ! 可愛い!」
正直、こんなに可愛い姿を拝ませてもらった大神としては、百二十点の出来である。
大変身したすずにすっかり舞い上がっている大神に
「ふふ、どうやら大満足のようですわね」
と、お銀がにっこり笑いかけた。
「では、準備が整ったところで出発といきましょうか。お館様」
「おう。任せとけ! みんな俺から離れるなよ」
大神がパンパン! と手を鳴らしたかと思うと、まばゆい光が彼らを包んだ。
*
光が消えたのと同時に、すずの鼓膜に突然、がやがやとした喧噪が押し寄せてくる。いきなり賑やかになる周囲の音に、すずは「えっ? えっ?」と混乱した。
「すげ~! もう街じゃん!」
「お館様がいれば、あっという間だね~」
数秒前まで鉈切山の屋敷にいたはずの一行は、いつの間にか、店が軒先を連ねるふもとの街に立っていた。雪もほとんど溶けかけている通りは、買い物や物見遊山を楽しむあやかしたちでごった返している。
「お前ら、さっき渡した小遣いの中でやりくりするんだぞ。行きたいところがあったら、必ず俺か薊先生を呼ぶようにな」
大神が呼びかけると、あやかしの子供たちは「はーい!」と声を揃えて返事をする。
「あっちに飴細工がある! 見に行こうぜ!」
「お兄、向こうのおもちゃ屋さんも行こうよ~」
「ああ、こら! 友達を置いて先に走ってはいけませんよ」
さっそく目的を見つけて駆け出す子供たちの後を、薊が慌ただしく追いかける。
薊と子供たちが一足先に遊びに行く中、目の見えないすずは、状況が把握できないまま、置いてけぼりを食っていた。
「ど、どういうことですか? 今、何が起きたのです?」
辺りをきょろきょろ伺うすずに、大神は穏やかに声をかける。
「なに、転移の術を使っただけだよ。鉈切山は下山するのも命がけだからな、ふもとに行くときはこうして術を使う方が安全なんだ」
「へえ! さすが大神さ――」
「おっと!」
すずが大神の名を呼ぼうとした瞬間、急にすずの口が、がま口財布のようにパクン! と閉まる。
「んんっ!? む~っ! んむむ~っ!!」
勝手に閉まった口を自分の意思で開くことができず、すずはまたしても混乱に陥る。指でこじ開けようにも上手くいかないし、大神に変な術でもかけられたのだろうか――すずは大神のいる方に向かって地団駄を踏んで抗議する。
「悪い悪い、名前を呼ばれたらまずかったから、つい。俺は今日、お忍びで来てるから、その呼び名は引っ込めてくれ。民が驚いちまう」
「む~……」
すずが少々恨めしげな面持ちで頷く。
それを見た大神がパチンと指を鳴らすと、固く閉じていたすずの口がぱかっと開いた。
「ぷあっ! なしておかしな術をかけるんですかあ……普通に手で口を塞いでくれればよかったものを」
「んなことしたら、せっかくの綺麗な口紅が取れちまうだろ」
「……それは、そうかもしれないですけど」
わざわざ変な術をかけたのは、大神なりの気遣いだったらしい。平然と紳士らしいことを言われてしまい、すずは恥ずかしくなって、文句も言えなくなってしまう。
「おーい、お館様もすずちゃんもこっち来いよ!」
「綺麗な飴がいっぱいだよ~!」
「おう、すぐ行く! ほら、すずも一緒に行こうぜ」
大神はそう言って、すずの手に触れるよう袖を差し出す。すずは大神の袖をしわにならないようつかみながら、こくんと一つ頷いた。
*
「すずちゃん、これ見て! このおもちゃ、振ると音が鳴るの! 綺麗でしょ~」
「すず姉ちゃん、あっちに栃餅のお団子が売ってるよ! 一緒に食べようよ~」
「すーちゃん、このぬいぐるみ、もっこもこだよ~。お館様のしっぽみたい!」
普段から子供たちの面倒を見ていたすずは、子供たちからもすっかり懐かれていた。どこへ行ってもすずは引っ張りだこで、落ち着く間もない。
へとへとになってきたのを見かねた大神と薊の計らいで、すずはようやく外に置いてあった腰掛けで休むことができた。
