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Que.Prologue?
→14_step!_ANGLE「勇者〈カノジョ〉の目覚め、愛〈キミ〉の呼び声。」
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シャルドの手の甲の聖痕が激しく光った。
『天血狂化』……そして『瀕死超化』────。
死に際に、シドの喜『怒』哀楽と『恐怖』から沸き立つ叫び声が、シャルドを狂乱の天使にさせて覚醒させた。
シャルドの身体的変化は手の甲の痣だけではなく、彼女の頭には天使の輪が浮かび上がり、右の強膜は黒くなり、グレーだった瞳はオッドアイになる。右目は赤く、左目は黄金に。そして……その姿を簡単に一言で言い表すならば──正に『暴走』。
『天候変化』────。
……雨が、降り出した。
いつしか突然に空は曇り、ポツポツと……そして10秒もしない内に、暴風雨が降り出した。しかしステージを演出するそれは、まるで誰かの能力であるかの様に不自然で突然だった。
狂乱の天使は一歩ずつ、一歩ずつ、明らかに正気ではない意識で殺意を滾らせながら、また一歩ずつ、一歩ずつ、悪魔へと接近する。
──だが気付かれる事は無い。悪魔は『人を天国に送る』という大義に夢中になっているから。
そして一歩ずつ──、
「ガああああああああぁぁぁ」響き渡る少年の声。
だが、それでも一歩ずつ──、
──ようやく、審判の時は訪れる。
獣の様な唸り声を上げながら、背後に立った。アビゲイルはなにか気配に気付き、ゆっくりと振り返る。『頭に一発、入れたのに』という不安を浮かべながら。
「マ゛す゛タ゛ぁ゛に゛フ゛れ゛る゛ナ゛…゛…゛!゛!゛」
「……は?マジ──」
しかしアビゲイルが動作を終える前に、先程のシャルドの剣戟とは比べ物にならない速度の攻撃が、胴体を裁った。アビゲイルは斬られた事に、遅れて気付く。
しかしそのダメージをも神父が肩代わりする。──そう、肉の盾は……神父はまだ『生きている』。
「ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛カ゛カ゛ア゛!゛!゛!゛!゛……ヒヒッ……───アひっ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
『硬質化』────。
まるで別の生き物の様な雄叫びを上げ、自身の足を鉄の様に硬質化させてアビゲイルの顔面を蹴り飛ばす。それによってアビゲイルは約15m、転がりながら吹き飛んでいく。
(なんだッ、なんだよッ、何が起きたッ!? なんなんだよォ!? アイツはァッ!?…………まさか『天の血』で『天使』の側面が、出ているというのかッ……?! ッ、もしそうだとしたら、そうかアレが……アレが本来のッ、『勇者』なのか?!)
「────アハ、アハ、アハハハハハハハハハハハッ……────ァ゛ァ゛ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛」
「『戒律とてんば──ウか゛お゛ッ゛!゛!゛」
『空中反発』『速度強化』────。
シャルドは空中を踏み締めて、弾む様に急激に加速する。そして吹き飛んでいくアビゲイルに一瞬で追い付き、頭を掴んで顔面を地面へと叩き付ける。
アビゲイルは反発で1mほどバスケットボールの様に弾み上がり、シャルドは無防備になっている腹部を思い切り天に蹴り上げた。
その後、『白』と『黒』の二本の大剣を、シャルドの両手を一つに合わせる。その二本の大剣はシャルドの身長と同じ程ある一本の大剣となり、神々しく輝いた。
──そして天へと掲げた。一本の聖剣に光が集まって行く。
すると光が集まった瞬間、『聖剣』からクラシック調のロック音楽が流れた。シドの知識から言うならばそれはアニメで主人公の勝利が確定した際に流れるBGM。俗に言う『処刑用BGM』だった。
『──『ULT』使用権限申請中……──聖痕認証確認、魔素発動十分量蓄積完了。オプションにより『処刑用BGM』を再生します。……Genius Mana Furuse's Dream series.零式────『貴方の勝利に祝福を』──発動します』
