そして何もなかった

平 昌綱

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文化祭と友と感謝

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文化祭の終焉と、新しい日々へ

 僕が倒れた後、赤子がリーダー代行としてクラスをまとめてくれた。彼女の強引さは時に圧倒的だったが、それが逆にクラスを一つにする力となった。男子たちの意見を的確に整理し、女子たちの要望を取り入れながら、彼女は次々と課題を解決していった。

 そのおかげで、文化祭の準備は滞りなく進んだ。僕がいなくても、クラスは機能し、最終的には団結していった。そして迎えた文化祭当日。僕は体調が回復し、なんとか参加することができた。しかし、リーダーとしてみんなを引っ張る立場ではなくなっていた。代わりに赤子やクラスメイトが中心となり、文化祭を運営していた。

 後から聞いた話では、僕が倒れたことがむしろクラスの結束を強めたらしい。誰もが自分にできることを探し、それぞれの役割を果たした結果、強いチームワークが生まれたという。

 そんな状況を知ったとき、ふと「最初からさっさと倒れていたほうが、もっと早くうまくいったのかもしれない」と自嘲気味に思った。しかし、すぐにそれは少し違うと感じた。

 僕が必死に頑張っていたからこそ、周囲の人たちも動いてくれたのかもしれない。僕がいなければ、最初から赤子がリーダーになっていたかもしれないが、それではこの形のクラスの団結には至らなかったのではないか。少なくとも、僕の努力が全く無駄だったわけではない。むしろ、僕がここまで走り続けたからこそ、最終的にクラスが一つになったのだと信じたかった。

 文化祭当日、僕は少しだけ寂しさを感じた。今まで自分が中心となって動いていたはずなのに、気づけばその役割は他の誰かに引き継がれていた。けれど、同時に、どこか誇らしい気持ちにもなっていた。僕がいなくても、クラスはしっかりと動いている。それが悔しいわけではなく、むしろ嬉しかった。

 文化祭が終わった後、僕の中には虚脱感が残った。今まで全力で駆け抜けてきたからこそ、燃え尽きたような感覚があった。達成感がないわけではないが、何か大きなものを失ったような気持ちになった。それはきっと、もうこのクラスで何かを成し遂げることはないのだという、一つの終わりを感じたからだろう。

 しかし、それでも心の奥には確かな温かさがあった。それは、仲間たちが支えてくれたこと、そして彼らとともに築いた絆の証だった。青子や赤子をはじめ、僕を助けてくれた多くの人たちに、心から感謝したい。彼らがいてくれたからこそ、今の僕があるのだと、強く感じた。

 「文化祭は終わった。でも、ここからまた、新しい日々が始まる。」

 そう思いながら、僕は次へと進む決意を固めた。

 季節は移り変わり、これから僕たちは受験や進路選択という新たな課題に向き合うことになる。クラスの雰囲気も変わり、文化祭のように一つの目標に向かって走ることはもうないかもしれない。それでも、僕はこの経験を胸に刻みながら、一歩ずつ前へ進んでいこうと思った。

 そして、ふと考える。来年の今頃、僕はどこで何をしているのだろうか。赤子や青子とは、どんな関係になっているのだろうか。未来はまだ見えないけれど、今はただ、この一年の思い出を噛み締めながら、新たな一歩を踏み出すしかないのだろう。
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