「ほら、甘酒でも飲みな」
大神はすずの隣に腰をかけると、屋台で買ってきたのだろう甘酒を差し出してくる。すずは「いただきます」とそれを受け取り、ゆっくりと口に含んだ。ふわっと鼻に抜けていくような米の甘みと、舌に伝わる砂糖の甘みが、疲れをほぐしていく。
「お前、人気者だな。嫉妬しちまうぞ」
「お館様ほどではありませんよ」
老若男女を虜にしてしまう大神に比べれば、自分などまだまだだ。
とはいえ、子供たちにここまで懐かれていたのは、すず自身も驚きだった。
「楽しいか?」
「はい、とても楽しいです」
「そうかい、そうかい」
大神もすずの返答に安心したようで、ふっと笑い声をもらしている。
「いい場所だろ、ここは」
「はい。食べ物は美味しいし、楽しいこともいっぱいだし……なにより、あやかしさんたちがみんな気さくで優しくて」
あやかしたちにとって、人間であるすずは異質な存在だ。すずは当初、街のあやかしに嫌がられないかと心配していたが、杞憂に終わった。
むしろ、祭の熱気や、あやかしたちの気風のおかげで、すずが幸せになっている。心が温かくて、肌寒さを忘れてしまいそうなほどだ。
「北国島の自然は、他の島と比べても特に厳しいからな。だから、民はみなで支え合って、冬を乗り越えるんだ。春が来れば喜びを分かち合う。夏が来ればみんなで畑作に励んで、秋は実った作物を分け合うんだ。人間もあやかしも、そこんところは変わらないよ」
実のところ、すずは北国島の営みというものを知らなかった。なにせ、すずは現世にいた頃、ずっと爪弾きにされてきたのだ。
盲目であることを馬鹿にされたり、杖を持って歩く姿を笑われたりするばかりで、こんなふうに遊びに誘われたことは一度もなかった。親しげに話してくれる人もいなかったので、周囲がどんなに生活をしているかもよく分からなかったのだ。
けれど、ここは違う――あやかし自体が多種多様な種族の集まりだからなのか、ここではすずさえも爪弾きにされない。意地悪をする者も、仲間外れにする者もいないのだ。
すずにとっては、平等に接してくれることがなにより嬉しかった。
「おおが……お館様は、北国島のことが大好きなんですね」
「おう。この土地も、住んでいる民も、全部ひっくるめて好きだ。俺は、この島を守れることを誇りに思う」
大神の声も、心なしかとても柔らかい気がする。きっと、とても優しい眼差しをしているのだろうなと、すずは想像する。
「お館様。おらは今まで、『目が見えないから、なんにもつまらなくて楽しくないんだ』って思っていました。みんなと同じものが見られないから、おらにはなんにも楽しくないんだって。だども、隠世に来てからは毎日が楽しいんです」
生まれつき色も光も分からないすずにとっては、他人が見ている光景など想像のしようもない――村の子供たちがなにをして楽しんでいるのか、なにを見てはしゃいでいるかも分からなかったから、一緒にはしゃげないのだと思っていた。
けれど今――この心は確かに弾んでいる。あやかしたちがなにを見ているのかも、なにをしているのかも、相変わらず分からないままなのに。
「同じ景色は見られなくても、心はちゃんと共有できるものですね」
大神はすずの言葉に笑みを深くすると、
「そう言ってもらえただけで、連れてきた甲斐があったってもんだ」
と、すずの頭をぽんぽんと軽く撫でた。
「日が傾いてきたな。そろそろ鐘が鳴る頃だ」
大神が橙色に染まった空を見ながら言う。すずも頬に当たる風が冷たくなってきたことに気づく。
大神とすずは席を立ち、子供たちの面倒を見ている薊に合流する。
「子供たちは帰る時間ですね」
「だな。お銀たちが夕飯こさえて待ってるぜ」
大人たちの台詞を聞いて、「ええ~!」と不満たらたらな声を上げる子供たち。
「やだー! もっと遊びたい!」
「お昼に戻してよ、お館様あ」
「無茶言うなって。俺の力だって万能じゃねえよ」