その機械音声と共に、剣は、光の柱は……いや審判は──振り下ろされた。
「神゛器!?、ッ゛……や゛ァッ゛、ヤメロォッ゛ッ゛!゛!゛」
吐血しながら、アビゲイルは空中で哀れに泣き叫ぶ。しかしその声はシャルドには届かない。もし届いたとしても、結果は恐らく確定しているだろう。
それを悟ったアビゲイルはシャルドに銃口を向けた。そして引き金を引くも、銃弾は出ない。何故ならシドの拷問で全ての弾丸を使ってしまったからだ。
見事なまでの『勧善懲悪』。万人が愛し、世界に愛される王道の展開。しかしシチュエーションだけを見ればの話だ。風体は真逆。味方役と悪役。
そして何より、実力差が開きすぎてそれが悪化している様に見える。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛クッ゛ソか゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛」
「ハア……──イヒっ!!ハハハハハハハハ!! ……アひゃッ!!」
地上のシャルドに目を向けると、聖剣はマナを吸収し終え、光を纏っていた。吸収したマナは光の柱となって、天空の雲へと突き刺さった。
「戒律と天罰ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!゛!゛『剣をォッ゛振り下ろすンじゃねェ゛ェ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛』」
『戒律』を守らなかった為、シャルドに『天罰』が下された。それによってシャルドの全身の骨が折れる。
しかしシャルドはそれを意にも介さず──。
────その聖剣は光の柱を伴って無慈悲に振り下ろされた。
「アひゃッ……──ェク゛ウ゛カ゛イウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛」
「──ヤメロォォッ゛ッ゛死にたく゛ね゛ェ゛ッ゛ッ゛!゛!゛」
迫り来る光の柱。しかしまだアビゲイルには微かな余力があった、それを振り絞りアビゲイルは避けようとする。だが身体が動かない。どこか違和感がある。直後、痛みが走る。
──胸を何かに貫かれた。
アビゲイルは自身の身体を見た。なにかなにか黒いモノが全身に張り付いているのを視認した。
そして黒いモノを通じて全てを理解した。それは本当に何もかも。この世の全てを悟った、と言ってもいいくらいに。
勝てるわけがなかった。あまりのバカバカしさに、乾いた笑いが込み上げる。
「本当にッ、ヤツが……ま、おう?……ガ、き……ああ、良いじゃねーかよォ。ケケケッ……────カ゛キィィィ゛ィ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛」
黒いモノ、それはシドの虚影だった。
「サポートに゛っ、徹す゛る゛……!!!!」
シドは拷問のお返しと言わんばかりの大量の虚影はアビゲイルを捉え、貫き、挟み、『貴方の勝利に祝福を』の光の柱とぶつかり、虚影は消滅する。
「死ね゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛ア゛ヒ゛ケ゛イ゛ル゛!゛!゛!゛!゛」
「ゥ゛ゥ゛ァ゛……──アハハハハハハッ、アハ、アハッ、アッハハハハハハハ!!!!」
魔王と勇者は感情のままに『殺意』を滾らせ叫んで────『死のループ』から脱した。
光の柱は巨大な音を立て全てを包んだ。大地を割り、空をも二つに切り裂き、アビゲイルの背後の森を切り開いた。
──そして光に包まれたモノは、何も残らなかった。ずっと何故か棒立ちだった神父も倒れた。
そして初期のレトロゲームの様な8bitで構成された明るいBGMと共に、半透明のステータス画面の様なモノがシャルドの目の前に浮かんだ。
【シャルドのLv.があがった!】
Lv.5→ Lv.6
【名前】 シャルド
【種族】 天使型人造人間
【年齢】 ヒミツですっ!!
