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第48話

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「エリッサ!もう一度関係を戻してくれとは言わない!しかし、私は今だ第二王子のイスに座るものとして、果たさなければならない責任があるんだ!君はこれまで、父親であるカサルからまったくいい扱いをされては来なかったことだろう!そんなあいつが今、この国を指揮する立場となる第二王子のイスに座ろうとしているのだ!そんな横暴な考え、緩さrていいはずがないじゃないか!どうか僕と一緒に戦ってほしい!君だって内心ではそれを望んでいるんじゃないのか!?」

カサルの手紙がエリッサをレグルスともども自分のもとに呼び戻そうという内容であろうことは、ノーティスはうすうす察していた。
だからこそ彼はあえて手紙を渡し、カサルという共通の敵を作ることでエリッサとの関係を改善し、それによってレグルスの力で破壊された王宮を再生させようともくろんだ。
そして今、ノーティスは思惑通りにエリッサに誘いの言葉をかけることに成功した。
あとは彼女からイエスの返事を聞き届けるのみであったが…。

「嫌です」
「は?」

エリッサからの返答は、単純明快なものだった。

「も、もう一度言ってみてくれ。あんまり聞こえなかった気が…」
「ですから、もうあなたに協力するつもりはありませんので。…でも、レグルスが王宮を壊しちゃったことでほかに困る人がいるのなら、それだけは元に戻した方がいいのかもしれないけれど…」
「そ、それはつまり…もう二度と私と仲間になるつもりはなく、王宮を戻すことがあったとしても、それは私のためでなく他の者のためだと…?」
「そうですけど…それがなにか?」
「…!」

あまりにも堂々と誘いを断られてしまったことに、ノーティスはあまりその現実を直視できていない様子だった。
しかし少しずつ時間が経過していくにつれ、次第に自分が彼女に拒否されたという事を理解していき、その心の中に怒りの感情を湧きあがらせていく…。

「なんでだ…。まさか私と組まずに、実の父の方を取るというつもりか?あんなろくでもない父親に今更味方をするというのか?本当にそれが正解だと思っているのか!?」

だんだんとその語気を強めていいきながら、ノーティスはエリッサに詰め寄る。

「別にお父様に味方をするわけじゃ…」
「そういうことじゃないか!この状況で私につかないという事は、向こうに味方をするという事じゃないか!」
「…」

ノーティスがエリッサに対して大きな声を上げたその時、それまで彼女の横にいたレグルスがゆっくりとノーティスの方に向かっていき、その顔を見据える。

「なんだよ…?」
「(ジョリッ!!)」
「っ!?!?!?」

するとその瞬間、ノーティス自慢の長い髪の毛が一部バッサリと切り落とされ、散髪に失敗した人のような髪型にされてしまう。
もちろんそれをやったのはレグルスであり、彼はそんなノーティスの姿を見てこの上ないほどしめしめといった表情を浮かべて見せる。

「な、なにしやがるこいつ!!!俺の大切な髪の毛があぁ…!!!」

あまりに唐突な出来事を前にして、思わず一人称も変わってしまうほどの衝撃を与えられたノーティス。
しかしこの場で彼に同情する人間は、誰一人存在してはいなかった。

「くそっ!!くそくそくそっ!!!!!!」

…完全に思惑を崩されてしまったノーティスは、まるで戦場から敗走する兵士のように一目散に逃げだしていき、決して振り返ることはなかった。
彼とともにやって彼の兵たちもまたそのあとに続いていったものの、これほどまでに立場の違いを見せつけられてしまった以上、もはや彼らがこれから先もノーティスに付き従うことはないのだろう…。

「……!!!!」

一仕事終えたといった様子のレグルスは、そのまま敗走するノーティスの事を見届けた後、エリッサたちのいる方に振り返った。
今にも褒めてほしいという雰囲気を醸し出す彼だったものの、そんな彼が見た光景は…。

「髪を切り捨てるとは…。なかなかいいアイディアを教えたな」
「(近い近い近い近い!!!!!!)」

アクティスはエリッサの前髪を自身の手に取りながら、非常に近い距離でそう言葉を発していた。
…そしてエリッサもまた、あまりまんざらでもなさそうな表情を浮かべている。
レグルスはそんな二人の姿を見て完全にやきもちをやき、勢いよく二人の間に割って入る。

「お?」
「レ、レグルス????」

レグルスはそのままエリッサの胸元に飛び込み、二人の間の距離を強引に開けさせる。
そんなレグルスの体をエリッサはそのまま抱きかかえ、その両手でレグルスの体を包み込んだ。

「つ、疲れちゃったのかな…?休みたいの…?」
「(こいつと会話はできるくせに、そういうところを察するのは苦手なんだなエリッサ…)」

アクティスは改めて、目の前の二人の関係を見て不思議そうな表情を浮かべて見せた。
どうやら、レグルスの事をよく知る彼にとって今のレグルスの姿は、それほどまでに変わった存在に映った様子である…。
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