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中途半端真面目とJと習字
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僕は高校の教養科目で習字を選択した。授業の大半は墨をすり、半紙に向き合い、自分の字と格闘する静かな時間だったけれど、それが逆に心地よかった。周りの友達はスポーツ系や実技科目を選んだ人が多かったが、僕にはこの地味さが性に合っている気がした。
ある日の休み時間、習字の教室で黙々と準備をしていると、青子がひょっこり顔を出してきた。習字の授業を取っていないはずなのに、何か面白そうなことでも探しているのだろうか。彼女は「あ、工藤発見」とニヤリと笑いながら僕の近くまでやって来た。そして、なぜか突然僕の名前を半紙に書き始めた。
「工藤……J?」
僕の姓を書いた後、なぜかアルファベットの「J」を添えている。意味がわからない。
「何それ?」と僕が尋ねると、彼女はさらりと答えた。
「気分。捨てていいよ。」
「え、捨てるの?」と返す僕。でも、捨てるには惜しい気がして、なんとなくそれを保管することにした。理由はわからない。捨ててもいいと言われたのに、なぜかそれをゴミ箱に捨てることができなかった。授業期間中、僕の引き出しにはその「工藤 J」と書かれた半紙がずっと保管されていた。
墨で真っ黒に覆い隠してもよかったのかもしれない。でも、何かそれをするのが惜しくて、ずっとそのままだった。
その日、習字の授業中には、クラスの恋愛の話題で盛り上がった。書き終わった作品を乾かしながら、自然と雑談が始まったのだ。そんな中、クラスメイトの一人で、普段ほとんど話さない子が急に僕に向かって言った。
「工藤くんって絶対合コンとかいかなそうだよね。」
その場にいた全員が大笑いした。僕も思わず笑ったけれど、内心ちょっとショックだった。第三者からそういうイメージを持たれているんだ、と気づいた瞬間だった。堅いけど、少し抜けている――そんな印象を与えているらしい。
ここで自己紹介を少し挟むけれど、僕はよく「ムードメーカー」と評されることがある。小学校の先生にもそう言われたし、友達にもよく言われる。でも、本当にそうだろうか。自分では、どちらかというと中途半端な存在だと思う。真面目なところもあれば、抜けている部分もある。器用なところもあるけれど、どれも中途半端で、どこにも突き抜けていない。
そして気づいたのは、青子もまた似たような性質を持っているということだ。彼女もまた、何事にも「中途半端真面目」だ。どこかしら器用で、だけど全力で突き進むタイプではない。そんな中途半端さが、僕たちをお互いに引き寄せていたのかもしれない。
高校生活を振り返ると、その中途半端さこそが僕たちの特徴だった。お互い真剣になりきれず、かといって手を抜くこともできない。どっちつかずの自分たちが、何かと一緒に行動したり、ちょっかいをかけ合ったりしていた。それは他の誰とも共有できない、不思議なバランスだった。
「工藤 J」と書かれた半紙も、きっとその中途半端さの象徴なのだろう。意味なんてなかったけれど、今でも記憶に残っている。それは、僕たちの高校生活そのものを表しているような気がする。明確な意味はないけれど、なぜか忘れられない瞬間。あの時の空気感や彼女とのやりとりが、今でも鮮明に蘇ってくるのだ。
ある日の休み時間、習字の教室で黙々と準備をしていると、青子がひょっこり顔を出してきた。習字の授業を取っていないはずなのに、何か面白そうなことでも探しているのだろうか。彼女は「あ、工藤発見」とニヤリと笑いながら僕の近くまでやって来た。そして、なぜか突然僕の名前を半紙に書き始めた。
「工藤……J?」
僕の姓を書いた後、なぜかアルファベットの「J」を添えている。意味がわからない。
「何それ?」と僕が尋ねると、彼女はさらりと答えた。
「気分。捨てていいよ。」
「え、捨てるの?」と返す僕。でも、捨てるには惜しい気がして、なんとなくそれを保管することにした。理由はわからない。捨ててもいいと言われたのに、なぜかそれをゴミ箱に捨てることができなかった。授業期間中、僕の引き出しにはその「工藤 J」と書かれた半紙がずっと保管されていた。
墨で真っ黒に覆い隠してもよかったのかもしれない。でも、何かそれをするのが惜しくて、ずっとそのままだった。
その日、習字の授業中には、クラスの恋愛の話題で盛り上がった。書き終わった作品を乾かしながら、自然と雑談が始まったのだ。そんな中、クラスメイトの一人で、普段ほとんど話さない子が急に僕に向かって言った。
「工藤くんって絶対合コンとかいかなそうだよね。」
その場にいた全員が大笑いした。僕も思わず笑ったけれど、内心ちょっとショックだった。第三者からそういうイメージを持たれているんだ、と気づいた瞬間だった。堅いけど、少し抜けている――そんな印象を与えているらしい。
ここで自己紹介を少し挟むけれど、僕はよく「ムードメーカー」と評されることがある。小学校の先生にもそう言われたし、友達にもよく言われる。でも、本当にそうだろうか。自分では、どちらかというと中途半端な存在だと思う。真面目なところもあれば、抜けている部分もある。器用なところもあるけれど、どれも中途半端で、どこにも突き抜けていない。
そして気づいたのは、青子もまた似たような性質を持っているということだ。彼女もまた、何事にも「中途半端真面目」だ。どこかしら器用で、だけど全力で突き進むタイプではない。そんな中途半端さが、僕たちをお互いに引き寄せていたのかもしれない。
高校生活を振り返ると、その中途半端さこそが僕たちの特徴だった。お互い真剣になりきれず、かといって手を抜くこともできない。どっちつかずの自分たちが、何かと一緒に行動したり、ちょっかいをかけ合ったりしていた。それは他の誰とも共有できない、不思議なバランスだった。
「工藤 J」と書かれた半紙も、きっとその中途半端さの象徴なのだろう。意味なんてなかったけれど、今でも記憶に残っている。それは、僕たちの高校生活そのものを表しているような気がする。明確な意味はないけれど、なぜか忘れられない瞬間。あの時の空気感や彼女とのやりとりが、今でも鮮明に蘇ってくるのだ。
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