【職業】 勇者
【レベル】 Lv.6
【HP】 27
【MP】 15
【攻撃力】 20
【防御力】 15
【魔力】 14
【素早さ】 21
【スキル】
天血狂化
天候変化
空中反発
硬質化
速度強化
瀕死超化……etc
「はぁっ、はぁっッ、終わった……!? シスターを……倒した!! ──ッ、!? あ……頭が、痛いっ!!……もしかして、僕の能力ってデメリットあるの?!」
シドは激しい頭痛を受けて、何となくコレがデメリットなのだと察した。
そしてデメリットは単に頭痛だけでは無い事も。
──しかしシドの思考を遮る様に、一つの狂気に満ちた雄叫びが聞こえた。
そして、シドはその方向を見る。
「ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛……──ィ~ッ、クっ、ククク……アひひひひひひっ、アっハハハハハははは!!!!」
暴走は止まらない。人を消した程度では止まらなかった。尽きぬ狂気と『天使』の本能が、暴走を引き起こしていた。
そして勇者は災害に荒れ果てた大地で、暴風風と雨に濡れながら、狂気の雄叫びを上げながら立ち尽くしている。
「レベル、アップ……?」
先程、アビゲイルを消した際に出た半透明のステータス画面の様なモノ
それに書いてあった『スキル』というものが、シャルドをあの状態にしているのではないか?という疑問がシドの脳内に浮かんだ。
Loading……
※セーブデータが変更されました。
──『大罪因子』の一つである『強欲の大罪因子』。それはシャルドの魂の内に眠っていた。
──だが、シャルドはその存在を知らない。
『強欲の大罪因子』による『強欲の権能』。その効果は一言で言えば、RPGゲームのステータス。
それは『Lv.』『能力値』『スキル』などがあり、シャルドがLv.1の時点で習得していた、シャルドの認識していない500を超える膨大なスキルの一部である『天血狂化』による影響が色濃く出ていた。
「ひ、ひひ……」
そして新たな標的として、シドに獣の眼光を向けた。最初こそギリギリで存在していた理性は、今のシャルドにはもう無い。
「はあっ、はあっ、……えっ、ちょっ嘘だよね?もしかして、僕シャルドに殺される……?!」
牙を剥き出して、聖剣の剣先を──シドへと向けた。一方でシドはあまりの恐怖で思わず身がすくんで震える。
一歩ずつ、狂った笑いを上げながらこちらへ向かってくる。そしてシドの脳内では、『切断された左腕の痛み』と『先の闘いの疲れ』で何も考えられない状態だった。
「ひひひっ、ひははははは!!!!」
「シャルド……ねえシャルド!!目を覚ましてよおっ!!」
シドとシャルドの距離はおよそ10m程に迫る。そしてシャルドから発せられる、圧倒的な狂気の圧がシドを襲う。現在のシドの感情は喜怒『哀』楽と『恐怖』だった。
お互いに『夢』を叫び、共に戦った。──つまり立派な『仲間』。現在のシドにその記憶こそは無いものの『転生』を通じて経験したはずの関係は、『ループ』すら超えたモノだった。
──そして距離は5mまで縮まった。シャルドは自身の身長程ある聖剣を片手で大きく振り上げた。『斬られて殺される』という一連のイメージがありえない程に容易に出来てしまった。
そしてそのイメージを現実にするかの様に、剣は──振り下ろされた。シャルドは狂気に呑まれたまま『夢』と『愛』を語り、誓った相手を手にかけようとする。
「死ぬッ!?────ってあれ、生きてる。え、ナニコレ……盾!?」
シドは無意識に『生きたい』とイメージしていた。そのイメージが虚影の性質である『感情の伝播』によって『盾』を形成し、シャルドの聖剣からシドを守った。
──シドの喜『怒』哀楽が『最強の剣』であるならば、この喜怒『哀』楽は『最強の盾』だったのだ。
「……いける、コレならシャルドを傷つけずに──助けれる……!!」
段々と『虚影操作』の使い方を理解してきた。先程、アビゲイルをヴォイドで掴んだ時の様に、シャルドの足を拘束して距離を取る。
「アレが、シャルドの最強で最狂モード……華奢な女の子がイカつい武器持って理性を代償に力を得るってのは、物凄くロマンがあるけど……いつまでもあのままじゃあ、シャルドと僕がヤバいッ!!……多分」
シャルドがずっとあの状態ままというのならば、絶対という確信を持って言える事がある。──それは『ここで生き残る者はいなくなる』という事。
しかし、シドに向かって『そんな事を考えている暇など無い、早く死ね』と言う様に、シャルドは聖剣を構えた。
「はえ!? 最弱に向かって、さっきのすごい必殺技をやるの!?ちょっと大人気ないよシャルド!!」
『エアラスル』
「アッハハハハハハハハハハッ!!──ウ゛ァァッ゛!゛!゛」
「さっきのじゃない!……けど何か来るッ!!」