まだまだ遊び足りないとごねる子供たちをどうにかなだめる大神。
しかし、大人しく帰ろうとしているすずも内心、残念な気持ちでいっぱいだった。子供ではないので駄々をこねるようなことはしないが、叶うことならもっと街を楽しんでいたかった。子供たちが同伴していたとはいえ、忙しい大神と外へ出かけられる機会なんてなかなかないだろうし。
すずがしょんぼりしていると、薊が
「気持ちは分かりますが、お二人の自由時間を邪魔してはいけませんよ」
と声をかける。
えっ? と同時に振り向いた大神とすずに、薊は意味深な笑顔を向けた。
「そうそう、今日の夕食は皆さんの好きな手巻き寿司だそうです。早く帰らないと、好きな具が先に取られてしまうかもしれませんよ」
さらに、魅力的な夕食の話をされた子供たちは、
「手巻き寿司!? やった、あたしお寿司大好き!」
「早く帰ろう! シャケが全部取られちゃう前に!」
と、薊の策略どおり、まんまと乗せられている。
帰る気満々になった子供たちを引き連れて、薊は
「では、お館様、すず殿。一足先に帰らせていただきます。あまり遅くなりませんよう、お気をつけくださいね」
と、懐から文字のようなものを書いたお札を取り出す。お札から眩しい光が出てきたかと思うと、一秒後には薊も子供たちも姿を消していた。
すずが去った後の、大神の部屋にて。奥で薬草茶を煎れていた薊が、もう堪えきれないとばかりに笑いを噛み殺していた。大神は肩を震わせる薊を軽く睨みつつ、はあ、とため息をつく。
「ああでも言わなきゃ、すずは恐縮して受け取ってくれねえんだよ。すずのために用意したものなのに、受け取ってもらえないなんて悲しいじゃんか」
実は、先ほどすずに渡した着物は、大神がわざわざ機織りの神に頼んで用意してもらったものだ。最近屋敷にやってきた少女に世話になっているから、お礼になにか贈り物をしてあげたい──そう持ちかけたところ、機織りの神は張り切って上物の着物と帯を仕立ててくれたのだった。
それだけではない。今まで大神がすずに渡した贈り物は、すべて他の神々から協力を得て用意した、すずのための品々なのである。ヤマモモの砂糖菓子は菓子の神が、根付けやお守りは縁結びの神がそれぞれ用意したものだ。
「失礼ながら、少々圧が強いのでは? すず殿にお礼がしたいとは言っても、あの勢いでは彼女が困ってしまいますよ」
「そりゃ分かってるよ。他の奴にだったらここまでしねえと思う。けどよ」
すずは、あまりにも謙虚すぎる。美徳なんて綺麗な言葉だけでは片付けられないほどに、遠慮がちすぎる。それこそが、大神がすずに強く迫らざるを得ない、たった一つの理由だった。
「あの子、自分の寝間着は使い古しのボロでいいとか、自分の飯は余ったものでいいとか言うんだぜ……。ありゃ普通の域を飛び越えてる。押しつけないとなんでも断られちまうよ」
保護した当初のすずの状態だけでも、彼女が大変酷い扱いを受けてきたことは分かっていた。が、ここまで自虐的になっているところを見ていると、大神は胸が痛くなってくる。
欲しがって当然のものすら欲しがらない彼女に、どうにかこうにか受け取ってもらおうと考えた結果が、『仕事の報酬』という苦肉の策だった。
「それにしても、色々と用意しすぎでは……?」
薊は部屋の奥に視線をやって、そのまま上へ向く。視線の先には、大神が頭を悩ませながら用意したのであろう品々が、まだまだうず高く積まれていた。
可愛らしい衣類に、ふわふわのぬいぐるみに、簪や櫛、草履など――。
「すずが喜びそうなものが分からなかったんだよ」
大神も、すずが気に入るものが一つでもあればいいのだが、という気持ちで最初は用意していた。けれど、人間の少女への贈り物選びなどしたことがない大神である――女中たちの意見も参考にしたとはいえ、最終的にはあれこれ悩むのも面倒になり、この贈り物の山ができたというわけだ。
