最強魔王の背後霊

のぞ

文字の大きさ
上 下
24 / 36
勇者と伝説の島

勇者、魔王に挑む。

しおりを挟む


その日の晩、魔王は弘太に話があると切り出した。

<弘太に、勇者のことを話そうと思う。いつもとは違う魔法を使うぞ。>

< 幻魔法 心鏡 >
魔王の使う魔法により、弘太は意識を失った。

弘太は気が付くと、知らない場所にいた。

「よく来たな、勇者よ!我こそは魔王ルシフェルド、魔族を統べるものだ。貴様はここに来るまでに多くの我が同胞たちを倒した。死んでいった仲間たちのためにも、ここで死んでもらうぞ。」

弘太が知っている魔王よりも明らかに幼いルシフェルドがそこにいた。

「俺らは、おまえなんかには負けない!勇者として!おまえを倒して、この世界の平和を取り戻すんだ!」
金髪に太陽のように輝く瞳の少年が魔王に向かって言った。弘太が思い描いていたよりも、その勇者は若かった。

「そうだぜ!俺らはおまえを倒すために、ここまで来たんだからな。」
大きな斧を持った傷だらけの男は威圧的に言い放つ。その風貌だけでも、強いことがわかる。

「魔王には負けません!女神さまの加護がある限り!」
聖職者のような恰好をした少女が言う。神聖なオーラが見えそうなほど聖なる印象を彼女から感じた。

「あなたが、最強の魔王なんでしょう?あなたを研究しつくさせてもらうわ。」
箒に乗った女性が興奮気味に言った。妖艶なのに聡明な印象を与える彼女はその余裕から、ただモノではないというのを感じた。

その4人に対し、魔王は試すかのように簡単に一撃を放った。
「貴様ら4人まとめて葬ってやろう。」






その戦いは一瞬だった。勇者たちは攻める間もなく、魔王のその一撃で4人とも倒されてしまった。







「口ほどにもないな。これでは、仲間たちも報われはしない・・・。」
魔王の目には涙が流れていた。魔王の周りには多くの魔王の仲間たちが見える気がした。






場面は飛び、魔王は大人びて、魔王の風格があった。
その目の前に、昔と変わらぬ勇者がいた。
「勇者よ、生きていたのか。まぁ、何度来ても同じことだからな。」


「今回は負けない!俺に女神さまの加護がある限り死なないし、ここでおまえを倒してハッピーエンドだ!」
よほど余裕があるのか、勇者は自信満々にそういった。

「先代の魔王には似とらんのう。まさか、人生で二度も魔王と呼ばれるものを成敗するとはな。孫娘の敵、討たせてもらうぞ。」
よぼよぼの杖を持ったおじいちゃんが言った。その言葉から、先代の魔王を葬ったと考えられる。その顔は、さっきの箒に乗った女性と似た印象を弘太は受けた。


「我が国を守るため、騎士団長として、貴様を倒す!」
神々しい鎧を着た騎士が言った。その顔はとても緊張しており、青ざめていた。

「女神さまに認められた勇者様のため、あなたを裁きます。」
聖なるオーラに包まれた女性は言った。先ほどの少女よりもその身から溢れるオーラはすさまじいものだ。

しかし、魔王にとっては物足りなかった。
(こんなものか。)

魔王はただ、手を軽く上げた。

次の瞬間には、4人とも死んでいた。




その後も、勇者は何度も攻めてきた。何度も何度も攻めてきて、その度に魔王は勇者を葬っていた。


そして運命の日がやってくる。






女神が現れ、勇者と魔王以外のものは消滅した。

「これがルシ様の記憶・・・。」

「あぁ、そうだ。これが我と勇者の記憶だ。」



勇者との記憶を見せられた弘太は驚いていた。魔王という称号を持つものが仲間のために涙を流した姿に、圧倒的力を持ちながら決して自ら相手を滅ぼさない姿が弘太の思う魔王というものとはかけ離れていた。

逆に、勇者という存在が、狂信的な女神の信者というのも、勇者=正義という考え方の中で育ってきた弘太にとっては意外なものであった。そして何より、魔王がその記憶を見せたこと、女神との確執の理由を知ったことは魔王と弘太の距離を縮めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ義弟に殺されるなど真っ平ごめんです

ぴぴみ
恋愛
容姿は天使性格は悪魔と恐れられていた令嬢ローズ。 しかし彼女はある日を境に評価を一変させる。 それは前世の記憶を思い出したからでも、反省したからでもなく…。 義弟との仲も良好です。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【改稿】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル
ファンタジー
21世紀初頭、突如として謎の機械生命体――ウィッカー・マン――が、出現する。 既存の兵器を物ともせず、生活圏への侵食を開始した。 カナダ、バンクーバー。その第一種接近遭遇を果たし、ウィッカー・マン対策を担う人材や技術の集う都市。 河上サキは、高校生でありながら、ある事情からウィッカー・マンを倒す技術を得る為に、バンクーバーに渡る。 彼女が命の危機に瀕した時、青年が突如として現れた。 ロック=ハイロウズ。またの名を「紅き外套の守護者」(クリムゾン・コート・クルセイド) ウィッカー・マンにより滅亡しかけた欧州を救った青年の名前だった。 注意)この作品は、以下のサイトで複数投稿しています。内容に変更はありません。 掲載サイト 第二部 "平和たる軍靴:The Pedal Of Pax" まで ・小説家になろう ・カクヨム ・ノベルアップ+ 第一部 始まりの鼓動:"Beginning Beat" ・ネオページ ・ハーメルン ・B-NOVEL

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...