拘束されながら、お互いの距離が離れているというのに構えて聖剣を振り下ろしたのにはなにか理由がある。と察したシドは、先程と同じように空気の斬撃を虚影で防ぐも防ぎ切れず、シドの片方のツノが折れた。
「ヒッ……!?僕のツノが……!? ……やばい、どうすればいいんだ……カッコいいバーサーカーシャルドを可愛いさっきまでのシャルドにする方法……!!」
──……何も思い浮かばない。
「ああっ! どうしようッ、僕がバカ過ぎるッ!!」
そして──、
「──ウ゛ぅワ゛ァッ゛!゛!゛」
「ああっ、影の鎖が──っ!!」
しばらくシャルドの足を拘束していた虚影が引きちぎられた。
──圧倒的窮地。
本能のままに、狂気に満ちた表情を浮かべ、笑い声を上げながら、シドにゆっくりと向かって来る。
せっかく死のループから抜け出せと言うのに、またこんなところで終わってしまうというのか。
シドは無い頭脳を必死に振り絞って『策』を練る。
だが時すでに遅し──GAME OVER──。
シャルドの間合いに入ってしまった。
「アッハハハハハハハハハハハッッ!!!!」
シャルドは既に聖剣を振り下ろすモーションな入っている。
そこでシドが出した『結論』は──、
「ハハッ、ァッハハハハハハッッ!!!!」
「────大好きだ……大好きだよシャルド!」
「ハハハ……ハ、……──ェ゛?」
──その言葉と共にシドの命は助かり、殺人は未遂に終わる。
「イぃ、ま、……なんて?」
「大好きだよぉっ!シャルドぉっ!!」
シドの愛の言葉を境に、段々とシャルドの理性が現れてくる。……『ラブ&ピース』というのはあながち間違いでは無いようだ。
「ぁ、ますたぁ、私っ──────」
「シャルドっ!?」
シャルドの身体が突然に地面へと倒れた。シドは急いでシャルドを介抱するも、目を閉じていた。だが息はあった。──シャルドは気絶していた。
気絶したシャルドの顔を見ながら少年は、考えた。自分が一体何者なのか、そして何者か分からない自分への向き合い方やこれからどうするかを。
そしてシャルドは夢を見た。それは悲劇の少年がいつかに見た、全く同じ夢を──。
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『天血狂化』……そして『瀕死超化』────。
死に際に、シドの喜『怒』哀楽と『恐怖』から沸き立つ叫び声が、シャルドを狂乱の天使にさせて覚醒させた。
シャルドの身体的変化は手の甲の痣だけではなく、彼女の頭には天使の輪が浮かび上がり、右の強膜は黒くなり、グレーだった瞳はオッドアイになる。右目は赤く、左目は黄金に。そして……その姿を簡単に一言で言い表すならば──正に『暴走』。
『天候変化』────。
……雨が、降り出した。
いつしか突然に空は曇り、ポツポツと……そして10秒もしない内に、暴風雨が降り出した。しかしステージを演出するそれは、まるで誰かの能力であるかの様に不自然で突然だった。
狂乱の天使は一歩ずつ、一歩ずつ、明らかに正気ではない意識で殺意を滾らせながら、また一歩ずつ、一歩ずつ、悪魔へと接近する。
──だが気付かれる事は無い。悪魔は『人を天国に送る』という大義に夢中になっているから。
そして一歩ずつ──、
「ガああああああああぁぁぁ」響き渡る少年の声。
だが、それでも一歩ずつ──、
──ようやく、審判の時は訪れる。
獣の様な唸り声を上げながら、背後に立った。アビゲイルはなにか気配に気付き、ゆっくりと振り返る。『頭に一発、入れたのに』という不安を浮かべながら。
「マ゛す゛タ゛ぁ゛に゛フ゛れ゛る゛ナ゛…゛…゛!゛!゛」
「……は?マジ──」
しかしアビゲイルが動作を終える前に、先程のシャルドの剣戟とは比べ物にならない速度の攻撃が、胴体を裁った。アビゲイルは斬られた事に、遅れて気付く。
しかしそのダメージをも神父が肩代わりする。──そう、肉の盾は……神父はまだ『生きている』。
「ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛カ゛カ゛ア゛!゛!゛!゛!゛……ヒヒッ……───アひっ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
『硬質化』────。
まるで別の生き物の様な雄叫びを上げ、自身の足を鉄の様に硬質化させてアビゲイルの顔面を蹴り飛ばす。それによってアビゲイルは約15m、転がりながら吹き飛んでいく。
(なんだッ、なんだよッ、何が起きたッ!? なんなんだよォ!? アイツはァッ!?…………まさか『天の血』で『天使』の側面が、出ているというのかッ……?! ッ、もしそうだとしたら、そうかアレが……アレが本来のッ、『勇者』なのか?!)