これらを一気に贈ろうものなら、すずは間違いなく吃驚してひっくり返る。なので、大神は少しずつ、労働に対する対価という形で彼女に贈ることにした。
「ふふ、お館様はすず殿に大変心をお寄せなのですね。ふふふ」
「なんだよ。なに笑ってんだよ」
「いえ、なんでも」
傍から見ている薊からしてみれば、たった一人の少女のことに四苦八苦している大神が可笑しくてしょうがないのだろう。お銀との茶飲み話のいいネタにもなりそうだ、などと考えているに違いない。
「……自分でも、やりすぎかなって思うよ」
大神の声は突然、静かに語りかけるようなものに変わる。薊の反応が面白くないから意図的に変えた、というわけではなかったのだが、それまで笑っていた薊はハッと顔を上げた。
「あの子自身は、悲しみを見せようとしないからさ。本当は不満だったりすることも隠してないかなって、気になっちまうんだ」
「それは……」
薊は黙り込む。どうやら、彼も大神と同じ予感を抱いていたらしい。
すずは、どんなにつらい思いをしていても、内側に飲み込んでしまう。己が内の悲しみを悟らせまいと、決して表に出さないのだ。
甘えたところのない性格は、彼女の強さの証でもある。しかし、大神にとっては──救いの神にすらすがらないすずの頑なな強さは、初めて遭遇したようなものだ。
「あの子になにをしてあげたらいいのか、全然分からないんだ」
あの贈り物たちは、大神なりのあがきだった。
すずを喜ばせるには、何をどうするのがいいのか、彼も皆目分からなかった。だから今も、必死に模索しているのだ。
「なんて、こんなの神様が言う台詞じゃねえよな」
神妙な面持ちの薊に向かって、大神は乾いた笑みを漏らす。
すずのことを深刻に考えていた大神を見て、薊は後ろめたい気持ちになったのかもしれない──そういえば、とあたかも不意に思い出したかのように、大神に提案してきた。
「そろそろふもとで祭りがあるのではありませんか? 雪解けが進んだ街の方なら、梅の市が始まる頃ですよ」
「おお、それだ!」
梅の市とは、北国島の観光名物のひとつである。梅の名木を鑑賞するのはもちろんだが、出店にも珍しいものが多く並ぶ。雪解けで長らく閉ざされていた町同士が、自由にお互いの地を行き来できるようになったことを祝う目的もあるので、方々からあやかしたちが集まって、とても活気づくのだ。
「屋敷の外で楽しいことをしてくれば、すずも喜んでくれるかもしれない! よし、善は急げだな!」
言うが早いか、瞬く間にぱああっと明るい笑顔になった大神は、ぴゅーっとすずのもとへ走っていった。
「すず殿のこととなると、一直線ですねえ」
薊は主の背中を見送りながら、ぽそっと呟いた。
*
「……で、どうしてこうなったんです」
そして、翌日の昼下がり――薊は目の前の光景に首を傾げていた。なぜか、大神の周囲には、十数人のあやかしの子供たちがわらわら集まっていたのだ。
「いや、お茶の間にいたすずに『遊びに行こうぜ』って勢いよく声をかけたらな、ちょうど子供たちの相手してたところだったんだよな。そしたら、子供たちが遊びって言葉に反応しちまって……」
「勢い余って、声をかける時機を完全に見誤った、と」
「そういうこった」
本来、大神が連れていくのはすず一人だけだったのだが、遊びに行けると目を輝かせた子供たちを無視するなど、心優しい大神にはできなかった。
さらに、子供たちが友達同士で声をかけて回ったため、最終的にこのような大所帯で出かけるはめになったというわけである。
大神が薊を呼んだのは、子供たちの引率の手伝いを頼んだからだ。
「後でメシでもおごるから、今日だけ同行してよ。この人数だと、さすがに目が行き届かねえからさ」
「子供たちのためならば、致し方ありませんね」
大雪が降っている間、あやかしたちはほとんど屋敷の中にこもって過ごしていた。遊び盛りの子供たちからしてみれば、外で遊ぶこともできなくて苦痛だったことだろう。息抜きにはいい機会だ。