「────アハ、アハ、アハハハハハハハハハハハッ……────ァ゛ァ゛ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛」
「『戒律とてんば──ウか゛お゛ッ゛!゛!゛」
『空中反発』『速度強化』────。
シャルドは空中を踏み締めて、弾む様に急激に加速する。そして吹き飛んでいくアビゲイルに一瞬で追い付き、頭を掴んで顔面を地面へと叩き付ける。
アビゲイルは反発で1mほどバスケットボールの様に弾み上がり、シャルドは無防備になっている腹部を思い切り天に蹴り上げた。
その後、『白』と『黒』の二本の大剣を、シャルドの両手を一つに合わせる。その二本の大剣はシャルドの身長と同じ程ある一本の大剣となり、神々しく輝いた。
──そして天へと掲げた。一本の聖剣に光が集まって行く。
すると光が集まった瞬間、『聖剣』からクラシック調のロック音楽が流れた。シドの知識から言うならばそれはアニメで主人公の勝利が確定した際に流れるBGM。俗に言う『処刑用BGM』だった。
『──『ULT』使用権限申請中……──聖痕認証確認、魔素発動十分量蓄積完了。オプションにより『処刑用BGM』を再生します。……Genius Mana Furuse's Dream series.零式────『貴方の勝利に祝福を』──発動します』
その機械音声と共に、剣は、光の柱は……いや審判は──振り下ろされた。
「神゛器!?、ッ゛……や゛ァッ゛、ヤメロォッ゛ッ゛!゛!゛」
吐血しながら、アビゲイルは空中で哀れに泣き叫ぶ。しかしその声はシャルドには届かない。もし届いたとしても、結果は恐らく確定しているだろう。
それを悟ったアビゲイルはシャルドに銃口を向けた。そして引き金を引くも、銃弾は出ない。何故ならシドの拷問で全ての弾丸を使ってしまったからだ。
見事なまでの『勧善懲悪』。万人が愛し、世界に愛される王道の展開。しかしシチュエーションだけを見ればの話だ。風体は真逆。味方役と悪役。
そして何より、実力差が開きすぎてそれが悪化している様に見える。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛クッ゛ソか゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛」
「ハア……──イヒっ!!ハハハハハハハハ!! ……アひゃッ!!」
地上のシャルドに目を向けると、聖剣はマナを吸収し終え、光を纏っていた。吸収したマナは光の柱となって、天空の雲へと突き刺さった。
「戒律と天罰ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!゛!゛『剣をォッ゛振り下ろすンじゃねェ゛ェ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛』」
『戒律』を守らなかった為、シャルドに『天罰』が下された。それによってシャルドの全身の骨が折れる。
しかしシャルドはそれを意にも介さず──。
────その聖剣は光の柱を伴って無慈悲に振り下ろされた。
「アひゃッ……──ェク゛ウ゛カ゛イウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛」
「──ヤメロォォッ゛ッ゛死にたく゛ね゛ェ゛ッ゛ッ゛!゛!゛」
迫り来る光の柱。しかしまだアビゲイルには微かな余力があった、それを振り絞りアビゲイルは避けようとする。だが身体が動かない。どこか違和感がある。直後、痛みが走る。
──胸を何かに貫かれた。
アビゲイルは自身の身体を見た。なにかなにか黒いモノが全身に張り付いているのを視認した。
そして黒いモノを通じて全てを理解した。それは本当に何もかも。この世の全てを悟った、と言ってもいいくらいに。
勝てるわけがなかった。あまりのバカバカしさに、乾いた笑いが込み上げる。
「本当にッ、ヤツが……ま、おう?……ガ、き……ああ、良いじゃねーかよォ。ケケケッ……────カ゛キィィィ゛ィ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛」
黒いモノ、それはシドの虚影だった。
「サポートに゛っ、徹す゛る゛……!!!!」
シドは拷問のお返しと言わんばかりの大量の虚影はアビゲイルを捉え、貫き、挟み、『貴方の勝利に祝福を』の光の柱とぶつかり、虚影は消滅する。
「死ね゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛ア゛ヒ゛ケ゛イ゛ル゛!゛!゛!゛!゛」
「ゥ゛ゥ゛ァ゛……──アハハハハハハッ、アハ、アハッ、アッハハハハハハハ!!!!」
魔王と勇者は感情のままに『殺意』を滾らせ叫んで────『死のループ』から脱した。
光の柱は巨大な音を立て全てを包んだ。大地を割り、空をも二つに切り裂き、アビゲイルの背後の森を切り開いた。
──そして光に包まれたモノは、何も残らなかった。ずっと何故か棒立ちだった神父も倒れた。
そして初期のレトロゲームの様な8bitで構成された明るいBGMと共に、半透明のステータス画面の様なモノがシャルドの目の前に浮かんだ。
【シャルドのLv.があがった!】
Lv.5→ Lv.6
【名前】 シャルド
【種族】 天使型人造人間
【年齢】 ヒミツですっ!!