「しかし、お館様……その格好は一体?」
大神は今、大きな編み笠を目深に被り、襟巻で口元を隠している。地味な柄の綿入れ半纏をまとい、濃紺の髪は黒に染めていて、いつもの粋な装いとはかけ離れていた。
「決まってるだろ、変装だよ。俺は誰もが二度見しちまうほどの美貌の持ち主だからな、こうして顔を隠さなきゃ、ふもとの民が黄色い声を上げて驚いちまうだろ?」
「…………」
「……頼むからボケたらツッこんでくれ」
「無茶を言わないでください。貴方は本当に顔がいいので、事実にツッコめと言われても困ります」
「苦言言うフリしてニコニコと褒め殺すなよ」
「では、すず殿はどうされたのです?」
「出かける準備中。今頃、お銀たちが張り切って着付けてるんじゃねえの」
大神が誘ったとき、すずは外に着ていく着物がないからと一度断ったのだが、その場にいた一人の女中が「それなら私が貸してあげる!」と背中を押したのだ。さらにその後、他の女中たちやお銀にも話が波及し、最終的には『すずを可愛くしよう大作戦』が女中総出で繰り広げられることになったのだった。
ずいぶん時間をかけるんだなあ、と大神が待ち遠しく思い始めたところで、
「はあい、お待ちどおさま!」
というお銀の声が聞こえる。すると、子供たちが一挙にわあっと歓声をあげた。
「すずちゃん、きれい~!」
「お化粧してる~!」
女中たちに連れられてやってきたのは、華やかな着物をまとったすずだった。
芥子色の落ち着いた風合いの紬に、帯揚げは鮮やかな青緑。その上から質素な花柄の羽織と、温かそうな襟巻きを身につけている。
「どうです? 雑誌を参考にみんなで考えてみましたのよ」
「東国島のハイカラな女の子って、こんな雰囲気でしたよねえ」
女中たちがほほほと自慢げに笑っている中、すずは絶賛する子供たちを前に、照れくさそうに頬を染めている。薄い朱色の紅を引いた唇は、ゆるやかに弧を描いていた。
「うそ……いつもと全然違うじゃん……」
「これはまた……見違えますなあ」
巫女装束を着たすずには、周囲の大人もにっこり微笑んでしまうようなあどけなさがあったが、今のすずはなんだか垢抜けていて、淑女に近づきつつある少女といった感じだ。
あまりの変貌ぶりに、大神や薊は目を丸くしていた。
「どうでしょう? 大神様とお出かけするのに、ふさわしい姿になれたでしょうか……?」
「ふさわしいもなにも! すげえ似合ってるよ! 可愛い!」
正直、こんなに可愛い姿を拝ませてもらった大神としては、百二十点の出来である。
大変身したすずにすっかり舞い上がっている大神に
「ふふ、どうやら大満足のようですわね」
と、お銀がにっこり笑いかけた。
「では、準備が整ったところで出発といきましょうか。お館様」
「おう。任せとけ! みんな俺から離れるなよ」
大神がパンパン! と手を鳴らしたかと思うと、まばゆい光が彼らを包んだ。
*
光が消えたのと同時に、すずの鼓膜に突然、がやがやとした喧噪が押し寄せてくる。いきなり賑やかになる周囲の音に、すずは「えっ? えっ?」と混乱した。
「すげ~! もう街じゃん!」
「お館様がいれば、あっという間だね~」
数秒前まで鉈切山の屋敷にいたはずの一行は、いつの間にか、店が軒先を連ねるふもとの街に立っていた。雪もほとんど溶けかけている通りは、買い物や物見遊山を楽しむあやかしたちでごった返している。
「お前ら、さっき渡した小遣いの中でやりくりするんだぞ。行きたいところがあったら、必ず俺か薊先生を呼ぶようにな」
大神が呼びかけると、あやかしの子供たちは「はーい!」と声を揃えて返事をする。
「あっちに飴細工がある! 見に行こうぜ!」
「お兄、向こうのおもちゃ屋さんも行こうよ~」
「ああ、こら! 友達を置いて先に走ってはいけませんよ」
さっそく目的を見つけて駆け出す子供たちの後を、薊が慌ただしく追いかける。