【職業】 勇者
【レベル】 Lv.6
【HP】 27
【MP】 15
【攻撃力】 20
【防御力】 15
【魔力】 14
【素早さ】 21
【スキル】
天血狂化
天候変化
空中反発
硬質化
速度強化
瀕死超化……etc
「はぁっ、はぁっッ、終わった……!? シスターを……倒した!! ──ッ、!? あ……頭が、痛いっ!!……もしかして、僕の能力ってデメリットあるの?!」
シドは激しい頭痛を受けて、何となくコレがデメリットなのだと察した。
そしてデメリットは単に頭痛だけでは無い事も。
──しかしシドの思考を遮る様に、一つの狂気に満ちた雄叫びが聞こえた。
そして、シドはその方向を見る。
「ウ゛ウ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!゛!゛!゛!゛……──ィ~ッ、クっ、ククク……アひひひひひひっ、アっハハハハハははは!!!!」
暴走は止まらない。人を消した程度では止まらなかった。尽きぬ狂気と『天使』の本能が、暴走を引き起こしていた。
そして勇者は災害に荒れ果てた大地で、暴風風と雨に濡れながら、狂気の雄叫びを上げながら立ち尽くしている。
「レベル、アップ……?」
先程、アビゲイルを消した際に出た半透明のステータス画面の様なモノ
それに書いてあった『スキル』というものが、シャルドをあの状態にしているのではないか?という疑問がシドの脳内に浮かんだ。
Loading……
※セーブデータが変更されました。
──『大罪因子』の一つである『強欲の大罪因子』。それはシャルドの魂の内に眠っていた。
──だが、シャルドはその存在を知らない。
『強欲の大罪因子』による『強欲の権能』。その効果は一言で言えば、RPGゲームのステータス。
それは『Lv.』『能力値』『スキル』などがあり、シャルドがLv.1の時点で習得していた、シャルドの認識していない500を超える膨大なスキルの一部である『天血狂化』による影響が色濃く出ていた。
「ひ、ひひ……」
そして新たな標的として、シドに獣の眼光を向けた。最初こそギリギリで存在していた理性は、今のシャルドにはもう無い。
「はあっ、はあっ、……えっ、ちょっ嘘だよね?もしかして、僕シャルドに殺される……?!」
牙を剥き出して、聖剣の剣先を──シドへと向けた。一方でシドはあまりの恐怖で思わず身がすくんで震える。
一歩ずつ、狂った笑いを上げながらこちらへ向かってくる。そしてシドの脳内では、『切断された左腕の痛み』と『先の闘いの疲れ』で何も考えられない状態だった。
「ひひひっ、ひははははは!!!!」
「シャルド……ねえシャルド!!目を覚ましてよおっ!!」
シドとシャルドの距離はおよそ10m程に迫る。そしてシャルドから発せられる、圧倒的な狂気の圧がシドを襲う。現在のシドの感情は喜怒『哀』楽と『恐怖』だった。
お互いに『夢』を叫び、共に戦った。──つまり立派な『仲間』。現在のシドにその記憶こそは無いものの『転生』を通じて経験したはずの関係は、『ループ』すら超えたモノだった。
──そして距離は5mまで縮まった。シャルドは自身の身長程ある聖剣を片手で大きく振り上げた。『斬られて殺される』という一連のイメージがありえない程に容易に出来てしまった。
そしてそのイメージを現実にするかの様に、剣は──振り下ろされた。シャルドは狂気に呑まれたまま『夢』と『愛』を語り、誓った相手を手にかけようとする。
「死ぬッ!?────ってあれ、生きてる。え、ナニコレ……盾!?」