薊と子供たちが一足先に遊びに行く中、目の見えないすずは、状況が把握できないまま、置いてけぼりを食っていた。
「ど、どういうことですか? 今、何が起きたのです?」
辺りをきょろきょろ伺うすずに、大神は穏やかに声をかける。
「なに、転移の術を使っただけだよ。鉈切山は下山するのも命がけだからな、ふもとに行くときはこうして術を使う方が安全なんだ」
「へえ! さすが大神さ――」
「おっと!」
すずが大神の名を呼ぼうとした瞬間、急にすずの口が、がま口財布のようにパクン! と閉まる。
「んんっ!? む~っ! んむむ~っ!!」
勝手に閉まった口を自分の意思で開くことができず、すずはまたしても混乱に陥る。指でこじ開けようにも上手くいかないし、大神に変な術でもかけられたのだろうか――すずは大神のいる方に向かって地団駄を踏んで抗議する。
「悪い悪い、名前を呼ばれたらまずかったから、つい。俺は今日、お忍びで来てるから、その呼び名は引っ込めてくれ。民が驚いちまう」
「む~……」
すずが少々恨めしげな面持ちで頷く。
それを見た大神がパチンと指を鳴らすと、固く閉じていたすずの口がぱかっと開いた。
「ぷあっ! なしておかしな術をかけるんですかあ……普通に手で口を塞いでくれればよかったものを」
「んなことしたら、せっかくの綺麗な口紅が取れちまうだろ」
「……それは、そうかもしれないですけど」
わざわざ変な術をかけたのは、大神なりの気遣いだったらしい。平然と紳士らしいことを言われてしまい、すずは恥ずかしくなって、文句も言えなくなってしまう。
「おーい、お館様もすずちゃんもこっち来いよ!」
「綺麗な飴がいっぱいだよ~!」
「おう、すぐ行く! ほら、すずも一緒に行こうぜ」
大神はそう言って、すずの手に触れるよう袖を差し出す。すずは大神の袖をしわにならないようつかみながら、こくんと一つ頷いた。
*
「すずちゃん、これ見て! このおもちゃ、振ると音が鳴るの! 綺麗でしょ~」
「すず姉ちゃん、あっちに栃餅のお団子が売ってるよ! 一緒に食べようよ~」
「すーちゃん、このぬいぐるみ、もっこもこだよ~。お館様のしっぽみたい!」
普段から子供たちの面倒を見ていたすずは、子供たちからもすっかり懐かれていた。どこへ行ってもすずは引っ張りだこで、落ち着く間もない。
へとへとになってきたのを見かねた大神と薊の計らいで、すずはようやく外に置いてあった腰掛けで休むことができた。
「ほら、甘酒でも飲みな」
大神はすずの隣に腰をかけると、屋台で買ってきたのだろう甘酒を差し出してくる。すずは「いただきます」とそれを受け取り、ゆっくりと口に含んだ。ふわっと鼻に抜けていくような米の甘みと、舌に伝わる砂糖の甘みが、疲れをほぐしていく。
「お前、人気者だな。嫉妬しちまうぞ」
「お館様ほどではありませんよ」
老若男女を虜にしてしまう大神に比べれば、自分などまだまだだ。
とはいえ、子供たちにここまで懐かれていたのは、すず自身も驚きだった。
「楽しいか?」
「はい、とても楽しいです」
「そうかい、そうかい」
大神もすずの返答に安心したようで、ふっと笑い声をもらしている。
「いい場所だろ、ここは」
「はい。食べ物は美味しいし、楽しいこともいっぱいだし……なにより、あやかしさんたちがみんな気さくで優しくて」
あやかしたちにとって、人間であるすずは異質な存在だ。すずは当初、街のあやかしに嫌がられないかと心配していたが、杞憂に終わった。
むしろ、祭の熱気や、あやかしたちの気風のおかげで、すずが幸せになっている。心が温かくて、肌寒さを忘れてしまいそうなほどだ。
「北国島の自然は、他の島と比べても特に厳しいからな。だから、民はみなで支え合って、冬を乗り越えるんだ。春が来れば喜びを分かち合う。夏が来ればみんなで畑作に励んで、秋は実った作物を分け合うんだ。人間もあやかしも、そこんところは変わらないよ」
実のところ、すずは北国島の営みというものを知らなかった。なにせ、すずは現世にいた頃、ずっと爪弾きにされてきたのだ。
盲目であることを馬鹿にされたり、杖を持って歩く姿を笑われたりするばかりで、こんなふうに遊びに誘われたことは一度もなかった。親しげに話してくれる人もいなかったので、周囲がどんなに生活をしているかもよく分からなかったのだ。
けれど、ここは違う――あやかし自体が多種多様な種族の集まりだからなのか、ここではすずさえも爪弾きにされない。意地悪をする者も、仲間外れにする者もいないのだ。
すずにとっては、平等に接してくれることがなにより嬉しかった。
「おおが……お館様は、北国島のことが大好きなんですね」
「おう。この土地も、住んでいる民も、全部ひっくるめて好きだ。俺は、この島を守れることを誇りに思う」
大神の声も、心なしかとても柔らかい気がする。きっと、とても優しい眼差しをしているのだろうなと、すずは想像する。
「お館様。おらは今まで、『目が見えないから、なんにもつまらなくて楽しくないんだ』って思っていました。みんなと同じものが見られないから、おらにはなんにも楽しくないんだって。だども、隠世に来てからは毎日が楽しいんです」
生まれつき色も光も分からないすずにとっては、他人が見ている光景など想像のしようもない――村の子供たちがなにをして楽しんでいるのか、なにを見てはしゃいでいるかも分からなかったから、一緒にはしゃげないのだと思っていた。
けれど今――この心は確かに弾んでいる。あやかしたちがなにを見ているのかも、なにをしているのかも、相変わらず分からないままなのに。
「同じ景色は見られなくても、心はちゃんと共有できるものですね」
大神はすずの言葉に笑みを深くすると、
「そう言ってもらえただけで、連れてきた甲斐があったってもんだ」
と、すずの頭をぽんぽんと軽く撫でた。
「日が傾いてきたな。そろそろ鐘が鳴る頃だ」
大神が橙色に染まった空を見ながら言う。すずも頬に当たる風が冷たくなってきたことに気づく。
大神とすずは席を立ち、子供たちの面倒を見ている薊に合流する。
「子供たちは帰る時間ですね」
「だな。お銀たちが夕飯こさえて待ってるぜ」
大人たちの台詞を聞いて、「ええ~!」と不満たらたらな声を上げる子供たち。
「やだー! もっと遊びたい!」
「お昼に戻してよ、お館様あ」
「無茶言うなって。俺の力だって万能じゃねえよ」
まだまだ遊び足りないとごねる子供たちをどうにかなだめる大神。
しかし、大人しく帰ろうとしているすずも内心、残念な気持ちでいっぱいだった。子供ではないので駄々をこねるようなことはしないが、叶うことならもっと街を楽しんでいたかった。子供たちが同伴していたとはいえ、忙しい大神と外へ出かけられる機会なんてなかなかないだろうし。
すずがしょんぼりしていると、薊が
「気持ちは分かりますが、お二人の自由時間を邪魔してはいけませんよ」
と声をかける。
えっ? と同時に振り向いた大神とすずに、薊は意味深な笑顔を向けた。
「そうそう、今日の夕食は皆さんの好きな手巻き寿司だそうです。早く帰らないと、好きな具が先に取られてしまうかもしれませんよ」
さらに、魅力的な夕食の話をされた子供たちは、
「手巻き寿司!? やった、あたしお寿司大好き!」
「早く帰ろう! シャケが全部取られちゃう前に!」
と、薊の策略どおり、まんまと乗せられている。
帰る気満々になった子供たちを引き連れて、薊は
「では、お館様、すず殿。一足先に帰らせていただきます。あまり遅くなりませんよう、お気をつけくださいね」
と、懐から文字のようなものを書いたお札を取り出す。お札から眩しい光が出てきたかと思うと、一秒後には薊も子供たちも姿を消していた。
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