シドは無意識に『生きたい』とイメージしていた。そのイメージが虚影の性質である『感情の伝播』によって『盾』を形成し、シャルドの聖剣からシドを守った。
──シドの喜『怒』哀楽が『最強の剣』であるならば、この喜怒『哀』楽は『最強の盾』だったのだ。
「……いける、コレならシャルドを傷つけずに──助けれる……!!」
段々と『虚影操作』の使い方を理解してきた。先程、アビゲイルをヴォイドで掴んだ時の様に、シャルドの足を拘束して距離を取る。
「アレが、シャルドの最強で最狂モード……華奢な女の子がイカつい武器持って理性を代償に力を得るってのは、物凄くロマンがあるけど……いつまでもあのままじゃあ、シャルドと僕がヤバいッ!!……多分」
シャルドがずっとあの状態ままというのならば、絶対という確信を持って言える事がある。──それは『ここで生き残る者はいなくなる』という事。
しかし、シドに向かって『そんな事を考えている暇など無い、早く死ね』と言う様に、シャルドは聖剣を構えた。
「はえ!? 最弱に向かって、さっきのすごい必殺技をやるの!?ちょっと大人気ないよシャルド!!」
『エアラスル』
「アッハハハハハハハハハハッ!!──ウ゛ァァッ゛!゛!゛」
「さっきのじゃない!……けど何か来るッ!!」
拘束されながら、お互いの距離が離れているというのに構えて聖剣を振り下ろしたのにはなにか理由がある。と察したシドは、先程と同じように空気の斬撃を虚影で防ぐも防ぎ切れず、シドの片方のツノが折れた。
「ヒッ……!?僕のツノが……!? ……やばい、どうすればいいんだ……カッコいいバーサーカーシャルドを可愛いさっきまでのシャルドにする方法……!!」
──……何も思い浮かばない。
「ああっ! どうしようッ、僕がバカ過ぎるッ!!」
そして──、
「──ウ゛ぅワ゛ァッ゛!゛!゛」
「ああっ、影の鎖が──っ!!」
しばらくシャルドの足を拘束していた虚影が引きちぎられた。
──圧倒的窮地。
本能のままに、狂気に満ちた表情を浮かべ、笑い声を上げながら、シドにゆっくりと向かって来る。
せっかく死のループから抜け出せと言うのに、またこんなところで終わってしまうというのか。
シドは無い頭脳を必死に振り絞って『策』を練る。
だが時すでに遅し──GAME OVER──。
シャルドの間合いに入ってしまった。
「アッハハハハハハハハハハハッッ!!!!」
シャルドは既に聖剣を振り下ろすモーションな入っている。
そこでシドが出した『結論』は──、
「ハハッ、ァッハハハハハハッッ!!!!」
「────大好きだ……大好きだよシャルド!」
「ハハハ……ハ、……──ェ゛?」
──その言葉と共にシドの命は助かり、殺人は未遂に終わる。
「イぃ、ま、……なんて?」
「大好きだよぉっ!シャルドぉっ!!」
シドの愛の言葉を境に、段々とシャルドの理性が現れてくる。……『ラブ&ピース』というのはあながち間違いでは無いようだ。
「ぁ、ますたぁ、私っ──────」
「シャルドっ!?」
シャルドの身体が突然に地面へと倒れた。シドは急いでシャルドを介抱するも、目を閉じていた。だが息はあった。──シャルドは気絶していた。
気絶したシャルドの顔を見ながら少年は、考えた。自分が一体何者なのか、そして何者か分からない自分への向き合い方やこれからどうするかを。
そしてシャルドは夢を見た。それは悲劇の少年がいつかに見た、全く同じ夢を──。
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